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北添に来馬のハウンドが命中する。

『来馬隊長がガードを捨ててWライフル!!…いや、守りは村上隊員が担っているのか!?』

ガガガガガガガ

『アステロイドとハウンドの多角攻撃!北添隊員を押し返している』

「野郎…!」

『このWライフルが鈴鳴の新戦法…!?』
『そのとおり』
『具体的には来馬隊長が通常より大きく前に出て、村上隊員の盾のかげに入り、村上隊員にガードを任せてフルアタック。射撃戦の瞬間火力をUPさせる陣形ですね。これによって”アタッカーを前に出して援護”がメインだった鈴鳴の戦術に”ミドルレンジでの撃ち合い”という手札が加わった』
『一つ間違えると味方撃っちゃいそうな陣形なのに、この短期間でモノになってるのは、鋼くんの学習能力とチーム練習の賜物だろうね』

来馬のフルアタックで、北添を押し返す鈴鳴第一。

『どひゃーやっぱこの陣形キツい!女主人公ちゃんかユズルがいないと撃ち負けちゃうよ!』
『…仕方ねえ、退がるぞ!』
「ほ?(意外…!)」

影浦と北添は、このままの撃ち合いは不利だと判断し、場所を変えるために退く選択をした。
近くの店内に二人は移動し、それを鈴鳴の二人も追っていく。

『戦場を店内へと移した影浦隊と鈴鳴第一!狭さと障害物の多さが両チームにどう影響するか!』

影浦は店内に置いてある椅子とテーブルの間にスコーピオンを通す。
そして、死角から村上を攻撃する。

『影浦隊長の死角を縫った攻撃!地の利を得たのは影浦隊か!?』
『そのようですね』
『あの狭さではさっきまで効果的だった来馬隊長のWハウンドによる多角的な攻撃も封じられている』
『影浦隊にしてはめずらしく、頭使った戦い方だね。苗字ちゃんのアドバイスかな?』


ドドドドドド

北添が鈴鳴の二人をアステロイドで狙う。

『攻守、再逆転!影浦隊が乱打戦を有利に展開していく!』


「スイッチョフ!」


次の瞬間、モール内の灯りが消えた。

「んん!?」
「灯りが…」

チリッ

影浦はサイドエフェクトで首元に殺気を感じ、勢いよくしゃがんだ。
続けて感じる殺気を、持ち前の反射神経で避ける。

「(こいつは…)」


『モール内が停電!?』
『どうやら、鈴鳴の太一くんが向かってたのは1階の”電気室”だったみたいだね』
『鈴鳴の3人には”暗視”の視覚支援が入ってますね。暗闇で有利を取るために、オペレーターとタイミングを合わせて灯りを消したのか』
『なるほど!じゃああの”黒い弧月”は、暗闇で太刀筋を隠すためのものだったんですね!』


『やばいやばい!援護したいけど、カゲを撃っちゃいそう!』
『ヒカリ!さっさと暗視入れろ!』
『今やってら!まったくおまえら、アタシがいなきゃなんにも…』

仁礼は急いで影浦隊のメンバーに暗視を入れた。

『影浦隊にも視覚支援が入った!』

「太一に電気消させてんのか。うぜー小細工しやがって。これで条件は五分だぜ」


「ホイ、3、2、1。スイッチョン」


すると今後は灯りが点く。

「!?」

暗視の視覚支援が入っている影浦は、あまりの明るさに目がくらむ。
そこを見逃さず、村上は弧月で影浦を斬った。

ドッ!

『影浦隊長にいいのが入った!これは致命傷か!?』
『今度は”相手の暗視を待って点灯”か、これはえぐい』
『…かろうじて急所は外している!しかし左腕は伝達系切断!トリオンの漏出も大きいぞ!』
『カゲのサイドエフェクトがなかったら、5回は死んでるね』

『ヒカリちゃん暗視消して!まぶしい!』
『今やってるっつーの!』

『場が鈴鳴に支配されてますね。鈴鳴は照明のON・OFFで何度でもチャンスが作れる』

北添は絵馬に通信を繋げると『ユズル!太一くん狙えない?』と聞いた。
『当たんないでしょ、レーダーにも映ってないし。分電盤なら撃ち抜けるよ。ヒカリが位置教えてくれれば』
『いそがしいなおい!』

絵馬は、仁礼に教えてもらった分電盤をアイビスで狙った。
しかし、別役がエスクードで分電盤を守っていたため、壊すことはできなかった。

『ダメだ、防がれたっぽい。直接行かなきゃ無理だ』
『私、今2階から上に上がろうと思ってたけど、戻って分電盤壊してくるね』
『女主人公ちゃんお願い〜!』

北添は店内の電気系統を破壊した。

『なるほど。壊してしまえばON・OFFはできない』
『地味に気が利いてる!ゾエのこういうとこ好きだな〜。苗字ちゃんも電気室に向かってるみたいだね』

「でかいのもらっちまったぜ!くそったれ!」
「大丈夫大丈夫、立てなおそ立てなおそ」

『より大きなダメージを負ったのは影浦隊!さぁここからどう動くか?』
『うーんまあ、ふつうに考えればゾエのメテオラで壁壊して、モールの外に出るとこだけど。今回は東さんや玉狛の雨取ちゃんの居場所が割れてないから、不用意に出ていく行動は取りづらいとこだよね』
『たしかに。東隊長がモール内にいることは他のチームはまだ知らないはず』







女主人公は電気室に向かう途中、空閑とヒュースの姿を見つけた。
二人も女主人公と同じように、電気室に向かっているようだ。

「エスクード」

「…!?ぶぎゅう」

ヒュースはエスクードで別役を挟み込んだ。

「…やはり照明を操作しているやつがいたな」
「でも遠回りになったぞ。上で待ってる予定だったのに」
「”合流”のオーダーには従っている。何も問題はない。点を獲りに行くぞ」
「行くか」

ヒュースは弧月で別役の首を斬り落とす。

ドン!

『ショッピングモール1階で動きがあった!別役隊員ベイルアウト!先制点は玉狛第2!』

別役が落ちたことで、鈴鳴の環境戦術は使えなくなる。

「急いで上行くぞ」
「…待て」

と空閑がそう言うと、ヒュースが待ったをかける。
ヒュースは後ろを振り返ると、女主人公が壁に隠れながら自分たちを見ていることに気づく。

「あ、バレた」
「苗字さんじゃん」
「女主人公」
「わー、空閑くんとヒュースくんに見つかっちゃったよ」
「あれ?苗字さんのこと知ってるのか?」
「前に世話になった」
「そんな言うほどのことしてないけどね」

女主人公がそう言うと、ヒュースが弧月を抜く。

「悪いが、今は戦闘中だ。恩を仇で返すような形にはしたくはないが、仕方ない」
「そんな大それたことはしてないから、普通に戦ってくれて大丈夫だよ」
「そうか」

ヒュースは女主人公との距離を詰める。
女主人公はハウンドをヒュースに向かって撃ちこんだ。

「二人のエースを相手にするのは、私には荷が重いから逃げてもいいかな?」
「逃がすと思うか?」
「思わない」

女主人公は1階の吹き抜けまで走る。
しかし、その前にヒュースの弧月が女主人公の右腕を斬り落とす。

「もう!容赦ないなー」

女主人公はグラスホッパーを使って上に逃げた。

「逃げられてんじゃん」
「素早いな。オレたちも上に行くぞ。狙撃に注意しろ」

ヒュースはエスクードを起動させ、それを足場にして二人は一気に跳んだ。

「わ!追ってきた」


ドッ!


女主人公の後ろの壁が壊されて、鈴鳴の二人と影浦隊の二人が斬り合いながら現れた。

「!」
「女主人公ちゃん!」

「玉狛…それに女主人公か」

女主人公は急いで影浦たちのもとへと走って、バッグワームを解除する。
空閑とヒュースもバッグワームを解除した。

「女主人公ちゃん大丈夫?」
「なんとか」

『一気に上ってきた苗字隊員と玉狛の二人がバッグワームを解除!3チーム間合いを取って牽制し合う!』
『これはお互いちょっと動きにくいね。下手に攻めると後ろを取られる。乱戦だと強いのはカゲだけど、さっきの攻撃でやばい量のトリオン失ってるし…今回はまだ玉狛のルーキーの手札が割れてない』
『たしかに、ランク戦初参戦のヒュース隊員は、トリガー構成の情報がまだありません。対する他のチームとしては、まずは様子を見て相手の手の内を知りたいところか』
『ソロランク戦だと弧月使ってて、かなり腕もよかったらしいよ』
『そうするとアタッカー寄り、ということでしょうか?』
『それは、まだわかんないな』



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