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1月6日、大会2日目。
第2試合ということで、稲荷崎のメンバーは体育館が開く1時間前に東京体育館に到着していた。

「ほんなら、体育館が開く8時までは外周やな。30分、体育館の周り走って、7時30分にここに集合や」
「ハイ!」

外周が終わり、開場の8時に一斉に体育館に入る。

「中山、苗字!スタメンと一緒にコート入って練習の補佐、他は荷物置き場に荷物」
「ハイ!」
「わかりました!」

名前たちは侑たちと一緒に30分のコート練習に入る。

「まずはトス練からやな!」
「声出してけやー」
「ハーイ!」

大見が隣のコートに行き、烏野の顧問である武田に「次、スパイクで良いですよねっ?」と声をかける。

「エッ!?え〜っと」

そこに監督である烏養が走って来ると「サーブ多めでお願いしたいです!!」と答える。

「東京勢にデカい顔させんのは、もう終いやで」
「…」

真剣な顔をしている侑を見て、名前は「気合入ってるな〜」と言った。

「ホンマやな。いつもあれくらい真剣な顔しとったらええのにな」
「私は、いつもの侑くんも好きだよー」
「ハイハイ、惚気やな」
「そ、そんなんじゃないよ!」

隣のコートで名前と中山を見ていた烏野の田中と西谷は「か、可愛い女子が二人…!?」と衝撃を受けていた。



30分のコート練習が終わり、第1試合が終わるまでしばらく時間が空く。

「体冷やさんようにな。せっかくアップしたのに意味なくなる」
「せやな。まあ、直前にもっかい体動かせるけどな」
「あれ?北は?」
「北さんは、先程テレビの取材に行かれましたよ」
「さよか」

第1試合が始まり、稲荷崎のメンバーはサブアリーナで試合が終わるのを待っていた。

「中山、試合経過見といてくれや」
「わかりました」

黒須に頼まれた中山はBコートに向かう。

「名前、タオル〜」
「ハイ!」

侑は名前からタオルを受け取ると、ポケットの中から御守りを取り出した。

「どや!ここに入れてんで」
「嬉しいけど、試合中はちゃんとカバンの中に入れといてね」
「せやな。なくしたらアカンしな」
「ポケットに物が入ってるってだけで、違和感があるでしょ?」
「…!」

そんな名前の言葉を聞いて、侑はニッコリと笑うと「なんやー名前、俺のことわかっとるやん」と言って嬉しそうにした。

「ハイ、そこ。あんまりイチャイチャしていると隣のコートからすごい見られてるよ」
「隣?」

角名に言われて隣のコートを見ると、すごい表情をした田中と西谷が名前と侑のことを見ていた。

「す、すごい見られてるね…!」
「醜い嫉妬やな〜」
「宮侑スペック盛りすぎって思われてそう」
「たしかに」

2人の後ろで練習をしている影山と日向に気づいた侑は「ちょっと声かけてくるわ」と言って隣のコートに向かう。
顔にボールをぶつけた日向を見て笑いながら影山に声をかける。

「気合入っとんな〜」
「シャ…アッ、ス!」

侑と、ちょうどその後ろにいた治を見比べながら、二人に頭を下げる影山を見て、侑は「見分けついてへんのバレバレやで飛雄くん」と言って笑った。

「飛雄くん、元気にしとったー?」
「ハイ」
「今日がんばってな??俺、下手糞と試合すんのほんま嫌いやねん」

そう言って侑は日向のことを見る。

「!」
「それは、すみません」
「何で謝った影山コノヤロウ!」
「俺はヘタクソじゃないです」
「知っとる知っとる」
「あいつはヘタクソですけど」

そう言うと、影山は日向のことを指さす。

「何てこと言うんだ!」
「弱くはないので大丈夫だと思います」

影山の言葉を聞いて、侑は不敵に笑う。

「まあ、せいぜいがんばってな」
「ハイ」

そのタイミングで中山がサブアリーナに戻って来る。

「第1試合、2セット目中盤です。南池がストレートで勝ちそうですね」
「わかった。ほんならそろそろ着替えんで」

名前は隣のコートを見ながら「そういえば、烏野もユニフォーム黒だけど、今回はセカンドユニフォーム着るんだよね」と中山に聞く。

「せやな。アッチはオレンジなんやなー」
「本当だ〜。10番の子、全身オレンジだね!」
「ホンマや!まるでみかんやん」

中山は荷物を持つと「ほんなら、うちは公式ウォームアップは参加せんから後は頼んだで」と名前に言う。

「うん!任せて!」
「また後でな」
「はーい!」

名前はユニフォームに着替え終わった侑に駆け寄ると「侑くん」と名前を呼ぶ。

「ん?」
「試合、頑張ってね」
「おん!任せときや」

侑が返事をすると、名前はほっとしたように笑う。
そして、治や角名の方を見ると「みんなも頑張ってね!」と声をかける。

「おん」
「頑張ってくるよ」
「苗字ー!先行くでー」
「あ、はい!」

大見に呼ばれた名前は、黒須と大見の元に駆け寄り、一足先にBコートのあるアリーナの中に入る。
中に入った瞬間、稲荷崎高校の吹奏楽部の演奏と、チアリーディング部の歓声、そして稲荷崎側に座っている観客たちの大きな歓声が聞こえてきた。

「うわ〜!大会のたびに思いますけど、本当にうちの応援は圧巻ですね!」
「せやな。この応援のおかげで勝ててるとこもあんな」
「嬉しいことですね」

第1試合が終わり、着替えや準備の終わった選手たちがBコートに現れると、観客たちからはさらに大きな歓声が上がる。

「あつむー!」
「アランー!」
「おさむー!」

観客席には、侑や治の名前が入ったうちわを持っている女の子たちがちらほら見える。

「やっぱり侑くんと治くんの人気はすごいな〜」
「どこのアイドルやねんって感じやろ」
「初めての公式試合の時は、びっくりしました」

公式ウォームアップが始まると、侑がネット際に立ちトスを上げる。
侑の上げたボールを角名、治、アランが順番に打っていく。

「ナイスキー!」
「ラスイチ!」

大見が最後のボールを出すと、侑と治が同時に走り出し「幽体離脱時間差!!」と叫びながら治がトスを上げ、侑がスパイクを打った。

「楽しそう〜」
「アハハ!」
「すごーい!」
「時間差じゃなくない!?」
「言いたかったんだろ」

そんな侑たちの姿を見て、観客たちは楽しそうにしている。

「いーぞー宮!」
「アハハ!」

名前は「うん、二人ともいい調子だね〜」と微笑む。

稲荷崎のウォームアップが終わると、次は烏野のウォームアップが始まる。

「ほんまよォ跳ぶな〜」
「ですね」

日向のジャンプを見ていたアランが感心したようにつぶやく。
しばらくすると、烏野のウォームアップも終わり、審判の笛が鳴ると、選手たちが整列をするためにコートに向かう。

「ほな、行ってくんで」

侑は名前の方を見てそう言うと、名前も「行ってらっしゃい」と答えて笑顔で送り出す。

「しアース!!」

春の高校バレー、全国大会2回戦、兵庫県代表稲荷崎高校対宮城県代表烏野高校の試合が始まる。
侑はボールを受け取ると、エンドラインから6歩外に歩く。
審判の笛が鳴り、侑が左腕を上げると、今まで会場に鳴り響いていた吹奏楽部の演奏や歓声がピタリと止まった。
そして、トスを上げてサーブを打つモーションに入るが、そのタイミングで観客席にいるうちわを持った女の子たちから「そおおおおれっ!」と掛け声が上がる。

「!?」

それをベンチから聞いていた名前は「(わわっ!侑くん…)」と心配そうな顔で侑を見る。

「アララ」

侑のサーブは、ノータッチで烏野コートに落ちた。

「ナーイッサー、あーつーむー!」
「ナイッサーあつむ!いいぞいいぞあつむ、もう一本ー!」
「ナイスサーブ!」

サーブの邪魔をされるのが嫌いな侑は、掛け声を上げた女の子たちの方を見る。

「わ!」
「こっち見た!」

女の子たちは嬉しそうにしたが、侑の表情を見て「!?」と驚く。

「あ、侑くん…」
「ありゃあマジ切れやな」
「まあしゃーないですね」

掛け声を上げた女の子たちに、2階の観客席にいた中山が注意をした。

「うちの応援やったら侑のサーブトスの邪魔したらあかんって知っとるやろ?にわかか」
「なっ、なによっ!テレビでやってるやつじゃんっ」
「いいから侑のサーブん時は黙っとれ。これ以上嫌われとうないやろ」
「っ!」

笛が鳴り、侑の2回目のサーブが始まる。

「アウトッ!」

侑の2回目のサーブは、エンドラインを越えてアウトになる。

「アカーン!!」
「しょぼ」
「うっさいわ!」

侑のサーブがアウトになったことで、点数は1対1となった。



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