05

「烏野高校対青葉城西高校、練習試合始めます!!」
「お願いしあーす!!」

ピーッという笛の音を合図に、練習試合が始まった。
青葉城西のスターティングオーダーは、岩泉(WS)、花巻(WS)、松川(MB)の3年生3人と、矢巾(S)、渡(L)の2年生2人、そして金田一(MB)、国見(WS)の1年生2人。
対して烏野高校は1年生が3人出ている。
影山は緊張している日向に声をかけた。

「おいわかってんな!?この前の3対3と同じ感じでー…」
「わっわかってるっ!」
「ホントか!?」

少々不安が残る影山だったが、それ以上は気にせずポジションにつく。
試合は松川のサーブから始まった。

「松川、ナイサー!」
「大地さん!!」
「澤村さん!!」
「オーライ!任せー…!?」

明らかに澤村のボールだったが、緊張して周りが見えていない日向がボールをレシーブする。

「!?バカか!どう見てもおめーのボールじゃねえだろ!!」
「ごめんなさい!!!」
「縁下カバー頼む!」
「田中!!」
「おおっ」

日向がレシーブしたボールを、今度は縁下が高めに田中に上げる。
その田中のスパイクを、花巻、金田一、国見の3人がブロックをする。

「まずは一本」
「〜〜〜〜っ」
「日向、落ち着いて周りも見て行こうな!」
「すみませんっ!」

その後も、日向は緊張のせいで思うように動くことができず、烏野高校はたまらず1回目のタイムアウトを取る。


「日向くん?だっけ?めちゃくちゃ緊張してるね」
「だな。ありゃ自滅すんだろ」
「なんかあっけないねー。練習にもなんないよ」
「松川、真面目にやって」
「やってるー」

名前は携帯を確認すると「及川もこっち向かってるって」と言った。

「及川いる?」
「出番なくない」
「まあこのまま進めば及川が戻ってくる前に試合は終わるな」
「だね。もっと粘ってよ烏野高校…」

タイムアウトが終わり、試合が再開される。
次は日向のサーブから始まる。

「タイミング悪いなー…日向くん大丈夫かな」

ピーッと試合再開の笛が鳴ると、トスを上げてボールを打つ。
が、日向の打ったサーブは、影山の後頭部に直撃した。

「ぷっ…!」
「苗字…」
「だって監督、見事な後頭部直撃サーブですよ。あんなサーブ、久しく見てないです」
「やめなさい…」

日向のサーブで第1セットが終了し、25対13で、青葉城西が最初のセットを獲得した。
コートにいた6人は、ベンチに戻ると水分補給をする。

「やっちまったな」
「中学生ぶりに見たかも、後頭部直撃サーブ」
「あんなへぼサーブ、ぶつかっても痛くないだろ」

第2セットが始まるタイミングで、体育館に青城の生徒が増えてきた。
普段の練習や、練習試合は基本的に好きに見学することができるので、今日もその見学の生徒たちが2階からコートを見ている。

「第2セット始めます!!」
「なになに?」
「練習試合だって」

金田一はコートに戻ると「おい!後で後頭部狙うサーブ教えて!」と日向をからかった。

「あっ僕にも教えてね〜」
「くーっ」

同じチームの月島もそれにのっかる。

「ナイッサー!」
「縁下ナイッサ!」

縁下のサーブから始まった第2セット。
影山がトスを上げた。
影山の素早いトスは、日向の手には当たらずそのままコートに落ちる。

「!?何あれ、トス!?」
「そこから速攻!?」

「あれは…」
「いやー、面白いね…」

名前と入畑は嫌な予感がした。

「(あれは、クイック…?でも、あんな早くてどうやって打つの…)」

コートの中では次の攻撃が始まっていた。
縁下が綺麗にレシーブをすると、また影山がクイックを使った。
今後は日向の手元にドンピシャに届き、日向のスパイクはそのまま青城コートに突きささる。

「…あ…え?」

ブロックに跳ぼうとしていた金田一は、いつの間にかボールがコートに落ちていることに気づく。

「!?なんだ今のはえええーっ!!」

日向と影山のクイックを見た生徒たちが一気に騒ぎ出した。
そして、この攻撃をきっかけに烏野もいいリズムが出てきた。
第2セット、16対14で烏野リードの場面で青城はタイムアウトを取る。

「監督…」
「そうだな」

ベンチに戻りながら、矢巾は「おい金田一〜ハナシ違うじゃねーか、あの影山」と言った。

「お…俺だってあんなの初めて見て…影山のあのムチャブリトスに合わせられるスパイカーが居るなんて…」
「それは違うな。影山がスパイカーに合わせてるんだ。とくにあの小柄の5番には完璧に」
「…?」
「”打たせている”と言った方が合ってるかもな」

入畑はそう言うと、影山が振り下ろされる手のひらにピンポイントでボールを合わせていることを説明する。

「そんなことが可能なのか…?」
「まあ、可能だから今ウチが負けてるんだよね」
「名前…」
「まあでも、あの5番は今のところ素人に毛が生えたくらいの技術だけどな」

そう言って笑う入畑に、名前は同意する。

「あの2人って、昔からの知り合いだったりするのかな?」
「北一にはいなかったろ」
「じゃあ高校から?それなのにあんな100%信頼して跳べるってすごいね。あんたたちだって、及川のトス100%信じてないでしょ」
「まあな」
「及川が聞いたら泣くぞー」
「溝口くん、オフレコで」

入畑は「コンビネーションは厄介だが、個々の攻撃力は大したことはない。ブロックふられてもレシーブしっかり上げてけ。こっちだって今出せるベストメンバーなんだよ、プライド見せろよ」と言った。

「ハイ!!」

そこでタイムアウト終了の笛が鳴る。

「一、負けたらラーメン奢りね」
「負けねえよ」

岩泉は、名前の言葉に返事をするとコートに戻って行った。

「ふぅ〜」
「凄いですね影山…やっぱウチで獲れなかったの痛かったですね…声はかけてたんですよね?」
「うん…でも…影山がウチに来たからと言って、あんな風にプレーをしてくれたかはわからないよ」
「え?」
「…烏野だったから…あの5番が居たからこその…今の影山なのかもしれない」
「…?はあ?」
「そうですね」
「ところで苗字、及川は?」
「あ、はい」

名前は携帯を取り出すと「もうすぐ学校着くみたいです。迎えに来てってうるさいので、ちょっと行ってきますね」と言った。

「わかった」
「早く戻ってこいよ!」
「了解です」

名前はそう言うと、体育館を出て体育館裏から一番近い駐車場に向かう。
体育館を出たタイミングで、及川から電話がかかってくる。

「もしもし」
『あ、名前ちゃん?もう着くよ』
「了解。大丈夫なの?」
『もうバッチリ!通常練習していいって!』
「それならよかった」
『練習試合はどう?勝ってる?』
「第2セット獲られそう」
『え?マジ?飛雄ちゃんたちもなかなかやるねー!』
「だから早く戻ってこい!」
『了解!』

その電話から5分後、及川を乗せたタクシーが到着した。

「名前ちゃーん!ただいま!」
「はい、おかえり。急いで体育館行くよ!」
「ちょっと!もう少し感動の再会的なのはないの?」
「数時間前まで一緒にいたよね?」
「名前ちゃん厳しい!」

及川の腕をつかむと、名前は体育館に急ぐ。
体育館では第2セットが終わり、青城と烏野、それぞれ1セットずつを獲得していた。
澤村や菅原は、県の4強と互角に戦えていることに驚きながらも喜んでいた。

「…向こうに…影山みたいなサーブ打つ奴居なくて助かったな…」
「…ああ…ウチはお世辞にもレシーブ良いとは言えないからな…」
「逆転勝利!!」
「ショーリ!!」
「油断だめです」

田中と日向の言葉に、影山がそう言った。

「…多分…ですけど…向こうのセッター、正セッターじゃないです」
「えっ!?」



及川と名前が体育館に到着すると、ちょうど第3セットが始まるタイミングだった。

「ほら、徹!急いで!」
「はいはい」

そう言って及川は入畑のいる青城ベンチに向かう。

途中でスコアボードに目をやって「アララッ、1セット獲られちゃったんですか!」と大きな声で言った。

「!おお!戻ったのか!足はどうだった!」
「バッチリです!もう通常の練習もイケます!軽い捻挫でしたしね」

及川が戻ってきたことに入畑は喜ぶ。

「キャー!!及川さ〜〜〜ん!!やっと来たあ〜!」
「及川さん頑張って〜!!」

及川が戻ると、2階にいる女子生徒から歓声が上がる。

「まったく…気をつけろよ及川」
「スミマセ〜ン」
「向こうには”影山出せ”なんて偉そうに言っといて、こっちは正セッターじゃないなんて頭上がらんだろうが!」
「あはは…」

「及川さん無理しないでくださ〜い!」

そんな女子生徒の歓声に、及川は笑顔で応える。
それを見た女子生徒たちは、さらに大きな声を上げる。

「…及川、ハウス」
「ちょっと名前ちゃん!俺は犬じゃないよ!」

及川は烏野側にいる影山を見つけると「やっほートビオちゃん久しぶり〜育ったね〜元気に”王様”やってる〜?」とピースをしながら声をかけた。



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