神社や寺に行って参拝したり、嵐山の方まで足を延ばして京都の街を観光して帰ってきた。
その日の夜、飲み物を買いに自販機に行こうとしている途中で犬飼に会った。
「荒船くんだ!おつかれ」
「おう」
「飲み物買いに来たの?」
「ああ」
「じゃあおれも一緒に行こうかな!」
犬飼はそういうと、俺についてきた。
「それにしても3泊4日ってあっという間だね」
「丸一日遊べんのが明日だけだもんな」
「ねー。明日のテーマパーク、一緒に回ろうよ!」
「悪い。明日は女主人公と回る」
「え!そうなの?」
「おう。女主人公から誘いがきた」
「本当?これは脈ありじゃない?」
「どうだろうな。ただ、俺は明日ちゃんと女主人公に告るつもりだ」
「そっかそっか。それなら邪魔できないね!」
俺がそう言うと、犬飼は納得したようだ。
「明日がハッピーエンドになるように祈ってるね!」
「頼むわ」
「じゃあ明日に備えて早く寝ないと!」
飲み終わった缶をゴミ箱に捨てて、俺たちは自分たちの部屋に戻った。
次の日、テーマパークに入ると結構混んでいた。
「すごい人だねー!」
「今日いい天気だもんね」
「ね!みんなで耳つけようよ!」
二人がショップに入って耳を選んでいるのを、俺と女主人公は後ろで見ていた。
「なあ」
「なあに?」
「昼食ったら二人になりたい」
「…うん」
「苗字さんも見てよー!これとかかわいくない?」
「可愛いね」
鈴木が女主人公を引っ張って行った。
けど、それに文句を言っている暇がないくらい、俺は緊張していた。
すでにほぼ告白済みだけど、実際にちゃんと告白すると思ったら、やっぱり緊張するんだな。
午前中、人気のアトラクションを乗って楽しんだ俺たちは、近くのカフェに入って昼メシを食べた。
「美味しかったねー!午後はどうしようか?」
「そうだね」
鈴木が園内のマップを広げている。
「悪い、ちょっと落とし物」
「え?荒船大丈夫?」
「ボーダーの備品だからまずいな。探してくるから女主人公も手伝ってくれ」
「わかった」
そう言って俺は女主人公と二人きりになることに成功した。
「悪い」
「…」
「女主人公?」
「…ぷっ、ボーダーの備品って…荒船くん嘘下手すぎ」
女主人公はそう言うとクスクス笑った。
「いや、なんて言えば二人になれるのか、全然考えてなかった」
「ふふふ。ボーダーって言えば二人も何も言えないもんね」
「そういうことだ」
「あー面白かった」
まだ笑っている女主人公。
素直に可愛いと思う。
「荒船くん?」
「…あ、ああ、なんでもない。とりあえず行こうぜ」
俺はそう言うと女主人公の手を握った。
「どこに行くの?」
「とりあえず…あっち行くか」
下調べをしている時に出てきた、告白におすすめのスポットらしい湖が見えるベンチを目指した。
「何か飲むか?」
「大丈夫」
ベンチには何組かしか座ってなかったので、一番端のベンチに座る。
「…」
ここまで連れ出したのはいいが、なんて言って話を切り出そうか。
俺が考えていると、先に女主人公が口を開いた。
「荒船くん」
「おう、なんだ?」
「…私がこの前言ったこと、覚えてる?」
「好きな人がいるって話か?」
「…そう」
女主人公はそう言うと、俺の方を見て「わかる?」と聞いた。
「私の好きな人」
「…そう聞くってことは、俺の勘違いじゃないんだな?」
「…信じてくれる?」
「何を?」
「…私の気持ち」
「おう」
女主人公はそう言うと、俺から目をそらして顔を伏せた。
「私…雅人くんのことが大事よ。でもそれは家族として…これからもその関係は変わらないし、変えたくないって思ってる。それでも…それでも荒船くんは、私のこと信じられる?」
なるほど。
女主人公の本心がようやくわかった気がした。
俺は女主人公の手を握る。
「俺は、ずっとおまえたち二人のことを見てきた。おまえたちが家族として思い合ってるのはわかってるし、それ以上でもそれ以下でもないこともわかってる。だから安心しろ」
女主人公は顔を上げて、俺のことを見た。
「何泣いてんだよ」
「…泣いてない…」
「女主人公、好きだ。おまえのことが誰よりも好きだ。だから俺と付き合ってほしい」
「…私も荒船くんのことが好きだよ。私を、荒船くんの本当の彼女にしてください」
「おう」
俺はそのまま女主人公を抱きしめた。
「荒船くん!」
「あー、まじで焦った。このタイミングでカゲの名前が出てくるから、ビビったわ」
「驚かせちゃってごめんね」
「兄ちゃんやるね〜」
「美男美女のカップルじゃん」
「熱いねー!若いってうらやましい!」
俺たちの話は、どうやら周りの客にも筒抜けだったようで、一部始終を見ていた人たちにからかわれた。
「あざす」
「もう!荒船くん!」
「別にいいだろ。旅の恥は搔き捨てだ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
顔を赤くしながら怒ってる姿も可愛いな。
「そういえば、1日目のお昼に変な感じだったろ?あれはなんだったんだ?」
「あー…あれは、荒船くんと付き合ってるって言われて、ウソなのになーって思ってただけ」
「そういうことか。まあこれで本当になったんだから、もういいだろ」
「そうなんだけど…なんか違くない?」
「はいはい。これで堂々と女主人公は俺の彼女だって言えるな」
「そうだね」
そんな話をしていると「あー!荒船いた!」と、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、佐々木と鈴木」
「二人とも全然戻ってこないから心配して探してたの!」
「やっと見つかった!」
「二人ともごめんね」
女主人公がベンチから立とうとするから、俺は手を握った。
「荒船くん?」
「ん?」
「手を離して」
「いいだろ」
俺はそのまま立って、二人のもとに歩き出した。
「あれ?」
「二人が手を繋いでるってことは…」
「もしかして、もしかするの!?」
「おう」
「おめでとう!二人が本当のカップルになって嬉しいよ!」
「苗字さんも荒船のこと好きだったんだね」
「うん」
「びっくりしたー!でもお似合いだと思う」
「ありがとう」
女主人公が照れくさそうにしている姿は、なんと言うかマジで可愛い。
本当に俺の彼女になったんだなと思うと、こっちまで照れくさい。
「どうする?今日はこのまま二人で回る?」
「それは悪いよ」
「いいよいいよ!カップルの邪魔したくないしね!」
「だな!」
「気が利くな」
「荒船くんは少しは遠慮して」
「いいだろ。付き合った記念日なんだから」
「もう…」
佐々木と鈴木は空気を読んで、他のクラスメイトたちと合流するようだ。
そして、俺たちはこのままテーマパークデートを楽しむことにする。
「荒船くんって、強引なところあるよね」
「そうか?まあ、女主人公ともう少し二人でいたかったからな」
「まったく…。でも、私も二人でいたかったから嬉しいよ」
そう言って女主人公は笑った。
「〜っ!おまえ、その笑顔反則だろ…!」
「ふふふ」
赤くなったであろう顔を隠しながらそう言うと、女主人公はさらに嬉しそうに笑った。
「荒船くん可愛いね」
「うるせ!」
俺は照れ隠しに女主人公の頭を軽く叩いた。