50

C級ブースに来ると、またまたお目当て人を見つけた。

「鋼くん!」
「女主人公」

鋼くんは王子くんと一緒にいた。

「やぁクイーン」
「王子くん。なんだか珍しい組み合わせだね」
「久しぶりに彼を見つけたから、ソロランク戦をしてたんだ」
「そうなんだ」
「女主人公はどうしたんだ?ランク戦か?」
「ううん。はい、これ」

と、クッキーの包みを鋼くんに渡した。

「毎年作って配ってるの。鋼くんにあげるのは今年が初めてだよね」
「ああ。ありがとう」
「ぼくにはないのかい?」
「もちろんありますよ」

私は王子くんにもクッキーを渡した。

「ありがとう。クイーンのお菓子は毎年美味しいからね」
「それは良かった」
「それじゃあぼくたちはこれから防衛任務だから行ってくるよ」
「頑張ってね」

王子くんがC級ブースから出ていくと、鋼くんは近くのソファーに座った。

「でもよかったのか?」
「何が?」
「これ。カゲはなんて?」
「あぁ。毎年のことだから気にしてないよ。雅人くんには別で本命を用意してるから安心して」
「そうか。そしたらありがたくもらう」
「鋼くん律儀だね」
「サイドエフェクトのことがあって、なかなか友達ができなかったからな。これ込みでオレと仲良くしてくれる友達は大事にしたいんだ」
「…そっか。それは雅人くんも同じだと思うから、ずっと仲良しでいてね」
「ああ」







家に帰って、雅人くん用の甘さ控えめのチョコレートケーキを仕上げて雅人くんの家に向かう。

ピンポーン

雅人くんの家のチャイムを鳴らすと、中から雅人くんが出てきた。

「お待たせ」
「おせーよ」

そう言って、私は雅人くんの家に入って雅人くんの部屋を目指す。

「今年は甘さ控えめのケーキにしてみました!」
「おう」

私は箱からケーキを取り出すと、お皿に出した。

「どう?」
「毎年クオリティーが上がっててこえー」
「来年も楽しみにしててね!」
「そりゃどーも」
「はい、食べて」

フォークでケーキを一口分取って、雅人くんに差し出した。

「あーん」
「…」

雅人くんは何も言わずに口を開けて、そのまま食べた。

「美味しい?」
「おめーの作るもんがまずいわけねーだろ」
「ありがとう」

雅人くんにフォークを渡した。

「女主人公は食ったのか?」
「雅人くん用のケーキだよ?」
「ほら」

雅人くんはそう言って、さっき私がしたようにフォークにケーキを取った。

「雅人くんのなのに」
「うめーもんは共有してーだろ」
「じゃあ遠慮なく」

雅人くんのケーキを一口もらう。
うん。
甘さ控えめ、美味しくできた。

「今年も配ったのか?」
「うん。今年はクッキーにしたよ。そろそろネタ切れ」
「鋼にもやったか?」
「あげたよ。王子くんと一緒にいたから、ついでに王子くんにもあげたよ」
「そうかよ」

雅人くんはそれだけ言うと、残りのケーキを食べる。

「ねぇ、雅人くんって意外と鋼くんのこと気にしてる?」
「は?」
「荒船くんと一緒にいても気にしないのに、なぜが鋼くんのことは気にしてる感じがするんだけど、気のせい?」
「気のせいだろ」
「そうかなー。前のラッドの時も、あれ相手が荒船くんだったら気にしてなかったのかなって思ったんだけど」
「…」

ずっと気になっていたこと。
雅人くんは、鋼くんと私が仲良くしていると結構見てくる。
荒船くんの方が一緒にいる機会は多いし、なんなら未だに荒船くんと付き合っていると思われることもあるから、そっちのほうが気になるのかなと思うんだけど、あんまり気にしてなさそう。
なのに、ほとんど一緒にいない鋼くんと、たまにみんなで一緒にいるときに話をしていると視線を感じる。

「嫉妬ですか?」
「そんなんじゃねーよ」

本人がそう言うなら、これ以上聞けない。
私はあきらめて話題を変えようとした。

「そういえば」
「…あいつは俺と似てんだろ」
「え?」

話題を変えようとしたら、雅人くんが話し始めた。

「似てる?顔?性格?どこも似てないよ?」
「ちげーよ。サイドエフェクト…」
「ん?あぁ二人ともサイドエフェクトがあるね」
「あいつも、昔からサイドエフェクトで苦労してきてんだろ」
「そうだね。そういえば、今日もそんなこと言ってたよ」
「…だからイヤなんだよ」
「え?」
「女主人公が…俺と似てるから」

もしかして、鋼くんが雅人くんと同じように昔からサイドエフェクトで苦しんでいるから、私が鋼くんのことを雅人くんと同じように見ていると思ってるのかな?

「雅人くん、私は別にサイドエフェクトがある雅人くんのことが可哀想だからあなたと付き合ってるわけじゃないよ?」
「んなことわかってんだよ!」
「私は、影浦雅人だから好きなの」

私は雅人くんを抱きしめた。

「伝わる?私の感情」
「ふわふわしてる」
「こんな感情、雅人くんにしか刺さないからね」
「俺以外に刺したら浮気だろ」
「もう!」

そう言って私は雅人くんから離れようとする。
けれど、雅人くんに腕をつかまれて、それはかなわなかった。

「悪かった」
「もうそんなこと言わないでよね」
「おう」

雅人くんは顔を上げて、私の目を見つめると「目ぇ閉じろ」と言った。
言われた通り目を閉じると、雅人くんが近づいてくる気配を感じる。

「…」
「雅人くん」
「あ?」
「もっとして」
「…男にそういうこと言うんじゃねー」

今までの優しい口づけとは違う。
少しずつ深くなっていく口づけに、私はたまらず閉じていた唇を少しだけ開く。
そこに雅人くんが舌を入れてきて、私の舌に絡めてくる。

「んっ…」

雅人くんは、痛くないように自分の手と腕で私の頭と体を支えながら、優しく床に押し倒した。

「まっ…まさと…っ」
「女主人公っ…」

私たちは舌を絡ませ合ったり、唇をなぞったり、向きを変えて深く口づけたりを繰り返した。
そして何分経っただろうか。
雅人くんの唇が離れた。

「煽んな」
「雅人くん…好き」

私は雅人くんを力いっぱい抱きしめた。

「え…」
「ば!ちょっと離れろ!」

私の足に、なにやら硬いものが当たっていた。

「…勃ってる?」
「んなこと言うな!つーかあたりめーだろ!」

そう言って雅人くんは私からアソコを隠すように後ろを向いた。

「今日はもう帰れ」
「そのままで大丈夫?」
「おめー、マジでいい加減にしろよ」
「ごめんなさい」

私は自分の荷物を持って、雅人くんの部屋を出る。

「また明日ね。ランク戦頑張ろうね」
「おー」



雅人くんのあんな姿、初めて見た。
ちょっと可愛かったな。



>> dream top <<