『ボーダーに向かってるが、いるか?』
「いる」
『そしたら10本頼む』
「早く来い」
それだけ返して携帯をポケットに入れた。
「女主人公ちゃん?」
「いや、荒船。10本してーんだと」
「すごいね〜!この調子だと、入隊したらすぐにB級になりそうだね」
「だな!ポイントぶん取ってやる」
「うわ〜、めっちゃ悪い顔してる」
ゾエと無駄話をしてたら、すぐにボーダーについた。
とりあえず、荒船が来るまでゾエとソロランク戦でもやっているか、と考えていると荒船もすぐに現れた。
「よう!」
「荒船くん、やっほー!」
「あ?」
女主人公がいねぇ。
「女主人公は?」
「今日は日直で仕事があるから先に行けって」
「1人か?」
「いや、クラスのやつと2人」
あいつは無駄にツラが良いせいか、男に絡まれることが多かった。
中学までは、俺が隣にいることもあって、絡まれたらすぐに追い返していたけど、今はそれができない。
とりあえず、何かあったら報告しろとは言っているが、あいつは
「もう子どもじゃないんだから、ちゃんと自分の言葉で断れるよ」
と言ってあんまり本気にしてなかった。
今の方が、男と女の体格差も出てくるから余計心配なんだ。
本人には言ってねーが、女主人公はもっと危機感を待て。
「なんだ?何か不都合でもあったか?」
俺がイラついた顔をしてたせいか、荒船が質問をしてきた。
「あいつ、学校ではどんな感じだ?」
「女主人公か?普通におとなしくて、でも誰にでも優しいし、あの顔だから目立ってるな」
やっぱりな。
「もうすでに何人かから呼び出されてるっぽいけど、全部断ってるみたいだな」
「あたりめーだろ」
「お前ら付き合ってないんだろ?」
「付き合ってない。ただ、それとこれとは別なんだよ!」
「カゲは何が心配なんだ?」
「女主人公は押しによえーから、そこが心配なんだよ。昔は俺が追っ払ってたのもあるから自分で断るのが苦手なんだよ」
「そうなのか。まぁ、今のところは大丈夫そうだけどな」
「これからはわかんねーだろ」
俺が変わらずそばにいることができたら、こんな心配しなくてすんだのによ。
そう思ったらイライラしてきた。
「荒船!学校では女主人公を頼む」
「おっ、なんだ?ボディーガードか?」
「あいつに近寄る男どもを全員蹴散らせ!」
「そ、それはさすがに無理なんじゃ?」
「面白そうだな!いいぜ!その代わり、今度かげうら奢れよ」
「いくらでも奢ってやるよ!」
「荒船くん、意外と安上がりだね」
そんな話をしていると、女主人公が来た。
「3人で集まって何してるの?」
「いや、なんでもない」
「そうそう。あ、女主人公ちゃん日直お疲れ様〜!」
「ありがとう。ねぇ雅人くん、変なこと考えてないよね?」
「考えてねーよ!荒船!10本やるんだろ?」
「おう!もうすぐ正式入隊日だからな。スパルタで頼むわ」
とりあえず、荒船でストレス発散するか。
ブースに入って荒船と通信を繋いだ。
「おう、とりあえず10本な」
『20本でもいいぜ?』
「強気じゃねーか」
『カゲのストレス発散に付き合ってやるよ』
「はっ!ありがてー」
荒船は、まだ訓練用トリガーしか使えないが、意外と使いこなしている。
[個人ランク戦20本勝負。始め]
「よっしゃ!いくぜ!」
「こい!」
荒船は弧月を使っていて、筋が良い。
反応も早くて周りが見えてやがる。
だが、俺はサイドエフェクトのおかげで、荒船の攻撃が実際にくる前に、どの辺りを狙ってきているのかが分かる。
接近戦なら俺の方が得意だから、隙をついて殺し切れる。
「ちっ!」
「残念!」
[トリオン供給器官破損]
『ちくしょう!やっぱりカゲは強いな』
「あたりめーだろ。だけど、まぁだいぶ動けるようになってんじゃねーか」
『ここ最近は、ずっとカゲとやってるからだんだん攻撃速度にも目が慣れてきたな』
「言うじゃねーか!まだまだへばってねーだろうな?」
『当たり前だろ!もう1本!』
荒船との20本勝負を終えて、ブースを出ると女主人公とゾエの姿がなかった。
「あ?あいつらどこ行きやがった?」
「あそこじゃないか?」
荒船が指をさした方を見ると、女主人公とゾエが椅子に座って黒髪のおっさんと喋っていた。
「女主人公!ゾエ!」
「あ、雅人くん、お疲れ様」
「荒船くんもおつかれ〜」
「誰だ?」
女主人公たちと喋っていたおっさんに目を向けると
「お前たちが噂の影浦と荒船か。俺は東だ。よろしくな」
「あ?」
珍しく、このおっさんからは何の感情も刺さってこなかった。
「東さんはボーダーの最初のスナイパーなんだって」
「で?そんなスナイパーさんが何の用だよ?ここにスナイパーはいないぜ?」
「影浦も北添も、もちろん苗字も、上で話題になってたんだ。優秀な新人が入ってきたって。だから話してみたくてな」
無害そうな顔をしているやつが、1番怪しい。
そう思って睨みつけていると
「雅人くん、やめなさい。東さんはいい人よ」
「そうだよ〜!ガンナーとシューターの違いとか、向いてる人とか色々教えてもらってたんだよ」
「ケッ、そうかよ」
俺は女主人公の隣に座った。
「荒船のことも、まだ仮入隊なのに一生懸命な隊員がいると話に出てたぞ」
「本当ですか?ありがとうございます」
「何かあれば、いつでも頼ってくれてかまわないからな」
そう言うと、東のおっさんは席を立った。
「もう少し愛想よくできないのかなー雅人くん」
「怪しいだろ、あんなん」
「怪しいとか言わないの。失礼でしょ」
「そうだよ!東さん、普通にいい人だったよ!」
「へーへー、そうかよ!」
人の気も知らないで。
と、女主人公のことを睨みつける。
「そんな顔しても怖くないよ。心配してくれてありがとう」
「別に心配なんざしてねー」
「はいはい」
俺の気持ちがわかってんならいいけどな。