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夜9時になるまで、私たちは仕事部屋でお喋りをしていた。

「苗字先輩と影浦さんって、いつから付き合ってるんですか?」
「えーっと…夏くらいかな」
「素敵ですね」

氷見さんが私と雅人くんの話を聞いて、少しうらやましそうにしている。
たしか、氷見さんも烏丸くんのことが好きだって話を犬飼くんから聞いたことがあるけど、烏丸くんってやっぱりモテるな。

「氷見さんも、恋してるの?」
「ええ!?なんでですか!」
「ふふふ」
「ちっ!違いますよ!ただ、今後の参考にさせていただきたいなって!」
「私の話が参考になるかな?」
「なりますよ!」

そんな私たちの話を、鋼くんたちは微笑ましそうに見ていた。

「女主人公とカゲは本当に仲が良いもんな」
「そうかな?」
「ケンカしてるところ見たことないな」
「この前したけどね」
「そうなのか?」
「あれは面白かったな」
「鋼くんたちを巻き込んで、本当申し訳ない」
「全然いいよ。珍しい女主人公が見れたしな」

そして、9時になるとオペレーター専用部屋の扉が開いた。

「そしたら私はこれで」
「うん。氷見さん、また明日」
「また明日な」
「おやすみなさい」

そう言うと、氷見さんはオペレーター専用の部屋に入って行った。

「そしたらオレたちも順番に風呂に入るか」
「そうだね」

私たちはトリガーを解除した。

「女主人公から入るか?」
「私最後でもいいよ?」
「レディーファーストだな」
「そしたらお言葉に甘えて先に入らせてもらいます」



脱衣所に入ると大きな機械があって、そこに脱いだ服を入れてパネルを押す。
すると、服がトリオンに分解されて、新品の服が再構築されて出てきた。

「うわー、すごい」

私は手早くシャワーを済ませて出る。

「お待たせしました」

髪の毛が邪魔だったのでアップにして出ると、「珍しい髪型だな」と蔵内くんに言われた。

「いつも下ろしてるからね」
「アップにしてるの初めてみたな」
「あんまりアップにしないかも」
「せっかく綺麗な髪なんだから、色々アレンジしてみたらいいのに」
「鋼くん、簡単に言ってくれるけど結構難しいのよ」
「そうなのか」
「次、堤さんどうぞ」
「年功序列か?」
「はい」
「そしたら先に行くな」







堤さんと蔵内くんもシャワーが終わり、最後に鋼くんの番になった。

「そしたら、オレもシャワーを…って女主人公!」
「え?」

私の後ろを通った鋼くんが、一度通り過ぎたのにまた私の後ろに戻ってきた。

「え?どうしたの?」
「あ…のな…」

鋼くんは私の耳元に近づいて、小声で「首の後ろ…歯形と、き…キスマークっぽいのがついてるから…」と言った。

「!!!」

私は首の後ろに手をやって、ダッシュで洗面所に向かった。
そして鏡で首の後ろを見る。
と、そこにはTシャツから半分ほど見えている歯形と、赤い痕が。

「(ま…雅人くん!!)」

私は急いでアップにしていた髪の毛を下す。

「女主人公、大丈夫だ!髪の毛を下ろしてたら見えないし、トリオン体ならわからないから」
「〜〜そう言う問題〜〜〜…?」
「オレは何も見てないから!」
「…鋼くんの優しさが辛い…」

私は恥ずかしくなって顔を隠す。

「それだけカゲに愛されてるってことだな!うん!」
「もーやめて!鋼くんのバカ!」

フォローしているつもりだろうけれど、私にとってはただただ恥ずかしいだけだった。
こんな痕を残してるとは思わなかった。
試験が終わったら絶対一言文句言う!

「苗字…大丈夫か?」
「ケンカか?」

私と鋼くんが言い争いをしていると思った堤さんと蔵内くんが洗面所にやってきた。

「大丈夫です」
「なんでもないです」
「二人が言い争ってるのは珍しいな」
「鋼くんは何も悪くないです…悪いのは全部雅人くん…」
「影浦はいったい何をしたんだ」
「気にしないでください…。鋼くんごめんね、シャワーどうぞ」
「ああ。オレも悪かったよ」
「ううん」

むしろ二人に気づかれないように小声で指摘してくれたのは、鋼くんの優しさだ。
もう絶対髪の毛をアップになんてしない。



「出たよ」
「おかえり」

鋼くんがシャワーから出てきて、「そしたらそろそろ寝るか?」と堤さんが言った。
時計を見ると、もう11時過ぎていた。

「あっという間でしたね」
「本当だな。また明日もよろしくな」
「はい」
「今日はオレがカプセルベッドで寝ようかな」
「明日感想聞かせてね」
「ああ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

それぞれシングルルーム、ツインルーム、そしてカプセルベッドに向かった。
私は、シングルルームの部屋に入ると、枕もとの灯りだけを点けた。

「ふう…疲れた」

そしてベッドに入ると、あっという間に眠ってしまった。





***

閉鎖環境試験1日目、モニター室にいるA級部隊の様子。
王子2番隊は、生駒が料理を作っているが、その姿を見ていた草壁隊の佐伯は「うおおお…!生駒さん料理できんのか!意外でかっけえ…!」と、モニターを見ながら興奮していた。

「はりきりすぎて、あっというまに食材使い切る流れと見た」
「歌川隊はご飯作れる人いないっぽいですね」
「当番制にして回すみたいだね」

緑川、草壁、そして三上も同じようにモニターを見ている。

「ご飯に関しては、やっぱり今先輩がいる9番隊が有利だよね」
「それは間違いないです」
「でも、女主人公さんも料理上手だって言ってたよ!」
「あの人は完璧すぎて怖い」
「早紀ちゃんひどい!」

本部エンジニアの寺島と風間も、隣に座ってモニターを見ていた。

「7日分の献立を初日に決めたのは…3番隊の柿崎と藤丸、7番隊の諏訪と宇井、9番隊の今ちゃん、10番隊の苗字さんだけか。けっこう少ないな」
「さすがにどのチームも食料の在庫は確認してる、しばらくは問題ないだろう」
「諏訪って普段大雑把なのに、こういうとこマメだよなー」
「仕切りと段取りは得意だからな」

モニターに映った料理を見て「うおおお!今先輩と苗字先輩のメシ超うまそう!料理人かよかっけえ…!」と騒いでいる。

「竜司先輩、声でかくない?」



太刀川隊と冬島隊も、同じようにモニターを見ていた。

「なんだ、王子の言ってたとおりだな」
「何が?」
「苗字ちゃんはスタイルが良かったって話」
「なんだそれ?」
「前に苗字ちゃんはスタイルが良いのかどうなのかって話が出て、その時は王子以外はわからないって結論になったけど、今回でハッキリわかったな。苗字ちゃんはスタイルが良い。こりゃカゲのやつ知ってて隠してたな」
「あんまそういう話するなよー真木ちゃんに怒られるぞ」

冬島がそう言うと、隣に座っていた真木は小さい声で「死ね」と言った。

「ほら!」
「あははーわりー」

「当真さん!!おれそういう話聞きたくないんでやめてください!」

隣に座っている出水が、顔を出して当真に注意をする。

「でも実際スタイル良いな、苗字。いつもの隊服じゃスタイルが隠れてもったいない」
「太刀川さんもそう思うっしょ」
「ああ。国近よりでかいだろ」
「ぎゃーー!!やめてください!おれ、女主人公さんとか柚宇さんでそういう話聞きたくないんですよ!」
「出水、おまえ若いなー」
「柚宇さんもなんか言ってくださいよ!」
「太刀川さんはセクハラで訴えるから大丈夫だよ〜」
「ちょ!まて、すまん!」



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