「す、すんません!」
「ドンマーイ」
「狙いすぎたな」
次の田中のサーブを岩泉が上げると、京谷が真ん中に走り込んできた。
それに日向は一瞬反応するが、京谷の後ろから松川がライトに移動していることに気付く。
及川は京谷にトスを上げて、真ん中からの攻撃を選択する。
「!」
「いいぞいいぞケンタロウ!押せ押せケンタロウ!もう1本!」
「…!!」
「(意識しないよう努めるのも意識するのと一緒だよ)」
及川の思惑通り、京谷の存在は攻撃力アップと最高の囮として機能している。
スコアは21対18で青城リードのまま続いていく。
「京谷ナイッサー!!」
「サッ来ォーい!!」
京谷のサーブはノータッチエースで決まる。
「サービスエェエース!!!」
「いいそいいぞケンタロウ!押せ押せケンタロウ!もう1本!」
たまらず烏野側は2回目のタイムアウトを使う。
ベンチで見ている名前は「いいね、京谷。完全にスイッチ入りましたね」と入畑に言う。
「そうだな。京谷は手のかかるスロースターターだが、かかれば強い」
「この調子でこのセットは獲ってほしいですね」
タイムアウトが終わり、京谷のサーブが続く。
「京谷も1本ナイッサァー!!」
京谷のサーブを澤村が上げる。
「大地!!」
「フッ!すまんっ長いっ…!」
「松川!」
「ダイレクト!」
そのまま青城コートに返ってきたボールを、松川がスパイクする。
「いいそいいぞイッセイ!押せ押せイッセイ!もう1本!!」
次の京谷のサーブは田中がレシーブする。
綺麗に影山に返り、日向がスパイクを打つ。
「!!よっしゃー!!」
「日向ナイスキー!」
日向のサーブが回ってくるタイミングで、烏野は選手を交替する。
ピンチサーバーで山口がコートに入る。
「…どいつもこいつも、雰囲気変えて来やがって」
山口の表情を見た及川は、ボソッとつぶやく。
笛が鳴り、山口がサーブトスを上げる。
山口のボールは京谷と渡の真ん中を通りながら、そのままコートの外に出そうになる。
「アウト!!」
渡はアウトとジャッジしたが、ボールはコートの外に出る前に変化してコートの中に落ちる。
「うおおっしゃアアアアア!!」
「山口いいいい!」
山口のサーブで烏野側は大盛り上がりを見せる。
「すげえ変化したな…俺もアウトだと思ったわ」
「これがあるからジャンフロは嫌なんだよ」
「切るぞ!!」
「うっす」
山口の2本目のサーブは、京谷の方に飛んでいく。
「京谷!」
「!!っ!」
京谷の手元で伸び、肘の部分に当たり、うまくレシーブできずにそのままコートの外に落ちる。
「くっそが…!!」
「サ、サービスエース2本目ー!!」
「よしっ…!!」
「山口もういっぽォオオン!!」
「サッ来オオイ!!」
山口の3本目のサーブは花巻がレシーブする。
「(ジャンフロは、オーバーで捕まえるっ!!)」
「マッキーナイス!!」
「花巻ナイス!」
及川は岩泉にトスを上げる。
「岩泉!!」
岩泉のスパイクを、文字通り体でレシーブする山口。
「カバァアア!!!」
「ふんっ」
「サンキュー…影山…!!」
「月島!!ラスト!!」
「センターセンター!!」
月島のスパイクに及川、松川、花巻の3人がついていくが、月島は及川の指に当ててブロックアウトを決める。
ここで青城は2回目のタイムアウトを取る。
「あの12番、根性入ったレシーブしやがって」
「さっきのは根性当たり(まぐれ)だけどね」
「雰囲気変わったねー。相当サーブ練習したんだろうね」
「だろうな。ジャンフロが使い物になってる」
「ジャンフロ嫌いだわー」
「変化が大きいから、どんな変化にも対応できるように少し後ろに下がるか?」
「前に落ちる可能性も忘れないでね」
「了解」
タイムアウトが終わり、山口の4本目のサーブ。
「切るぞ」
「おお!」
コートの中で、岩泉と花巻が手を叩く。
山口のサーブは白帯の部分に当たり、ネットインする。
この得点で、23対23になり同点となった。
「ハアイ!!落ち着いて!」
及川は手を叩くと、両手を広げた。
「落ち着ている」
「まあ今のはしょうがないわな」
「次、次」
「さすがおまえら!しっかりしすぎてキャプテン悲しい!!」
そんな及川の言葉に、岩泉、花巻、松川の3人は笑う。
「うん、大丈夫ですね」
「そうだね」
「ウチの3年はしっかりしてんなー」
ベンチで見ていた3人も、その雰囲気に安心した。
5本目の山口のサーブは、ゆるい回転がかかったため変化が弱く、岩泉がオーバーでレシーブする。
「オシ!!」
及川は花巻にトスを上げるが、月島がワンタッチを取る。
「ワンタッチ!」
「ナイスワンチッ…!!」
「ふんっ」
田中が繋げ、影山は東峰にトスを上げる。
ブロックが3枚つくが、東峰はそのまま打ちぬき、ブロックアウトを取る。
「だあああ!もうクソ!」
「マジか烏野止まんねぇー!!」
今の1点で、烏野のマッチポイントになる。
名前は、思わずベンチから立ち上がりそうになったが「…大丈夫」と呟いて落ち着く。
「(大丈夫、あんたたちは…負けない!)」
「やまぐちもう1本だあぁあ!!」
山口の6本目のサーブはかなり変化したが、渡が「俺がとるっ!」と叫んでレシーブする。
そして及川は岩泉にトスを上げると、岩泉のバックアタックが決まる。
「!!」
「やっと切った…」
「岩泉さんナイスキー!!」
これで24対24のデュースになる。
山口が日向と替わり、日向が西谷と替わる。
花巻のサーブは澤村がレシーブすると、東峰がブロックアウトを取る。
青城は、及川が松川のトスを上げて、センターから速攻で得点する。
「いいぞいいぞイッセイ!押せ押せイッセイ!もう1本!」
「ッシ!」
及川と松川が手を叩く。
松川のサーブは綺麗に拾われて、月島のスパイクが決まる。
「!」
「月島ナイスキー!!」
「…!」
「おい動き固いぞ金田一」
「!!ハイ!アッイイエ!!」
「どっちだよ」
岩泉に声をかけられて、反射的に肯定してしまう金田一。
「(…こっちは崖っぷちだ…この試合を3年生最後の試合にするわけにはいかない…!)」
「余計なことは考えなくていい」
「!」
「どんな時だろうと、重要なのは目の前の1本だけだ」
「!…うす!!」
東峰のサーブは花巻がなんとか上げるが、少し長くなる。
「長い…!頼むっ…!」
「ふぐっ」
「!」
上げると信じて走り込んできた金田一が、及川の片手で上げたトスに反応してスパイクを決める。
「ッシャアアアア!!!」
「いいぞいいぞユウタロウ!押せ押せユウタロウ!もう1本!!」
「金田一ナイスキー!徹もよく上げた!!」
26対26で、及川のサーブの番がくる。
「及川さんナイッサー!!!」
及川のサーブは西谷を狙う。
西谷は反応したが、腕に当たったボールはそのままコートの外に飛んで行った。
「(最早スパイク…!)」
「さいっこう…!」
「シャアアアア!!!」
「オオッシ!!」
「ブレイク!」
「いいぞいいぞトオル!押せ押せトオル!もう1本!!!」
及川のサーブで会場が盛り上がりを見せる。
「くっそがアアアア!!」
「これは、2人では無理だ」
及川のサーブを見てそう判断した澤村は、サーブレシーブを東峰を入れた3人態勢に変えた。
「サッ来オォオい!!!」
「ナイッサアアアア!!」
及川のサーブは、澤村を狙う。
澤村は辛うじてボールを上に上げるが、そのまま返ってきたボールを金田一がダイレクトで返球する。
しかし、そのボールは田中が拾った。
「フンッ」
「田中ナイスだァア!!!」
「影山ァ!」
東峰のスパイクを、今度は花巻が上げる。
「ッ!!!」
「ナイスレシィイイ」
及川は京谷にトスを上げようとするが、その後ろから来た岩泉にトスを上げ、岩泉のスパイクが烏野コートに決まる。
「ッシャアアア!!!」
28対26となり、青城が2セット目を取る。
「やったね!」
「さすがだな」
及川と花巻はハイタッチをしてベンチに戻る。
「お疲れ様」
「名前ちゃん、ありがとう!」
「ふぃー疲れた」
「後1セット、絶対獲って戻って来てよ」
「もっちろん!」
及川たちはタイルとボトルを名前から受け取ると、烏野のベンチを見る。
「ほんっと面倒ください相手だよ」
「本当だよな。去年までは格下で、大した縁もなかったのにな」
「なんだかんだ一番濃い試合してる気がする」
「またフルセットだしね」
名前はタオルとボトルを回収しながら一人ずつ声をかける。
「金田一、あんた途中動き固くなってたよ?余計な事考えなくていいから、目の前の試合を楽しみなさい!」
「!うっす!」
「渡、次のセットもナイスレシーブ期待してるからね!」
「ハイ!がんばります!」
「京谷、ノッてきてんじゃん」
「…す」
1年生と2年生に声をかけた名前は、松川と花巻の方を見る。
「松川、花巻、頼んだよ」
「任せて」
「俺たちにはなんかないの?」
「あんたたちにはこの一言で充分でしょ?」
「まあね」
そして、及川と岩泉の方を見る。
「徹、一。最後の勝負!」
「おう!」
「だね」
入畑がベンチから立ち上がり、みんなの前に立つ。
「耳にタコだろうが、サーブは強気で。向こうの10番に多少決められるのは仕方ない、絞って拾う」
「ハイ!!」
「おまえたちは強いよ」
「行くぞ!」
「オェーイ!」
ファイナルセットが始まる。