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球技大会が終わり、7月後半になるとインターハイが始まった。
インターハイでは、エースである尾白を中心に角名と治、そしてそんなスパイカーたちをうまく使った侑たちの活躍のおかげで決勝戦まで勝ち進んだ。

「ゆっこちゃん…!」
「名前…!」

準決勝が終わり、名前は中山と応援席で合流すると抱き合った。

「す!すごいね!次、決勝だよ!」
「せやな!」
「このままいけば、優勝できるかな!?」
「できるやろ!」
「だよね!」

そんな2人を、稲荷崎高校を応援していたおじさんたちは「若いってええな〜」と目じりを下げて、微笑ましそうに見ていた。

「…簡単に言ってくれるよね」
「おい!」

そんな会話が聞こえてきたので、名前と中山は後ろを振り返る。
そこには、次の対戦相手である井闥山学院高校の2年生、佐久早聖臣と古森元也がいた。

「佐久早と古森やん」
「よお!去年の春高ぶり!」
「こ、こんにちは!」
「苗字は相変わらずだなー!まだ慣れない?」

名前の返事に、古森は笑ってそう返す。

「だ、だいぶ慣れたよ!」
「そりゃあ良かった。決勝進出おめでとう!」
「そっちもやん」
「だね!午後はよろしく!」

佐久早はチラッと名前のことを見ると「おい、さっさと行くぞ」と古森に声をかける。

「まだ集合の時間じゃないだろ」
「クールダウンしてんのにこいつらにかまってる場合か」
「どっちかって言うと、おまえが声かけたんだろ」
「声はかけてない。独り言だ」
「おまえなあ…そりゃ無理があるって」

佐久早の言葉に古森はあきれた顔をした。

「苗字と話したかったんだろ」
「んなわけねえだろ。変なこと言うな」
「なんや、佐久早。あんたそうなん?」
「え!?」
「違うって言ってんだろ」
「わ、私は佐久早くんとお話できるの、嬉しいよ!」
「だから違う。さっさと行かねえとめんどうな…」

佐久早が最後まで言う前に「臣くん何やっとんねん!」という侑の声が聞こえてきた。

「…クソッ」
「よお、宮ツインズ!」
「古森くんもおったんか」
「いたよー!」

侑の後ろには治、角名、銀島の3人がついて来ていた。

「あんたらクールダウン終わったん?」
「バッチリやで」
「ご飯食べようと思って荷物のとこ見たら、名前ちゃんが佐久早たちと話てるからダッシュで来たんだよ」
「そうなの?」
「侑が」
「え?」
「余計なこと言わんでええ!」

佐久早は大きな声を出す侑を見ると「チッ」と舌打ちをした。

「なんや臣くん、ケンカ売っとるんか?」
「喋るな、唾が飛ぶ」
「人間みんな菌まみれや!」
「うるせえ雑菌」
「さすがにひどない!?」

佐久早はため息をつくと「だからさっさと行くぞって言ったんだよ。こいつが来るとめんどうなことになる…」と小さな声でブツブツと言い始めた。

「臣くんは情緒不安定なんでちゅかねー」
「ツム、あんま煽んな」
「悪いねー!こいつ、試合終わってすぐだしピリピリしてんのよ」
「次の対戦相手を前に、のほほんとお喋りしてる方がおかしいけどね」
「それもそうやな」

侑は2人に向かって指をさすと「今回は勝たせてもらうで!」と宣言した。

「言ってろ」
「ウチも負けないよ!」

そう言うと、2人は井闥山の応援席の方に戻って行った。



「名前!おまえ臣くんと何喋っとったん!?」

侑が名前に詰め寄る。

「え、普通に、次の試合よろしくねって」
「あいつはよろしくなんて言わんやろ!」
「どういうイメージ?」
「中山!なんもなかったん!?」
「うちに聞くな」

侑は中山に聞くが、中山はめんどくさそうにそう答えた。

「使えん奴やなー」
「ほお、うちにそういう態度とってええんか?全部バラしてもええんやで?」

侑の言葉に腹を立てた中山は、侑に笑顔で問いかける。

「す、すんません…」
「バラす?」
「名前は気にせんでええよ」

名前は特に気にした様子もなく話題を変える。

「それにしても、午後にはもう決勝戦なんだね…」
「せやな」
「き、緊張してきた…」
「なんで名前ちゃんが緊張してるの」

角名が笑って名前に聞く。

「だって、次勝ったら優勝だよ?全国の高校生の中で、みんなが一番バレーが強い6人って証明されるんだよ!ね!ゆっこちゃん!」
「そうやな。たしかにそれはすごいことやな」
「そんな歴史的瞬間に立ち会えるかもしれないんだもん。緊張するよー!」

そんな風に言う名前を見て、侑はフッと笑うと「俺たちが全国1位になる瞬間、一番近くで見とれよ!」と言った。

「侑くん…」
「なんやツム、かっこええやん」
「本当だね。侑にしては良いこと言うじゃん」
「熱い奴やなー!」

名前は侑と同じように微笑むと「私、次は応援席だから応援席からみんなのプレー見てるね!」と言った。

「なんでやねん!」
「まあ、順番的にはそうやな」

2年生マネージャーは名前と中山の2人なので、2人で話し合いをした結果、ベンチには交互に座ることになっていた。
先ほどの準決勝でベンチに座っていたのは名前なので、必然的に決勝戦は中山がベンチに座ることになる。
侑は中山を無言で睨む。

「そんな睨まんでも、ちゃんと名前のことベンチに座らせるから安心しい」
「ホンマか!」
「え!ゆっこちゃんが座った方がいいよ!」

名前は慌ててそう言うが、中山も譲らない。

「うちより名前が座っとった方が、ウチのイケメンセッターくんはやる気になるんやって」
「そ、そんなことないよ…」
「…名前、この前から何か勘違いしとるみたいやけど、多分名前が思っとるようなことはないで?名前やって、ホンマはベンチから応援してたいんやろ?」
「…でも…それはゆっこちゃんだって同じでしょ?」
「まあ、でもうちよりも名前のが侑のバレー好きやろ?」
「…ゆっこちゃんよりかはわからないけど、侑くんのバレー好きだよ」
「せやったらその侑からの指名や。誰よりも近くで見たって」

中山にそう言われ、名前は少し恥ずかしそうにしながら「ゆっこちゃん、ありがとう」と言った。

そんな2人の会話を聞いていた角名は「聞いてるこっちが恥ずかしくなるんだけど」と治に言う。

「青春やなー。名前もツムのこと好きなんやなあ」
「バレーは、でしょ」
「意外と脈ありなんちゃう?」

3人は小声でコソコソと話しているが、侑は背中を向けて何も言わない。
そんな侑を不審に思った治が、侑の肩を掴んで振り向かせる。

「ツム?」
「…」
「わー、侑顔真っ赤じゃん、ウケる」
「ガチやん」
「う、うっさいわ!見んなアホ!」

侑は赤くなった顔を隠そうとするが、治にそれを邪魔される。

「ほっんま顔に出る奴やな」
「写真撮っていい?」
「いいわけあるか!」

角名は携帯を取り出すと、侑に向かってカメラを向ける。

「ええとこ見せなアカンな」
「わかっとるわ!」

いつも以上にやる気の侑を見て、治は「名前に感謝せなアカンな」とつぶやいた。







インターハイ決勝戦が始まる。

『これより、全国高等学校総合体育大会バレーボール競技大会男子決勝戦を始めます』

続けて、井闥山と稲荷崎のスターティングメンバーの名前が順番にアナウンスされる。

『スターティングメンバーを紹介します。井闥山学院高校、1番、セッター飯綱掌』

井闥山の主将の飯綱は名前を呼ばれると、ベンチの前にいる監督、そしてコーチとハイタッチをしてからコートの中に入り、ポジションにつく。

『10番、ウィングスパイカー佐久早聖臣』

佐久早の名前が呼ばれ、井闥山学院高校のメンバー全員がコートの中に入る。
次は、稲荷崎高校のスターティングメンバーの名前が呼ばれる。

『続きまして、稲荷崎高校。2番、ミドルブロッカー大耳練。4番、ウィングスパイカー尾白アラン』

大耳たちも同じように黒須、大見、そして名前とハイタッチをしてからコートの中に入る。

『7番、セッター宮侑』

名前を呼ばれた侑は、少し小走りで黒須たちの元に向かう。
順番に片手でハイタッチをするが、名前には両手を出す。

「?」
「ん!」

片手を出していた名前も、慌てて両手を出すと、侑はニッコリと笑って勢いよく手を合わせた。

「    」
「え?」

侑は声に出さず口パクで名前に何かを伝えた。
名前には伝わっていないが、侑は特に気にすることなくそのままコートに向かった。
続いて治、角名、銀島の名前が呼ばれてコートに入ると、決勝戦が始まる。

「(みんな、頑張れ!)」



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