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試験の規定を確認すると、第一試験の基本ルールは大きく分けて3つ。

”与えられた課題をこなすこと”
”遠征艇の中にいるつもりで7日間過ごすこと”
”朝9時から夜9時まではトリオン体でいること”

「なるほどな、これから少しずつ課題が送られてくるっていうことか」
「そうみたいだね」
「このチームはオレ以外みんな頭がいいからよかった」
「堤さんも悪くないじゃないですか」
「課題とA級の人たちの審査点で評価が決まるってことかしら」
「多分そうですね」

私は課題のファイルを確認する。

「わー、たくさんあるね」

鋼くんが共有してくれた課題のファイルは2種類あって、”共通課題”と”分担課題”。
共通課題は、1人400問で設問は全員共通。
試験終了までに全てを解答すること、と記載されていた。
分担課題は、全部で1000問あって、手分けして解答することが可能。
どれをだれが解答するかは自由で、可能な限り解答すればいいとのこと。
ただ、どちらの課題も閲覧と解答ができるのは、朝9時から夜7時までの10時間のみ。

「課題の問題の難しさがどのくらいにもよるけど、結構ギリギリだな」
「そうね」
「でも、”共通課題”は心理テストみたいなのも入ってるから、意外と簡単かもな」

堤さんが共通課題を見ながらそう言うと、「”分担課題”のほうは、難しい問題も多そうですよ」と氷見さんが言った。

「共通と分担で、それぞれ評価するところが違うのかもしれないな。どうする?」
「そうだな。とりあえず必須の”共通課題”を優先して、時間があれば”分担課題”もやるって感じでいいか」
「了解」

課題にざっと目を通す。
問題の難易度的には問題なさそうだけど、私はアナログ人間でパソコンがとても苦手。
タイピングや使い慣れるのに時間がかかりそうだ。

「後は、”特別課題”と”戦闘シミュレーション演習”か」
「…私、”戦闘シミュレーション演習”は絶対に足を引っ張ると思う…。パソコンとかゲームが苦手で」
「カゲと一緒にゲームやったりしなかったのか?」
「雅人くんがゲームをしているのを後ろから見てるタイプ」
「なるほどな」
「オレもあんま得意じゃないから、大丈夫だよ」
「堤さん…ありがとうございます」

特別課題は、運営から予告なく出題される課題で、いつ、どんな内容の問題が何問出てくるか不明。
そして、戦闘シミュレーション演習は、2日目から行われる部隊対抗の競技課題だ。

「ノートパソコンで行う戦闘シミュって、どんな感じだろうな」
「オンラインバトルみたいな感じか?」
「蔵内はやったことあるのか?」
「残念ながらないな」
「氷見さんは、こういうの得意そうだよね」
「そうですね。いつものオペと変わらないと思いますから」
「勝てば得点、負ければ0点か」
「できる限り足を引っ張らないように頑張るね」







規定を読み進めていると、「あ、ベッドが足りない問題、わかりましたね」と氷見が言った。

「そうだね。オペはオペ用の部屋があるんだね」

オペは夜9時になったらオペの部屋に入り、そこのパソコンでその日の報告書を作成するとのこと。

「じゃあ9時になったら氷見さんはオペの部屋に入るってことか」
「はい」
「そしたら部屋割りは、女主人公がシングルでオレたち3人がツインとカプセルベッドをローテーションするって感じでいいか」
「だな」
「あ、でも試験中に必ず1回はカプセルベッドを使用することって書いてあるな」
「本当だ。そしたら女主人公がカプセルベッドを使う時は、誰かがシングルってことだな」
「村上でいいんじゃないか?」
「オレか?」
「そうだな。隊長だしな」
「わかった。それじゃあそういう感じでいこう」

そこまで確認した後は、共通課題を始めた。
その前に、私は7日間の献立を考えることにした。

「(とりあえず、炒め物とか中華とか、大人数でも簡単に作れる料理をメインに考えるかな)」
「大丈夫か?」
「鋼くん。大丈夫だよ。みんな好き嫌いがないから助かるよ」
「何かあったら聞いてくれ」
「ありがとう」



献立が考え終わり、私も共通課題を始めた。
そして、共通課題を始めて約1時間ちょっと経ったころ、鋼くんが「お!”特別課題”が届いた」と言った。

「どんな内容だろ」
「今共有に入れた」
「ありがとう」

特別課題のテキストデータを開く。

「今回の遠征選抜試験が、なぜ部隊をシャッフルして行われたか。その理由を部隊全員で考え、意見をまとめて提出しなさい…」

「なるほどな」
「なんでわざわざシャッフルしたか、か」
「遠征の間は部隊で分かれるっていうよりも、みんな同じ遠征艇の中で過ごすから、それと同じような感じにしたいからかな?」
「そうだな。いつもと違うメンバー同士で組ませることで、ストレスをかける目的もありそうだな」
「宇宙飛行士の訓練みたいな感じですね」
「そうだ。普段とは違う環境におかれることになるからな」
「一度遠征艇に乗ったら、途中下車できないもんな」

みんな、どんどん意見が出てきておもしろい。

「あとは、いつものチームでは表面化しない個人の不安要素を洗い出す目的もあるんじゃないか?」
「いつもはチームメイトがカバーしてくれる弱点が、急造チームだと浮き彫りになるってことか」
「はい」
「うーん…あり得る」
「なるほど…」
「雅人くん大丈夫かなー…」
「いままで避けてきた問題を、ここでしっかり克服しろってわけね」
「自分の欠点と一緒に、チームメイトのありがたみも身に沁みそうだな」

こうやって聞いてると、元のチームでは本当に自由にやれてたんだなと思う。
私はそれはそれでいいと思うけど、上層部的には、もっと広い視野を持ってほしいってことなのかな。

「隊長に選ばれた人達を見ると、将来的にボーダーの幹部候補や隊長候補をテストしてる感じもありそうだな」
「鋼くんもいつかは村上隊を作るってことね」
「まだとうぶんいいけどな」

色々出てきたので、「そろそろまとめようか」と鋼くんが提案した。

「そうね」
「さっき蔵内が言ってた内容をメインに提出しようと思うが、どうだ?」
「賛成」
「オレもそれでいいと思う」
「わかりました。そしたらこれで提出します」

鋼くんが特別課題の解答を送信して、私たちはまた共通課題に取り組んだ。
そして、黙々と課題をやっているとあっという間に夜7時になった。

「お、問題が見られなくなったな」
「もう7時か」
「なんだかんだあっという間だったな」

みんながパソコンを閉じる。

「…今日の暫定順位が送られてきた」

鋼くんがパソコンをみんなの方に向ける。

「おお!3位」
「やっぱりみんな賢いと助かるな」
「この調子で頑張りたいね」
「だな」

私は席を立つと「そしたらご飯の準備するね」と言って、キッチンに向かう。

「オレも手伝うよ」
「あ、私が」
「今日はオレが手伝うから、氷見は座ってて大丈夫だ」
「わかりました」
「じゃあ鋼くん、お手伝いよろしく」
「ああ」

キッチンで二人で料理をしていると、「仲良いな」と蔵内くんが話しかけてきた。

「そうか?」
「普通だよね」
「カゲから、女主人公をよろしくって言われてるからな」
「変なこと言われてない?」
「大丈夫だよ」

5人分となると、結構大変だけど鋼くんも手伝ってくれたのでわりとすぐに作り終わった。

「できたよ」
「おお!美味しそうだ!」
「今日は麻婆豆腐にしてみました」
「苗字先輩、料理上手ですね」
「一応、毎日料理はしてるからね」

席に座って、みんなでご飯を食べる。
試験1日目、何事もなく終われそうで良かった。



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