34

名前と日向が体育館に戻ると、ちょうど対人パスが終わり休憩に入るところだった。

「おれ、置いてきます!」
「よろしく」

名前が使用済みタオルを回収するカゴを用意していると、金田一と国見が話しかけてきた。

「苗字さん!」
「お、金田一と国見じゃん。仲良くやってる?」
「ハイ!あ、イイエ!」
「どっちなの。仲良くやんなさいよ」
「苗字さん何してるんですか?」
「何って、見てわからない?タオル回収しようとしてるの。はい、2人も使ったタオルはこっちね」
「そういう意味じゃないってわかりますよね?」

国見がムッとすると「合宿の手伝いだよー。国見ったらそんな顔しないの!綺麗な顔が台無しだよ」と笑った。
そんな名前の様子に、国見はさらに眉間にしわを寄せる。

「で、でもよく及川さんたちが許しましたね!」
「うるさかったけどねー。まあ、金田一も国見もいるんだし、大丈夫だと思ったんじゃない?」
「絶対思ってないですよ。帰ったら及川さんに俺たちが怒られるんですから、苗字さんも一緒に怒られてくださいよ」
「…やっぱり?」

国見が無言でうなずくのを見て「了解、3人で怒られようね」と名前は苦笑する。

「…国見ってあんな風に喋れるんだな」

そんな3人を近くで見ていた黄金川がそう言うと、五色が「どんなイメージだよ」と返す。

「イヤ!あいつ無口でクールじゃん?あんな風に女の先輩と話すんだなーって!」
「たしか国見は苗字さんと中学も一緒だったはず!」

そこに日向が入る。

「え!そうなの!?」
「おう!だから仲いいんじゃない?」
「へー。いいなあ、苗字さんって美人だし、俺も仲良くしたい!」
「女にうつつを抜かしてる場合か!おまえはもっとレシーブ練習しろヘタクソ!」
「キレキレ悪口!」

休憩が終わり、スパイク練習が始まる。

「じゃあおれコッチ守ります!!!」
「お、おう!」
「ボール拾いに気合入りすぎじゃね?」
「昨日の夜も延々拾ってたぞ」
「マジかよ!」

日向が反対側のコートに立ってボールを拾っている姿を見ていた国見は「…あいつ、一人だけ試合中みたい」と言った。

「うんうん。日向くんも成長してるね」
「…苗字さん、あいつに何か言いました?」
「言ってないよー。日向くんが自分で考えて動いてるんだよ」
「…俺たちのライバル強くしてどうするんですか」
「それはそうだけど、やっぱり頑張ってるコを見ると応援したくなるでしょ?」
「苗字さんほどほどにしてくださいよー!」
「ハイハイ」

名前は日向とは別のコートに入ると、月島のスパイクを拾う。

「(目線、助走、体の向き…月島くんの今日決まってるコース…ストレート!)」

月島のスパイクを綺麗に拾った名前に、月島は「チッ…!」と舌打ちをした。

「(まだまだだねー1年坊主!)」

名前は、ニヤッと笑う。
隣のコートにいた日向は、名前の動きを見て「おおおお!!名前さんすげえ!!」と言った。

「名前さん!?」
「…!」

日向が思わず名前のことを名前で呼ぶと、それに反応した金田一と国見。

「あいつ、苗字さんのこと名前で呼んでなかったよな?」
「…影山が呼んでるからつられたんじゃん?」
「…何か…」
「…ムカツク」

スパイク練習が終わると、サーブ練習になり、名前たちサポート組はコートの外に出て球拾いをする。



強化合宿をしている体育館の入り口では、牛島が中の様子をうかがっていた。

「若利、こっちに居たのか。今日は白布たちの方行くんじゃなかったのか?」
「ああ、行く」
「獅音は?」
「大学の練習。若利は?」
「若利くんは今週いっぱいコッチだよね」
「ん」

天童は「どうだい。妖怪の子どもはがんばってるかい」と牛島に聞く。

「…妖怪」
「…何かようかい」
「?」
「雪男なの??」
「?」
「そんな爆笑待ちみたいな澄んだ目で見ないでよ!全然面白くないからね!」

天童は、面白くもないダジャレを言い出した山形をドン引きした目で見る。

「そうじゃなくて!妖怪ぽいじゃん、烏野の10番9番」
「…確かに」

天童にそう言われ、牛島は思わず笑う。

「(妖怪ぽいのは若利くんもだけどネ。同類が気になるんだねって言ったら怒るかな)」
「…名前」
「え?」

牛島の言葉に、天童はもう一度体育館の中に視線を戻す。

「あっれー本当だ!名前ちゃんがいる!」
「苗字?昨日は居なかったろ?」
「でも居るよーん!」

山形も同じように体育館の中を見る。

「本当だ」
「なんでいるんだろう?お手伝いかな?」
「飯の時に聞いてみりゃいいだろ。どうせ時間一緒だろ?」
「ダネ!若利くんもご飯の時間まで我慢してねー!」
「ああ」

牛島はそう言うと、白布たちの練習をしている体育館に移動した。







合宿3日目が終わり、日向以外のメンバーは食堂に移動してご飯を食べる。

「美味しそうー!白鳥沢のご飯を食べる日がくるとは思わなかったな」

名前がお盆を持ちながら席を探していると、奥の方から名前を呼ばれた。

「名前ちゃーん!こっちこっち!空いてるヨー!」
「…」

名前は天童の呼びかけを無視して他の席に座ろうとするが、その前に天童が走ってくる。

「はい、無視しなーい!」
「天童くん離してくれる?私は、ゆっくり、美味しくご飯を食べたいの!」
「俺たちと座っててもゆっくり美味しくご飯は食べられるよ?」

名前の持っていたお盆を天童が奪い取るようにして持つと、そのまま歩き出す。

「天童、苗字が嫌がってるだろ」

大平がそう言うと「大平くんはいいのよ。もちろん瀬見くんもね。けど天童くんと牛島くんが嫌なの」と名前がフォローする。

「それを本人の前で言えちゃうのがすごいよねー!」
「てゆうか、あいつはいない?」
「あいつってー?」
「あいつはあいつ!天童くんわかってて聞いてるでしょ?」
「安心してよ!賢二郎なら自主練してるよ!」
「…ならいいわ」

そう言って名前は天童の隣に座ろうとするが、その前に後ろから腕をつかまれる。

「いいわけないですよ」
「国見?」

国見の後ろから金田一が不安そうに見ている。

「なんで白鳥沢の3年生たちとご飯食べようとしてるんですか?」
「え、なんでって…誘われたから?」
「あなたは誘われたら誰にでもホイホイついて行くんですか?」
「え、国見、私のことそんな風に思ってたの?ショックなんですけど!」
「及川さんにチクりますよ」
「やめてください」

金田一は「な、なあ、国見?おまえどうした?苗字さんが白鳥沢の先輩たちと仲が良いのは前からじゃねえか」と国見に言う。

「もしかして一緒にご飯食べたかった?今日は天童くんたちと食べるから、明日は一緒に食べようね」
「苗字さんもそう言ってるし、今日はいいだろ?」

国見は「…名前さんは青城の名前さんでしょう。白鳥沢なんかに浮気しないでください」と、つかんでいる腕に力を入れた。

「く、く、く、国見がデレた!!」

名前は空いている方の腕を国見の背中に回すと、思いっきり抱きしめた。

「かわいい!かわいい!国見がかわいい!」
「苗字さん、お、落ち着いてください…!」

金田一は慌てた様子でそう言うが、名前は無視して続ける。

「白鳥沢に取られると思ったの?大丈夫だよ、私の一番はいつだって青城だからね!」
「じゃあ、誰にでもアドバイスしたり愛想ふりまいたりしないでください。対戦相手褒めるとか頭悪いんですか」
「辛辣!もう少しデレ多めでお願いします」

そんな国見を見て、天童は「何なに〜きみ、名前ちゃんのこと好きなの?」と聞いた。

「名前で呼ばないでくださいゲスさん」
「なんか違う意味に聞こえるぞ!」
「ウケる〜!及川くんみたいな反応してるじゃん!」

天童は面白そうに笑う。

「名前ちゃん愛されてるじゃーん!」
「本当にね。国見がそんな風に慕ってくれてるとは思わなかったよ」
「…名前さんは青城のお母さんです」
「ちょっと待て、誰がお母さんだ」

そんな風に話していると、牛島が「早く食べないと飯が冷めるぞ、名前」と名前を呼ぶ。

「若利くんは相変わらずゴーイングマイウェイだね!」
「名前さん行きましょう」
「ちょっとちょっと、今日は俺たちと食べるんだよー!」
「部外者は引っ込んでてください」
「ハイハイ、もういい加減お腹空いた!私はここに座るから、国見と金田一はそっちに座ればいいでしょ」

そう言って名前は、隣の空いているテーブルを指さす。
国見は嫌そうな顔をするが「早く座らないと私は月島くんのテーブルに行くわよ?」と名前が言うので、しぶしぶ座る。

「僕を巻き込まないでください」

近くで聞いていた月島が、本当に面倒くさそうな顔をしてそう言った。



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