3年の男子が全員集合している。
「お、カゲの弁当は今日も美味しそうだな」
「苗字ちゃんの手作りやろ?」
「うるせーな!」
影浦の彼女である女主人公は、お弁当作りを日課にしていて、毎朝作ったお弁当を影浦のもとに届けている。
「健気だね〜苗字ちゃんも」
「お隣さんやからって甘えすぎやろ」
「でも女主人公ちゃんも楽しんでやってるみたいだよ」
「女主人公は料理もできるんだな」
昼ご飯も食べ終わり、それぞれ好き勝手に過ごしていると当真はグラビア雑誌を広げ始めた。
「ちょちょちょ、当真くん。学校でそんなもの広げないでよね」
「学校じゃなくて、どこで広げるんだよ」
当真はそう言うと、今話題のアイドルグループが写っているページを開く。
「やっぱ可愛いなー。断然胸派だな」
「急なカミングアウトやな」
男子が集まってする話なんて、所詮こんなものである。
「王子も見てみろよ」
「ぼくはあんまり興味ないんだけどな」
「まあまあそんなこと言うなって」
当真は王子を呼ぶと、王子はページをのぞき込んだ。
「誰が好みだ?」
「でも王子の好みって聞いたことがないな」
「たしかに」
「どーでもいい」
みんながそれぞれ異なった反応を見せるが、王子は特に気にしていない。
「そうだな、ぼくはこの子かな」
「王子は脚?胸?」
「顔かな」
「はい、解散。鋼はどうなんだよ」
「オレか!?」
王子の次は村上にターゲットが移る。
村上はページを見ると、少し顔を赤くした。
「おいおい、こんなんで照れるなよ」
「いや、あんまりこういうのを見る機会がないから」
そう言いながら村上はページを見つつ、「この子かな…」と一人の女の子を指さした。
「ほー。脚だな」
「どっちかっていうと」
「意外だな、鋼が脚派なのは」
「え?そうか?」
当真は一人ずつページを見せて、好みを聞いていく。
一体なにが楽しいのかわからないが、男子が集まって盛り上がる話は所詮、こんなものだ。
「で、カゲはどうなんだよ」
「あ?」
最後に当真は影浦にも聞いた。
「誰がいい?」
「興味ねーよ」
「カゲくん、そんなわけないよね」
「女主人公に遠慮してるんだろ。あんまり聞いてやるなよ」
「だからこそ余計気になるんじゃねーか」
当真は影浦に近づくと、嫌がる影浦に無理やりページを見せる。
「ほらほら」
「おい」
影浦は横目でちらりとページを見ると、当真を見た。
「誰だ?」
「…まじでいねー。女主人公のが可愛いだろ…あっ」
影浦は無意識に本音をこぼしてしまった。
そんな影浦の言葉に、周りは一瞬言葉を失った。
そして
「カゲ…おまえは最高の彼氏だよ」
「なんも言えへんわ」
「完全に無意識だったよね!女主人公ちゃん愛されてるー」
「まあ、こんな加工バチバチの写真と比べたら、クイーンの方が可愛いよね」
「後で女主人公に教えてあげよう」
「だーー!!もうやめろ!おめーら!!むずかゆい感情刺してくんな!!」
影浦は顔を真っ赤にして叫んだが、周りからの生ぬるい感情はなかなか治まらなかった。
「カゲは顔派ってことだな」
「は?」
「クイーンは顔もいいけど、スタイルだっていいだろう?」
「王子、てめーどこ見てんだよ」
「スタイルいいのか?隊服しか見たことねーけど、影浦隊の隊服はスタイルがわかりにくいだろ」
「前に制服姿を見たことがあるよ」
学校帰りの女主人公に会ったことがある王子。
「大きめのカーディガンを着ていたからわかりにくかったけど、クイーンはスタイルがいいなとぼくは思ったよ」
「…なんでだろう。言ってることはちょっと気持ち悪いのにオージが言うと、いやらしく聞こえないね」
「そうかい?」
「いや、十分きめーよ」
北添の言葉を否定する影浦。
「カゲの彼女だって忘れてないか?あんまりそういう目で見るのはどうかと思うぞ」
「そういう目ってどういう目?」
「だから…」
「おめーはいい加減にしろ」
影浦はあきれているだけで、怒っているわけではない。
それは単純に、ここにいるメンバーからはからかいの感情しか刺さってこず、下心があって話をしている人間がいないからだった。
からかわれていることはめんどくさいが、本気で怒らないのはそういう理由だった。
「影浦隊の隊服、少し変更しないかい?」
「なんでだよ」
「もう少しタイトな感じにしてくれたら、スタイルもよくわかるじゃないか」
「言ってること変態だからな」
「タイトにしたら、ゾエさん苦しいよー」
王子の提案は別の意味で困るので北添は反対した。
「むしろなんでおめーらはあんなピチピチの隊服でいいんだよ」
「動きやすいで?」
「出るからだろう、体のラインが」
穂刈はそう言うと、力こぶしを作った。
「見せたくなるだろう、筋トレしていると」
「穂刈はどんどんでっかくなってるな」
「鋼もやるか?筋トレ。最近筋トレに目覚めたんだ、荒船も」
「本当か?少し興味あるな」
「カゲくんも筋トレしたらどうだい?」
「だりー」
「カゲは細いからねー。もう少し食べないと」
「デブよりマシだろ」
「ひどい!ゾエさんはデブじゃないよー!」
「クイーンを抱っこできるのかい?」
「そこかよ。普通にできるわ!」
影浦の答えに王子は少し驚いた。
「抱っこしたことがあるんだね。どんな状況?」
「別にどんな状況でもいいだろ!」
「ツッコんでいくなー。怖いもの知らずすぎるだろ」
「当真くんも変わらないけどね」
王子と影浦のやり取りを当真が面白がる。
「こんな風にからかわれているカゲを見るのは久しぶりだな」
「せやな。俺らだけやったら、あんまカゲのことからかえへんもんな」
「優秀だな、オレたちは」
3Cの3人が王子と影浦のやり取りを見て、そんな感想を言っていると影浦は「おめーらは王子を止めろ!」と助けを求めた。
「どんどんツッコんだって」
「カゲと女主人公の話が聞けるのは楽しいな!」
「ほら、許可が下りたよ」
「おめーら…」
「そしたら、とりあえずクイーンと付き合い始めたきっかけから教えてもらおうかな」
「誰が教えるか!!」
影浦はお弁当箱を持って、屋上から逃げて行った。
「あーあ、行っちゃった」
「恥ずかしがりややな」
「色々聞けると思ったのにな」
王子は影浦が出て行った屋上の扉を見ながら「また今度ゆっくり話してもらおうか」と言った。
「あんまりしつこいとカゲが怒っちゃうよー」
今日も三門市は平和である。