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次の日、俺が学校からボーダーに向かう途中、女主人公から連絡がきた。

『ボーダーに着いたらラウンジ集合』

わざわざ俺のことをラウンジに呼び出すことはしない。
ラウンジやC級ブースみたいな、人が多い場所にわざわざ女主人公が呼び出すことはしない。
だから、これは何かある。

「いやだ」
と一言送信する。

すると、すぐに女主人公から返事が返ってきた。

『ラブラブアピールしないと』
「ぜってーいやだ」
『雅人くんは私のですってアピールしたいの』
「逆だろ。おめーが俺のだってアピールすんだろ」
『そうやった。待ってるわダーリン』

この返信を見て俺は気づいた。
これを打ってるのは女主人公じゃない。







「おめーか水上ー!!」
「俺やでダーリン」
「雅人くん、日直おつかれさま」

ボーダーに着いて、ダッシュでラウンジに向かうと女主人公が水上と一緒にいた。

「何してんだてめー!」
「昼に鋼くんから聞いたで。もっとラブラブアピールするんやろ?」
「雅人くんなんで知らないの?」
「日直だったから仕事してたんだよ!」

女主人公と水上が座っている席に座ると、周りからイヤな感情が向けられているのに気づく。
クソが、めんどくせー感情刺してくんじゃねー。
そう思って、俺は周りにいる奴らを睨んだ。

「雅人くん、やめさない」
「うるせー」

周りを威嚇している俺を、女主人公は止める。

「外から見てると、オカンと息子って感じやな」
「私、こんな大きい息子を生んだ覚えはないんだけど」
「恋人っぽく見えない原因の一つやろ?」
「そうかなー?」
「苗字ちゃんが、もっとカゲに甘えたらどうや?」
「甘える?」

水上はそう言うと、女主人公の隣から俺の隣に座り直した。

「こうやって、カゲの肩にもたれかかる」
「おいやめろ」

水上のもさもさ髪の毛が顔に刺さって痛い。
それと同時に、イヤな感情がさらに刺さってくる。

「面白い図」
「俺やなくて、苗字ちゃんがやるんやで?」

水上は女主人公の隣に戻ると、「ほら、苗字ちゃんの番や」と言って女主人公を立たせる。
女主人公は俺の隣に座ると、水上がやったように俺の肩にもたれかかってきた。

「…どう?」
「眠くなる」
「私も安心する」
「そういうんやなくて、もっと恋人らしい会話」
「…水上くんは私たちをどうしたいの?」
「ぜってー面白がってるだけだろ」
「カゲと苗字ちゃんのためやろ」

俺が無意識に女主人公の頭を撫でると、女主人公は俺を見つめてきた。

「あ?」
「意識してないときのほうが、よっぽど恋人っぽいよね」
「そうか?」
「うん」

そう言うと、女主人公は微笑んだ。

「…」
「あー、この笑顔は俺んだけやなー」
「…へんなアテレコすんな」
「苗字ちゃんの笑顔は元々レアやけど、カゲに見せる笑顔はそれ以上やな」
「本当?」
「ほんま。普段の笑顔と全然ちゃうで」
「無意識だった」
「無理にアピールする必要あらへんな。もうラブラブオーラが出まくりや」
「それはそれでどうなの?」
「この馬鹿の言うことをいちいち真に受けんな」

俺がそう言うと、女主人公は納得したようにうなずいた。



「なんだ?何してんだ?」

そこに荒船が来た。

「お、荒船」
「遅かったね」
「あぁ」
「なんやったん?」
「なんでもいいだろ」
「呼び出しだよ。もうすぐ卒業だから、荒船くんの呼び出しラッシュ」
「おまえな」
「荒船くんヒューヒュー」
「モテるやつはちげーなー」
「好きでもないやつからモテても仕方ないだろ」
「なんや荒船。そんな言い方しよったら好きな人がいるって勘違いされるで」
「そういう意味じゃねーよ。それに、俺よりも女主人公のが呼び出しラッシュだろ」
「は?」

荒船の言葉に女主人公を見た。
俺が見た瞬間、思いっきり顔を逸らしやがった。
これはクロだな。

「女主人公」
「…」
「女主人公」
「…」
「…女主人公」
「だって…いちいち報告されても気分下がるでしょ?」
「もう慣れっこだっつーの!むしろ黙ってられる方が気分下がるわ」

学校が離れてからの3年間。
呼び出しをくらった話をあんまり聞かないと思ってたが、やっぱり隠してやがったか。

「ごめんなさい」
「まぁまぁ、カゲ。苗字ちゃんもカゲに余計な心配かけたくなかっただけやろ」
「全部の呼び出しに応じてたわけでもないぞ」
「そこはね、のらりくらりと」
「わーってるよ」

女主人公がモテるのは今に始まったことじゃない。
それこそ、幼稚園の頃から周りに好かれていた。
だから、本当に今更だ。

「嫉妬してるわけやないんやな?」
「いちいち嫉妬してる暇ねーだろ?」
「まぁ人数が大変なことになるな」

「ただ、俺の知らないところで俺のもんに手ぇ出そうとするやつがいるってことが気に入らねーだけだ」

俺がそう言うと、女主人公は下を向いた。

「女主人公?」
「…なんでもない」

そんな女主人公の姿を見て、荒船は笑った。

「女主人公って、意外とストレートな言葉に弱いよな」
「ほんまや。めっちゃ照れてるやん」
「うるさーい」

「恋愛初心者だもんな」
「お互いね」

女主人公はそう言うと、両手で顔を仰いだ。

「てことはお互いが初恋の相手ってことやんな?」
「そういうことになるかな。私はそうだけど、雅人くんの初恋は知らない」
「どうなん?」
「言わねーよ」
「初恋だな」
「初恋やな」
「わかってんならいちいち聞くな!」

周りからの感情は、うらやましいという感情に変わっていた。
この感情はそんなに不快じゃないからまだマシだ。



「で?結局おまえたちは何してたんだ?」
「カゲと苗字ちゃんのラブラブアピール大作戦やで」
「おめーだけだろ」

「なるほどな」

水上からそう言われた荒船は、少し考える素振りをした。
イヤな予感がする。

「ラブラブアピールなんて簡単だろ。カゲが女主人公にキスすればいいだけだ」
「ぶっ殺すぞ」

こいつは頭がいいはずなのに、なんで考えがぶっ飛んでんだ。



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