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1月5日、東京体育館。
全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称春の高校バレー。
バレーボールの甲子園とも呼ばれ、高校バレーボールの大会の中でも、最も注目度の高い大会である。

「いや〜、1年ぶりやな!」
「せやな」
「おい、あんま広がって歩いたら邪魔になんで!」

尾白が侑たちに注意をする。

「侑くん、あんまり騒いだらダメだよー」
「名前まで子ども扱い!?」
「相変わらずやなー。少しは緊張とかせえへんの?」
「しないだろうな」
「せえへんな」

体育館の中に入ると、全国から集まった各県の代表校の選手たちでにぎわっていた。

「わー!去年も思ったけど、本当にすごい人だね!」
「本当やな」

黒須は「ほんなら荷物置いて、選手は下に集合。開会式が終わったら、一旦荷物持ってホテルや」と指示を出す。

「はい!」
「苗字たちもはぐれんようにな」
「わかりました!」
「中山!名前のこと頼んだで!」
「あんたに頼まれなくても名前はうちが守ったるから安心せえ」

荷物を置いた侑たちは、選手が集まっている体育館のロビーに向かう。

「はー!こんだけ集まっとるんかー!ワクワクすんなぁサム!」
「せやなー!」
「元気」
「少しは緊張せえや」

侑と治が騒いでいると「お、宮ツインズ発見!オッスー!」と、古森が2人に声をかける。

「古森くんやん!」
「よお」
「相変わらず元気だなー!侑は1か月ぶり、治はインターハイぶりだな!」
「お疲れー」
「角名と銀島も!勢ぞろいだな!」
「当たり前やろ」

侑はキョロキョロとあたりを見回すと「あれ?臣くんはまた避難しとるん?」と聞く。

「ああ。佐久早はアッチ」

古森はマスクをつけて端っこで眉間にしわを寄せている佐久早を指さす。

「ふぁー!相変わらずやな!」
「顔こわ!」
「オッホホ!写真撮っていい?」
「怒られてもいいなら好きにしなよ」

古森はそう言うと「そういえば、向こうに星海と影山もいたぜ?」と侑に教える。

「どやった?元気そうやった?」
「おう。なんか烏野のリベロにめっちゃ見られた」
「そら見るやろ。なんてったって”高校No.1リベロ”の古森元也やで?」
「ホントのことだけどやめろよー!」

嬉しそうに否定する古森を見て、銀島は「腹立つけど事実だから仕方ない…っ!」と悔しそうにした。

「そろそろ整列やな」
「だな!そんじゃあ2回戦、さっそく烏野との可能性もあるけど頑張れよ!」
「当たり前やろ!今回こそ、リベンジさせてもらうで!」
「お互い勝ち上がったらな!またな!」

そのタイミングで放送が始まる。

『お待たせいたしました。ただ今より、ジャパネット杯春の高校バレー、全日本バレーボール高等学校選手権大会、開会式を行います』

北は学校名の書かれたプラカードを持つと「準備はええな?」と声をかける。

「はい!」

選手入場が始まると、北海道から順番に各都道府県の出場校の名前がアナウンスされる。

『北海道代表―…』

そんな選手入場を、名前と中山も観客席から見ていた。

「わー…ドキドキするね!」
「せやな。うちらは兵庫やから、だいぶ後やな」
「これ、北海道から順番なんだもんね」
「せや」

学校名を呼ばれた選手たちが、ブラスバンドの演奏と観客たちの拍手と共に、続々と入場する。

『宮城県代表、男子、烏野高等学校。女子、新山女子高等学校』
「あ、ビデオで見た!初戦の相手になるかもしれない宮城の烏野だ!」
「宮城は毎年白鳥沢やったのになー」
「初めての相手だから、さらにドキドキだね」

名前は、烏野高校の選手たちをジッと見つめた。

『東京都代表、男子、井闥山学院高等学校。東京都代表、男子、梟谷学園高等学校。東京都代表、男子、音駒高等学校』
「あ!佐久早くんたち出てきたよ!」
「ホンマやな」
「今年は開催枠で、東京が3校だね」
「どこも侮れへんな」

そして、ようやく稲荷崎が入場する。

『兵庫県代表、男子、稲荷崎高等学校』

名前は侑の姿を確認すると「で、出てきたよ!」と中山に伝える。

「堂々としとんなー」
「侑くん、緊張とかしないのかなー」
「まあ多少はするんやない?まあ、でも侑のことやから、この空気を楽しんでそうやな」
「だよね。私がもし侑くんの立場なら、緊張で心臓が口から飛び出そうだよ」
「そら大変やな」

オレンジコートに立つ侑たちを見ながら「とうとう、始まるんだね…!今年も春高…!」と、思わずつぶやく名前。

「…せやな」
「これが、北さんたちと一緒にできる最後のバレーだもんね…」
「やんな」
「…うう〜!」
「泣くの早ない?」
「ま、まだ泣いてないよ!」

まだ開会式が始まったばかりにも関わらず泣きそうになっている名前を見て、中山はあきれた様に笑う。

「北さんたちといっぱいバレーするには、あいつらにちゃーんと勝ち続けてもらわんとな」
「だね!」

開会式が終わり、選手たちが一斉に移動し始める。

「名前ー!はぐれんといてや!」
「ゆ、ゆっこちゃん!だ、大丈夫!なんとか」

名前と中山も人混みに押されながら、稲荷崎のバレー部が待つバス乗り場を目指す。

「あっ!」

背の高い学生たちの中で移動していた名前は、後ろから歩いてきた学生とぶつかり、手に持っていたポーチを落としてしまった。

「や、やば!」
「名前!?」
「ご、ごめんゆっこちゃん!先に行ってて!」

名前は落としたポーチを拾うため人の流れに逆らいながら、来た道を戻る。

「ご、ごめんなさい!」

怪訝そうな顔をして歩いてくる学生たちに謝りながら戻ろうとするが、なかなか落とした場所に辿り着かない。
名前は、通路の端によって、人の移動が落ち着くまで待つことにした。

「(や、やばいなー。早く拾って戻らないと、みんなの練習時間が減っちゃう…)」

落としたポーチを探すために下を見ていると、頭上から「おい」と声を掛けられて顔を上げた。

「さ、佐久早くん!」
「…何してんだよ」
「あ、あのね、さっきポーチ落としちゃって…」

名前がそう言うと「ポーチ?」と佐久早が聞き返す。

「う、うん。このくらいのポーチなんだけど、中に大切な物が入ってるから…」
「どんなポーチ?」
「黄色で、狐が描いてあるよ」

佐久早は振り返ると辺りをキョロキョロと見回し、急に歩き出した。

「え?」

名前が佐久早のことを目で追っていると、佐久早の向かう先に名前の落としたポーチがあった。

「あ!私のポーチ!」

佐久早は嫌そうな顔で人混みをかき分けながらポーチのところまでたどり着くと、拾って名前のところに戻って来る。

「ほら」
「あ、ありがとう!」

名前は笑顔で受け取ると、ポーチを開けて「これ、消毒ジェルだけど使う?」と言って、消毒液を取り出した。

「…ん」

佐久早が手を広げたのを見て、名前は佐久早の手に触れないように消毒液の中身を出す。

「佐久早くん、ありがとう。私だと流れに逆らうのが精いっぱいで、ポーチが見つからなかったんだ」
「…別に。一人で突っ立ってるから気になっただけ」
「ありがとう!」

佐久早はポーチの中をチラッと見ると「それ」と聞く。

「ん?」
「その、御守り」
「え、あ、ああ!これ?」

ポーチの中に入っていた”必勝祈願”の御守りを見つけた佐久早は「宮にあげるの?」と聞いた。

「な、何で?」
「合宿中、宮がうるさかったから」
「えー、何言ってたんだろう」

名前は少し恥ずかしそうにした。

「買ったんだけど、あげるタイミング見失ってるんだよね」
「せっかく買ったんならあげたら?」
「そうだよね」
「もったいない」

名前は御守りを見ながら「でも、こんな御守りがなくても、侑くんなら全力で頑張るだろうなって思って」と、嬉しそうに言う。

「…それなら俺にちょうだいよ」
「え?」
「あげないんだろ?なら、俺がもらっても問題ないだろ」
「あ、で、でも…消毒できてないよ?」

そう言って名前は持っている御守りをポーチに仕舞おうとするが、その前に佐久早が名前の腕を掴む。

「別に。苗字のなら気にしない」
「さ、佐久早くん…?」



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