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名前たちの試合が終わり、次は中山のいる2組のバレーの試合が始まる。

「ゆっこちゃんたちは相手が3年生なんだね」
「勝ってもらわな困るで!」
「優勝賞品ってなんだったけ?」
「学食の日替わり定食無料券やったな」
「総合優勝は?」
「なんやったっけ?」
「5日分やった気がする」

名前は人混みの後ろからコートを見ようとするが、背の高い生徒が前に立っていてなかなか見えない。
少し横にずれたり、背伸びをしたりしてなんとか見える位置を探すが、背が低い名前は苦戦していた。

「名前…何やっとるん?」

そんな名前を横で見ていた侑。

「えっ!」
「名前ちゃんは小さいから見えないんじゃない?」
「みんなが大きすぎるんだよ」
「間違いないな」
「侑、抱っこしたり」
「…はあ!?おまえ何言っとんねん!!」
「見えへんの可哀想やん」
「お、治くん!さすがに高校2年生にもなって抱っこは恥ずかしいよ!」
「ツッコミどころおかしくない?」

治の言葉に、侑と名前は2人であたふたした。

「冗談やん。2人して本気にしておもろいな」
「俺は全くおもろないわ!」

治と侑が騒いでいると、審判役の先生が「こらー、そこの宮ツインズうっさいわ!試合始まっとんで!」と注意した。

「す、すんません」

中山たちの試合はストレートで2年2組の勝利。
試合が終わった中山たちがコートの外に出てくると、同じ2組の生徒たちが話しかけに行く。

「ゆっこやったな!」
「めっちゃ動けてたなあ。やっぱバレー部戻って来おへん?」
「現役ん時の半分も動けてなかったやん。あんたの目は節穴か?」
「いけずやな〜」

中山は名前たちに気付くと「見とったん?」と名前に声をかける。

「見てた!ゆっこちゃんすごいかっこよかったよ!」
「ホンマ?」
「うん!まずは1勝おめでとう!」
「そっちも勝っとったな?勝ち続けてたら当たるかもやな。その時は負けへんで」
「も、もちろんだよ!」

名前は返事をすると、今度は銀島が中山に声をかける。

「お疲れさん」
「どうも」
「久しぶりに中山のバレーしとるとこ見たけど、全然動けてへんかったなー」
「ツム、そういうんは思ってても言わへんのが人間やろ」
「あ?正直な感想やん」
「侑ならそう言うと思っとったわ。人でなしやからな」
「人でなしちゃうわ!」
「あ、侑くん!でも、ゆっこちゃんすごかったね!」
「ん?まあ、せやな。やっぱうまいな、レシーブ」
「元リベロやからな」

そんな風に話をしている侑と中山を見て、名前は「(やっぱり2人はお似合いなのでは…!?)」と心の中で思っていた。







試合は進み、お昼休憩を挟んだら各種目の決勝戦が行われる。

「侑の卓球、何あれ?やる気なさすぎでしょ」
「ん?そうかあ?」

みんなでお昼ご飯を食べながら、試合を振り返る。

「ダブルスで組んでたコが可哀想だった」
「本気でやって指でもケガしたらどないすんねん。俺はセッターやぞ?」
「それはそうだけどさ、明らかにやる気がなさすぎて。よく第1試合は勝ったよね」

角名がそう言うと、侑が「第1試合は相手がヘボすぎたんや」と答えた。

「俺はバレーに全力注ぎたいんや。特に手は大事にしとるからな。球技大会でケガしとうないねん」
「まあ、ツムはそうやろな。バレーが第一やもんな」
「あからさまなのは反感買うよ?」
「そんなん関係ないわ。俺の一番はバレーや!」
「ここまでハッキリ言われると、いっそ清々しいね」
「こいつはそういう奴なんや」

少し空気が悪くなった雰囲気を名前が変えようと、他の話題をふる。

「お、治くんと倫太郎くんのサッカーは勝ってるよね!」
「せやな」
「決勝戦までいけたのは奇跡だよね」
「決勝の相手どこなん?」
「たしか、アランくんのとこやな」
「元サッカー部がいるって言ってたよね」

治はお茶を飲むと「日替わり定食無料券のためやからな。全力で勝ちに行くで」と言った。

「治くんが燃えてる…!」
「ホンマ、食が絡むとやる気出すな」
「治らしいな」



お昼休憩が終わり、決勝戦が始まる。
名前たちは準決勝で負けてしまったので、決勝戦後の3位決定戦に出るが、その前に中山たちが出る決勝を見に行く。

「ゆっこちゃん!決勝戦頑張ってね!」
「まかしとき!」

侑は「最後まで見とったらサムたちのサッカーに間に合わんかもしれんな」と言った。

「ギリギリかな?」
「中山たちにストレートで勝ってもらうしかないな」
「せやな」

そんな話をしていると、2年2組対3年1組の女子バレーボール決勝戦が始まった。
試合は元バレー部の中山が居る2年2組がリードして進んでいき、ストレートで勝った。

「わー!ゆっこちゃんたち優勝だよ!」
「やったやん!」
「日替わり定食無料券ゲットやな!」
「優勝したクラス全員にもらえるのうらやましいー!」
「サムと角名が勝ってゲットしてくるやろ」
「せや!グラウンド行くで!」
「ゆっこちゃんも誘おう」

そう言って、名前は中山を呼びに行く。

「ゆっこちゃんたち優勝おめでとう!」
「ありがとうー。なんとか勝てたわ」
「余裕だったね!」
「相手もなかなか強かったけどな」
「本当すごいよ!」

そんな話をしていると、侑と銀島が2人を呼びに来た。

「喋るんやったらグラウンド着いてからにしいや」
「治たちの試合終わってまうで」
「そうだった!急ごう!」
「名前は自分のクラスなんやから治たちのサッカー見に行ってたらよかったのに」
「治くんたちの試合ももちろん気になるけど、やっぱりゆっこちゃんのバレーが見たかったからいいの!」
「嬉しいこと言うてくれるやん」

そう言うと、中山はニコッと笑って名前の頭を撫でる。

「おまえらさっさとせい!」
「うっさいわ。名前がかわいいこと言うてくれるから愛でてんねん」
「はあ??何言うてんねん、名前はいつでもかわいいやろ」
「…え?」
「あんたが何言うてんねん」
「は?」

侑は自分が何を言ったかに気が付くと、顔を赤くして大きな声を出した。

「うわぁあああ!!今のナシ!!間違うただけや!!」
「う、うん…」
「何ドン引きしとんねん!!」
「し、してないよ」

名前がそう言うと、侑は少し駆け足でグラウンドに向かう。

「あ!侑、待てや!」

その後を銀島が追いかける。

「あいつアホやなー。ポロっと本音出てしもうてるやん」
「あ、あれは…本当に間違えちゃっただけだと思うから、ゆっこちゃんは気にしないでね!」
「?なんでそんな必死なん?」
「え…あ、その…」
「…名前、何か勘違いしてへん?」
「え?何もしてないよ?」

名前がそう答えると、中山は少し考える素振りを見せるが「まあええわ。はよ行かんと試合終わってしまうで?」と言って、名前の手を取って走り出す。



グラウンドに着くと、2年1組と3年5組の男子サッカー決勝戦の試合の後半が始まっていた。
中山は侑と銀島の姿を見つけると「どっちが勝ってるん?」と聞いた。

「今は1対1で同点やな」
「アランくんキーパーめっちゃ似合うな」
「治くんと倫太郎くんは…」
「サムはフォワードやな。めっちゃやる気やん、どんだけ無料券欲しいねん」
「角名はディフェンダー?あいつはやる気ないな」
「人のこと言えへんやん!」

ボーッとグラウンドに立っている角名の姿を見て、侑はそう言った。

「ま、まあ、倫太郎くんも大事なインターハイ前だからね」
「角名ー!ボケっとせんと、ちゃんと守れや!」

侑は大きな声で角名に声をかける。
グラウンドの角名は「うわ、なんでいるのさ」と嫌そうな顔をする。

試合は進み、最後の1プレイというところで治にボールが渡る。

「おっしゃ治ー!決めろー!」
「決めたらヒーローや!」

ゴール前、尾白と1対1となった治は、尾白に向かって「アランくん!左に蹴んで!」と宣言する。

「何!?ホンマかいな!いや、嘘やろ!いやいや、それを逆手にとってホンマに左か…!?…あ」

治の言葉に惑わされた尾白が真ん中から動けないでいると、治のシュートしたボールは尾白の右を通過してボールポストを揺らす。

「ゴール!!そしてここで試合終了!男子サッカーの優勝は2年1組や!」

「やっぱりウソかい!!」

尾白はその場に崩れ落ちる。

「人の言葉に惑わされたらアカンでアランくん」



女子バレーの3位決定戦は、名前たち2年1組対3年5組だった。

「相手、またアランくんのとこやな」
「尾白さんの組って、運動神経良い人が揃ってるんだね」
「まあ3年生ってのもあるやろ」
「名前ちゃん頑張ってね」
「うん!」

治は名前の両手を握ると、グッと顔を近づけた。

「まだまだ総合優勝狙えるやろ!名前!頼んだで!」
「治くんの圧が強い…」
「サム!おまえ近いやろ!」

侑はそう言うと、治を後ろから叩く。

「イタッ!いったいねんアホ!」
「おまえが近いのが悪い!」
「うっさいわ!クラスの違う部外者がいちいちうっさいねん!」
「なっ!」

治の言葉に腹を立てた侑が治の胸倉をつかもうとするが、その前に中山が間に入る。

「ええ加減にせんと北さん呼ぶで?」
「!!」

中山の言葉に2人は大人しくなる。

「名前ちゃんの試合前に変な空気にしないでよね」
「う…すまん…」
「大丈夫だよ!治くんのためにもみんなで頑張ってくるね!」
「おん!期待してんで!」

治にそう言うと名前は手を振ってから一緒に試合に出るクラスメイトの元へと急いだ。

「な、なんでサムだけ…」
「当たり前やろ、同じクラスやしな」
「ただのクラスメイトがドヤんな」
「おまえはただ部活が一緒なだけの同級生やけどな」
「グッ!!」
「倍返しされるだけなんだからやめればいいのに」
「学習しないやつやな」
「侑はほっといて、うちらはもう少し前に行こか」
「せやな」
「なんでやねん!俺も行くわ!」

同じクラスメイト、そして侑や中山たちに応援されながら始まった3位決定戦。
フルセットまでシーソーゲームで進んだが、最後は負けてしまった2年1組だった。

「あーもう、惜しかったなあ!」
「ホンマ!後ちょっとやったやん!」
「悔しい〜!!」
「しゃあないな」
「4位なのは残念だけど、楽しかったね!」
「それな!」

全競技の3位決定戦が終わり、球技大会は終了。
総合優勝は3年5組で、2年1組と2年2組はサッカーとバレーで優勝したので日替わり定食無料券をもらった。

「アランくんに日替わり定食無料券分けてもらおうか」
「絶対分けてくれへんやろ」
「北さんとか大耳さんとかに分けるんじゃない?」
「俺かてアランくんの大事な後輩やろ?」
「どんだけ欲しいねん…」
「治くんって、本当食べること大好きだよね」
「せやな」
「それで太らないのがうらやましい…」
「まあ動いとるからなあ」



その後、尾白を見つけた治が、尾白の足にしがみついて「アランくん!俺!アランくんの大事な後輩やろ!?日替わり定食無料券1枚くれや!」と騒いでいた。



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