『玉狛が来るぞ』
『ほいよ!』
『了解』
『仕掛けるぞ』
『OK』
キンッ
ドドドドドド
「!?」
「な!」
「…!?」
『これは…エスクードで道を塞いだ!』
ヒュースがエスクードを発動させ、北添と女主人公を影浦から引き離し、影浦を一人孤立させた。
孤立した影浦に、ヒュースと空閑が距離を詰める。
「(弧月…!)」
ヒュースが手にした弧月に反応するが、次の瞬間、影浦は全身に殺気を感じた。
「!(…違う…弾か!)」
ヒュースの後ろからシュータートリガーのキューブが隠れていた。
『…でかい!』
影浦めがけてアステロイドが刺さる。
「(弾で目を眩ましといて…)」
首元に殺気を感じ、影浦はガードをしながらヒュースの弧月を避ける。
そして、後ろから空閑のスコーピオンでの攻撃を、同じくスコーピオンで防ぐ。
「そう来ると思ったぜ」
今度は影浦がマンティスで二人を攻撃する。
空閑は左腕を失い、ヒュースは軽い攻撃を受けた。
「2対1なら勝てると思ったか?」
「いいや」
影浦の言葉を否定したヒュース。
まだ残っていたアステロイドの弾が、再度影浦を狙い撃つ。
「…!?」
アステロイドが影浦の両足に命中し、影浦は体勢を崩す。
「…チッ」
『影浦隊長被弾!これは…!?』
『これは言うなれば、”一人時間差射撃”ですね。弾丸の半分を遅らせて発射することで、疑似的に3対1になるタイミングを作った』
[警告。トリオン漏出甚大]
『これはさすがにカゲ死んだかな。もうトリオンもあしもない』
両足を失った影浦に、空閑とヒュースが止めを刺しにかかる。
「野郎…!」
最後のトリオンを使って、影浦は二人に攻撃をしようとする。
バガッ!
「雅人くん!」
北添が壁をけり破って、女主人公と二人が合流した。
北添はアステロイドを、女主人公はハウンドを空閑とヒュースに向かって撃ちこむ。
ガガガガガガ
すると、ヒュースがもう一度エスクードを発動し、北添を取り囲む。
女主人公はエスクードの発動を察知して、囲まれる前に北添から距離を取ったので囲まれずにすんだ。
「またぁ!?」
囲まれた北添のもとに空閑が攻め込む。
「あっやば!」
北添の首をスコーピオンで斬り落とした空閑。
斬り落とされた瞬間、北添は地面に向かってメテオラを撃ち込んだ。
ボッ!
『死に際のメテオラは相撃ち狙いか!?北添隊員ベイルアウト!』
空閑は北添の攻撃を読んでいたため、シールドで防御をしていた。
影浦に向かって攻撃を止めないヒュースは、アステロイドを再度撃ち込んだ。
「くっ…!」
「雅人くん!」
影浦は体を回転させながら北添の開けた大きな穴まで逃げ、下のフロアに落下した。
「!」
「!」
「…くそったれ」
[トリオン漏出過多。ベイルアウト]
ドンッ!
『影浦隊長もここでベイルアウト!やはりダメージは大きかった!玉狛第2からは逃げきれず…ん!?いや…違います!得点は鈴鳴第一!鈴鳴第一に1点が入った!』
「…なに?どういうことだ?」
「おれたちと戦う前に、もっとでかいのくらってたっぽい」
『トリオン漏出でベイルアウトした場合は、それに至る一番大きなダメージを与えた隊員の得点になります。今回は、村上隊員の一撃が一番重かった、ということでしょう』
『…あんな逃げ方するカゲは初めて見たね。それだけ玉狛に点を与えたくなかったってことかな?』
影浦隊の作戦室では、ベイルアウトのマットに寝ている影浦に対し「ナイスエスケープ」と北添が声をかけていた。
『空閑隊員との相討ち狙いと思わせて、影浦隊長の逃げ道を作っていた北添隊員の判断がよかったですね』
「ナスの時と同じパターンか。敵のダメージを見誤ったな…」
「どんまい」
「女主人公はどこだ?」
「見失ったな」
『惜しくも影浦隊長は取り逃したが、瞬く間に二人を攻略して見せた玉狛第2!そのままの勢いで鈴鳴第一に挑みかかる!』
『ユズルくん、まだ下の階にいるよね?』
『いるよ。上は敵だけだから、ここからでも天井越しでも動きが止まれば当てられると思う』
『私もバッグワーム着て下に向かってるから、ユズルくんが撃つ前に合流しよう。多分東隊の二人がユズルくんのことを狙ってると思う』
『わかった。女主人公さん大丈夫?』
『うん。片腕ないけど、まだ動けるよ』
女主人公はあの乱戦の中で、影浦が下のフロアに落下した際に、同じタイミングで下のフロアに移動していた。
上のフロアでは、空閑とヒュースが村上と来馬の分断に成功。
エスクードと思わせて、グラスホッパーでヒュースが村上のところまで一気に距離を詰めて、村上にエスクードを生やす。
その勢いで来馬が体勢を崩したところに、反対側にいた三雲が来馬をアステロイドで撃ち抜いた。
村上を前後に挟んだ空閑とヒュース。
村上の一振りで、空閑はさらに左腕を失ったがヒュースの攻撃をうまくサポートし、村上に弧月が刺さった。
[トリオン供給機関破損。ベイルアウト]
『個人技を玉狛の連携が上回った!村上隊員ベイルアウト!そしてこれは…来馬隊長も逃げられない!』
ドン!
「!!」
その来馬を天井越しから狙い撃ちした絵馬。
[戦闘体活動限界。ベイルアウト]
『来馬隊長を仕留めたのは絵馬隊員!ここで鈴鳴第一が全滅!』
「…まずい!」
絵馬に気づいた三雲は、すぐにバッグワームを起動させた。
だが、それよりも先に「遅いよ」絵馬がもう一発撃ち、三雲の左足に命中した。
「オサム!」
「…!」
[警告。トリオン漏出甚大]
『三雲隊長にも大ダメージが入った!しかし…東隊の二人が絵馬隊員をマークしている!』
『絵馬が跳んだら旋空で斬る!』
『了解!』
『ユズルくんは迎え撃とうにもリロード間に合わないな、こりゃ』
「ハウンド!」
「!!」
そこに女主人公が東隊の二人目掛けてハウンドを撃ち込んだ。
奥寺と小荒井はシールドでガードしながら、距離を詰める。
「女主人公さん、下に逃げよう」
「了解」
絵馬が吹き抜け側のガラスを銃で突き破ると、女主人公は絵馬を抱えてグラスホッパーを使いながら下のフロアに逃げる。
『苗字隊員と絵馬隊員は吹き抜けを使って階下にエスケープ!』
『…いや』
ドン!
次の瞬間、絵馬の体に狙撃が命中。
女主人公もかろうじて急所は外したが、トリオン漏出甚大の大ダメージを受けた。
「東さん…」
『逃げた先には東隊長が待っていた!絵馬隊員もここで脱落!苗字隊員も、トリオン漏出でベイルアウトになりそうです』
結束の実況通り、女主人公もすぐにトリオン漏出でベイルアウトになった。
『苗字隊員、ここでベイルアウト!ということは…勝負の行方は玉狛第2と東隊、残り2チームに絞られました!』
ボスッ!
ベイルアウト用のマットには、絵馬が落ちてきた。
「(東さんも建物の中にいたのか…)やられた…」
「ナイス天井抜き」
その後すぐに、女主人公も落ちてきた。
「東さんがいるとは思わなかったよ」
「ナイスサポート」
東隊と玉狛第2の一騎打ちは、最終的に東隊の逃げ切り退場で、玉狛第2に生存点が追加されて終わった。
『ここで試合終了!最終スコア6対3対2対1!玉狛第2の勝利です!大量6得点!最後は東隊長に討ち取られたものの、玉狛のルーキー大暴れ!という結果になりました!解説のお二方はこの試合いかがでしたか?』
犬飼と嵐山が、それぞれ今回の試合の振り返りを始めた。
『序盤はやっぱ、鈴鳴の暗闇戦術が面白かったね。試合中も思ったけど、あれカゲが相手じゃなかったら、もっと刺さったと思うよ。まぁ結果的には鈴鳴は1点どまりで、太一くんとか一発も撃たずやられちゃったけど』
玉狛は、使う人が少ないエスクードをうまく活用していた。
『逆に言えば、今回はカゲの動きがいまいちだったなー。いつもはもっと余裕ある感じなんだけど、慎重というか消極的な感じがした。最後必死で逃げたのも、なんかカゲらしくない感じだったし』
犬飼の言葉を聞いていた絵馬は「…そうだったの?」と女主人公と北添に聞く。
「うーんまぁ若干気負ってたとこはあったかもね。ユズルの遠征先選抜入りがかかってるわけだし」
「え?」
「雅人くん、ユズルくんのためにB級2位をキープしたいって思ったんじゃないかな」
「オレのために…?」
その話を聞いてた影浦は「…おい」と絵馬に声をかける。
「…まだ終わりじゃねーぞ。久々にやりてーこと見つかったんだろうが」
「…!うん…!」
『まあ結局、今回の感想は”玉狛怖えー”だね』
『ヒュース隊員のデータがないことを最大限活かしてしっかりと点を獲ったあたりが玉狛らしいと思いましたね』
『なるほど。…さぁそして総合順位。夜の部の試合が残っているため暫定的なものですが…影浦隊と玉狛第2が同点で横並び!同点の場合は、シーズン開始時の順位が高い方が上になるので、影浦隊が2位、玉狛が3位ということになります!』
遠征選抜の条件であるB級2位以上をめぐる戦いは、最後まで分からなくなった。
『ROUND7昼の部は以上になります。嵐山さん、犬飼先輩、ありがとうございました』
『ありがとうございました』
『結束ちゃんもおつかれ〜』