「悔しいけどかっこいいぜ…」
田中も同じような感想を抱いた。
「次の相手、決まったな…」
澤村がそう言うと、烏野の部員たちはサブアリーナに移動する。
青葉城西は、整列をして挨拶をした後、クールダウンをしていた。
「準決勝、次は烏野だね」
「ストレートで勝てて良かった。次は体力勝負だろ」
「確かに!チビちゃんがちょこまかちょこまか動くからねー」
名前は「クールダウン終わった?体冷やさないように汗拭いて、早く着替えてね」と声をかける。
「わかってるよー!」
「名前は完全に青城のお母さんだな」
「えー、18歳のうら若き乙女に向かってお母さんって」
「及川のお母ちゃんは岩泉でしょー」
「んなわけあるか!」
「名前はお母ちゃんじゃないよ!俺のお嫁さん!」
「それも違うわね」
いつものように騒いでいる青城の3年レギュラー陣と名前を見て、金田一は「本当に仲良いよな、あの人たち」と言った。
「3年間、苦楽を共にした仲だからでしょ」
「良いチームだよな、青城って」
「…俺たちもその一員だよ?」
「おう」
着替えが終わると、栄養補給で軽食を配る。
「及川」
「はーい」
「岩泉」
「おう」
「花巻」
「サンキュ」
「松川」
「ありがと」
名前は渡、金田一、国見にも同じように手渡しする。
「ありがとうございます!」
「食べ過ぎないようにね」
「はい!」
「次の試合も、期待してるからね!」
「今回も負けませんよ!」
「ちゃんと勝つんで、苗字さんは安心してベンチで見ててください」
「おお〜国見が少しデレた!」
名前は京谷の姿を探す。
「京谷どこ行ったー?」
「あいつなら便所です」
「そう?じゃあ戻ってきたら矢巾から渡しておいて」
「はい!」
及川は「もう終わった?」と名前に声をかける。
「うん」
「じゃあ、名前!試合前のいつものお願いします!」
そう言って、及川は腕を広げる。
「いつもの?」
「もう!なんで急に記憶がなくなっちゃうのかな!」
「ウソウソ!」
名前は笑いながらそう言うと、及川にギュッと抱きつく。
「徹、バレー楽しんできてね」
「ありがとう」
及川も名前の背中に腕を回すと抱きしめ返す。
「一は?」
及川から離れると、名前は岩泉に向かって両手を広げる。
「ん」
岩泉も名前に近寄ると、先ほどの及川の同じように名前のことを抱きしめる。
「一、今日もいっぱいスパイク決めてきてね」
「任せろ」
そんな2人の姿を見ていた花巻は「せっかくだから、俺もやってもらおうかな」と言い出した。
「マッキー!!なんでさ!」
「ずっとうらやましいなって密かに思ってたんだよ」
「そりゃあそうでしょうね!!」
「俺もー」
「まっつんまで!?」
「しょうがないなー」
名前はそう言うと、花巻を抱きしめる。
「貴大、頼んだよ」
「おう!」
次は松川を抱きしめると「一静、頑張ってね」と言った。
「いやー、これいいね。なんか安心するわ」
「ちょっと!まっつん、おしまい!長い長い!」
「及川うるせー」
及川は松川から名前を引き離すと、自分の腕の中に閉じ込めた。
「もう!名前も俺たち以外にそういうことしちゃダメだよ!」
「2人はいいじゃん」
「良くないですー!これは幼なじみの俺たちの特権なんですー!」
「及川めんどくせえな!」
そう言って笑う3年生5人を見ながら、金田一は「(次の試合も絶対に勝つ!)」と心の中で強く思った。
春高、宮城代表決定戦の準決勝、青葉城西高校対烏野高校の試合が始まる。
「…うーん…烏野、雰囲気違うねえ…」
「?」
「おっ」
及川はコートに転がって来たボールを見つけると、ボールを拾おうとする。
「スンマセン!」
「!」
そこに影山もやってきて、2人は同時に1つのボールを掴む。
「これはこれは、前回俺にこてんぱんにやられた飛雄ちゃんじゃないですか」
「今回は勝ちに来ました…!」
2人はボールを掴んで引っ張り合っている。
「おまえは前回完膚なきまでに凹ましたからな!残すはウシワカ野郎ただ1人!!今回も退いてもらうぜ飛雄!!」
及川はそう言ったと同時に手をパッと離す。
「!!」
「わはははは!」
影山は勢いよく後ろに倒れる。
「こいつこれで高3かあ…」
「あいつ、手玉に取られんの早すぎだろ!」
「ブヒュッ!!」
そんな及川と影山のやり取りを見ていた名前は、影山に駆け寄る。
「飛雄くん、大丈夫?」
「ウ…ウスッ…」
名前は影山の背中を支えながら起こす。
「ちょ!ちょっと名前!何やってるのさ!」
「及川、あんた大人げなさすぎ。飛雄くんがケガしたらどうするの」
「うっ…!」
「飛雄くん、ごめんね」
「大丈夫です…及川さんは大体こんな感じなんで…」
「飛雄くんの方が大人じゃない」
「名前ー!」
「いいからさっさとアップしなさい」
「はい…」
そんなやり取りを見ていた菅原は「苗字さんって、本当良い人だよな…」と言った。
「大王様の幼なじみなのに、大人って感じですよね!」
「そ、それは及川に失礼か…いや、そうでもないか」
公式のウォームアップが終わり、試合開始の時間になる。
「お願いしまーす」
「お願いします」
「身体は大丈夫なんだ?」
「ああ、どうも。長く休んで、むしろ元気だ」
「マジですか」
主将同士握手をしながら、簡単に言葉を交わす。
「なーんか澤村くん、貫禄ついたんじゃない?」
「…この4ヶ月、けっこうな曲者たちに揉まれて来たんでね…」
「よくわかんないけどお疲れ」
コイントスは、烏野が選んだ表が出た。
「先、レシーブで」
「じゃあサーブで」
ピーッと笛が鳴ると両校が整列をする。
「整列ー!!」
「お願いしァ―ス!!」
一度、ベンチに戻ったレギュラーメンバーたち。
「…言いたかないけど烏野は強豪だ」
「おまえが素直に言うなんて珍しいな」
「前回で身にしみてるからね。油断すれば喰われる。最初からブッちぎって行こう」
「ハイッ」
「っしゃあ!!」
そう言うと、及川は手をプラプラさせながら「よーし、そんじゃあ今日も…」と、いつものセリフを言おうとする。
「信じてるぞ、キャプテン」
「!」
が、その前に岩泉、花巻、松川がそう言った。
「3人とも…」
そんな3人に及川は驚いた顔をしたが、すぐに元に戻り「なんか照れる…」と言うが、そのセリフに岩泉がかぶせる。
「初っ端のおまえのサーブ、信じてる。ミスったらラーメン奢りで」
「俺、チャーシュー大盛り」
「俺はギョーザ追加で。入れるだけサーブもダメな!」
「ホラ、1・2年も頼んどけ!」
「マジっすか!」
その言葉を聞いた及川は、なんとも言いにくい表情をしていた。
「名前も頼めよ」
「じゃあチャーハンも!」
「名前も結構食べるね!」
スターティングメンバーがコートに立つ。
最初のサーブは及川からだ。
「ナイッサァー!!」
「ショウユーウ!!」
「トンコォーツ!!」
「担々めェーん!!!」
「ギョーザ!」
「決めてほしいのミスってほしいの!?」
試合開始の笛が鳴ると、同時に及川がサーブトスを上げる。
「…残念ながら、おまえは決めるに決まっている」
及川の勢いのあるジャンプサーブを澤村がレシーブするが、ネット越えて青城コートに返ってくる。
金田一がダイレクトでボールを叩くと、影山がフォローに入る。
「ふっ!」
「チッ」
「影山ナイス!」
「!」
西谷がトスを上げると、東峰がバックアタックを決める。
「クァーッ」
自分のサーブを1本で切られた及川は悔しそうな顔をした。
次は影山のサーブ。
「!!」
「マッキー!!」
が、影山のサーブはサイドラインを越えてアウトになる。
「アウト!」
「マッキーナイスジャッジ!」
「んぐぅっ」
「ドンマイドンマイ!!惜しいぞ次次!」
次は岩泉のサーブ。
「岩泉さんナイッサァ!!」
「サッコォーイ!!」
岩泉のサーブは東峰がレシーブをするが、そのままネットを越えそうになる。
「スマン影山!」
「叩け国見!」
ネット越える前に影山がボールを片手で触ると、田中がスパイクを決める。
「おらあぁあ!!」
「田中ナイスキー!」
「影山ナイストス!」
「チッ」
試合はシーソーゲームで進んでいく。
月島のスパイクを渡がレシーブをすると、及川が花巻にトスを上げるが、花巻のスパイクは月島にブロックされる。
「うがっ!!」
「うおっしゃああ!」
「悪っ」
「ゴメン、ちょっと低かった!」
次は月島のサーブ。
岩泉がスパイクをするが、澤村がそれを拾う。
今度は日向がスパイクを打つが、金田一がブロックする。
「っしゃああああ!!」
コートに落ちそうになったボールを、今度は月島が拾うが、もう一度青城コートに返ってくる。
「返ってくる!下がれ下がれ!!」
「ふんっ」
「及川さんナイス!カバーカバー!」
辛うじて及川が繋げて、渡が岩泉にトスを上げる。
「岩泉さんお願いします!」
「オオッ」
が、またしてもブロックに捕まりワンタッチを取られる。
「ナイスワンチ!」
「もっかいもっかい」
影山が上げたトスを、金田一のブロックを避けながら日向がスパイクを打つ。
「!」
渡の腕に当たったボールは、そのままコートの外に弾き飛ばされた。
「チッ…復活しやがった。まあ俺のアドバイスのおかげだけどな!!」