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2月も最終日。
今年の卒業式は、2月最終日の金曜日にあった。

これで私たちの高校生活が終わる。
明日はランク戦だし、ボーダーとしての日常は変わらずに続いていくし、春には大学生になる。
でも、やっぱり人生の一つの節目である卒業式は感慨深い。

朝、登校をしてB組に入る。

「おはよう、荒船くん」
「おう」
「今日は卒業式だね」
「だな」
「3年間、本当にありがとう」
「こちらこそ。優秀なボディーガードだったろ?」
「ええ」
「ま、今度は大学でもよろしくな」
「そうだね」

結局、荒船くんも犬飼くんも、同じく三門大に進学することになった。

「終わったら三門第一に行くんだろ?」
「うん。少し時間がズレてるから、私たちの式が終わって向かえば丁度いいと思う」
「わかった」



時間になり、卒業式が始まった。
生徒代表の言葉で、生徒会長である蔵内くんが挨拶をしていたけれど、その眼には涙が溜まっていて、こっちまでうるうるきてしまった。
意外と涙もろいって話は本当だったみたい。

式も終わり、校庭に出てみんなで写真を撮ることになった。

「なんだかんだB組はみんな仲が良かったな!」
「これで卒業はさみしいねー」
「ほら、荒船くんと苗字さんも!」

クラスメイト全員で集合写真を撮る。

「苗字さんと仲良くなれてよかったよ!」
「私も、鈴木さんと友達になれて嬉しかったよ」
「私は美大に進むけど、これからも仲良くしてね」
「もちろん」
「そうだ!荒船と二人で写真撮ってあげるね!」

鈴木さんはそう言うと、私と荒船くんにカメラを向ける。

「ま、記念だな」
「そうだね」

私たちはありがたく写真を撮ってもらうことにした。

「はぁーこれで苗字さんと荒船くんのやり取りを見るのも最後かー」
「なんだかんだ、いいコンビだったよね」
「そうかな?」

「苗字ちゃん!荒船くん!」
「犬飼」

D組で写真を撮り終えたらしい犬飼くんがこっちに走ってきた。

「やっと見つけたー!ねぇおれらも写真撮ろうよ!」
「いいね」
「じゃぁ私が撮ってあげるね!」

犬飼くんを含めた三人でも写真を撮る。
本当は蔵内くんもと思ったけど、ボロ泣きしているらしいからそっとしておく。

「ひゃみちゃんと辻ちゃんもこっち来るって」

在校生も校庭に出てきて、それぞれ好きな人たちと写真を撮ったり言葉を交わしている。

「苗字先輩!」
「氷見さん」
「荒船さん、あ、あ、苗字さん!」
「辻」
「辻くん」

犬飼くんの言っていた通り、二人が校庭に出てきた。

「卒業おめでとうございます!」
「お、、おめで、とうございます」
「二人ともありがとう」
「おう」
「明日はランク戦ですよね。頑張ってください」
「ありがとう。負けないように頑張るね」


そんな話をしていると、「あの…荒船先輩…」と荒船くんが下級生に話しかけられた。

「ん?」
「その…もしよかったらなんですが…荒船先輩のネクタイを頂けませんか?」
「…わりいな」

そう言うと、荒船くんはネクタイを外して私の首にかけた。

「これはこいつのもんなんだ」
「…!わかりました。すみません、変なこと言って。卒業おめでとうございます!」

その女の子は少し俯いて、でも笑顔でそう言うとその子の友達のもとに戻って行った。

「荒船くん…」
「今日までだろ。約束」
「もういいのに」

「結局、荒船くんはこの3年間苗字ちゃんのボディーガードで終わっちゃったね」
「そのおかげでボーダーに専念できたから助かったぜ」
「荒船くんがそれでいいならいいけどね」
「まぁ荒船くんはモテるし、大学に行ってからでも問題ないか!」
「俺は別にモテたいわけじゃねーからな」

「言ってみたいそんなセリフ…」
「辻くんはまず女の子と話せるようになりなさい」

私は首にかかった荒船くんのネクタイを手にとる。

「これ、どうするの?」
「やる。記念にとっとけ。その代わり、おまえのネクタイは俺がもらう」

私が何か言う前に、荒船くんは私のネクタイをほどいて首から抜き取った。

「カゲに怒られるんじゃないの?」
「3年間守ってやったんだ。文句は言わせねー!」
「私のネクタイにそんな価値ないでしょ」
「おまえは辞退したけど、実質ミス六頴館のネクタイだぞ、価値ありまくりだろ」
「荒船くんの価値観がよくわからない」
「うるせーな。いいんだよ」

荒船くんはめんどくさそうにそう言うと、私のネクタイを自分のポケットに押し込んだ。

「丁寧に扱ってよね」
「もう俺のだ」
「それで、二人はこれからどうするの?三門第一行く?」
「おう」
「じゃぁおれも一緒に行こうかな。辻ちゃんたちはどうする?」
「俺たちは先にボーダーに行きます」
「了解!そしたらまた後でね!」







私たちは3人で三門第一に向かう。
学校の入り口に着くと、ちょうど3年生たちが外に出て、写真を撮っている。

「おー!みんないるかな?」
「どうせあいつらのことだから、隅っこでかたまってんだろ」

荒船くんの言う通り、雅人くんたち3年C組の4人は、校舎の入り口あたりでかたまっていた。
写真を撮ったり、クラスメイトと交流をしなさい。

鋼くんが私たちに気づいて、隣にいる雅人くんの肩を叩いた。
雅人くんや水上くん、穂刈くんも私たちの方を見て4人はこっちに歩いてきた。

「よう、卒業おめでとう」
「おめーもだろうが」
「おめでとー!」
「みんな、おめでとう」
「おー」
「荒船たちはもう卒業式終わったんだな」
「俺たちのが早かったな」
「4人とも全員ボタン無事なのウケるね」

犬飼くんは、4人の制服を見てそう言った。

「ああ」
「荒船くんはネクタイくださいって言われてたのに」
「さすが荒船だな!」
「なんで鋼が嬉しそうなんだよ」
「んで、そのネクタイはどうしたん?」
「断って女主人公にやった」
「ああ?」
「ついでに女主人公のをもらった」
「は?」
「なんやそれ。カップルやん」
「うちの高校では俺たちはカップルだったからな」
「周りが勘違いしてただけでしょ」
「カゲが目の前にいるのにすごいよねー」
「3年間守ってやったんだから、これくらいいだろ?」
「うぜー」

私は雅人くんの前に手を出して「はい」と言った。

「あ?」
「雅人くんの第二ボタン。私にちょうだい」
「いらねーだろ?」
「いるよ。私が欲しいの。雅人くんの第二ボタンは私のものなの」
「…別に誰も欲しがらねーよ」
「ここに欲しがってる人がいるんですけど?」

私がそう言うと、雅人くんはため息をつきながらも第二ボタンを引きちぎった。

「おらよ」

そして私にそれを押し付ける。

「ありがとう」

私はそれを受け取ると、にっこりと笑った。

「!!」
「!?」
「!」
「!!!」

雅人くん以外のみんなが驚いた様子を見せたけど、私はそれに気づかなかった。

「満面の笑みだな、苗字」
「ほんまやな。相当カゲのボタンが嬉しかったんやな」
「好き好きオーラが出てるね」

「さっきから聞こえてんだよボケ!」



私たちが騒いでいると、ゾエくんや当真くん、王子くんたちもやってきた。
2年生のヒカリちゃんや出水くん、米屋くん、そして烏丸くんもやってきて、かなりの人数になってしまった。

「女主人公さん!来てたんですね!」
「苗字さんちーっす」
「女主人公さん、卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
「おいお前ら、先に学校の先輩たちにおめでとうを言えよ」
「いやー、やっぱ女主人公さん優先ですね!」
「出水、てめー覚悟はできてんだろうな!」

雅人くんは出水くんの頭を殴った。

「いってー!今生身なんですからやめてくださいよー!」
「うるせー!おめーが悪い!」
「もー!そうだ!女主人公さん!卒業祝いにご飯奢るんで今度行きましょう!」
「ありがとう」



同級生や学校の後輩、そしてボーダーの仲間たちにこんな風にお祝いしてもらえるなんて、とっても幸せだな。
雅人くんもなんだかんだ楽しそう。
中学までは、こんな風に学校で友達と楽しく過ごす雅人くんを想像することができなかった。
だからボーダーに入って、こんな風に仲良くしてくれる人が増えて、本当に良かった。

あの日、なんで雅人くんがボーダーに入りたいって言ったのか、本当の理由は聞いていない。
けど、この選択が間違いではなかったと、今の雅人くんの姿を見ていると心の底からそう思う。


「おら女主人公!何してんだ!さっさと帰んぞ!」
「うん!」

卒業おめでとう。



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