33

『”最強の挑戦者”稲荷崎、”未知の古豪”烏野、頂に近付くのはどちらなのか!運命の第3セットです!!』

第3セットは侑のサーブから始まった。

「アウトッ」

西谷と澤村はアウトの判定をしたが、ボールは曲がりコートの中に落ちる。

「YEAAAAAH!」
「ナァーイッサ―あーつーむー!!ナイッサーあつむ!」
『最早何本目なのかビッグサーバー宮侑!!初っ端からまたもサービスエース!!』
『いやー、僕もアウトだと思いましたよ』

侑のサービスエースに、侑本人はもちろん応援団や観客が湧く。

「侑くん、すごいなー…!」
「今日はキレキレやな」

2本目のサーブはネットインで前に落ちるが西谷が辛うじて拾い、東峰のスパイクが決まった。
月島にワンタッチを取られたり、尾白のスパイクを影山に止められたりと、第2セットとは違って一進一退の攻防戦となる。

「チャンスボォール!!」

角名のスパイクは月島のブロックの横をすり抜けていくが、その先で待っていた澤村にレシーブされた。

「!!」

角名は「(…コイツ、ずっとクロスだけ塞いできたのか?)」と思い、月島に声をかける。

「毎回気持ちよく打たしてくれてありがとう」
「…思った通り打ってくれてありがとうございます」
「(意図的!こんなに自己主張の薄いミドル初めてだよ。機械かよ)」

試合は進み、2回目の侑のサーブになる。

「(その小っこい手、吹っ飛ばしたらア!!)」
「西谷!」

侑のサーブは西谷に綺麗にレシーブされ、シンクロ攻撃が決まった。

『烏野高校、宮侑のサーブを一本で切りました!!』

山口のサーブは尾白がレシーブをするが乱れてしまい「フォロー!」と、返すだけになってしまう。

「チャンスボォォール!!」

東峰のスパイクを赤木が拾うが詰まって低いボールになってしまい「スマン、侑フォロー!」と叫ぶ。

「ブロック1本!!」

侑は低く上がったボールの下に素早く滑り込むと、オーバーで綺麗にトスを上げる。
治の打ったスパイクは烏野コートに落ち、侑は満足そうに笑った。

「ナァ−イスキィーおーさーむー!!ナイスキー治!」
「アイー!!」

侑と治はコートの中でハイタッチをした。
名前は烏野ベンチで烏野のコーチである烏養が立ち上がって拍手をしている姿に気づくと「(侑くんって、やっぱりすごいんだな)」と嬉しそうに笑う。

「ほんまあの体勢からあれだけのトスが上げられるんは侑しかおらんやろな」
「本当にそう思います」

侑のトスに観客席からも「ええぞー侑ー!」と歓声が上がった。

「ナイスセットォー!」

角名は「…ほんと、よくあの体勢から上げるよねえ。アンダーでいいじゃん、アレは」と侑に聞く。

「セッターは”セット”するんが仕事やで?適切な位置にボールをセッティングするんや」
「…で?」
「アンダーは腕2本、オーバーは指10本。よりいっぱいのモンで支えたんねん。セッターやもん!」

そう言って笑った侑に、黒須は思わず拍手をする。

「侑くん…」
「苗字は泣き虫やなー」
「す、すみません!」

名前は、気づかないうちに流れていた涙を袖口で拭うと「私、初めて見たバレーが侑くんのバレーで、本当に幸せだなって思いました」と言う。

「これこそ宮侑やな」
「こんな風にバレーと向き合っている侑くんと出会えて…本当に良かったです」
「ほんっまムラっ気があってまだまだおこちゃまなところもあるけど、スパイカーに対しては誰よりも真摯で献身的やな」
「羨ましくなっちゃいますね」
「フッフ」

黒須は「理石」と呼ぶ。

「は、ハイ!」
「出番やで」
「…ハイ」
「…世界一の奴らかて、同じことずーっとやっとったらすぐ世界一から引きずり下ろされんねん」

理石は「…?」と黒須の方を見る。

「日本一にもなってへん俺らが、去年を・昨日を守って明日何になれる?」
「…」
「何かひとつでいい。今日、挑戦しいや」

角名と交替した理石は、黒須に言われた言葉を胸にサーブを打った。

「!」

理石の打ったボールは、ノータッチで烏野コートに落ちる。

「ナァーイッサーへーいーすーけ、ナイッサーへいすけ、押せ押せへいすけ、もう1本!」
「!!」
『第2セットとは打って変わって強烈なサーブ、理石平介ー!!』
「シャッシャアッ!」

ベンチでは黒須も「ヨッシャコラァ」とガッツポーズをする。

「理石くん、すごいですね!」
『烏野高校烏養コーチ、早めに流れを切ります』

タイムアウトを挟んだ後、もう一度理石は強烈なサーブを打つ。
ダイレクトで返ってきたボールを尾白が決めて、烏野高校と同点になる。
しかし、3回目の理石のサーブは澤村に綺麗にレシーブされてしまい、烏野の得点になった。

「次は3点とります…!」
「10点とか言うとけマジメか!」

ウォーミングアップゾーンに戻って来た理石を、北と銀島が笑顔で迎え入れた。



試合は後半戦、13点目を稲荷崎高校が取ったため、コートチェンジとなる。
コートチェンジ後、サーブは治。

「(全国2位が何やねん。2位?3位やったっけ?どっちでもええわ、昨日のことや)」

治のサーブは東峰のが拾う。

「(”昨日”はもう消化した。”たくさんの昨日”はもう筋肉になっとる)」

田中のボールを影山が侑を狙ってスパイクする。

「サム!」
『打ち辛いところ上手くセッター宮侑を狙って返しました影山!しかし稲荷崎には宮治がいる!』

治は侑に速いトスを上げて、侑は綺麗にスパイクを決めた。

「ナァ−イスキィーあーつーむー!!ナイスキーあつむ!跳べ跳べあつむ、もう1本!!」

治と侑のマイナス・テンポの速い攻撃が決まり、会場は大盛り上がり。

「昨日を守って、明日何になれる…」
『な、なんと”スパイカー”宮治から”セッター”宮侑へのセットアップで、マイナス・テンポの速攻を繰り出してきました!宮ツインズ恐るべしコンビネーションー!!』

治と侑はハイタッチをすると、侑が「けど低くて短かったな!」と言う。

「何ゼイタク言うとんねん!俺、セッターちゃいますけど!」
「今ならスカイラブハリケーン使えそうや…!」
「おお、おまえ下な」
「あ!?おまえ下に決まっとるやろ!」

そんな2人の会話を聞きながら、尾白は「(アホか)」と思ったがツッコミを入れずに自分の位置に戻る。

「今のがマグレだろうとむこうの動揺は必至やろな」
「っスね」

東峰の打ったスパイクを意地でも止めようとブロックした侑。

「力入ってもーたー!スマンセンッ」
「ダサ」

侑のブロックはタッチネットで烏野の得点になる。

『ここで烏野はミドルブロッカー、日向くんが前衛ですね。彼自身も得点力が高いですが、同時に囮としての機能が抜群なのでここでブレイクしたいですねえ』

日向が前衛にいるやっかいなローテーションだからこそ、早く回したい稲荷崎。

『ここでサーブは影山。ブレイクしたいところです、烏野』
「治!」

治が影山のサーブをレシーブするが、そのままダイレクトで烏野コートに返ってしまった。

「(みんな頑張れ…!)」

澤村のスパイクを赤木がレシーブすると「(長い…!)」ボールがネットを越えそうになる。
侑は、右手一本でツーアタックを繰り出そうとするが、日向と田中がブロックに跳んできたことを確認すると左手も出してトスの体勢をとった。
日向がボールをブロックすると、稲荷崎コート内にボールが落ちた。

「オーバーネットですね!」
「せや。ツーからトスに上手いこと切り替えたな」
「”ネット際”の戦いってやつですね!」
「苗字もちゃんと勉強しとるな〜」
「もちろんですよ!だって、侑くんの…みんなの好きなバレーボールのことですからね!」

そう答えた名前に「献身的やな〜」と黒須が笑った。

試合は点を取ったり取られたりを繰り返し、どちらもブレイクすることができずにシーソーゲームで進んでいった。

『ここでビッグサーバー、宮侑にサーブが回ってきます。烏野、凌ぐことができるか!』

侑のサーブは澤村がレシーブするが、そのまま稲荷崎コートに返ってきてコート内に落ちた。

『おっーっとこれはダイレクトで稲荷崎コートへ返る!烏野命拾い!』

日向のサーブになり、尾白が綺麗にレシーブを返す。

『レシーブセッターに返って、宮侑誰を使う!すでに宮治が助走に入っている!』

侑は銀島にトスを上げると、しっかり見てついてきていた月島のブロックに引っ掛かる。

『攻撃はレフトから銀島ー!!っしかしっ!烏野の壁、月島阻むー!!』
「もっかいもっかい!オー…!」
「サム!」

赤木が戻って来たボールをレシーブしようとするが、侑がボールに跳びついて直接セットアップをする。

『これは宮侑。またもファーストタッチを直接セットしたー!?』
「(ムチャツム)」
『宮治も待っている!!』

月島がついてきていることに気づいた治は、自分にセットされたボールを再びトスをした。

「は?」
『宮治、自分にセットされたボールを再びセット!?完全にフラれた烏野ブロック!そこへ後ろから尾白アランー!』



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