28

ファイナルセットは青城が先制した。

「いいぞいいぞハジメ!押せ押せハジメ!もう1本!」
「及川さんナイッサァー!!」

及川の最初のサーブは、東峰に拾われるがそのまま青城コートに返ってくる。

「京谷ダイレクト!」

そのボールを京谷がダイレクトでスパイクする。

「ナイスキィー!!」
「(よし、狂犬ちゃんのエンジンは暖まったまま…!)」
「徹ー!もう1本ナイッサー!」

2本目の及川のサーブは澤村が上げ、影山が田中にトスを上げる。
田中は京谷のブロックしているストレートにスパイクを打つと、京谷の腕に当ててブロックポイントを決める。

「ッシャラアアア!!!」

京谷は、そんな田中を睨みつける。
次の京谷のスパイクはストレートを閉めた田中の腕の間を狙い、ブロックアウトを決めた。

「!」
「京谷ナイスキィー!!」
「ナイスキー」
「やっぱ京谷は前衛に上がってくると俄然元気だな」

そんな京谷を矢巾は苦笑しながら見ていた。

「ナイスサーブ!!」
「カバー!繋げ!」
「レフトレフト!!」
「旭さんナイスキィー!!」

試合はシーソーゲームで進み、7対6で青城リード。

「旭!ここで1本!」

東峰のサーブは京谷の左後ろに勢いよく落ちた。

「チッ」
「今のは取れねぇわ。次次!」

東峰のサーブは、今度は花巻がレシーブし、金田一がスパイクを決める。

「金田一ナイスキィー!!」
「いいぞいいぞユウタロウ!押せ押せユウタロウ!もう1本!」
「及川さんナイッサァ!!」

及川はボールを床につきながらサービスゾーンに向かう。
及川のサーブは白帯に当たり、ネットインで烏野コートに入る。

「オオッシ!」
「フッ!」
「ナイスレシーブ!」

及川が月島のスパイクをレシーブすると、岩泉がアンダーで京谷にトスを上げる。

「京谷ラスト!」
「ライトライト!」
「田中さん」
「?」

月島は田中に声をかけるとブロックの位置を入れ替わり、京谷のスパイクをブロックで完全に止めた。

「ッ…!」

月島のサーブは渡が綺麗に及川に返す。

「…」

及川は京谷にトスを上げる。

「(自分で取り返しな!!)」

しかし、京谷のスパイクは大きくラインを出てアウトになる。

「アウト」
「烏野逆転!!」
「監督!!」

ここで青城は1回目のタイムアウトを要求する。

「いったん、リズムを取り戻そうか」
「落ち着いて」
「京谷、熱くなりすぎるなよ」
「…」
「京谷?」

京谷は何も言わずに烏野のベンチを睨んでいた。

「…徹」
「ん?」
「…」
「大丈夫だよ」

及川はそう言うと、ドリンクのボトルを名前に手渡す。

タイムアウトが終わり、試合が再開する。
及川は再度、京谷にトスを上げるがスパイクはネットにかかりアウトになる。

「…!」
「切り替え!もう1本!」

渡が京谷の肩を叩くと、京谷は嫌そうに腕を払う。

「!」
「岩ちゃん行け!喝!」
「…」

岩泉が京谷に何かを言う前に、選手交替の笛が鳴る。

「!」

青城は一度、京谷をベンチに戻して国見を入れる。

「冷静になりなさい。またコートに出たいなら」

京谷は何も答えずアップゾーンに向かう。

「さっさと復活しろよ。もう後が無いんだぞ」

アップゾーンに来た京谷に、矢巾が声をかける。

「…うるせえ知るかよ」
「相手の挑発にまんまとノってアツくなって自滅。くそダサいな」
「…あ?」

矢巾の言葉に京谷は睨む。

「…おまえがのこのこ戻って来てあっさり試合なんか出たりしてさあ」
「?」
「それに不満がある奴も居るワケよ。俺とかな。でも、先輩たちに聞いても関心がないというか、勝てればいいんだなって反応だったし、冷たいと思ったよ。俺たちにも、お前にも」
「!」
「でもそんなことは問題じゃない。勝ちに必要な人間がレギュラーに選ばれる」

矢巾はそう言いながらチラッとコートを見ると、すぐに京谷に向かい合う。

「そしておまえが選ばれた。だったら相応の仕事をしろ」
「…矢巾、噛みつかれんじゃねえか。大丈夫か?」
「苗字さん呼ぶか…?」

そんな矢巾たちを見ていた他の控えの選手が小声で話しているが、矢巾は特に気にせず話を続ける。

「…ていうのはまあ建前だ」
「?」

そう言うと、矢巾は京谷の胸倉をつかんで扉に押し付ける。

「先輩たちの晴れ舞台に泥縫ったら、絶対許さねえからな」

そんな真剣な顔をした矢巾を見て、京谷は驚いた顔をした。

「…おまえ、もっとチャラい奴だと思ってた」
「それで間違ってねえよ」

矢巾は、掴んでいた手を離すとコートの方を向く。

「チャラくたって、先輩は尊敬すんだよ。…コートにいる以上、得点も失点もチームのものだろ。頼むから力をかしてくれよ」

そんな2人をベンチから見ていた入畑と名前。

「アツいですね」
「…いいことだ。京谷を戻そうか」
「はい」

コートの中では国見のフェイント攻撃を見切った影山が綺麗に拾うと、西谷がトスを上げて田中のスパイクが決まる。
スコアは10対12で烏野がリードしている。
ここで笛が鳴り、国見と京谷が選手交替となる。

「…」
「田中ナイッサ!」
「オシッ」

田中のサーブは岩泉が綺麗にレシーブする。

「…」

京谷はライトで準備をしているが、少し助走にためらいが出る。
ここまでミスを繰り返している自分に、トスは上がるのか、という思いが頭をよぎる。

「狂犬ちゃん」
「!」

しかし、そんな京谷の心情をあざ笑うかのように及川は戻ってきた京谷にトスを上げる。

「(京谷の顔に、恐らく今日初めて見る緊迫…)」
「京谷…打ちぬけ」

京谷のスパイクは、綺麗に決まった。

「おおっしゃあああああ!!!」
「!?」

矢巾の叫び声に国見は驚いたが、この1本で青城の雰囲気が変わった。

「いいぞいいぞケンタロウ!押せ押せケンタロウ!もう1本!!」

及川は「よく打った」と京谷に声をかける。

「…うす」

そんな及川に、京谷が返事をする。

「上手くかみ合ったね」

京谷の調子も戻り、そのまま試合は進む。
15対15になり、及川のサーブの番になる。
及川の強烈なサーブは、澤村が辛うじて上げるがそのまま青城コートに返る。
渡がレシーブをし、及川が金田一にトスを上げる。

「(金田一、おまえの打点はあとボール1個分先だ!!)」

金田一のブロードが綺麗に決まると、ブレイクした青城が逆転する。
次の及川のサーブは、西谷がなんとか上げるがネットの真ん中まで飛んでいき、金田一と月島の押し合いになる。
しかし、このボールは月島が押し込んで烏野の得点になる。
日向が前衛に上がってくると、影山に「大王様ってやっぱスゲーな」と言った。

「…わかんのか」
「なんかスゲーのはわかる!」
「ふー…」
「だがしかし!!おれが居れば、おまえは最強だ!!!」

日向がそう言うと、岩泉は「!?…かっけえなオイ…!」と感心した。

「…まったくだよ」
「(いつか使おう…)」
「どこで使う気」

京谷のスパイクはワンタッチを取られると、烏野のチャンスボールになる。
影山は日向にトスを上げようとするが、日向は前に跳びすぎてネットに近い位置にいる。

「!」

しかし影山はそのままトスを上げると「誰も居ねえ!!!打ち下ろせ!!!」と叫んだ。
それに反応した及川も「前だ!!!」と叫ぶが、日向が打ち下ろしたボールはアタックラインよりも前に落ちた。

「うおっ!?うおおおおっ!?」
「おいスゲー真下だったぞ!?狙ったのかよ!?」
「日向がネットに近かったんで、トスも近づけました。うまくいってよかったです」
「ビバ!単細胞!!!」

そんな影山を見て、及川は「飛雄の天才っぽいところは技術とかより、多分バカなところだよね」と言った。

「普通なら躊躇うところを迷わず突き進む。それが、良い方向でも悪い方向でも」
「…」
「(夢中になったら周りが見えず、誰も付いて来ていないことにも気づかない。でも、飛雄の先を行く馬鹿が現れてしまった)」

及川は嫌そうな顔をしながら日向のことを見る。

「ツッキーナイッサー!!」
「(…が、今の攻撃もまぐれはまぐれ。成長する前に、潰す!!)」

及川は岩泉にトスを上げると、バックアタックが決まる。

そのまま試合は進んでいき、ピンチサーバーで矢巾がコートに入る。

「(いいサーブ!!)」
「旭!」
「カバー!!」
「ブロック2枚!」

田中のスパイクを及川がレシーブする。

「ふっ」
「矢巾!!」
「ハイ!!京谷!!」

矢巾は京谷にトスを上げるが「!(しまった、トス短いっ…)」と、京谷の利き腕の右腕まで届かない。
しかし、京谷は左腕でスパイクを打つ。

「!」
「…左!」
「京谷ナイスキー!!」
「いいぞいいぞケンタロウ!押せ押せケンタロウ!もう1本!」

青城が先に20点台にのるが、すぐに烏野高校に追いつかれる。
そして日向のサーブで烏野は山口をピンチサーバーで起用する。

「(アウト…いや)」

第2セットでインになったサーブを思い出した京谷は、オーバーで捕まえようとするが触った瞬間ボールが変化してそのままコートの外に出そうになる。

「!」
「(今度は伸びんのかよ…!!)」
「よォオッシ!!」

しかし、岩泉が繋いで渡が返す。

「一、ナイス!!」
「チャンスボォオール!!」

影山は東峰にトスを上げ、スパイクを打つがそれを岩泉が拾う。

「!」
「だっしゃあああ!!!」
「一、ナイスレシーブ!!」
「うわぁ、完全にスイッチ入ってる」
「岩泉さんナイス!!」

花巻がフェイントで前に落とすと。青城の得点になる。

「いいぞいいぞタカヒロ!押せ押せタカヒロ!もう1本!」
「(…小っちぇえ頃はスパイクだけが楽しくてそればっかやってたけど、今になって心底思う。相手の完璧な一発を拾う、レシーブの快感を知って良かった)」

ベンチで見ていた溝口は、思わず立ち上がりガッツポーズをした。

「よしっ…!12番のサーブ1本で切った…!」
「岩泉の大活躍ですね!かこいい!!」

試合は進み、どちらも譲らないまま得点は23対22になる。

「どっちも譲らねえな〜このままデュースに行く感じか…」
「…いや」
「?」
「ここで決まるかも」

ここで、及川のサーブになる。

「及川さんナイッサー!!」
「徹!ナイッサー!」
「サッ来ォオオオオい!!!」

笛が鳴るのとほぼ同時に、及川はサーブトスを上げる。
及川のサーブは、コートの隅に落ちる。

「うおァッシャアアア!!!」

花巻は思わず及川に駆け寄って思いっきり抱きしめる。

「いいぞいいぞトオル!押せ押せトオル!もう1本」

青城がマッチポイントを迎えると、烏野が1回目のタイムアウトを取る。

「思いっきり行けよ」
「ぐっ!?」

花巻は及川の背中を叩く。

「当然」

及川は名前のことを見ると「笑う準備だけして待っててよ」と言った。

「待ってるよ。だから、決めてきてね」
「うん」



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