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3月1日(土)B級ランク戦ROUND7、当日。

『…えー、みなさん、こんにちは。B級ランク戦ROUND7、実況の結束です。解説は二宮隊の犬飼先輩と嵐山隊の隊長、嵐山さんです』
『どうもー』
『どうぞよろしく』

今回の実況は片桐隊のオペレーター、結束だ。

『結束ちゃん久しぶりー』
『お久しぶりです』
『スカウト旅大変だったねー。イケメンいた?』
『スカウト対象がほとんど中学生だったので、イケメンというほどのことは…』
『ホントに探してたんかーい』
『あっひどい!犬飼先輩!』
『ウソウソ冗談!マジメだなぁ結束ちゃんは』

犬飼は結束をからかって遊んでいた。

『えーさて…今回の試合ですが、お二人はどう見られますか?』
『どう見るっていうか、まずは玉狛が一人増えてますねー』
『ですね』

画面に映し出された対戦表を見て、犬飼は言った。

『この時期にメンバー増やすのはあんま見ないけど、連携とかは大丈夫なのかな?しかもB級上がりたて?』
『いや…彼はただのルーキーじゃないと思いますよ』

観覧室がヒュースの加入で盛り上がっているということは、当然それぞれの作戦室でも話題になっている。

影浦隊作戦室。

「玉狛が一人増えたァ?どういうこった?」
「そのまんまだよ。一人増えてんの」

北添はオペレーターのパソコン画面をのぞき込むと「”ヒュース”くん…B級にこんな子いたっけ?」と言った。

「ヒュースくん?」
「けっこうイケメンじゃねーか!」
「隠し玉かよ。空閑の野郎がやたら自信ありげだったのはこのせいか?」
「別に何人でもいいよ。相手が何人だろうと、勝つのはうちだ」



『おっと、今ステージが決定されました。鈴鳴第一が選んだステージは…”市街地D”。ステージは”市街地D”になりました!』

「”D”?”D”ってどこだ?」
「雅人くん、まだステージ覚えてないの?」
「うるせー、いちいちステージのことなんか覚えてられっかよ」
「あそこだよー。マップが狭くて真ん中にショッピングモールがあるところ!」

観覧室では嵐山と犬飼がマップの解説をしている。

『”縦に広いステージ”と言えるでしょう。建物の中も、そこそこ広い空間があって、他のマップよりも屋内戦が起こりやすいのも特徴です』
『大雑把に言って、大通りで戦えば弾トリガー有利。屋内で戦えばアタッカー有利って感じですかね。嵐山さんも言った通り、縦に広さがあるんで、レーダー上では近くても相手が見つからなかったり…』



「このマップって、やっぱモールに篭ってスナイパー封じが狙いだよね?」
「ゾエさんの適当メテオラの対策でもあるんじゃない?女主人公さんのメテオラも強力だし」
「あ、そっか。なるほど〜」
「べつになんの問題もねえ!ハコん中での斬り合いなら望むとこだぜ」
「私も、いざとなったら弾じゃなくてスコーピオン使うから大丈夫」
「特にうちが不利って感じはしないよね」
「けど、もしそうなったらユズルはどうすんだ?モールの外から壁抜きでも狙うか?」

仁礼の言葉に絵馬は少し考えると「…いや…オレも建物の中に入ってカゲさんたちを援護するよ。外にいたんじゃ点獲れない」と言った。

「ガンナーみたいな戦い方するってこと?」
「だいじょうぶかあ?」
「玉狛が一人増えたし、外に出るのは鈴鳴の思う壺だし、オレだけ遊んでるわけにはいかないよ」
「おもしれーじゃんあ。それでいこうぜ」
「私も、今回はユズルくんのサポートに回ろうかな」
「ありがとう女主人公さん」


『…時間です!全隊員…転送開始!』







『さぁ全部隊転送完了!マップ”市街地D”!時刻”夜”!各隊員は、一定以上の距離をおいてランダムな位置からスタートになります!』

隊員たちが一斉に動き出す。

『初期配置は全チームバラけて転送された模様。中央の大型ショッピングモールの中には3人。スナイパー4人と玉狛の三雲隊長、そして影浦隊の苗字隊員がバッグワームでレーダーから消えた』

マップを選択した鈴鳴第一は全員モールに向かう。

『今回”夜”という環境設定が追加されていますが、これもスナイパー対策のひとつということでしょうか?』
『うーん、どうでしょうね。オペレーターの視覚支援があれば、”暗視”状態にもできるので、ある程度経験を積んだスナイパーなら、それほど影響はないと思います』

ただ、視覚支援を切り替える必要があるため、オペレーターの負担は増える。



モールの隣の建物の上に転送された影浦は、スコーピオンを使って建物と建物の間を跳んで移動する。

「ゾエ、おめー何階だ?」
『4階に向かって移動中。カゲは上からだよね?下のフロアに誰かいる。寄ってきてるから、たぶん一人でも強い人。ユーマくんかな?鋼くんかな?ゾエさんドキドキ!』
「びびってんじゃねーよ!」

影浦はモールの屋上の扉を足で蹴り開けた。

「女主人公、おめーはこっち来れんのか?」
『私だけ結構遠くに転送されちゃったから、モールに着くまで少し時間かかりそう』
『ユズルはこっち来れそう?』
『先に始めてていいよ。オレも下から登って行くし、ちょっとかかる』
『了解〜』

そう言うと、北添はモールの下を見る。
そこにはレイガストを持った村上の姿があった。
村上の姿を捉えると、北添はアステロイドを村上に向かって撃ちこんだ。

ドドドドドドド

『鋼くんだった!上に引っぱってくね』

それに対し、村上も来馬と内部通話で話をする。

『ゾエ発見。上で待ってるのは女主人公の可能性もありますが、たぶんカゲ』
『影浦くんか…できれば苗字さんの方がよかったけど…。太一、どう?いけそう?』
『うおっと、コアラ…。もうすぐ着きます。しばしお待ちを』
『…よし、鋼。苗字さんが合流する前に二人で影浦隊に仕掛けるよ』
『了解です』



観覧室では結束たちが現在の状況を説明している。

『各チーム続々とモール内へ!この流れは鈴鳴第一の狙い通りか?』
『東さんとユズルくんがモールの中に入って来そう。これは鈴鳴の予定とは違うはず』
『距離を詰めるのは、スナイパー側にもリスクがあります。攻めの姿勢が吉と出るか、凶と出るか…』
『それにしても、苗字ちゃんはいつも転送位置が悪いね〜』
『苗字隊員がモールに辿り着くのはもう少しかかりそうですね』

『そして…ん?鈴鳴のスナイパー、別役隊員は上へ向かわず1階の奥へ?どこに行くつもりなのか?』



モールの6階では、影浦隊と鈴鳴第一が二人ずつ合流をし、吹き抜けを挟んでまずは射撃戦からの本格的な戦闘が始まった。

『1階では三雲隊長と奥寺隊員が遭遇!つかまった三雲隊長はどう動くか!?一方上階での鈴鳴第一対影浦隊。別役隊員が合流しない以上、戦力的にはやはり影浦隊のほうが有利か!』
『あー、結束ちゃんスカウト旅行ってたから鈴鳴の一番新しい試合見てないでしょ』
『え?』
『最新の鈴鳴は、一味違うんだなこれが』

村上が取り出したのは、通常の弧月ではなく黒い弧月。

『これは…この黒い弧月が鈴鳴の新戦法に関係があるということでしょうか!?』
『いや、あれは知らない』
『初めて見ますね』

そんな犬飼の言葉に、結束は顔をしかめる。

『新戦法はたぶんそのうち見れるでしょ。ほら、実況実況』

影浦と村上がスコーピオンと弧月で斬りあう。
村上の旋空が影浦を狙うが、それを跳んで避ける。
無防備になった影浦目掛けて、来馬がアステロイドを撃ち込むが、北添がシールドで影浦をカバーする。
その来馬に向かってマンティスが伸びるが、村上がそれを斬り落とす。

「チッ」

『影浦隊と鈴鳴第一がクロスレンジで激突!ボーダー屈指のエースアタッカーが斬り結ぶ!変幻自在の二刀スコーピオン!攻めの厚さで圧倒する影浦隊長!堅いガードから鋭い一撃!鉄壁の対応力を誇る村上隊員!』

結束が二人の強さを完璧に表現する。

『この二人と玉狛の空閑隊員は、ソロランク戦で鎬を削るライバルでもあります!ここ最近の個人戦の勝率データはこのとおり』

画面に3人のデータが表示される。

『影浦隊長が他二人に対して、やや優勢か!』
『数字の上ではそうなってるけど、チーム戦の一発勝負だとわかんないよね。現に空閑くんは、前の戦いで鋼くんに勝ってるし。”本番に強い人”ってのはいる』
『そうですね。エースの勝率6対4くらいなら、チームの連携ひとつで勝ちを引けます』
『となると、カギになってくるのは…エースを援護するガンナーの働き…ということになるでしょうか』

結束はそう言うと、来馬、北添、それぞれのソロポイントを出す。

『結束ちゃん、数字好きだねえ』
『北添隊員は援護役が多いガンナーというポジションの中で、単独で点を獲れる火力を持っている優秀なヘビーガンナーです』
『”足が遅い””的がでかい”くらいしか、欠点ないんだよねああ見えて』
『…その火力差が響いてきたか!気付けば鈴鳴第一が防戦一方!影浦隊、切れ目のない攻撃で押しつぶしにかかる!これはシールドが割れれば一気に崩れるぞ!』

その時、来馬がシールドを解除してフルアタックに入った。

『来馬隊長がフルアタック!?』
『出たあ』



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