今日も対人パスから練習が始まり、サーブ練習、2対2の試合形式の練習が続く。
スパイク練習では、セッターがトスを上げてスパイカーが打つ、を繰り返し、日向や白鳥沢の控えの1年生がボールを拾う。
「(置くだけ…置くだけ…)」
黄金川のトスを打った月島に「トスどうだ!?初日より良くなったか?」と聞いた。
「…まあ、いいんじゃない」
「相変わらずだな月島!」
穴原は「初日の固さが取れてきましたね、黄金川。動きが良くなってきました」と鷲匠に言う。
「ん」
白鳥沢中等部3年の由良が隣のコートでトスを上げている。
「高さ、どうですか?」
「うん、ちょうどいい感じ」
「わかりました!」
由良のトスを国見がスパイクする。
「年上ともきちんとコミュニケーションが取れてて、いい子ですね」
名前は持ってきたドリンクのジャグを置くと、鷲匠と穴原にそう言った。
「お疲れさん」
「お疲れ様です!」
「おまえも入るか?」
「え?」
「セッターだったろ?」
「鷲匠先生、私が中学でセッターやってたこと知ってたんですね」
「当たり前だろう。北川第一の試合は全部見とる。もちろん女子もな」
「ありがとうございます。…でも、私はサポートで来たんで大丈夫です!もちろん、自主練の時にみんなが求めてくれるなら喜んでトスを上げますよ!」
「…俺はおまえのセットアップも気に入ってたぞ」
「…光栄です」
名前は、少し恥ずかしそうにしながら、でも笑顔でそう答えるとドリンクの準備をする。
練習が終わり、各自自主練を始めていた。
「名前さん」
「おー、国見も自主練?」
「するわけないですよね」
「だよね」
名前はそう言うと「どうしたの?」と質問する。
「昨日言ったこと覚えてますか?」
「ご飯のこと?」
「そうです。今日は、ちゃんと俺たちと食べてくださいよ」
「わかってるって!金田一の自主練が終わったら3人で食べようね」
「…はい」
そう言うと、国見は先にお風呂に入りに体育館を出た。
「ご飯の時間まで自主練するのはいいけど、ちゃんと休憩もとりなさいよ?」
名前が金田一に声をかけると、黄金川がうらやましそうな顔で金田一を見ていた。
「…あの子、すごいこっち見てるね」
「気にしないでください…」
金田一はあきれた顔をしながらそう言った。
「…おい」
「はい?」
月島はビブスを片付けている日向に声をかけると「チョット付き合ってくんない」と言った。
「?」
日向は一度前を向くが、再度月島の方を振り返る。
「!!?」
「2度見すんなよ」
「な…なにに…??」
「ブロック練習。自主練なら球拾い以外やったって問題無いデショ」
「!」
「別に無理にとは」
「ツッキー入りまーす!!」
日向は自主練をしているメンバーにそう叫ぶ。
「おー」
「おー!!」
「お願いしまーす!」
名前はそんな月島を見ながら「月島くんやる気じゃない。うちの国見も、もう少しやる気を出してくれたらなー」と笑った。
「名前さん!」
「ん?」
日向は名前に駆け寄ると「名前さんって、中学時代セッターだったんですよね!?」と聞いた。
「そうだよー。飛雄くんに聞いた?」
「ハイ!月島がブロック練習したいみたいなんで、トス上げてくれませんか!?」
「な!」
その言葉に、名前よりも先に金田一が反応する。
「俺だって苗字さんのトスあんまり打ったことないのに…!!」
「いいよー!」
「あざーす!!」
「金田一にもトス上げてあげるから」
「あ、ありがとうございます!!」
名前も一緒にコートに入る。
「レフト!」
名前が日向にトスを上げると、月島がブロックに跳ぶ。
「ハッ!」
「おー!」
「くう〜っ」
久しぶりのスパイクの感触に、日向は嬉しそうな顔をする。
「…」
「!?」
「日向くんてリベロじゃないんスか!?」
白鳥沢の1年生にそう聞かれた日向は「エッおれリベロに見える!?レシーブ上手げに見える!?」と照れくさそうに言った。
「いや!そういうワケじゃないスけど!」
「ハイそうかよ!!」
名前は「いいねー日向くん。相変わらず跳ぶね〜」と言った。
「名前さんのトス!超打ちやすいっス!!」
「本当?腕が鈍ってなくて良かった」
「影山のトスと違って、なんていうか、フワッと気づいたら手元に来てるっていうか!」
「ありがとう」
少ない語彙力で必死に褒めようとしている日向に、名前は思わず笑みがこぼれる。
「俺もブロックやる」
金田一がそう言うと、コートの中に入る。
「ミドル2人だと!?」
「おまえが打つなら俺が叩き落とーす」
「!」
「金田一やる気だねー!」
黄金川が「じゃあ俺も!」と同じようにコートに入る。
「まじかよん」
「ンッンッ!」
五色が咳払いすると”俺の番なんですけど”と言いたげな顔でコートに入る。
「ウエーイ止めたらァー!」
「…」
「ウエーイ」
「フン」
「ウエーイ!」
「うるせえ!」
名前が「五色くん!」とトスを上げると、黄金川は助走と体の向きでクロスに絞ってブロックを跳ぶ。
「!」
しかし、五色はストレートにスパイクを打った。
「ナイスコォース!!」
「フフンッ」
「五色くんナイスキー!」
「今のはサイドの位置取りが悪いね。ストレートガラ空き」
「だって絶対クロス打ってくると思った!」
「だよなー」
黄金川がそう言って悔しそうな顔をする。
「確かに、今の助走の向きはクロスに打つって思うかも。でもね、五色くんみたいに上手な人はギリギリでもブロックの位置を見てからコースを変えられる。だから3枚揃った時は、もう少しストレート閉めてもいいかもね」
「ウッス!」
「でも黄金川くんも上手になったね!春高の予選の時と比べると、ちゃんと見えてる」
「あ、あざーす!!」
名前はコートの中に入ると「この位置でブロックに跳ぶと、上手な人はストレートで抜けるから」と言いながらジャンプをした。
「!」
少しだけ位置を右にズレて「ここ、このボール1個分ないくらいの位置でブロックに跳ぶと、クロスにしか打てないからどシャットが決まる可能性も上がる!まあ、ブロックアウトとかリバウンドとかフェイントとかもあるから絶対じゃないけどね」と言った。
「おお〜!めっちゃわかりやすいです!あざっす!!」
黄金川は名前にお礼を言うと「次はトスのコツも教えてください!!」とお願いした。
「いいよー」
「苗字さん!次は俺にトス上げてください!」
「ハイハイ」
日向は「名前さんって、背高いですよね!俺と変わんない…」と言った。
「日向より大きいだろ?」
黄金川がそう言うと「うぅ!!」と日向はショックを受ける。
「大丈夫だよ!日向くんの年齢なら、まだまだ伸びるから!」
「アィ!」
合宿4日目が始まった。
4日目にもなると、合宿に参加している全員が慣れてきた。
「ドリンクそい!」
「サンキュー!」
「こっちにもあるよー!」
「ありがとうございます!」
黄金川があたりを見回しながら「あれ、俺の」と言うと、すかさず日向が「黄金、さっきこっちにタオル置いたろそい!」とタオルを手渡す。
「おおー!さんきゅー」
「翔陽よく見てんなー」
日向は雑巾を持ってくると「ダブルワイピンッ!」と言いながら、床に付いた汗を拭く。
「日向くんはよく動くねー」
「次、次ー!」
コートの中ではレシーブ練習が続いていた。
「国見!」
「ナイス!」
名前は国見のレシーブを見て思わず声を出す。
しかし、スパイクレシーブのミスのフォローには走らず、黙ってボールを見送った国見を見て「まったく…」とあきれた。
「もっと気合入れてやろうぜ!今のは追うトコだろ!」
そんな国見の姿を見て、同じコートにいた黄金川は声をかける。
「せっかく普段できないメンバーなんだし!もっとガムシャラにやろうぜ!!」
その黄金川の言葉を聞いて、国見は眉間にしわを寄せる。
「…」
「あー…スマン、あいつもやる時はやるからさ。おい国見!今のは追えよ!」
「ハーイ」
国見の代わりに金田一が謝る。
「ハイ、じゃあ水分とってから2対2ー」
日向が黄金川にドリンクを渡すと「…俺、アイツ苦手だ…」と黄金川がつぶやいた。
「国見か?」
「皆一生懸命やってんのに一人だけあんまヤル気なくねえ!?」
「でもあいつ、体力温存してて試合後半に本気出して来んのチョー厄介なんだぞ」
「?」
「まあ拾えるボールは追った方がいいよな」
「だろ!?楽しよーとしすぎだ!」
「!楽、か…!」
「…?」
名前は国見にドリンクを渡す。
「…国見?生きてる?」
「生きてますよ」
国見はドリンクを受け取ると、ボソッと「…俺の嫌いな言葉第2位…」と言った。
「我武者ら?」
「…名前さんも、何事にも全力で、全てにおいて一生懸命のやつが正義だって思いますか?」
「んー…時と場合によるかな。一生懸命やるのがかっこいい時もあれば、そんなに無理しないでって思う時もあるし」
「…及川さんですか」
「…一生懸命やるのは美徳だけど、それで体を壊したりしたら大変だしね。私は、国見みたいにやる時はやって、抜く時抜くっていうのが一番賢いと思うよ」
「…なんか、褒められてる感じがしないんですけど」
「そう?次は得意の2対2でしょ!国見の長所を存分に発揮してきなさい」
「…ハーイ」