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合宿も最終日を迎えた。
同じように対人パスをした後に、今日はすぐ2対2の試合になる。
国見と百沢チーム対五色と月島のチームの試合は、百沢に余裕が生まれたこともあって良いバランスだった。

「チャンスボール!」

国見はトスを上げようとするが、そのまま相手コートに返す。

「!」
「(甘え!!)」

しかし、読んでいた五色が綺麗にレシーブをする。

「ラスト」

月島がオーバーでトスを上げるが、少し低くなる。
五色はスパイクを打つが「トス低い!!雑!!!」と怒鳴る。

「(オーバー苦手だ)…ゴメン」
「ライ」

国見がレシーブをして百沢が上げたボールをスパイクする。
五色がレシーブをしたボールを月島が良いところに返すが、百沢は片腕でもしっかりとレシーブする。

「!」
「あれが届くんだねー!」

コートの外で見ていた名前は嬉しそうに笑う。

「ラスト!」

百沢のスパイクを月島がブロックをしてワンタッチを取ると、五色がカバーに入る。

「ワンチ!」
「フンッ」
「…(ちょっと割れたか…!)」

月島のトスは、少しネットから離れてしまったが高く上がる。

「(イイじゃん。十分!)」

五色は百沢の腕の間を通すスパイクを打つ。

「ダッシャアアア!!」
「ナイスキー!」
「月島…ナイストスッ…!」
「じゃあその顔はナニ」

明らかにナイスと思っていない顔で褒める日向に、思わずツッコむ月島。

「珍しいおまえのちゃんとしたトスを見て、テンションが上がると同時に悔しさも感じます…!」
「具体的且つ正直にどうも。そこまでナイスでもないし」

名前は体育館の入り口が騒がしいことに気づくと、そちらを見る。

「ゲッ!!」

そこには牛島や天童などの白鳥沢3年生と2年が来ていた。

「ヤッホー!名前ちゃん昨日ぶりー!」
「はいはい」

天童は名前に駆け寄る。

「なんでいるの?」
「練習試合だってサ!」
「練習試合?今日ってその予定だったっけ?」
「急きょ決まったんだってー」
「ふーん」

牛島が「名前、五色はどうだ?」と名前に声をかける。

「五色くんいいねー!相変わらずキレキレだよ」
「そうか」
「工は髪型もキレキレだからねー!」

名前は視線を感じ、牛島の後ろを見ると白布と目が合う。

「?」
「…」

しかし、白布は何も言わずに目を反らす。

「?」
「どうしたの?」
「白布くんって、何か変な物でも食べた?」
「なんで??」
「私と目が合ったのに、何も言ってこないから」
「さァー?」
「…そう?」



2対2の試合が終わると、穴原は一旦集合をかける。

「…ハイ、じゃあえーっと…白鳥沢学園の斉藤コーチが、えー、体調不良のため急きょここから合同練習試合を行います」

そう言いながら穴原の額からは汗が流れていた。

「斉藤先生どうしたんスか?」
「牡蠣に当たったらしいよ」

五色に聞かれた川西はそう答える。

「で、再び白鳥沢3年生及びOBの皆さんも、練習試合の相手をしてくださいます。前回より良いゲームができるよう頑張って」
「うおお…!白鳥沢全員…!こんなチャンスなかなか無えぞお…!」

黄金川は白鳥沢のメンバーが揃っていることにテンションが上がっていた。

「国見、おまえも本当はそう思ってんだろ!?内に秘めてんだろ!!?がんばろうな!!」

グイグイくる黄金川に、国見は嫌そうな顔をして無視した。



練習試合が始まると、川西は五色に「烏野の10番なんで出ないの」と聞いた。
五色が、日向が呼ばれていないに勝手に押しかけて、ボール拾いをしていることを説明すると「マジかよやるなあ!」と川西は面白そうに言った。

「ちょうみてる」

日向はコートの外から牛島を観察していた。
試合が終わると、日向は一目散に牛島のところに駆け寄って行った。

「牛島さん!」

そんな日向の姿を見て、金田一は「!日向のやつ、ウシワカに話しかけてる…」と驚いた。

「度胸あんな〜」
「おまえ同じ学校だろ」
「いや、俺たちも近寄り難いよ…」

日向は気になっていたことを質問する。

「牛島さんは、レシーブの時に何を考えていますか!」
「…次の、攻撃のことだな」

そんな日向を見て、白布は「おまえは牛島さんにアドバイス求めなくていいの。次いつ来てくれるかわかんねえぞ」と言った。

「!お、俺は!ライバルに助言を求めるというのは、なんというか」
「…」
「!?」

五色の言葉に白布は無言だが、目は”ライバルとか何の冗談だよその超不要なプライド捨てちまえよだから2番手なんだよこのおかっぱ小僧が”と言っていた。

「目で語るにも程があるだろ」
「少なくとも”行動を起こす”という点で、今お前は烏野10番に確実に1歩出遅れたワケだ」
「…!!!」

白布にそう言われ、五色は「う、牛島さん!!!」と牛島の元に走って行った。

「…そういうおまえはどうなんだよ?」
「何がですか?」
「…苗字と会えんの、今日で最後かもしれねえぞ?」

瀬見はドリンクを飲みながら名前の方を見る。
名前は、相変わらず天童に絡まれながら牛島と五色と話をしていた。

「最後に謝って、ちゃんと気持ち伝えてこいよ」
「気持ちって…」
「好きとか嫌いとかじゃなくてよ。おまえだって誤解されたまんまじゃ嫌だろ?」
「…今更じゃないですか」
「あのなぁ…苗字は誠心誠意話してくる奴を無下にしたりしねえよ。何ビビってんのか知らねえけど、このままでいいのか?」
「…放っておいてください」

休憩が終わり、次の試合が始まる。
その後、何試合か続き、最後の試合が終わる。



「お疲れ様でした。これで強化合宿は終了です。最後に鷲匠先生からご挨拶を」
「…盗めたか?上を向き続ける奴にだけチャンスは降ってくる。これからも高みを目指して登って行けよ。以上」
「ありがとうございました!!」

鷲匠の挨拶が終わり、解散となる。

「名前、1人で帰るのか?」
「んー」

牛島に聞かれた名前は「…今から携帯の電源を入れます」と言った。

「?」

合宿中は携帯の電源を切っていた名前。
及川からの連絡を完全にシャットアウトするためだった。
恐る恐る携帯の電源を入れると、そこには及川からの不在着信40件、未読メッセージが100件ほど入っていた。

「…メンヘラ彼女か!!」

そこに及川から電話がかかってきた。

「…は『ちょっと名前!!!電源切ってるなんて信じらんないんだけど!!!何考えてるのバーカバーカ!!』」

名前が返事をする前に、及川が一息でそう言った。
あまりの声の大きさに、周りにいた全員が名前の方を見る。

「ちょ、ちょっと徹!声がデカイ!」
『うるさーい!!今回ばかりは名前が悪いからね!!100悪い!絶対悪い!!!金田一と国見ちゃんもいるんでしょ!?2人にも聞いてみようよ!!』
「耳が死ぬ…」

名前は耳から携帯を離すと顔をしかめる。

『帰ってきたら説教だからね!!てゆうかいつ終わるの!?迎えに行くから何時に終わるか言いな!』
「もう終わったよ」
『そうなの!?それなら一刻も早く白鳥沢から出て!!いつもの公園で待ってるから寄り道せずに真っすぐ帰って来な!!』
「はーい」

そう言うと電話が切れた。

「…及川か?」
「及川です」
「…大変だな」
「今回ばかりは私が100悪いから仕方ない…」

牛島は「おまえは進学だったな?」と聞いた。

「うん」
「そうか」
「牛島くんもでしょ?てっきり、そのままVリーグ行くのかと思ってたから意外だけど」
「ああ。…まだまだ足りないと思ったからな」
「そっか」
「バレーボールに関わっていれば、いつかまた、会うこともあるだろう」
「そうだね。きっと、牛島くんとはこれからも長い付き合いになるんじゃないかな?」

名前は手を出すと「握手」と言った。

「…ああ」

牛島は差し出された手を握ると「ありがとう」と言った。

「世界の牛島若利になって、日本のバレーボールを引っ張っていってね!期待してるよ!」
「それは、期待に応えないとな」

そう言って牛島は笑う。

「…牛島さんが笑ってるの、レアだな」
「なんだかんだ良いコンビだったよネー!及川くんがいなければ、名前ちゃんは若利くんのお嫁さんになってたのかなー?」
「そんなこと言ってると及川に殺されるぞ」

名前が体育館を出ると、その後ろを追う白布。
そんな白布の姿を見て、瀬見は「やっと腹くくったか」とあきれた顔をした。

「賢二郎も大人になったってことだネ」
「ちゃんと謝れるんだろうな、あいつ」
「ついてく?」
「そんな野暮なことしたら可哀想だろ」
「大丈夫だろ。あいつはちゃんと伝えられるって」



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