俺たちは京都と大阪に3泊4日で修学旅行に行く。
「班は適当に、4人グループを作ってください」
学級委員長がそう言うと、周りは一斉に動き出した。
「苗字さん!一緒の班になろ!」
「うん」
班決めでは、隣の席で女主人公と鈴木が同じ班になろうと話していた。
周りの男どもが女主人公に話しかけようと様子をうかがっている姿を見て、俺は女主人公の肩をたたく。
「ん?」
「俺もいいだろ?」
「もちろん。鈴木さん、いいかな?」
「いいよー!あと一人誰にする?」
あと一人は、クラスでも仲が良い男子の佐々木を誘った。
「苗字さんと同じ班なの、光栄だなー!」
「俺に感謝しろよ」
「荒船黙ってて」
「仲が良いんだね」
周りの男どもの悔しそうな視線が刺さるが、無視だ、無視。
俺は、この修学旅行中に女主人公にちゃんと告ろうと思っている。
修学旅行当日。
新幹線でまずは京都まで行く。
俺たちは1日目と2日目は京都を観光して、3日目は大阪のテーマパークで遊んで、4日目は大阪市内を観光して帰る、というコースだ。
新幹線に乗ると、女主人公は鈴木の隣に座ろうとしたので、俺は女主人公の腕を引っ張って自分の隣に座らせた。
「ちょっと…」
「なんだよ?」
「…別に」
「荒船ー!危ないでしょ!私が苗字さんの隣に座りたかったのに!」
「うるせーな、早い者勝ちだ!」
「まったく。帰りは一緒に座ろうね」
「うん」
新幹線が出発してしばらくすると、女主人公はあくびをした。
「ふあぁ〜…」
「なんだ?眠いのか?」
「うん…昨日お土産を何買おうと悩んでて」
「お土産?気が早いな」
「いいでしょ。結構な数になりそうだから、前もって考えてたの」
「誰にあげんだ?」
「影浦隊のメンバーと、後は鈴鳴、生駒隊、出水くんにもあげないと。烏丸くんも欲しいって言ってたから玉狛にも買っていこうと思ってるよ。雅人くんのおばさんも、八ッ橋食べたいって言ってた」
「まじてたくさんいるな」
女主人公から出てきたのはいつものメンバーだった。
「荒船くんは買わないの?」
「そうだなーまあ隊のメンバーには買ってくけど…鋼にも買うから一緒に買おうぜ」
「いいよ」
そんな話をしていると、女主人公は本格的に眠くなってきたのか目を閉じた。
「寝ててもいいぜ」
「うん…眠いー…」
「ほら」
俺は女主人公の頭を自分の肩に引き寄せた。
「…荒船くん…」
「あ?」
「…ありがとう」
「!!」
女主人公はふわりと笑うと、そのまま寝始めた。
「っ!クッソ!」
絶対顔が赤くなってる。
そう思っていると、前から生温い視線を感じて顔を上げる。
「あ」
「そういうことですか、荒船くん」
「なんだよ!」
女主人公を起こさないように、なるべく小さな声で返事をする。
「ボディーガードじゃなくて、本気なんだね」
「これは本気のやつですね」
「うるせーな!」
俺の焦りようを見て、鈴木と佐々木にはどうやら俺の気持ちがバレたようだ。
隠してるわけじゃないから別に気にしないが、顔が赤くなった姿を見られるのは恥ずかしい。
「こっち見んな!ちゃんと座れ!」
「はいはい」
「自由行動の日はちゃんと協力してあげるからね」
「荒船が焦ってんの、めずらしー」
二人はそう言うと、席に座った。
女主人公を見ると、ぐっすり寝てるから、まったく気づいてない。
京都に到着。
「女主人公、起きろ」
「う…ん…荒船くん、おはよう」
「おう」
女主人公はすんなり起きた。
「あっという間に着いたね」
「おまえは寝てたからだろ」
座席の上に上げた女主人公の荷物を下げると「ありがとう」と女主人公が受け取る。
「荒船ー、俺の荷物も取ってよ!」
「私のもー!」
「おまえらは自分で取れ!」
「えー」
「ぶーぶー」
うるさい二人は無視して、俺たちは先に新幹線から降りる。
そのまま全員でホテルに向かい、まずは荷物を置いた。
荷物を置いた後は、基本は班での自由行動だ。
「苗字さん、どこ行きたい?」
「まずはお昼ごはん食べに行きたいな」
「だねー俺もお腹ペコペコ!」
「じゃあ昼メシ食いにいくか」
俺たちが昼メシを食べに行こうとすると、ホテルから犬飼たちが出てきた。
「荒船くんたちじゃん!偶然!」
「よお」
「犬飼くん、こんにちは」
「苗字ちゃんこんにちは!やっぱり同じ班だったんだね」
「うん。犬飼くんたちは今からどこに行くの?」
「お腹空いたからご飯食べようって話してたところだよ」
「一緒だ。せっかくなら犬飼くんたちも一緒に行く?」
「え?いいの?」
「私たちは全然オッケーだよ!」
「俺も!」
「じゃあお言葉に甘えようか?」
犬飼が自分の班のメンバーに聞くと、他のやつらもみんなうなずいた。
「何食べる?」
「お蕎麦食べたいなー」
「うどんは?京都風のうどん食べたい」
「おばんざいも京都っぽいよな」
色々意見が出たが、次に行く清水寺に近い蕎麦屋で食べることになった。
店に入ると少し混んでいたが、意外とすぐに中に通された。
「苗字さん、隣に座ってもいいかな?」
犬飼の班の一人が女主人公にそう聞いてきたので、俺は「悪いが女主人公は俺の隣だ」と言ってそいつから引き離した。
「やっぱダメかー。荒船と付き合ってるんだもんな」
「だから言っただろ、おまえには無理だって」
「言ってみるだけならタダだろー」
なんて話をしているが、実際に俺と女主人公は付き合っていない。
けど、付き合ってるふりをしているからそのままにしておく。
「ふーん。へー」
「ほー」
「なんだよ」
鈴木と佐々木が何か言いたそうな顔をしている。
「別にー」
「なんでもないよー」
とりあえず席に座ると、女主人公が動かない。
「女主人公?」
「…あ、なんでもない。ごめん」
そう言って女主人公も座るが、なんだか変な顔をしている。
「どうした?」
「ううん。どうもしないよ」
女主人公は何でもないようにふるまっているが、様子が変だ。
「何かあるなら言えよ」
「うん」
昼メシを食べて、俺たちはそのまま清水寺に向かった。
結局、犬飼たちの班も最後まで一緒に行動して1日目は終わった。
今日は何もできずに終わった。
もう少し女主人公と話したかった、と思いながら部屋に戻ると女主人公から連絡が入っていた。
基本的に携帯の使用は禁止だが、ホテルでなら使用ができる。
『荒船くん、3日目に時間をくれない?』
「いいぜ」と返信する。
3日目というと大阪のテーマパークだ。
俺も3日目のどこかで女主人公と話をしようと思っていたからちょうどいい。
女主人公の話は、多分好きな人のことだろう。
まあ、何にせよ、俺は自分の気持ちを女主人公にしっかり伝えるだけだ。