27

金田一のサーブから再開された試合は、ネットに当たってアウトになる。

「す、すんません!」
「ドンマーイ」
「狙いすぎたな」

次の田中のサーブを岩泉が上げると、京谷が真ん中に走り込んできた。
それに日向は一瞬反応するが、京谷の後ろから松川がライトに移動していることに気付く。
及川は京谷にトスを上げて、真ん中からの攻撃を選択する。

「!」
「いいぞいいぞケンタロウ!押せ押せケンタロウ!もう1本!」
「…!!」
「(意識しないよう努めるのも意識するのと一緒だよ)」

及川の思惑通り、京谷の存在は攻撃力アップと最高の囮として機能している。
スコアは21対18で青城リードのまま続いていく。

「京谷ナイッサー!!」
「サッ来ォーい!!」

京谷のサーブはノータッチエースで決まる。

「サービスエェエース!!!」
「いいそいいぞケンタロウ!押せ押せケンタロウ!もう1本!」

たまらず烏野側は2回目のタイムアウトを使う。
ベンチで見ている名前は「いいね、京谷。完全にスイッチ入りましたね」と入畑に言う。

「そうだな。京谷は手のかかるスロースターターだが、かかれば強い」
「この調子でこのセットは獲ってほしいですね」

タイムアウトが終わり、京谷のサーブが続く。

「京谷も1本ナイッサァー!!」

京谷のサーブを澤村が上げる。

「大地!!」
「フッ!すまんっ長いっ…!」
「松川!」
「ダイレクト!」

そのまま青城コートに返ってきたボールを、松川がスパイクする。

「いいそいいぞイッセイ!押せ押せイッセイ!もう1本!!」

次の京谷のサーブは田中がレシーブする。
綺麗に影山に返り、日向がスパイクを打つ。

「!!よっしゃー!!」
「日向ナイスキー!」

日向のサーブが回ってくるタイミングで、烏野は選手を交替する。
ピンチサーバーで山口がコートに入る。

「…どいつもこいつも、雰囲気変えて来やがって」

山口の表情を見た及川は、ボソッとつぶやく。
笛が鳴り、山口がサーブトスを上げる。
山口のボールは京谷と渡の真ん中を通りながら、そのままコートの外に出そうになる。

「アウト!!」

渡はアウトとジャッジしたが、ボールはコートの外に出る前に変化してコートの中に落ちる。

「うおおっしゃアアアアア!!」
「山口いいいい!」

山口のサーブで烏野側は大盛り上がりを見せる。

「すげえ変化したな…俺もアウトだと思ったわ」
「これがあるからジャンフロは嫌なんだよ」
「切るぞ!!」
「うっす」

山口の2本目のサーブは、京谷の方に飛んでいく。

「京谷!」
「!!っ!」

京谷の手元で伸び、肘の部分に当たり、うまくレシーブできずにそのままコートの外に落ちる。

「くっそが…!!」
「サ、サービスエース2本目ー!!」
「よしっ…!!」
「山口もういっぽォオオン!!」
「サッ来オオイ!!」

山口の3本目のサーブは花巻がレシーブする。

「(ジャンフロは、オーバーで捕まえるっ!!)」
「マッキーナイス!!」
「花巻ナイス!」

及川は岩泉にトスを上げる。

「岩泉!!」

岩泉のスパイクを、文字通り体でレシーブする山口。

「カバァアア!!!」
「ふんっ」
「サンキュー…影山…!!」
「月島!!ラスト!!」
「センターセンター!!」

月島のスパイクに及川、松川、花巻の3人がついていくが、月島は及川の指に当ててブロックアウトを決める。
ここで青城は2回目のタイムアウトを取る。

「あの12番、根性入ったレシーブしやがって」
「さっきのは根性当たり(まぐれ)だけどね」
「雰囲気変わったねー。相当サーブ練習したんだろうね」
「だろうな。ジャンフロが使い物になってる」
「ジャンフロ嫌いだわー」
「変化が大きいから、どんな変化にも対応できるように少し後ろに下がるか?」
「前に落ちる可能性も忘れないでね」
「了解」

タイムアウトが終わり、山口の4本目のサーブ。

「切るぞ」
「おお!」

コートの中で、岩泉と花巻が手を叩く。
山口のサーブは白帯の部分に当たり、ネットインする。
この得点で、23対23になり同点となった。

「ハアイ!!落ち着いて!」

及川は手を叩くと、両手を広げた。

「落ち着ている」
「まあ今のはしょうがないわな」
「次、次」
「さすがおまえら!しっかりしすぎてキャプテン悲しい!!」

そんな及川の言葉に、岩泉、花巻、松川の3人は笑う。

「うん、大丈夫ですね」
「そうだね」
「ウチの3年はしっかりしてんなー」

ベンチで見ていた3人も、その雰囲気に安心した。

5本目の山口のサーブは、ゆるい回転がかかったため変化が弱く、岩泉がオーバーでレシーブする。

「オシ!!」

及川は花巻にトスを上げるが、月島がワンタッチを取る。

「ワンタッチ!」
「ナイスワンチッ…!!」
「ふんっ」

田中が繋げ、影山は東峰にトスを上げる。
ブロックが3枚つくが、東峰はそのまま打ちぬき、ブロックアウトを取る。

「だあああ!もうクソ!」
「マジか烏野止まんねぇー!!」

今の1点で、烏野のマッチポイントになる。
名前は、思わずベンチから立ち上がりそうになったが「…大丈夫」と呟いて落ち着く。

「(大丈夫、あんたたちは…負けない!)」

「やまぐちもう1本だあぁあ!!」

山口の6本目のサーブはかなり変化したが、渡が「俺がとるっ!」と叫んでレシーブする。
そして及川は岩泉にトスを上げると、岩泉のバックアタックが決まる。

「!!」
「やっと切った…」
「岩泉さんナイスキー!!」

これで24対24のデュースになる。
山口が日向と替わり、日向が西谷と替わる。
花巻のサーブは澤村がレシーブすると、東峰がブロックアウトを取る。
青城は、及川が松川のトスを上げて、センターから速攻で得点する。

「いいぞいいぞイッセイ!押せ押せイッセイ!もう1本!」
「ッシ!」

及川と松川が手を叩く。

松川のサーブは綺麗に拾われて、月島のスパイクが決まる。

「!」
「月島ナイスキー!!」
「…!」
「おい動き固いぞ金田一」
「!!ハイ!アッイイエ!!」
「どっちだよ」

岩泉に声をかけられて、反射的に肯定してしまう金田一。

「(…こっちは崖っぷちだ…この試合を3年生最後の試合にするわけにはいかない…!)」
「余計なことは考えなくていい」
「!」
「どんな時だろうと、重要なのは目の前の1本だけだ」
「!…うす!!」

東峰のサーブは花巻がなんとか上げるが、少し長くなる。

「長い…!頼むっ…!」
「ふぐっ」
「!」

上げると信じて走り込んできた金田一が、及川の片手で上げたトスに反応してスパイクを決める。

「ッシャアアアア!!!」
「いいぞいいぞユウタロウ!押せ押せユウタロウ!もう1本!!」
「金田一ナイスキー!徹もよく上げた!!」

26対26で、及川のサーブの番がくる。

「及川さんナイッサー!!!」

及川のサーブは西谷を狙う。
西谷は反応したが、腕に当たったボールはそのままコートの外に飛んで行った。

「(最早スパイク…!)」
「さいっこう…!」
「シャアアアア!!!」
「オオッシ!!」
「ブレイク!」
「いいぞいいぞトオル!押せ押せトオル!もう1本!!!」

及川のサーブで会場が盛り上がりを見せる。

「くっそがアアアア!!」
「これは、2人では無理だ」

及川のサーブを見てそう判断した澤村は、サーブレシーブを東峰を入れた3人態勢に変えた。

「サッ来オォオい!!!」
「ナイッサアアアア!!」

及川のサーブは、澤村を狙う。
澤村は辛うじてボールを上に上げるが、そのまま返ってきたボールを金田一がダイレクトで返球する。
しかし、そのボールは田中が拾った。

「フンッ」
「田中ナイスだァア!!!」
「影山ァ!」

東峰のスパイクを、今度は花巻が上げる。

「ッ!!!」
「ナイスレシィイイ」

及川は京谷にトスを上げようとするが、その後ろから来た岩泉にトスを上げ、岩泉のスパイクが烏野コートに決まる。

「ッシャアアア!!!」

28対26となり、青城が2セット目を取る。

「やったね!」
「さすがだな」

及川と花巻はハイタッチをしてベンチに戻る。

「お疲れ様」
「名前ちゃん、ありがとう!」
「ふぃー疲れた」
「後1セット、絶対獲って戻って来てよ」
「もっちろん!」

及川たちはタイルとボトルを名前から受け取ると、烏野のベンチを見る。

「ほんっと面倒ください相手だよ」
「本当だよな。去年までは格下で、大した縁もなかったのにな」
「なんだかんだ一番濃い試合してる気がする」
「またフルセットだしね」

名前はタオルとボトルを回収しながら一人ずつ声をかける。

「金田一、あんた途中動き固くなってたよ?余計な事考えなくていいから、目の前の試合を楽しみなさい!」
「!うっす!」
「渡、次のセットもナイスレシーブ期待してるからね!」
「ハイ!がんばります!」
「京谷、ノッてきてんじゃん」
「…す」

1年生と2年生に声をかけた名前は、松川と花巻の方を見る。

「松川、花巻、頼んだよ」
「任せて」
「俺たちにはなんかないの?」
「あんたたちにはこの一言で充分でしょ?」
「まあね」

そして、及川と岩泉の方を見る。

「徹、一。最後の勝負!」
「おう!」
「だね」

入畑がベンチから立ち上がり、みんなの前に立つ。

「耳にタコだろうが、サーブは強気で。向こうの10番に多少決められるのは仕方ない、絞って拾う」
「ハイ!!」
「おまえたちは強いよ」

「行くぞ!」
「オェーイ!」

ファイナルセットが始まる。



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