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ゴールデンウイークの合宿も今日が最終日。
最終日は、全員で試合形式の練習をして、午後は早めに解散となる。
練習後、次のインターハイ予選に向けたベンチ入りメンバーの発表がされた。

「ほんならインハイ予選からのベンチ入りメンバー発表すんで。呼ばれたらユニフォーム取りに来いや」
「はい!」

黒須がそう言うと、コーチの大見がユニフォームを持ってベンチりメンバーの名前を言う。

「1番、北」
「…はい」

北は名前を呼ばれてゆっくり立ち上がると、前に出てユニフォームを受け取り、ジッと見つめる。

「次、2番大耳〜」
「ハイ」

そして座っていた場所に戻るとボロボロと涙を流した。

「!?」

それを見た侑と治は驚き、角名と銀島も同じように驚いた。

「なんか意外!北さんってもっと機械みたいな人だと思ってた」
「うん」

4人は、初めて見る北の人間味ある姿を見て驚くと同時に、同じ人間なのだと思った。
それは黒須と大見の横で見ていた名前も同様だった。

「良いチームだね」
「…せやな。このチームで勝ちたいなあ」
「…私たちも、サポート頑張ろうね!」
「当たり前やん」







インターハイ予選を優勝し、インターハイ出場を決めた稲荷崎高校男子バレー部。

「侑くんご機嫌だね」
「今日はサーブがめっちゃ調子良かってーん!」
「だってさ」
「調子に乗ってるやん」
「ええやろ別に!」

インターハイ予選が終わり、7月にあるインターハイに向けて気合の入る部員たち。
朝練が終わり、2年生たちがみんなで教室に向かっていた。

「インターハイの前にアレやろ」
「アレやな」
「アレだね〜」
「アレか」
「アレアレうっさいわ」

稲荷崎高校では、この時期に球技大会がある。

「なんの種目出るか決めたん?」
「おまえらに言うわけないやろ!」
「敵や敵!」

球技大会はクラス対抗になるので、治の質問に侑と銀島がそう答える。

「めんど」
「なんやと!」
「ま、まあまあ」
「名前は何に出るん?」
「私は運動神経そんな良くないけど、みんながバレーしてるの見て私もしたくなったからバレーにしたよ」
「ええやん。名前なら意外とうまくできそう」
「ゆっこちゃんは元バレー部だから出られないんだっけ?」
「ん、元はええって言っとったな」
「え!?じゃあもしかして…」
「うちもバレーやで」
「わー、負けそう…」
「名前ちゃん諦めるの早っ」

現在所属している部活の競技に出ることはできないルールだが、中学時代に所属していた部活の競技なら出ることができる。

「そうは言うても、ケガしてやめたんやから昔みたいにはいかんよ」
「中山、うまかったやんな」
「侑くんもゆっこちゃんの試合見たことあるんだ?」
「まあ、同じ稲荷崎グループやったしな。そら何回か会場で見かけたことあんで」
「そ、そっか」
「ん?」
「ううん、なんでもない!」
「?」

教室に着くと「ほんなら、また昼休み!」と銀島が1組に向かう治、角名、そして名前に声をかける。

「またね」
「おー」
「うん!」

そう言って3人は1組に向かう。

「名前ちゃん侑のこと気になるの?」
「…えぇ!?」

突然の角名からの質問に名前は驚く。

「中山さんとのこと気にしてるみたいだったから」
「あ、えっと…内緒」

名前は、中山が侑のことを好きだと思っているが、それを角名たちに言ったらまずいと思い、誤魔化す。

「えー怪しい」
「変なこと考えてへん?」
「な、何も考えてないよ!」
「そう?」
「うん!もう、いいから、早く席戻ってー!」

教室に着くと、名前は2人にそう言って、自分も席に座る。
治と角名はそれぞれ席に座ると「なんか、名前ちゃん変じゃない?」角名が聞く。

「変やな」
「もしかして、侑の春が叶うかな?」
「そんな感じとちゃう気もするけどなー」
「とりあえず様子見かな」
「せやな」

そう言って治と角名は名前を見守ることにした。



そして、特に何も起こらないまま球技大会当日。

「治くんと倫太郎くんはサッカーだったよね?」
「せや」
「他の球技だと指ケガしそうだし」
「そうだよね。インターハイ前にケガしたら怖いもんね」
「名前ちゃんたちのバレーは、最初はどこの組?」
「えっとね、2年4組かな?」
「俺たちの試合が早く終わったら見に行くね」
「うん!待ってるね!」
「気張りや」
「うん!」

治と角名はグラウンドに、名前は体育館に向かう。

「よし!2年1組絶対勝つぞー!」
「おー!」

体育館では2年生のバレーボールの試合が始まった。
名前はセッターのポジションで、あたふたしながらもなんとかトスを上げていた。

「はるちゃん!」
「ハイ!」

名前が上げたトスを、クラスメイトがスパイクをする。

「ナイスキー!」
「もう1本ー!」
「ナイスレシーブ!」

相手の4組には元バレー部の生徒がいるようで、1組は苦戦をしていた。
セットカウントは1対1で、最終セットも半分が過ぎる。

「お!まだやってる」
「間に合ったー!」
「名前たち勝ってるん?」
「どやろ」

そこに、サッカーの試合が終わった治、角名、そして卓球の試合を終えた侑が体育館に入ってきた。

「あ、北さんと大耳さん!」

侑たちは北と大耳を見つけると、2人に駆け寄る。

「走ってきたんか?元気やな」
「ハイ!名前たちどうですか?勝ってます?」
「1対1で、今がファイナルセットや」
「ええ勝負してますね」

スコアを見ると17対19で名前たちが負けている。

「あー、アカンやん!何やっとんねん!」
「名前は素人やで?それでもあれだけトス上げられるんやから、頑張ってる方やろ」
「まあそうですけど…って、北さん名前のこと名前で呼んでましたっけ!?」
「ああ。この前昼休みにたまたま会うた時にちょっとな」
「!!」
「ツム、そんな話しとる場合やないやろ。ちゃんと試合見ぃや」
「わ、わかっとるわ!」

治にそう言われ、侑はコートの中に視線を戻す。
コートの中では、名前がボールを追って必死にトスを上げていた。

「なんでセッターなんやろな」
「たしか、ポジション決めるときに名前ちゃんがセッターやりたいって言ってたよ」
「そうなん!?」
「うん。大きな声で言ってたからこっちまで聞こえてきた」
「そうなんか…」

侑の嬉しそうな表情を見て、治は「なんやツム。おまえ自分と同じポジションを名前が選んだことに喜んどるん?」と聞いた。

「べ、別にそんなんちゃうし!」
「わかりやすい奴やなーホンマ」
「本当、バレバレだよね」
「う、うっさいわ!」

試合は終盤。
23対24で、4組のセットポイント。

「あー!後1点やん」
「獲られたらアカンでー!」

相手のサーブを1組の生徒が上げる。

「やっちゃんナイスレシーブ!」
「名前!」
「ハイ!」

名前はチラッとコートの外にいる侑を見る。

「っ!」

名前が自分を見たことに侑も気づく。
そして、フッと笑うと名前はトスを上げずにツーアタックで相手コートにボールを落とす。

「な!」
「ツーアタック!」
「1組追いついた!」
「名前ナイス!」

1組はそのままの勢いでデュースを制し、26対24で勝利した。

「やったやん!」
「よっしゃー!」
「初戦突破やな!」

コートから出てきた名前たちに1組の生徒たちが声をかける。

「ツーアタック、きれいに決まったなあ」
「ホンマ!すごいやん!バレー初めてやのに上手やったで!」
「ありがとう!侑くんのプレイ見てたら、自分もやってみたいなって思って」
「やって、侑!良かったやん」
「はあ!?」

近くで聞いていた侑は顔を赤くした。

「ホンマ、わかりやすい男やなー」
「な!」
「え?」
「名前はわからんでええよ」

侑のわかりやすい態度で、2年1組の生徒たちは侑が名前に好意を抱いていることに気付いていた。

「なんかないん?」
「なんかってなんやねん」
「さっきの聞いて、感想ないん?」
「べっ!」

反射的に文句を言いそうになる侑だが、一旦言葉を飲み込んで名前を見る。

「ま、まあ…良かったやん。あの時、あのタイミングのツーはベストな選択やな」
「あれね、コートの外に侑くんがいることに気付いて思い出したんだ」
「そうなん?」
「うん!侑くんだったら、こんな風にプレイするかな?って。勝手にごめんね」
「お、俺を手本にしとるんやったら、もっとマシなトス上げえ!」
「はーい!」

名前はそう言うとフフッと笑った。



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