11

日向のサーブが終わると、次は金田一のサーブになる。

「金田一、狙うとこわかってるよね?」
「ハイ!」

金田一は、岩泉と同じように後衛にいる影山が出てくるところを狙う。

「ナイッサァ金田一、もう1本ー!」

レシーブに入るのが一瞬遅れるが、来るところがわかればとれないサーブではない。
3本目のサーブで東峰はしっかりレシーブして、影山にボールを上げて、澤村がスパイクを決める。

点数は8対4で、青葉城西がリードをしている。

「ナイッサァー!」
「3番3ばーん!」
「ッサァー!1本ー!」

及川が前衛にくると、影山がチラッとスコアボードを見た。
明らかに焦っている様子の影山を見て及川は、影山が早くローテーションを回したいと思っていることに気付く。

次の烏野の攻撃は、澤村がレシーブをしたボールを影山がツーアタックで返そうとした。

「(ツーアタック…!)」
「!」

そのツーアタックを読んでいた及川が、ブロックで点を獲る。

「(くっそ…!)
「焦ってる時のツー程止めやすいものはないよねぇ」
「徹、ナイスブロック!」

そのまま試合は進み、日向が前衛に出てきた。

「ソーイ!」

「本当、日向くんは元気だなー」

ベンチで見ていた名前は、あきれた顔をしていた。

「元気だな〜そんで、厄介だねー」

及川も同じように思っていた。
日向の声の合図に気付いている青葉城西のメンバーは、日向を見ながら攻撃についていく。
そこで、影山も合図に気付かれたことに気付く。

「(…やっぱり気づいてるか…?)」

影山のサーブは、サーブトスが少し前にいってしまい、ジャンプサーブから軟打に切り替えた。

「前前前っ!!!」

ジャンプサーブを警戒していた青葉城西の守備は前が空いており、花巻がなんとかボールを上げる。
そしてそれに反応した岩泉が、左手でボールを上げた。

「乱したっ」
「ケガの功名っ!」
「チャンボール!!」

烏野側はチャンスだと喜んだ。

「及川ラスト!」
「そう簡単にはっ!(チャンスにしてやんないよ!!)」

及川は影山目掛けてボールを返球する。

「徹うまい!」

「!」

影山が最初にボールに触ったため、トスを上げることができない。

「レフト!」
「田中頼む!」
「レフト来るぞ!3枚付け!!」

田中のスパイクは、及川、花巻、岩泉の3枚ブロックでブロックされた。

「くっそォォ!!」
「ドンマイドンマイ!」
「も1本ー!」

次は、及川のサーブになる。

「徹、1本ナイッサー!」

及川はボールを持つと、手の中で回す。

「いつも威勢の良いムードメーカーが、大人しくなった時の空気の重さったらないよねぇ」

ピーッという笛の合図と同時に、及川はボールを上げる。
及川の狙いは田中だ。

「田中…!!」

田中の腕に当たったボールは、そのまま弾き飛ばされて体育館の壁にぶつかる。

「ドンマイ次1本!」

及川は、元気なボーズ君である田中をまずサーブで狙い、プレッシャーをかけて静かにさせてからエースである東峰を狙うことで、レフト2人を折ることにした。
が、烏野がタイムアウトをとる。
タイムアウト中は、及川は一人ベンチに座り、集中力を切らさないようにする。

「今回は田中くん狙いなんだね」
「田中?」
「あの5番の坊主くん」
「だな。プレッシャーだろうな、取る方は」
「及川が仲間で心底心強いよ」
「ストレートで勝ってきていいんだよ?」
「了解」

タイムアウトが終了し、及川のサーブが続く。
狙いは当然田中で、2本目のサーブは辛うじて上げたがそのまま青城コートにボールが返り、金田一がダイレクトにボールを叩く。

「いいぞいいぞユウタロウ!押せ押せユウタロウ!もう1本!」

次のサーブもなんとか上がったが、田中のスパイクは岩泉と金田一のブロックによって防がれる。
そして、烏野は2回目のタイムアウトを要求。

「タオルいる?」
「大丈夫だ」

名前はチラッと及川を見ると、フフッと微笑んだ。

「あ?」
「ううん、集中してるなって」
「名前は本当及川のバレー好きだよね」
「あのサーブとトスにはロマンを感じるからね」
「俺のバレーも好きだろ」
「あんたのスパイクとレシーブにはロマンを感じるよ」
「いちいち張り合うのが岩泉らしいよね」
「だな」
「もちろん、花巻のバランスの取れたバレーにも、松川のいやらしいブロックにもロマンを感じるよ」
「そこは感じなくていいかなー」

名前は渡、金田一、そして国見を見ると「渡の綺麗なレシーブと、頼もしい1年生2人のバレーも大好きだよ」と言って笑った。

「あ、ありがとうございます!」
「う、うっす!」
「まあ当然ですよね」
「国見、おまえ可愛くねえな!」

タイムアウト終了の笛が鳴る。
及川は引き続き、サーブで田中を狙う。
及川のサーブを胸で受け止めた田中、そしてそのボールを日向と影山がカバーして青城コートに返す。
返ってきたボールを及川がレシーブし、渡、そして花巻のバックアタックで烏野のコートに返すが、西谷がそれ拾い、田中がスパイクを決める。

「あーあ、あと3・4点は獲るつもりだったのにな〜」

日向と影山の神業速攻が決まると、及川は2人をじっと見る。
そんな及川に岩泉が声をかける。

「…オイコラ、また”トスは敵わない”なんて言うんじゃねーだろな」
「飛雄に?敵わないよ、あんなピンポイントで上げられないし!」

及川の返事に、岩泉は顔をしかめた。

「ギャッ怒んないで!才能では敵わなくても、みんなが一番打ちやすいトスを上げられる自信はあるよ」
「…」
「セッターとしては負けない」

そう言うと、及川は金田一にトスを上げた。

「(またブロックの上から…)」
「金田一ナイスキー!」

影山は金田一が日向のブロックの上からスパイクを打っていることに驚いているが、これが金田一の”本来の最高打点”だ。

試合は、青葉城西がリードのまま進む。

「…速いですね」
「…スピードの呪縛…」

名前と入畑は、試合を見ながらそう言った。

「ブロックから逃れたい一心で、つい”打ち易さ”よりも”速さ”を優先してしまう」
「そうですね。中にいると気づかないですが、外から見てるとよくわかります」
「そうだな。無意識に…ほんの少しずつ、でもそれは、徐々に大きなズレになていく」
「飛雄くんは、まだ周りとの信頼関係ができていないように見えますね」
「いやはや、難しい」
「及川は、やっぱりすごいです。個性の違うスパイカーたち、それぞれの100%の力を引き出せるのが、及川徹です」

入畑も同じように思っていた。

「センスもあって、努力も惜しまない。けど、圧倒的”才能”には勝てないです。それこそ、飛雄くんと比べたら、及川徹は負けると思います。だけど…それでも私は及川徹のバレーが大好きです」
「同感だ」

第1セット、20対11で青葉城西リードの場面で烏野のセッターが菅原に替わる。

「菅原くんが入りましたね」
「彼が入ることで何が変わるかな?」
「…彼は丁寧で堅実って感じのプレイヤーなので、飛雄くんとはまた違った雰囲気になると思います」

及川は、菅原が影山よりも背が低いことを岩泉に小声で伝える。

「岩ちゃん、あの2番くんがブロックにいるストレートのとこ、低いから狙い目」
「おう」

花巻のサーブから攻撃が再開し、田中のスパイクは渡が綺麗に拾う。
及川はトスを岩泉に上げると、菅原のいるストレートを狙ってスパイクを打つ。

「!」
「岩ー」
「一!」
「!」

菅原がいたはずのストレートに月島が移動しており、岩泉のスパイクは月島にブロックされた。

「あちゃー…」

ベンチから見ていた名前は「やられた…」とつぶやいた。

「悪ッ」
「ゴメン岩ちゃん」
「ドンマーイ」

次は月島のサーブ。
西谷がベンチに戻り、日向がコートに入る。

「(飛雄を下げてもチビちゃんは入れたままなんだ、意外)」

月島のサーブは綺麗にレシーブされ、及川は松川にトスを上げる。

「!!」

そこに日向がブロックに跳び、連続ブロックポイントを獲られる。

「な!」
「…烏野11番はいつも入れるサーブでミスはないが威力は低い。完璧なレシーブからクイックを仕掛けるのが有効な手段…」
「完全にバレてましたね」
「そうだな。11番のサーブが完璧にレシーブされることを見越してのブロックか…」
「菅原くんはちゃんと周りを見てるタイプの、良いセッターですね」
「苗字、あんま他のセッター褒めるなよ…」
「それでも私は、及川徹のセッターに対する想いが一番好きですよ」

名前は溝口に笑ってそう返す。



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