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10月25日仙台市体育館。
全国日本バレーボール高等学校選手権大会、通称、春の高校バレー宮城県代表決定戦が始まる。
インターハイ予選のベスト8と、春高一次予選を勝ち抜いた8チームの、計16チームで1つの代表枠を争う。

「到着したよ。順番に降りてー」

青葉城西男子バレー部を乗せたバスが仙台市体育館に到着すると、名前が部員たちに声をかける。

「…」
「着いたか」
「始まるねー」
「だな」

部員たちが全員降りると、マネージャーがバスを降り、1年生が中心となって荷物を運ぶ。

「苗字さん、俺たち運んでおきますんで、先行ってください!」
「大丈夫だよ」
「いえ、ここは任せてください!」
「そう?じゃあお言葉に甘えようかな」
「はい!」

名前は1年生部員に荷物を頼むと、先に体育館の中を目指す。







「あ、あの…!青城のマネージャーさんですよね?」
「…はい?」

名前が体育館に入ると、他校の生徒が話しかけてきた。

「あの、俺…前からずっと苗字さんに憧れてて…最後の大会だから、思わず声をかけてしまいました」
「ありがとうございます。ただ、私はただのマネージャーなんで、声をかけられても…」
「そんな!選手たちのことをよく見て支えてる姿が本当に素敵だなって思ってて!」
「そ、そうですか」

名前がどうやってこの場を切り抜けようか考えていると、大きな声で名前を呼ばれた。

「あ!名前ちゃんじゃーん!」
「苗字?」
「天童くんと瀬見くん」

呼ばれた方を見ると、そこには白鳥沢学園の3年生、天童と瀬見がいた。

「し、白鳥沢…!」
「知り合い?」
「全然」
「ふーん。じゃあもういいかな?もういいヨネ?」
「え…あ、はい…」
「それじゃあ名前ちゃん行こー!」
「あ、うん。ごめんなさい、声かけてくれてありがとう」

名前は他校の生徒にお礼を言うと、天童たちの方に駆け寄った。

「助かったよ」
「特に助けた覚えはないけど?」
「よく言うぜ。苗字が絡まれてんの見てすぐ声かけたくせに」
「英太くんはいちいちそういうこと言わなくていいの!自分だって気になってたくせに!」
「うっせ!」

フッっと笑うと名前は「持つべきものは3年間争った戦友だわ」と言った。

「で、あんたたちは何してんの?」
「それはこっちのセリフー!1人で何してるの?迷子かな?迷子になっちゃったのかな?」
「天童やめろ」
「瀬見くんは相変わらずかっこいいねー」
「っバッカ!おまえもそういうこと簡単に言うのやめろっていつも言ってんだろ!」
「英太くん顔真っ赤ー!」

瀬見は赤くなった顔をごまかすように口元に手を当てると「で、何してんだよ」と名前に聞く。

「普通に今から戻るところだけど、2人は?」
「若利くんがトイレの方に行ったみたいだから探してるんだー!」
「迷子?」
「アホか」

天童は名前の腕をつかむと「名前ちゃんも一緒に行こうよ!」と言って、名前を引っ張りながら歩き出した。

「ちょっと!私も暇じゃないんだけど」
「まあまあいいジャン!これが最後の大会なんだしさー、最後くらい仲良くしようよ」
「天童、おまえいい加減にしねーと及川たちに怒られんぞ」
「トイレにレッツゴー!」

天童はお構いなしにトイレに向かう。



その頃、トイレの前では及川と岩泉が日向を見つけて声をかけていた。

「何してんの?」
「だっっっ」

日向は及川に声をかけられて、顔を青くした。

「2m倒して来たんだってな?さすがだ」
「ハイッ!!イイエッ!」
「どっちだよ」
「試合になるとこのチビちゃんホント厄介だから、今のうちにどっか埋めちゃう?」
「しっ失礼しますっ!」

及川のその言葉を聞いて、日向はその場からダッシュで逃げようとする。
しかし、「アガッ!」と前にいた人物にぶつかった。

「(ギャァアアア!!!)」

日向がぶつかったのは牛島だった。

「…ヒナタショウヨウ」
「!」
「と、及川・岩泉か」
「何このタイミング」
「知るか」

牛島は日向の後ろにいる及川と岩泉に気付く。

「…おまえたちには高校最後の大会か、健闘を祈る」
「ホンッット腹立つッ!!」
「全国行くんだからまだ最後じゃねぇんだよ」
「…?全国へ行ける代表枠は1つだが?」
「(イヤミで言ってんじゃねえのが余計腹立つ…!!!)」

そんな及川と岩泉、そして牛島の様子を見ていた日向が「かっ勝つのは烏野で」と言ったが、その言葉を聞いた3人が一斉に日向のことを睨むと「ヒイッ」と驚いて黙る。

「何他校の1年生ビビらせてんの」
「アダッ!」
「いたっ!」

トイレの前に着いた名前は、及川と岩泉のことを後ろから叩く。

「もー!名前ちゃん!もう少し優しく…って…なんでこいつらが一緒にいるの?」
「ヤッホー!久しぶりー!」
「ゲッ!ゲス野郎!」

名前と一緒にいた天童と瀬見に気付くと、及川と岩泉は真顔になる。

「たまたま体育館の入り口あたりで会ったの」
「そうそう。名前ちゃんが他校の生徒にナンパされてたから助けてあげたんだよ」
「なっ!」
「天童くん、余計なこと言わないで」
「本当のことじゃーん」

天童がそう言うと、及川は名前に詰め寄った。

「なんで1人で行動してるのさ!まっつんとマッキ―は!?」
「あのねえ、松川と花巻は別に私のSPでもなんでもないのよ。先に行ってるに決まってるでしょ」
「もう〜〜!!」

名前はチラッと牛島と日向のことを見ると「それにしても、何でこの2人?」と聞いた。

「たまたま会っただけだよ!ウシワカのヤローなんかに会いたくなかったけどね!」
「タイミング悪すぎたな」
「なるほど」

名前は日向を見ると「日向くん、今回もよろしくね」と声をかける。

「ハ、ハイッ!今回こそは負けません!」
「うん」

そう言うと、日向はトイレの中に入って行った。
名前は牛島を見ると「牛島くんは相変わらずだねー」と言った。

「いつも通りだ」
「今回こそは、ウチが勝つからね」
「健闘を祈る。名前」
「ねえ!いっつも言ってるけど名前のこと名前で呼ぶのやめてくれない!!」
「?名前の名前は名前だろう?」
「いや、そうだけどさ!なんでウシワカが名前のこと名前で呼んでるのかマジで意味わかんないんだけど!」
「それは同感だ」
「おまえたちが呼んでるからだろう?」

牛島は何を言っているんだ、という顔をした。

「それは俺たちが幼なじみで、なおかつ同じ学校だからだよねー!なんでライバル校のエースが名前で呼んでるのさ!」
「名前呼びくらいで文句言わないでよー!いいじゃんいいじゃん、名前ちゃんって呼びやすいし!」
「おまえもちゃっかり呼んでんじゃねえよ天童!」
「俺も前からだよーん!」

及川は名前のことを見ると「名前だって嫌だよね!!」と聞いた。

「牛島くんと天童くんに関してはもう慣れたからどうでもいい」
「名前!!」

名前がそう言うと、及川は膝から崩れ落ちた。

「牛島さん!」

そんな話をしていると、白布がやって来た。

「ゲッ!」
「うわっ、試合前にヤな物見ました」
「それはこっちのセリフだから」

名前と白布は顔を合わせると、同じタイミングで眉間にしわを寄せる。

「牛島さん、こんな低俗…オホンッ、頭の悪い人たちと話してる暇はありませんよ」
「あんたさ、それ言い直した意味ないからね」
「すみません、正直な者で」
「本当にいつ話してもかわいくないわー」
「ありがとうございます」
「褒めてないから!そんな性格なのに、なんで牛島くんにだけは尽くすセットアップができるのかねー!」
「牛島さんは俺の憧れですからね。ウチはちまちましたテクニックで勝つようなチームではないので」

その言葉に及川、岩泉は「あ?」と怒りを表したが、それ以上に名前がキレた。

「及川と岩泉みたいな阿吽の呼吸で巧みなコンビネーション攻撃ができるチームはなかなかないもんねー!パワーこそ全てみたいなチームは簡単に作れるもんね!」

名前の言葉に今度は白布が顔をしかめる。

「牛島さんが最強です」
「ウチの及川と岩泉のコンビが最強だよ!」

そんな風に言い合う2人を見て、及川は「ちょ、ちょっと名前…気持ちは嬉しいけどそこまで言わなくても…」と名前のことを止めようとする。

「止めるな及川!これは、私たちの戦いだよ!」
「えー…」
「白布、おまえもいい加減にしろよ」
「瀬見さんは黙っててください」
「か、かわいくねーな!」

白布はもう一度名前に向き合うと「身内自慢お疲れ様です。苗字さんのご自慢のチームが、今回こそは勝てることを願ってますね」と言いながら鼻で笑う。

「とうっぜん!」

名前と白布のやり取りを見ていた岩泉は「ほんと、名前はあの2年セッターと仲悪いよな…」と言った。

「お互い憧れがいる者同士で、その憧れの対象が正反対なんだから、相容れないよねー」
「なるほどな」
「若利と及川か。そりゃあ相性悪いな」
「それに賢二郎はまだまだ子どもなんだよー。自分もセッターなのに、自分のことは褒めてくれないからいじけてるんでしょ」
「そうなのか?」
「2人は初対面の時が最悪だったからねー」
「たしかになー…って、そろそろ行かないとまずくないか?」

瀬見は携帯を取り出して時間を確認する。

「俺ら第1試合だよな」
「だね!」
「名前!そろそろ行くぞ!」
「賢二郎も、そろそろ行かないと鍛治くんに怒鳴られるよー!」

岩泉と天童に呼ばれた2人は、じーっと目を合わせてから同時に「フンッ!」と顔をそむけた。



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