修学旅行03

3日目の夜、部屋に戻ろうとする女主人公を引き留める。

「戻らないの?」
「たいぶあっさりしてんな」
「そう見える?」
「おう」
「これでも嬉しくて舞い上がってるんだけどな」
「本当かよ」

そう言って俺が女主人公の顔をのぞき込むと、女主人公は顔をそらした。

「あ?」
「あんまり見ないで…」
「なんでだよ」
「…荒船くんは、自分の顔がかっこいいことを自覚してほしい」
「それは俺のセリフだ」

二人で話していると、犬飼がやって来た。

「二人ともこんなところで何してるの?」
「少し喋ってただけだよ」
「そっか。で、荒船くん、何か報告があるんじゃないの?」
「おー。付き合うことになった」
「やっぱり!なんとなーく二人の雰囲気がいつもと違うなって思ったんだ!おめでとう!」
「犬飼くんに相談してたの?」
「成り行きで」
「えー!親身になって相談にのってあげたのに!」

犬飼はそう言うと泣きまねをした。

「ま、感謝はしてる」
「もっとちゃんと感謝してよね!」
「犬飼くん、ありがとう」
「ううん。二人が上手くいって良かったよ!お幸せに」

犬飼はそれだけ言うと部屋に戻って行った。

「それじゃあ私も戻ろうかな。そろそろお風呂の時間だし」
「そうだな」

そろそろ時間がやばそうなので、今度は引き留めることなく俺も部屋に戻ることにした。

「荒船くんの部屋は何階?」
「おまえの部屋の前まで送る」
「わざわざいいのに」
「何かあったら嫌だからな」
「ありがとう」

女主人公の部屋の前まで来ると、俺は女主人公の手を引いて軽く抱きしめる。

「荒船くん、実は甘えたがり?」
「まあそうかもな。単純に女主人公に触れるのが嬉しい」
「ふふふ、荒船くん可愛いね」
「やめろ。俺より女主人公のが可愛いに決まってんだろ」
「あら、ありがとう」
「また明日な」
「うん、おやすみ」







次の日、修学旅行最終日は大阪市内の観光。
大阪の街を食べ歩きしたり、大阪城に行ったり、色々回って3泊4日の修学旅行が終わった。
帰りの新幹線は、鈴木が「二人は隣に座ってね!」と空気を読んだから、行きと同じように女主人公が俺の隣に座った。
行きと違うのは、俺が無理やり座らせたんじゃなく、女主人公も「私も荒船くんの隣に座りたかったから嬉しいな」と言ってくれたことだ。
少し照れながらそう言う女主人公は、やっぱり可愛くて思わず抱きしめそうになったが我慢した。

「楽しかったね」
「だな。でも女主人公、おまえ土産買いすぎだろ」
「結局どんどん増えちゃった」

女主人公は行きの新幹線で上げていたメンバーだけじゃなく、A級B級のほぼ全部隊に買っていた。

「私たちが修学旅行に行けたのも、他のみんながシフトの調整をしてくれたからだしね。感謝の意味も込めて、みんなに買って行ってあげたくて」
「なら俺たちも入れろ。2年は五人だから全員で割り勘な」
「じゃあ全員からにしようね」



最寄りの駅について、そこで解散になった。

「どうする?今日はこのまま帰るか?」
「そうだね。荷物もあるし、疲れたから帰ろうかな」
「送ってく」
「え!大丈夫だよ!荒船くんも疲れたでしょ?」
「別にこのくらい平気だ。俺が女主人公といたいから送りたいんだよ」
「荒船くん、無理しなくていいんだよ?」
「無理だったらそもそも言わねーから安心しろ」
「…じゃあお言葉に甘えようかな」
「素直に甘えとけ」

俺は自分のスーツケースと女主人公の土産が入っている袋を持つ。

「重たくない?」
「全然」
「ありがとう」

そのまま俺たちは女主人公の家に向かう。

「あ、雅人くんから」

女主人公はそう言うと、携帯の画面を俺に見せた。

「疲れてるだろうから、今日はかげうらでご飯食べてけって」
「もう帰ってるのか」
「今日は土曜日だもんね。鋼くんもいるみたいだよ。荒船くんも一緒に行こ」
「そうだな」



先に女主人公の家に寄って荷物を置く。

「ただいま」
「おかえりなさい」

中から出てきた女主人公の母親は、女主人公に似てとても美人だった。
女主人公は母親似だったんだな。

「あら、もしかして荒船くん?」
「はい」
「女主人公からよく話は聞いていたのよ。会えて嬉しいわ」
「そうなんですか?」
「お母さん!余計な事言わなくていいから!」

女主人公はそう言うと、荷物を母親に渡した。

「今から雅人くん家行ってくるね」
「はいはい、遅くならないようにね」
「荒船くんもうちに荷物置いておいていいよ」
「助かる」

荷物を置いてから隣のかげうらに行く。


「雅人くん」
「おう」
「よお」
「荒船、女主人公!おかえり!」
「鋼くんただいま!」

中にいたのはカゲと鋼だけだった。

「どうだった?」
「楽しかったよ。久しぶりにテーマパーク行ったから、色々新しいエリアができてて良かったよ」
「なら良かったな」

カゲは俺たちの分のお好み焼きを焼き始めた。

「お土産も買ってきたから、後で渡すね。鋼くんにもあるから」
「ありがとう」
「そっちは修学旅行いつなんだ?」
「来週だな」
「楽しんできてね」

大阪と京都の話をしながらお好み焼きを食べる。
大阪でも食べたけど、やっぱり俺はかげうらのお好み焼きが一番好きだ。

「女主人公」
「ん?」
「報告しとくか」
「そうだね」
「あ?なんかあったのか?」

俺は箸をおいて、カゲと向かい合う。

「女主人公と付き合うことになった」
「…」
「そうか!良かったな!」
「うん」
「おまえらには相談にのってもらってたからな。ちゃんと報告したくて」
「良かったなー!な、カゲ!」

カゲは少し考える素振りを見せると「…そうか」と一言だけ発した。

「雅人くん」
「俺は、女主人公が幸せになれんならそれでいい。荒船、おめー女主人公のこと泣かせたらぶん殴るかんな」
「うれし泣きはいいだろ」
「言ってろ!」

カゲの反応は思っていた通りだった。

「女主人公のこと任せた」
「ああ」

「…なんだかカゲが女主人公の父親みたいだな」
「私もそう思った」
「女主人公は愛されてるな」
「そうだね」

俺たちの会話を聞いて、女主人公と鋼はそんな感想を言っていた。
俺もそう思う。

「女主人公」
「ん?」
「荒船に幸せにしてもらえよ」
「…うん!」

おーおー、いい笑顔だな。



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