朝練のため体育館に向かうと、大きな声で名前を呼ばれた名前。
体育館の扉から、すでに来ていた侑が笑顔で名前の名前を叫び、手を振りながら名前に駆け寄る。
「侑くん!」
名前も侑に気がつくと、笑顔になり名前を呼んだ。
そして、同じように手を振りながら侑の方へと駆け寄って行く。
そんな名前のことを見て、侑は「(か、かわいすぎるやろが〜!!)」と叫びそうになる。
「侑くん!おはよ!」
「お、おう!」
満面の笑みで挨拶をする名前に、侑は返事はするが、思わず顔を逸らす。
「え!?」
「な、何やねん!」
「なんで顔逸らすの?」
「べ、別にええやろ!」
「久しぶりに会ったんだから、ちゃんと顔見せてよー!」
何とかして侑の顔を見ようとする名前から逃げる侑。
「ちょ、やめえや!俺、今めっちゃだらしない顔しとるから!」
「侑くんのだらしない顔、余計見たい!」
「やめろや!」
そんな2人を体育館から見ていた治と角名、銀島の3人は「うわー、青春だねー」と呆れた顔をした。
「何しとんねん、あのポンコツ」
「照れ隠し?面白いから写メ撮っとこ」
そう言って角名は携帯を取り出してカメラを起動させる。
「照れすぎやろ。あのだらしない顔見てみぃ!とてもやないけど侑のファンに見せられへんな」
「名前に幻滅されればええねん」
攻防戦を繰り広げている名前の後ろから、中山がやって来た。
「侑と名前やん、おはよう」
「ゆっこちゃん、おはよう!」
「おう!久しぶりやな」
「二人とも何してんの?」
名前は「久しぶりに会ったのに、侑くんが顔見せてくれないんだー」と寂しそうに言う。
「何やそれ?侑、あんた名前に会えて嬉しくないんか?」
「嬉しいに決まっとるやろボケ!嬉しすぎて締まりのない顔しとるから見せたくないんや!」
「ダッサイわ」
「えー、どんな侑くんでもかっこいいと思うよ?」
その言葉を聞いた侑は、名前の方を見る。
「ホ、ホンマ?」
「うん!やっぱりかっこいい。侑くん、おかえりなさい」
侑は「〜〜〜っ!!」と言葉にならない様子でこぶしを握ると天に掲げ、ガッツポーズをする。
「こわっ」
「きしょ」
「誰や、あんな男をイケメンや言うて騒いどんのわ。ただの苗字オタクやん」
「そこ!さっきから普通に聞こえとるからな!!」
侑は振り返ると、体育館の入り口で悪口を言っている3人に向かって怒鳴る。
「名前、ただい「ほら、さっさと行かんと、そろそろ北さんたち来んで?」
侑が言い切る前に、中山が名前の背中を押して歩き出す。
「ちょ!おま!!」
「さっさと言わんあんたが悪い」
「わっ!たしかに、もうこんな時間だ!侑くん、また後でね!」
「おう!」
名前と中山は急いでロッカールームに向かった。
そんな2人の後ろ姿を見送りながら、侑は体育館の中へと戻る。
「照れとる侑ってきしょいな」
「面と向かっての悪口やめてくれへん!?5日ぶりのチームメイトにかける言葉か!」
「まあきしょいな」
「おまえも昨日からなんなん?」
「なんだかんだ、治も侑がいなくてさみしかったんじゃない?」
「え、何それきしょ」
「名前にデレデレしてちゃんと話もできんおまえに言われたくないわ」
「何やと!!」
ケンカが始まりそうになるが「5日ぶりに会うて早速ケンカか」という北の一言で大人しくなった侑と治。
「侑、おはよう」
「おはようございます北さん!!」
「合宿はどやったん?」
「めっちゃ勉強になりました!全国の上手い連中に揉まれてきましたよ〜!」
嬉しそうに話す侑に、北は「さよか」とうなずく。
「ほんなら、合宿で得たことをこっちの練習にも活かしていかんとな」
「はい!もっちろんです!今年こそ、春高優勝してみせますよ!」
「期待してんで」
そう言いながら北が笑う。
朝練、そして午後の練習が終わり、自主練の時間になる。
「侑、おまえ疲れてるんやったらはよ帰り」
「大丈夫ですよー!昨日めっちゃ寝たんで、もう少しやってきます」
久しぶりの稲荷崎での練習に、侑は生き生きとしていた。
「元気やなー」
「元気というか、バレー馬鹿」
「昨日は家で爆睡してましたよ」
侑は「名前ー!」と名前を呼ぶと、名前の元へ駆け寄った。
「どうしたの?」
「マネの仕事終わったん?」
「そうだね。とりあえず、今は何もないよ」
「ほんならボール出ししてくれへん?トス練したいねん」
侑がそう言うと、名前は「え?私でいいの?治くんとか倫太郎くんの方がいいんじゃ…?」と聞く。
「俺が名前とやりたいねん!ええやろ?」
「えー」
名前は北のことを見ると「名前、ボール出してやりぃ」と北が許可を出す。
「わかりました!」
「何で北さんの方見るん!?」
「だ、だって、私がコートに入ってもいいのかなって…」
「ええに決まっとるやろ!名前もバレー部の一員やん!」
そう言うと、侑は名前の手を掴んでコートの中に入る。
「なるべく高めに上げてや。コートのどこに上げてもええで」
「わ、わかった!ヘタクソだったらごめんね!」
名前はカゴからボールを取り出すと、侑に言われた通りなるべく高めにボールを上げる。
「オーライ!」
名前の上げたボールの落下地点に素早く入り、ボールをオーバートスでレフトの位置に置いてあるカゴの中に入れる侑。
「おお〜!」
「こんなんめっちゃ簡単やん!こんなんで感心せんといてや!」
「え、あ、ごめん!」
名前はボールを上げながら「久しぶりに大好きな侑くんのプレーが見れて嬉しいなって思って」と微笑みながら言う。
「なっ!?あでっ!」
「わ!侑くん、ごめん!」
名前の言葉に気を取られた侑の頭に、名前の上げたボールが見事にヒットした。
「きゅ、急にいらんこと言うな!!」
「ご、ごめん〜!」
そんな名前たちを隣のコートで見ていた角名は「帰って来て早々ラブラブだねー」と冷やかした。
「なんか腹立つから乱入しよか」
「治、目がマジやん」
「俺も邪魔しよーっと」
治、角名、銀島は隣のコートに向かうと「おう、ツム!それやったら練習にならんやろ。俺らが相手したるから、トス上げぇ」と侑の邪魔をする。
「いらんわ!今、2人で練習しとんねん!」
「邪魔者イエーイ」
「俺は別に邪魔する気はないで?練習したいだけや!」
「それが邪魔なんやって!」
「名前ちゃん、俺にもボール上げて」
「うん!」
「角名ー!!どさくさに紛れて名前を奪うなや!」
侑は膝から崩れ落ちて床に手をつくと「せ、せっかく6日ぶりに名前と2人で練習しとったのになあああ」と悔しそうにする。
「そういうことは、練習外でやれや」
「浮かれてんとちゃうぞ」
「この図が面白いから写真撮りたい」
名前は、そんな4人を見ながら「フフッ、やっぱり4人揃うと賑やかでいいね!」と言って笑った。
「かっ!」
「か?」
「おまえら見んなや!!」
侑はそう言うと、治の顔に飛びついた。
「何すんねんツム!!」
「名前のかわええ笑顔見んな!!減るやろ!!」
「減らんわ!むしろ、おまえより俺の方が名前の笑顔見とるわ!!」
「んなわけないやろ!」
「1年の時からクラス一緒やねんで!!」
「うっさいわボケ!」
角名は名前の隣に移動すると「あーあー、また始まったね」と言う。
「本当、2人は仲が良いよね」
「この惨状を見てそう言える名前ちゃんは強いな」
「戻って来て早々やることがケンカって、ホンマ双子らしいな」
「だねー」
侑と治のケンカがヒートアップしてきたため、北と尾白が近づいてくる。
「またケンカしとるんか?」
「ホンマに、あの双子はケンカせんと死ぬんか?」
「北さん、尾白さん…」
「さすがに止めなアカンな。春高まであと一ヶ月やで。ケガされたらかなわんわ」
「そ、そうですよね!」
尾白が侑と治に声をかける。
「おまえら!ええ加減にせんと北がマジ切れすんで?」
その言葉に、2人はピタッと動きを止める。
「き、北さん…」
「ほ、ホンマや。あれはマジ切れ寸前の北さんや…」
角名はそんな2人を見て「デジャヴ」と言いながら笑う。
「朝も同じような光景見たな」
「本当だね」
体育館に戻って来た中山は、北の前で正座をしている侑と治に気づくと「何しとんねん、あの2人?」と名前に聞く。
「えっとね、ケンカしてて北さんに怒られてるの」
「また?朝もやっとったやん。懲りひん奴らやな」
「本当だね〜。ケガには気をつけてほしいね」
そう言って笑う名前を見て「何や、楽しそうやん?」と中山がツッコむ。
「なんか、2人のケンカを見ると、侑くんが戻って来たんだなって実感する」
「双子のケンカは名物やからな」
「だね!」
名前につられて中山と角名、銀島の3人が笑っていると、侑がそれに気づき「笑うなや!」と騒ぎ始めた。