「そんなことないよな理石?なア???」
侑が怖い顔をして理石に詰め寄ると「アカンわコイツ、呼吸するのと同じレベルでパワハラが体に染みついとるわ」とツッコむ。
「しゃーないな。俺が行ったる」
「ハア!?おまえのどこが尊敬されんねん!」
「おまえよりは100倍尊敬できると自負しとるわ」
「誰がバレーで支えたってる思てんねん!!」
「そのおまえが崩れた時、誰が支えたっとる思てんねん」
侑が治の胸倉をつかんでヒートアップしそうになると、理石の顔色はどんどん悪くなっていく。
「(どないしよ…どっち選んでもカドが立つやん!!)」
理石は後ろにいる角名のことをチラッと見る。
「(かと言って角名さんは…)」
「(面倒くさいから俺を選ぶな…)」
「(オーラがすごい出とる…!!でも銀島さんは…)」
理石は銀島を見るが「ビアンカかフローラか。ド〇クエ5みたいな選択やなー」とのんきに言っていて、「(なんかちゃう…!!)」と思った。
「(せやったら3年生の誰かから選んだら…!!)」
そう思った理石は、3年生のいる方を見る。
が、北、大耳、尾白の3人はあまりにもオーラがありすぎて声をかけるのが怖かった。
「(こ…怖すぎるううう!!…もうここは、一つしかないな!)」
理石は名前の前に立つと「苗字さん!一緒に来てもらえませんか!?」と聞いた。
「え?」
急に話をふられた名前は驚いた。
「はあ!?いくらバレー部の後輩でも名前を連れてくのは許さんで!?」
「(選択を間違ごうた!?)」
治と言い争いをして侑だったが、理石が名前に声をかけたことに気付くとすぐに2人の間に入る。
「あ、侑くん…」
「名前は俺以外の人間に連れて行かせへんで!」
「同じ白組同士なんやから邪魔すんなや」
「うっさいわサム!これは俺たちの問題や」
「理石くん、協力してあげたいんだけど…多分、私じゃなくて他の人を連れて行った方がいいかも」
「こ、こちらこそすんませんでした」
理石はそう言うと、銀島の方を見て「…銀島さん、一緒に来てください!!」と言った。
「なんと!この俺を頼ると申すか!?」
理石が銀島を選んだことを見ていた尾白は「なんでや!さっきこっち見たやんけ!俺を借りてや!パンツでも何でも貸したったんに!目立たせてや!」と叫んだ。
「目立ちたいからってパンツ脱ぐなや」
「銀島選んだっちゅうことは面白い奴とかそんなとこやろ!?俺にもワンチャンあったやんけ!!」
「アランはカッコええからちゃうかってんやろ」
「ホンマそう思ってくれてんの!?ありがとう!!」
「名前のことを連れて来うとしとったんやからちゃうやろ」
「確かに苗字は面白そうやなくてかわいいやな!ほんならお題はなんやったんや!?」
理石は、先輩たちからの妨害もあり3位でゴールした。
「侑が邪魔するから3位やったやん」
「俺だけのせいやないやろ!?」
「ほぼ侑のせいだよね」
「サムも邪魔しとったやろ!」
そんな話をしていると、2年生の借り物競争の準備が始まる。
「ほな行ってくんで!」
「うん!4人とも頑張ってね」
「おん!」
借り物競争にも侑、治、角名、銀島の4人が出ることになっていた。
1年生のレースが終わり、2年生の番になる。
「次は2年生の借り物競争やで」
「よっしゃ!おもろい奴になってスタンバっとくか!!」
尾白はそう言うと、どこから持ち出したのか学校の備品であるアフロのカツラと星形のサングラスを装着した。
「どうや!俺おもろいか!?」
「誰やおまえ」
そんな尾白に、冷静にツッコむ北。
「次の走者の方は準備してくださいー」
先生がそう言うと、2年1組から4組の4人がスタート地点に立つ。
「なんやコラ。何メンチ切っとんねん」
「チラッと見ただけや、燥ぐなや」
借り物競争も、侑と治が同じレースで勝負をすることになる。
「…なんで毎回双子は同じレースなんだよ…」
「運命共同体すぎやろ」
そんな2人を、待機列で見ている角名と銀島。
「名前のこと借りれるお題やったら遠慮せず借りたるからな」
「やれるもんならやってみい?」
「よーい、スタート!!」
スタートの合図で侑と治は一斉に走り出す。
「いけー!双子!!」
「侑くーん!頑張ってやー!」
「治ー!侑なんかに負けんな!」
2人は同時にしゃがむと、同じ紙を取る。
「その紙は俺のじゃ!!」
「俺が先にツバつけたんじゃボケ!!」
「紙はいっぱいあるからケンカせんでください!」
理石が思わず応援席から叫ぶ。
「よっしゃこれや!!俺が借りてくるもんは…」
侑は拾った紙を広げてお題を確認する。
そこには”自分だけは面白いと思ってるけど全力でスベッてる人”と書いてあった。
「…サム、おまえのお題はなんや?」
「…教えるわけないやろ」
「ええから見せろや!!」
「やめろや!」
侑は治の紙を奪い取ると、お題を確認した。
治のお題は”かわいい人”だった。
「よし。このお題は俺がもらうわ」
「何が”よし”なん??なんもよくないで?」
侑の手から紙を奪い取ろうとするが、侑は自分の持っていた紙を治に押し付ける。
「これちゃうやろ!!そっちやん!」
「それやって!」
「おまえホンマにどついたろか!?」
「もうどついてんねん!」
2人で騒いでいる姿を見ていた2年1組と2組のクラスメイトからはブーイングが飛ぶ。
「なんやっとんねん!お遊戯会ちゃうぞ!」
「はよ借りにこいや!」
「双子ええ加減にせえ!」
周りのブーイングを聞いて「ほら、さっさと渡さんかい」と治は侑に言う。
「ホイ」
侑は1枚の紙を治に渡すと、ダッシュで1組に向かう。
「あ!この、クソが!!」
侑が渡したのは、元々侑が持っていた方のお題の紙だった。
「名前!」
「侑くん」
「俺と一緒に来てや!」
「えっと、お題はなんだったの?」
「アカン!見たら死ぬで!?」
「なんでおまえは生きとんねん!」
侑の言葉に銀島が思わずツッコミを入れる。
「でも侑は白組でしょ。名前ちゃんが行ったら白組が1位になっちゃうよ?」
「ほんなら治がゴールするまでここでだべっとったらええねん」
「そこまでして苗字を連れて行きたいんか」
「治のお題ってなんだったの?」
「あー」
侑が答える前に、治の大きな声が聞こえてきた。
「アランくん!」
「お!やっと俺か!おもろい男やったんか!!」
治は尾白のところまで走ると「一緒に来てや!」とアランの手を引く。
「もちろんええで!お題はなんやったん?」
「いや、それはちょっと…」
「そんな目ぇ反らすくらいヤバイお題なんか!?」
治は尾白にお題を見せると、尾白は「なんでやねーん!!」と言いながらズッコケた。
「俺めっちゃおもろいやん!どこがスベッとんねん!?」
「いや、もうその被りもんとかおもんないで、アランくん」
「まあそうやな」
「やっぱアランはボケやのうてツッコミやな」
「俺にもボケさしてや!笑いで天下とりたいねん!」
「ツッコミで天下とってな」
治と尾白がゴールに向かって走り出したことを確認した侑は、名前の手を握る。
「俺らも行くで!」
「私でいいの?」
「名前でいい、やなくて名前やないとアカンねん」
そう言って笑う侑を見て、名前は少し恥ずかしくなって顔を逸らした。
「ほら」
「うん」
2人はしっかりと手を繋いでゴールに向かった走る。
1組のクラスメイトたちは「ええやん、ええやん。だいぶ脈ありなんちゃう?」と言いながら、2人を微笑ましそうに見ていた。
「なんや、このクラスは全員で侑の恋を応援しとるんか?」
「人でなしなのに意外と人望はあるよね」
「面白がっとるだけやろ」
治と尾白がゴールをして数十秒後に侑と名前もゴールをする。
「今回は俺の勝ちやな」
「1位譲っただけやん。調子乗んなや」
「侑くん早いー…」
「す、スマン!大丈夫か?」
「う、うん」
名前は息を整えると尾白に「尾白さんも、お疲れ様です」と声をかける。
「おん…苗字もお疲れさんやな…」
「なんだか元気ないですか?」
「サムのお題がショックやったんやろ」
「元々これはおまえのお題やろ」
治は名前にお題を見せる。
「あ、あー…」
名前は、尾白のアフロと星形メガネを見て「わ、私は好きですよ!」とフォローした。
「もういっそのことおもっきし笑ってくれや!」
尾白は両手で顔を隠して泣いた。
「名前」
「ん?」
「ツムのお題知っとるん?」
「ううん。侑くん教えてくれなくて」
「そうなん?」
「サム!おまえ余計な事言うなよ!」
「ここまで隠したがってるってことは、あんまりいいお題じゃないのかな?」
「んなわけあるか!」
侑は名前に変な誤解をされるよりは、と思い、お題の紙を名前に見せた。
「…えっ!」
お題を確認した名前は、嬉しさと恥ずかしさで赤くなった顔を紙で隠す。
「名前、顔真っ赤やん」
「だ、だって…こんなお題だとは思わなかったんだもん…」
そう言って名前はチラッと侑を見る。
「ほらな、やっぱかわええ」
そう言って笑う侑を見て、名前はますます顔が赤くなるのを感じた。