10

「押っせー押せ押せ押せ押せ青城!」

青葉城西対烏野高校の試合が始まる。
主将の及川と澤村が握手をすると、観覧席から女子の声援が上がった。

「及川さーん!」
「及川せんぱい、がんばってー!」

公式ウォームアップが開始し、青葉城西のコート練習の番になる。

及川の上げたボールを花巻がスパイクすると「いいじゃんマッキー!キレッキレだねー」と及川が褒める。

次の金田一には「ごめん金田一、今の少し高かったね」と声をかける。

岩泉には「岩ちゃんちょっと力んでない?いいトコ見せようとしなくていいんだよ!女の子は誰も岩ちゃんなんか見てないからね!」と無自覚に煽る。

煽られた岩泉は、及川に向かってボールを投げようとするが、金田一がそれを止める。
そんな及川の姿を見ていた武田は「及川くんは選手をよく見てるんだねぇ…」と感心していた。

公式ウォームアップが終了し、両チーム整列をする。

「お願いしあーす!!」

ベンチに戻る前に、及川は影山に話しかける。

「やあトビオちゃん」
「!」
「今日は”天才セッター”を倒すの楽しみにしてきたから、がんばって食らいついてね」
「俺たちが勝ち「負けません!!!」
「…」

影山が答えようとしたところに日向がかぶせる。

「カブってくんじゃねーよ日向コノヤローッ!」

影山は日向にそう言うと、もう一度及川の方を見て「…今回も負けないっス!!」と言った。

その返事を聞いた及川はニコッと笑うとベンチに戻る。

「10番に振り回されすぎないように。コースを絞って、止められるものは止める。それ以外のものは拾う」
「ハイ!!」

入畑の言葉に返事をすると、及川は手をプラプラとさせながら「よーしやるかあ!」と言った。

「それじゃあ今日も、信じてるよおまえら」

及川の言葉を聞いた青城メンバーは気を引き締めた。



「試合前のいつもの一言…だな」
「ほーんと、この時ばかりは素直にかっこいいなって思います」
「苗字が珍しいな!」
「バレーやってる及川徹は、世界で一番かっこいいです」
「おまえさ…そういうの、ちゃんと本人に言ってやれよ」
「調子に乗るんで言いません」

そう言いながら、名前はフフッと笑った。

「行くぞ」
「オオス!!」

両校のメンバーが位置に着くと、ピーっと試合開始の笛が鳴る。

「月島、ナイッサ!」

月島のサーブは国見が拾う。

「国見!」
「ハイ」
「ナイスレシーブ!」

前衛にいる岩泉と松川が前に飛び出す。
が、及川はボールをセットせず、そのまま自分でスパイクをした。

「!!!」

「いきなりツーアタックだー!!」
「いいぞいいぞトオル!押せ押せトオル!」

及川のツーアタックに会場は沸いた。

「ホラホラ、次も同じのやるからね。ボケっとしないでちゃんと警戒してね」
「!」

及川の煽りに烏野メンバーは苛立った。

「いきなりツーか。まあ奇襲には悪くない」
「いちいち煽る…」

次の烏野の攻撃は日向の超速攻だったが、それを花巻がレシーブする。
上がったボールを、また及川はツーで打つモーションを取る。

「ナメんなっ!」

田中と日向は及川のスパイクを止めようとブロックに跳ぶが、及川はスパイクからセットアップのモーションに切り替えて、レフトから走りこんできていた岩泉にトスを上げる。
そして、岩泉がスパイクを打つと、烏野コートにボールが刺さる。

「おい、ちょっと低い」
「あれゴメン!でも岩ちゃん大体打ってくれるじゃん」

そんな流れるようなセットアップを見た観覧席の女子たちは「かっこいいよおおお及川せんぱいいい」と泣いていた。

「いいぞいいぞハジメ!行け行けハジメ、もう一本ー!」

次の烏野の攻撃は、及川に張り合った影山がツーで返す。

「ツーでやり返したーッ!」

影山の攻撃に会場が湧く。

「次も同じのやるんで、ちゃんと警戒してくださいね」
「…このクソガキ」

次は影山のサーブだが、影山のサーブは誰が見てもアウトという特大ホームランだった。

「アウトアウト」
「盛大にフカしたなー」
「なんてすごいホームランだ!」

次は及川のサーブの番。
及川はボールを持つと「お手本を見せようか」と言って、エンドラインに立つ。

「(きた、及川のサーブ…!)」

及川はボールをトスすると、リベロの西谷目掛けてサーブを打つ。
西谷はうまく勢いを殺してレシーブする。

「西谷ナイスレシーブ!」
「あいたー!やっぱすごいなー」
「何が”お手本”だ!普通に拾われてんじゃねーか!!」
「うへへ」

西谷がレシーブしたボールは、影山に綺麗に返る。

「来いやっ」
「10番10番!」
「…」

影山は一瞬ライトを見ると、その視線に釣られた金田一を振り切って真ん中の日向にトスを上げる。

「!」
「よしっ」
「シャア!!」

影山のトスを見た及川は「あんな神業トス反則だよまったく!」と言った。

「…」

金田一は及川に「すみません俺、ひっかかってばっかで…」と謝った。

「あの伊達工をも翻弄した烏野だからねー。まああの速攻捕まえる糸口はちょっとだけ待ってよ」
「?」
「多分もうすぐだから」
「…?」

及川はそう言うと、靴紐を結び直すためにしゃがむ。

「…それより金田一よ…”影山の相棒の座”をあのチビちゃんに奪われてさぞ悔しいことだろう」
「?いや別に」
「いいんだいいんだ。中学時代、飛雄がおまえを”あんま使えない下僕”だと思っていたとしてもな」
「…」
「この及川さんがな、神業速攻なんか使わなくても”金田一はちゃんとすごいんだぞ”と証明してあげよう」

及川は金田一の背中を押すと「安心してとべ」と励ました。

「は、はい!」

次は田中のサーブ。

「田中ナイッサ!」
「ッサー!」
「渡!」
「ハイ」
「ナイスレシーブ」

田中のサーブを渡が拾い、及川が金田一にトスを上げる。
Aクイックに反応した日向がブロックに跳ぶが、金田一は日向の手の上からスパイクを打つ。

「いいぞいいぞユウタロウ!押せ押せユウタロウ!もう一本!」
「…?」

金田一の打点の高さに、烏野側は違和感を感じた。

「あの12番、練習試合の時より高く飛んでる気がする」
「ジャンプ力ってそんな短期間に伸びんのか?」
「…だから気のせいかもって」
「…」

次は岩泉のサーブ。
岩泉は後方にいる影山が前に出てくる場所を狙ってサーブを打つことで、レシーブを乱す。

「!」
「すまんカバー!」
「ハイ」
「くれっ」

日向の言葉を聞いた及川は、日向がどう動くのかを見続けていた。
影山は東峰にトスを上げて、点数は4対3になった。

「…うん」

及川は「先生!先生!」と小声で入畑にタイムを出すように指示を出す。
青城1回目のタイムアウト。

「録画したやつだと音声がちょっとわかり辛くて確信持てなかったんですけど、多分間違ってないと思います。トビオとチビちゃんの神業速攻と普通の速攻の使い分け方。”来い”と”くれ”です」
「”来い”と”くれ”?」
「最初はさ、チビちゃんは何か叫びながら突っ込んで行くな〜頭悪そうだな〜くらいに思ってたんだけど」
「…」
「”神業速攻”の時は、”持って来い”とか”おれに来い”とか”来い”って単語が入ってるっぽい」

及川の説明を聞いて、岩泉も気づく。

「なるほどな」
「で、普通の速攻の時は”トスくれ”とか”おれにくれ”とか」
「”くれ”って単語か」

岩泉の言葉に、及川はうなずく。

「神業速攻の時、チビちゃんはボールを見ないで打つみたいだけど、さっき”くれ”の時は、普通にボールを目で追いながら跳んでたから、それでほぼ確信」
「そういうことか」
「”こい”の時はチビちゃんのマークは一人だけにしよう。”くれ”の時はトスが上がるか見てから跳ぼう。オッケー?」
「オス!」
「つってもあの10番次サーブで後衛だけどな」
「わ、わかってるし!知ってたし!」
「つーか、こんな序盤のとくに動きのないタイミングでタイム取って、気付いたことに気付かれたんじゃねぇの?」
「いいのいいの!むしろ気付いてくれた方がいい。こっちがあの合図に気付いたことがわかればきっと、多少なりとも飛雄は焦る」

話がひと段落し、タイムアウトも後数十秒のとことで、名前は及川に聞く。

「で、あんたはそれを確認するために昨日何時まで起きてたの?」
「…え、えーっと…」
「岩泉」
「おう」
「わー!!待って待って!夜更かしはしてないよ!すこーしだけ寝るのが遅くなってかなーって感じだけど、頭は冴えてるし、絶好調だよ!」

名前はジト目で及川を見ながら「これで負けたらわかってるよね?」と言った。

「大丈夫だって!絶対勝つから、名前は笑って俺たちを迎え入れる準備だけしておいてよ!」
「…」
「少しは信用してくれてもいいんじゃないの!」


タイムアウトが終わり、日向のサーブから試合が再開した。



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