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遠征選抜試験の全体説明会の日に、A級部隊は臨時部隊11チームの成績を予想する話し合いをしていたが、その様子を少し覗いてみる。

『閉鎖環境試験、長時間戦闘試験、それぞれの予想順位を、その端末から入力してほしい。制限時間は45分。では、始め』

片桐隊は閉鎖環境に不安要素があるチームを探す。

「辻くんは、女子相手だと緊張するから王子2番隊は大変かも、みたいなことね」

風間隊も同様に話し合いを始めた。

「歌川くんのチームに入った小夜子ちゃんは、男の人が苦手だから閉鎖環境はしんどいかもしれませんね」
「なるほど…まあ他のチームに比べればマシなメンツだとは思うがな。漆間が他の隊員と絡んでいた記憶があまりないから、そのあたりも不安材料にはなるか…」
「そうですね」

嵐山隊も同じように話し合っている。

「そう考えると、意外と歌川1番隊は難しいチームになりそうだな」
「かもしれないですね。遊真は”外国育ち”だし」

加古隊は、サイドエフェクトの観点から話をしている。

「菊地原くんのストレスがすごそうね」
「シロくんはすごく耳がいい」
「南沢先輩がうるさ…にぎやかだから菊地原先輩のサイドエフェクトとは合わないかもです」
「外岡くんと染井さんは穏やかな人だから、フォローしてもらえるといいんですけどね」
「ゾエくんがそのあたりをどう捌くか、よね。隊長としては優しすぎるような気もするから」

冬島隊も同じように話をしている。

「サイドエフェクトで言やぁカゲもきつそうだよな〜。つーかカゲは犬飼嫌ってたはずだし」
「へーそうなの?なんで?」
「たしか、刺さってくる感情と外面が一致しねーのがうぜえ、とかなんとか」
「犬飼は悪くない気がするけどなそれは」
「3番隊にはおまけに太一っつー爆弾もいるからな。何が起こるかわかんねーなこりゃ」

ある程度、不安要素のあるチームを出したA級部隊。
次は、有利になりそうなチームの話をしていく。
嵐山隊は頭の良さで、水上9番隊を推している。

「全員が超秀才っすよ!」
「水上先輩ってそんなに成績いいんだ?」
「めちゃくちゃよかったはずですね」
「へえ〜意外〜」

玉狛第1も同じように話し合っている。

「人格の面で言うと、10番隊はかなり安定してるな。協調性の高いやつしかいない」
「このチームでモメてるとこ想像できないわ」
「たしかに頭もいいですしね。女主人公さんがいればだいたいなんとかなる気がします」
「とりまるの女主人公さん推しはなんなのよ」
「小南先輩もそう思いません?」
「そ、そりゃあそうでしょ!なんてったって女主人公さんはあたしが認めた人だもの!」
「みんな落ち着いてるし、心配はなさそうだな」
「氷見先輩ってそんな落ち着いた人でしたっけ?」
「あの二宮隊のオペなんだから、人間できてるに決まってるでしょ?」
「なるほど…?」

といったように、A級部隊の予想が話し合われていた。

そして、予想通り、影浦と犬飼のいる柿崎3番隊は初日の顔合わせの時から、何やら不穏な空気が流れていた。







遠征選抜試験1日目、柿崎3番隊の様子。

「チッ…ザキさんよぉ…俺ぁコイツとソリが合わねぇって知ってんだろ」

影浦は隣にいる犬飼を見て嫌な顔をした。

「あれ?そうだっけ?」
「知ってるよ。だから正直、犬飼か蔵内かで迷ったけど…戦闘試験にはたぶんA級も参加すんだろうなって思ったから、A級経験者を揃えときたかったんだ」
「たしかに2人とも元A級っすね!」
「そーいうことか」

柿崎の言葉に、別役と藤丸は納得した。

「第一試験はゴタゴタするかもだけど、なんかあったら遠慮なく俺に言ってくれ」
「おめーらケンカすんなよ!」
「しませんよ、おれは」
「平和が一番っす!」
「…」

影浦は何も答えなかった。
が、柿崎を慕っていることもあり、これ以上柿崎を困らせないよう、できる限り気を付けようと思っていた。
そして、気になることがあり影浦は藤丸に質問をした。

「…あの…」
「あ?なんだカゲ?」
「その服ってサイズ選べた感じっすか?」
「サイズ?いや、ふつーにワンサイズだったな」
「そっすか…」

「え、何聞いてるの?苗字ちゃんに言いつけるよ」
「うっせーな!そんなんじゃねーよ!」

ワンサイズ、ということは女主人公も同じようにジャストサイズの服を着ているということだ。
影浦は知っている。
女主人公が、なぜオーバーサイズの服を着ているのか。
それは体のラインを隠すためだった。
普段はオーバーサイズの服を着ているため、女主人公を妬んでいる女子が、顔はいいけどスタイルが残念、と言っているのを聞いたことがあった。
だが、実際はスタイルも良いのが女主人公だった。
余計なことを言われたくない、見られたくない、という思いから、女主人公はオーバーサイズの服を着るようになったのだが、今回の試験では隠すことは難しそうだ。
ここにいる人間、そして特に同じチームの村上にあまり知られたくなかったという勝手な思いがあり、影浦は苛立ちを隠せずにいた。

「チッ…!!」
「さっきよりもさらにでかい舌打ち…」
「なんだ?」
「こういう時のカゲは、だいたい苗字ちゃん絡みですね」
「うっせー!勝手に決めんじゃねぇよ!」
「でも実際当たってるでしょ?」
「…チッ!」

実際当たっていた。





同じ日の、水上9番隊の様子。
こちらも予想通り、水上は意図して頭の良いメンバーでそろえたことを伝えた。

「え〜〜オペが今ちゃんやったから、これ頭いいやつ集めたらめっちゃラクできるんちゃうか?って思って選びました」

水上の言葉に、今はあきれていた。

「閉鎖環境試験だけで他所にがっつり差ぁつけて、給料ボーナス月15万狙ってるんで、そのつもりでよろしく」
「なるほどな」
「了解です!」

水上の言葉に、荒船と樫尾は素直に返事をしたが、照屋は疑問を提示した。

「…それは、戦闘試験は自信がないってことですか?」
「バトルもまあまあいけると思うで。けどウチはバトル以外のほうが有利やろ」
「けど、村上10番隊も結構頭いいんじゃないか?」
「たしかに。蔵内くんと苗字さん、氷見さんもいるし、鋼くんも頭は悪くないわね」
「水上、おまえなんで女主人公を採らなかったんだ?」
「なんて?」
「俺はてっきり、水上は女主人公を選ぶと思ってたぜ」
「いやー…そうなると照屋ちゃん以外全員18歳になって、やりにくいやろ」
「そうか?」
「せや。ほんじゃ、俺はファイル系見とくから、今ちゃんの指揮で部屋と食料チェックして」
「了解。じゃあ行こうか」

水上は言えなかった。
本当は女主人公を採ると、荒船が喜ぶんじゃないかと思っていたこと。
だが、犬飼から聞いてる話からすると、荒船は女主人公にかなわぬ恋心を抱いていて、閉鎖環境という特殊な環境で一緒にいると問題が起こるかもしれないと思って採れなかったこと。

「(ま、荒船は恋愛感情の好きやないって言ってたみたいやから、こんなん俺の想像でしかないんやけどな)」

実際は、荒船には本当に恋愛感情はなく、ただの杞憂に過ぎないのだが犬飼の言葉を借りると、リスクは可能な限り排除しないとね、という考えの水上だった。



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