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受験生にクリスマスもお正月も関係ない。
名前たち4人は、クリスマスから年末年始もひたすら勉強をしていた。
進路が決まっている及川は「名前〜!岩ちゃん〜!少しくらい息抜きで遊ぼうよ〜!」と騒いでいたが、名前と岩泉はそんな及川は無視してひたすら勉強をしていた。

「そんな暇ねえんだよ!」
「今更ジタバタしても仕方なくない!?」
「進路の決まっている男の高みの見物」
「そんなんじゃないよ!名前はもう判定Aなんだし大丈夫じゃん!」
「油断できないのが受験なのよ」
「意識高い名前も好きだよ!」

文句を言いながらも、勉強を頑張る名前と岩泉につられて、及川もスペイン語やアルゼンチンのことを勉強していた。
年が明けた1月1日、両親からも「さすがに今日くらいは息抜きしたら?初詣、行ってきなさいよ」と言われたので、名前は及川、岩泉と近くの神社に出かけることにした。

「まっつんとマッキーも呼ぼうか!」

及川が5人のグループトークにメッセージを入れると、2人からすぐに返信がきた。

「暇か」
「2人も第一志望は大丈夫っぽいもんね」
「後は一だけね」
「俺もなんとか間に合いそうだな」
「岩ちゃんも頑張ってたもんねー」

そんな話をしていると、名前の携帯が鳴る。

「お、白布だ」
「なんで!?」
「あの2年セッターと和解してから、ちょいちょい連絡とってるよな」
「うん。素直で良い子だわ」
「仲直りしたらとは言ったけど、そんなに仲良くしろとは言ってないのに!」

白布からの連絡は、新年のあいさつと受験についてのエールだった。

「ありがたい」
「名前って、後輩から好かれるよねー」
「そう?」
「最近は国見ちゃんも名前になついてるみたいだし」
「卒業間近なのに、遅くねえか?」
「国見はツンデレなんでしょ。そこが可愛いよねー」







名前たちが目的地の神社に着くと、すでに花巻と松川が待っていた。

「おせえ」
「寒ー」
「久しぶりー!あけましておめでとう!」
「おー、今年もよろしくな」
「よろしくー」

みんなで新年のあいさつをしてから、お参りをするために列に並ぶ。

「結構人来てんな」
「この辺に住んでたら、大体ここに来るよね」
「知り合いも来てそうだよな」
「後輩たちか?」
「あと、白鳥沢とか烏野の奴らとか」
「新年早々会いたくねえ!」
「同感」

5人が列に並んでいると、前の方でお参りが終わった人たちが続々と屋台のある方に移動している。
その中に、見知った顔がいた。

「だ、大王様!!それから青城のエースの人と、嫌なブロックの人と…ピンクの人!?」
「ひぃいい!青城の人たち!」
「本当だ!」
「…」

そこに居たのは、烏野の1年生、日向、月島、山口、そして谷地の4人だった。

「ゲッ」
「やっぱり知り合いには会うよな」
「烏野1年ズじゃん」
「ピンクの人って、俺のこと?俺だけそんな呼ばれ方してんの?」

日向は名前の姿を見つけると「あ!名前さん!」と名前を呼んだ。

「名前さん!?」
「名前さん!?」

そんな日向の姿を見て、及川と岩泉が驚いて声を出す。

「日向くん、久しぶりー。この前の合宿以来だね」
「はい!今日は皆さんで初詣ですか?」
「うん」
「明けましておめでとうございます!」
「おめでとう。今年もよろしくね」
「ハイ!」

日向が返事をすると、名前と日向の間に及川が入る。

「ちょいちょいちょい!普通に話してるけどチビちゃん!?」
「だ、大王様!?な、なんですか!?」
「なんで名前のこと名前で呼んでるのかな!?」
「こ、この前の合宿の時に!な、流れで?」
「流れで名前呼びになるって、あの5日間の合宿でそんな仲良くなったわけ!?」
「は、ハイ!名前さんには色々アドバイスももらって、めちゃくちゃ勉強になりました!」
「おまえたちのコミュ力やべえな」

そんな日向を見て山口は「日向のコミュ力って他校の先輩にも発揮されるんだ…」と驚いていた。

「俺は名前さんのトスも打ちました!めっちゃ打ち易かったです!」
「なっ!な、何それ!?」

日向のセリフに及川は「名前!なんでトス上げてるのさ!?」と名前に詰め寄る。

「月島くんがブロック練習したいって言ってたから、私が日向くんにトス上げてあげただけだよ」
「確かにそうですけど僕の名前出すの止めてもらえますか?」

月島は巻き込まれたくないがために、間髪入れずにそう言った。

「ツッキーなんだかんだ強化合宿楽しんでたんだね!」
「山口うるさい」
「ごめんツッキー!」

及川は「な、なんであんな短期間でこんなに仲良くなってるわけ!?」と衝撃を受けた。

「名前が参加してたの三連休だけだったろ?」
「実質2泊3日だな」
「さすが名前だねー」
「関心してる場合か!」

名前は騒いでいる及川を無視して「飛雄くんは来なかったの?」と聞いた。

「そうなんですよ。あいつ、誘ったのに一瞬で断ってきました!!」
「そっか。まあ飛雄くんなら断りそう」
「せっかく友達いないから誘ってやったのに!」
「日向くんったら…」

日向の悔しそうな顔を見て名前は苦笑する。

「もうお参り終わったんだよね。何をお願いしたの?」
「もちろん全国制覇っス!」
「お!大きく出たね」
「あれ?たしか願い事って、口に出したら叶わないんじゃなかったっけ?」
「マジかよ!」
「そ、そんなことないよ!」

山口の言葉に反応した日向を谷地がフォローする。

「きっと大丈夫!な、はず…!」
「ほんっと君ってそういうとこあるよね」
「あ?やんのか?」
「2人って、仲悪いよねー」
「ひゃ!ひゃい!!」

名前に話しかけられた谷地は、驚きながらも返事をする。

「でも、こうやって同級生みんなで初詣来るくらいには仲が良くてちょっと安心したよ。って、飛雄くんは今いないけど」
「そ、そうなんですか?」
「うん。飛雄くんのことは、ちょっと心配してたからね。烏野に行って、周りに理解者ができて良かった」
「あ、あの…苗字さんは、か、影山くんのこと名前で呼んでるんですね?」
「そうだね」
「お、お付き合いとか…されてるんですか?」

谷地の質問に名前は「え?」と一瞬驚くが、すぐに大きな声で笑い出す。

「私が?飛雄くんと?あはは、谷地さん面白いこと言うね!」
「へ!?」
「私が飛雄くんのことを名前で呼んでるのは、及川が飛雄くんのこと名前で呼んでるからだよ」
「そ、そうなんですね…」
「ずっと隣で飛雄ちゃん飛雄ちゃんって呼んでるから、それにつられただけで、他意はないよ」
「そうだったんですね!?てっきりお付き合いされているのかと思っていました!?」
「王様が誰かと付き合えるわけないじゃん」
「たしかに、影山が女の人と付き合ってるイメージはないなぁ」
「バレーが恋人みたいなイメージだよね、わかる」

列は進み、もうすぐ名前たちの番が来る。

「ホラ、もういいでしょ」
「そうだね」
「引き留めちゃってごめんね」
「ぜ、全然です!お話してくださってありがとうございました!」
「谷地さんは礼儀正しいね」
「日向も行くよ」

山口は、及川と岩泉と話をしている日向に声をかける。

「それじゃあ名前さん!また!」
「うん。日向くんまたね」
「ちょっと!俺たちにも挨拶していきなよね!」
「ウッス!」
「さ、さよなら!」

日向と谷地がそう言うと、先に行った月島と山口を追って行った。

「いやー、嵐のようだったな烏野1年」
「本当だな。ウチの1年とは雰囲気違うよな」
「金田一も国見ちゃんも、どっちかって言うと大人っぽいしね!」
「元気だよね、4人とも」
「10番の雰囲気に引っぱられてるんだろ」

列が進み、本殿に着く。
5人は1列に並ぶと、神前に向かって立ち、姿勢を正す。
賽銭箱に賽銭を入れて、鈴を鳴らして二拝二拍手してから目をつぶる。

「(今年も1年、元気に楽しく過ごせますように。そして、思った方向に進んで行けますように)」

名前はそう願うと、一拝をして目を開ける。
5人とも参拝が終わり、屋台のある方に向かう。

「何か食べる?」
「寒いから甘酒飲みたい」
「甘酒ならさっき配ってた気がする」
「もらいに行こうぜ」
「そうだな」

甘酒を配っているテントに向かう。

「はい!」
「ありがとうございます」

名前は甘酒を受け取ると、冷えた手を温める。

「あったかいー」
「おみくじは引かなくていいのか?」
「名前は毎年おみくじ引いてるよね?引きにいく?」
「今年はいいかなー。それよりもお守りが買いたい」
「何のお守り買うの?」
「うーん、無病息災と学業成就かなー」
「なんで2個?」

及川に聞かれた名前は、及川と岩泉を見て「2人分」と言った。

「新しい場所でも病気やケガをしないようにの徹の分と、自分の目標に向かって頑張る一の分」
「名前…!!」
「さーすが名前」
「愛されてるねー2人とも」
「本当は松川と花巻にも買ってあげたいんだけど」
「いいよいいよ、これは幼なじみ特権でしょ」
「さすが2人とも、分かってるね!」

名前は申し訳なさそうな顔をしたが、松川と花巻は「気にすんな」と笑った。

「それじゃあ俺が名前の分買うか」

岩泉がそう言うと「だったら俺も!名前の分買う!」と及川も便乗する。

「2人で1個でいいよ?」
「えー!それじゃあ俺たちの気が済まないよ」
「だな。それぞれ買おうぜ」
「まあいいけど」

甘酒を飲み干し、お守りを買った3人。

「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
「サンキュー」

名前は買ったお守りを2人に渡す。

「じゃあこれ!」
「ほら」
「ありがとう」

及川と岩泉も名前にお守りを渡す。

「2人は何買ったんだ?」
「俺も無病息災だな」
「間違いない」
「及川は?」

名前は、及川からもらった方の袋を開ける。

「えっへへー!夫婦円満!」
「夫婦じゃないわ」

夫婦円満と書かれたパステルカラーのお守りを手にしながら、名前はあきれた顔で笑った。



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