「さすがにイコさんでしょ」
「ボーダーに7人しかいない、1万越えのアタッカーですよ?」
三浦くんの問いかけに、小荒井くんと笹森くんはイコさんと答えた。
「俺はルーキーが勝つと思う。旋空なしだし」
「おれもそう思います」
「苗字さんはどっちだと思いますか?」
「私は…新人の子かな」
「苗字さんもルーキー派なんすか!」
「勝負自体は五分五分な気もするけど、イコさんのことだから何があるかわらかないじゃない?」
イコさんとヒュースくんのソロランク戦はいい勝負だった。
最初の一本はイコさんが、そしてその後は獲ったり獲られたりの繰り返し。
そして、4対4。
あと一本獲った方が勝ち。
ヒュースくんが距離を取るためにイコさんから離れると、イコさんは旋空を繰り出した。
「…!?」
「あ」
ブースに戻ってきたイコさん。
「まことにもうしわけない。いつものクセでやってもうた」
「もーイコさん!旋空なしって言ったでしょ!」
「惜しい」
イコさんは旋空なしのブレード一本勝負ということを忘れて使ってしまった。
イコさんのことだから、旋空使いそうだなと思ってたけど、本当に使って反則負けになるとは。
期待を裏切らないイコさん。
「くそ〜もっと誰か通りかかんないかな〜。鋼さんとかカゲ先輩とか…。苗字さん!カゲ先輩どこにいます?」
「なんだなんだ?楽しそうなことやってんな」
「太刀川さん!」
そこに、太刀川さんがやってきた。
太刀川さんもブースに入ってヒュースくんと5本勝負をした。
結果は5対1。
太刀川さんが5本獲って、太刀川さんの勝利。
「うおお太刀川さーん!」
「さすが、ソロ総合1位…!」
小荒井くんの嬉しそうな顔に、思わず笑ってしまった。
「こいつかなり強いな。いきなり1本獲られた」
ブースに戻ってきた太刀川さんは、心なしかどこか嬉しそう。
ヒュースくんもブースから出てきたので、みんなはヒュースくんのもとへ集まった。
「いよー!ルーキー!おまえ超つえーな!何者だ!?」
「勝負に付き合ってくれてありがとう」
「もうどの隊に行くか決めてんの?」
「まだならうちに来いよ!うちに!」
「誘ってもらって悪いが…先約があるんでな」
そう言うと、ヒュースくんが私を見た。
「さっきは助かった」
「いいえ。無事に入隊式に参加できてよかったよ。とっても強いんだね」
「苗字さん知り合いだったんですか?」
「入隊式の前にちょっとね」
私はそのまま太刀川さんとイコさんの10本勝負を見ていた。
「女主人公」
「雅人くん」
作戦室でゴロゴロしていたはずの雅人くんがブースにやってきた。
「どうしたの?」
「ソロランク戦しに来た」
「もう少し早く来てたら、面白い相手とできたのに」
「あ?」
「今日入隊してB級に上がった強者がいたよ」
「面白れぇ!そんだけつえーならすぐ戦うことになんだろ!」
「うん。多分すぐなると思う」
多分ヒュースくんは玉狛の子。
小荒井くんたちに、先約があるって言ってたから、玉狛第2に入るのかな?
次の試合が楽しみだ。
「今、イコさんと太刀川さんが10本やってるから、次にやってもらえば?」
「どっちもだりぃ…」
「太刀川さんはやり始めると長いからね」
雅人くんの本気のイヤそうな顔を見て笑ってしまった。
「辻くんとか小荒井くんもいたんだけど、もう作戦室戻っちゃったかな?」
「あいつらじゃ勝負になんねーよ。おめーが相手しろよ」
「雅人くんのポイントで負けるとこっちが損するのよ」
そんな話をしていると、太刀川さんとイコさんがブースから出てきた。
「お!影浦」
「カゲやん」
「げ!」
「イヤそうな顔しないの」
「なんだーその態度は。俺に会えたのがそんなに嬉しいか」
「どうしたらそう見えんだよ!」
「よしよし、10本やるぞ」
「おいこら!勝手に決めんな!」
雅人くんは太刀川さんに引きずられて行ってしまった。
ああなった太刀川さんを止めることは難しい。
「苗字ちゃん、あれほっといてええの?」
「はい。なんだかんだ、雅人くんも楽しんでると思います」
「苗字ちゃんが言うなら間違いなしやな」
「イコさんはこの後どうしますか?」
「せや!もうすぐ水上が」
「イコさん」
噂をすれば、水上くん。
「呼びに来ると思うで、と言おうとしたとこや」
「なんですか?苗字ちゃんとソロランク戦しとったんですか?」
「違うよ。イコさんは太刀川さんとやってたんだよ」
「せやで。可愛い女の子は斬ったらあかんやろ」
「そういう問題ですか」
水上くんは、イコさんの言葉にあきれたような顔をした。
「おつかれさま」
「おおきに。苗字ちゃんは何してたん?」
「私はランク戦しようかなってブース来たんだけど、結局みんなのランク戦見るだけで終わりそう」
「なんやそれ。イコさんとやったらええやん」
「イコさん女の子とはランク戦しないんだって」
「そんなこと言うてへんよ!」
「まぁイコさんは苗字ちゃん斬れませんね」
「そういうことや。苗字ちゃんは斬れん」
「それじゃあ勝負にならないですよ」
ブースの方を見ると、雅人くんが出てきた。
どうやら太刀川さんとの10本勝負が終わったみたい。
「カゲおつかれさん」
「ああ?水上じゃねーか」
「負けたん?」
「うるせー!」
「まだまだ俺の勝ちだな」
やっぱり太刀川さんは強いな。
「そうや、イコさん。マリオが呼んでますよ」
「そうやった。ほんなら俺らは作戦室戻ろか」
「太刀川さん、カゲ、苗字ちゃん、ほな」
「おう」
「またやろうぜ」
「もちろんです。ほなまた」
イコさんと水上くんは生駒隊の作戦室に戻って行った。
「私たちも戻る?」
「ランク戦は?」
「今日はもういいかなー」
みんなの戦いを見ているだけでお腹いっぱい。
「なんだ、俺なら相手になるぞ?」
「太刀川さんと始めると、いつ終わるかわらかないので却下で」
「冷たいな。て、俺もこの後防衛任務だった」
「大事な用事を忘れないでください」
「ははは。早く戻らないと出水に怒られるな」
「早く戻ってあげてください」
太刀川さんも太刀川隊の作戦室に戻ったので、私たちも作戦室に戻ることにした。
「雅人くん、今ポイントどのくらい?」
「あー?興味ねーからしらね」
「この前1万点没収されたから4000くらいしか残ってないでしょ?」
「そうかもな」
「この強さで4000って…ポイント詐欺だよね」
「うるせー」
「雅人くんの相手が可哀想」
「俺に勝てばいいだけの話だろ!」
「それもそうなんだけどね」
私のスコーピオンのポイントは6500くらいだから、私が雅人くんと戦って負けると結構痛い。
「雅人くんのポイントが私と同じくらいになるまで、ソロランク戦はお預けかな」
「別のやつからポイントぶん取るしかねーな」
「ほどほどにね」
作戦室に戻ると、ヒカリちゃんがコタツで寝ていて、ゾエくんとユズルくんはログを見ていた。
「二人ともおかえり」
「ログ見てるの?」
「そうだよー。次の相手、玉狛第2でしょ。ユズルが見たいって」
「別に言ってないでしょ…。玉狛って今4位なんだね」
「本当上がり下がりが激しいチームだよね」
「…雨取さん、本気で遠征行きたいって言ってた」
「何か事情があるのかな?」
「…あと5点」
「ああ?何考えてんだ?」
「…別に。なんでもないよ。オレ、今日はもう帰るね」
「おい!」
雅人くんが声をかけたけれど、ユズルくんはそのまま無視して作戦室を出て行った。
「あいつ、何か変なこと考えてんじゃねーか?」
「変なこと?」
「…」
ユズルくん、雨取さんと仲が良いから玉狛第2に遠征に行ってほしいのかな?
ユズルくんの考えていることがわからないから変なことは言えないけど、何かあるなら相談してほしいなと思った。