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「ナイスレシーブ」

完全にフリーだった尾白の打ったスパイクを、日向が綺麗にレシーブをした。

「…ッ」
「うおああああ!」
「ナイスレシーブ!」
『リベロ不在ながら強烈な攻撃を完璧に上げてみせた、ミドルブロッカー日向翔陽ーッ!』
『うわっはは!ナイスレシーブ!』

日向のレシーブに、烏野サイドは大盛り上がり。

「カウンタアアア!」
「死守や!!」

東峰のスパイクを侑が意地でレシーブする。

「フォロー!!」
「銀!」
「ブロック3枚!」

銀島の打ったスパイクはブロックに当たって吹っ飛んでいく。

「ナイスブロックアウト!」

しかし、そのボールに日向が追いついてレシーブした。

「かげやまあああ!!!」
『日向翔陽が繋いで…!?あんな後方から攻撃に入ろうとしているー!?』
「!」
「!?」

日向に気を取られたブロッカーの3人はブロックに跳ぶのが遅れて、田中のスパイクは尾白の腕を吹っ飛ばした。
しかし、その吹っ飛ばされたボールに赤木が追いつき、ボールを足で上げた。

「赤木さん!」
『これはっ!上がっているっ!!リベロ赤木、足先で繋いだーっ!!!』

そのボールを侑が返す。

『稲荷崎返せるか、返したー!!』

侑のボールはネットに掛かり、そのまま烏野コートに落ちる。

「うおあああーっ!?」

烏野が2回目のタイムアウトを取った。

『互いに素晴らしい粘りのラリーでしたが、勝利の女神は未だ稲荷崎を向いているのか…!!』

ベンチに戻って来た侑と治に、名前はドリンクとタオルを渡す。

「侑くん」
「サンキュ」
「治くん?」

治は名前から受け取ったドリンクを手に持ちながら、烏野のベンチの方を見ていた。

「飯、食うとるみたい」
「?」
「何やねんおまえさっきから、試合中に飯のこと考えよって」

治の言葉の意味がわからず、侑がそう聞く。

「焼き肉とか腹一杯食うて気持ち悪なって”もう当分ええわ”て思てても、次の日にはもう食いたなっとるやん」
「…いや、俺は焼き肉の次やったらカレーか寿司がええ」
「毎日何回も飯食うのにすぐ腹は減って、飯にありつく度幸せやって思うし、何回繰り返したってその幸せの度合いが下がることってないやんか」

治がそう言うと「ああ、おまえ飯が何でも”生きててよかった”みたいな顔して食うとるもんな。あったかくないおにぎりでも、伸びたラーメンでも」と侑が言う。

「…あいつ、それやねん」
「!」
「飯食うみたいにバレーしよる」

名前は2人の会話を邪魔しないように「(な、なるほど…)」と心の中で思った。
笛がなり、コートの中に戻ろうとしている侑に、治が「…ツム、知っとるか?」と聞く。

「腹減ってる時に何かひと口食うとな、もっと腹減ってくんねん」
「…」

そんな治の言葉に、侑も心の中で同意した。

「(ああ、そんなんわかるわうまそうに喰う奴見とると、周りもみんな腹減ってくんねん)」
『ここはあっという間に切ってきました烏野!稲荷崎の背中は目の前です』

黒須は「信介、準備しいや」と北を呼ぶ。

「自分で言うのもナンですが、ここで俺を入れることは消極的な”守り”やないですか」
「あん?俺最大の”攻め”やっちゅうねん」

北の言葉を黒須はハッキリと否定する。

「今日は宮んズがキレキレやからな。”信介を入れたるからブレーキかけんな”っちゅうことやろが」
「そうですよ!北さん、お願いします!」
「フッ」

北は笑うと「期待されてもうた」と言ってコートの中に入る。
点数は18対17。
北は後ろを振り返り、稲荷崎高校の弾幕”思い出なんかいらん”の言葉を見た。

「(正直、この言葉は好きやない。道は前だけにあるワケやないし、挑戦と無茶は別モンや)」

侑たちのプレイを思い出しながら「(ああいう連中は理解できん。けど、見とると確かに心湧き立つ)」と思った。

「(俺は”流れ”を変える様な選手やないけども、この突っ走らずにおれん奴らの背中、少しでも守ったらなあかんと思う)」

北のサーブで再開した試合は、稲荷崎のチャンスボールになり角名のスパイクを澤村が拾う。

「フン」
「オーライ、もっかいもっかい」

もう一度角名がスパイクを打つ。

「角名!」

角名のスパイクは綺麗に決まった。

「スタミナ不足じゃない?」
「!」

角名にそう指摘された月島は「…そうですね」と素直に答えた。

「?」

次の攻撃は影山と月島のミスで稲荷崎の得点となり、点数は20対17に変わる。

『烏野サーブは東峰旭。こちらもビッグサーバーですが、今日の成功率は半々と言ったところでしょうか。まだ不安定さが残ります』
『最終セット終盤で相手にリードされてる状況ですからね〜。プレッシャーは今までの比ではないと思います。ミスは避けたいところです烏野』

東峰のサーブは、今日一番の威力で稲荷崎コートに落ちた。

『んうくぉこで決めてみせたエースの意地、東峰旭!ノータッチエーッス!!!』
「サムライ兄ちゃんええぞー!」
「あっぱれサーブやー!」
「!?」

東峰のサーブを稲荷崎の観客たちが褒めた。

「んもー…あのオッサン連中…!」
「敵味方関係ないですね〜」

そんな東峰のサーブを見た侑は「腹減るなあサム」と言って笑った。

「せやなあツム」
「もういっぽォーん!」
「信介ッ!」
「ナイスレシィーブ!!」

北が東峰のサーブをレシーブすると「俺、とれたかわからんわクソ」と北と交替した銀島がベンチで悔しそうに言う。

「大丈夫だよ!銀島くんも、絶対とれたよ!」
「苗字…」

北のレシーブしたボールを、侑はレフトにいる尾白に上げる。

『レフトから尾白アランッ』

尾白のスパイクはブロックに阻まれて、今度は東峰がスパイクを打つ。

「侑!」
「ハッ」
「ナイスレシーブ!」
「(あああ、なんやろ。めっちゃエエ感じや)」

侑は助走に入ると「サム!」と治の名前を呼ぶ。

「(今やねん。いつだって、今が最高のチャンスなんや)」

しかし、治のトスと高さが合わず、ボールが落ちて行きそうになるが、それを北がフォローする。

「!」
「!!!」
「北ナイスフォロォォーッ!」

烏野のチャンスボールは澤村のバックアタックで決まった。

『烏野、遠のきかけた稲荷崎の背中をしかと摑んだーッ!!』

20対20の同点となり、次の1点は烏野に入った。

『淡々と獲り返します稲荷崎高校』

大耳のスパイクが決まって得点は21対21になり、治のサーブになる。

「(飯の時間の次やったら、この”8秒間”が好きやなあ)」

8秒しっかりと使って打ったサーブは東峰がレシーブするが乱れた。

「カバー!」
「ライト!」
「影山ラスト!」

影山は侑を狙って返してくる。

『苦しい体勢から押し込むっ』
『セッターを狙いましたね』
「治!」

侑が助走に入るが、治は尾白にトスを上げた。

「(ブロック1.5枚や!)」
『レフトから強烈に決まった尾白アランーッ!!瞬き間にリードを取り戻した稲荷崎高校ー!!』
「ナイスキー」
「やるやんかサム!!」
「せやろ」
『烏野ブロックはライトの侑くんに一瞬気を取られましたね』
『なるほど』
『体はもちろんですが、脳もクタクタでしょうねえ』

ベンチで祈るように試合の行方を見守る名前。

「(大丈夫…このまま)」

月島のサーブを尾白が綺麗に拾い、侑がツーアタックを決めた。

「!!!」
『ここでっ鳴りを潜めていたツゥーッ!!』
「ナァ−イスキィーあーつーむー!!ナイスキーあつむ、跳べ跳べあつむ、もう1本!」

北が前衛に回ってきたところで銀島をコートに戻す。

「ナイッサ」

尾白に声をかけると、北は尾白の手を叩いてベンチに戻った。
尾白のサーブを東峰がレシーブするが、稲荷崎コートにそのまま戻ってきて銀島がダイレクトでスパイクをする。

『凶暴なサーブからのっっダイレクトーッ!!』
「あと1点…!」
『稲荷崎高校王手をかけたー!!!』

尾白のサーブを東峰がなんとかレシーブするが乱れる。

「カバアアア!!」

田中のスパイクを大耳がブロックするが、そのボールを西谷が拾う。

「かげやまっ」

影山がトスを上げて日向がスパイクを打った。

「フグッ…!」
『そこから速攻を使うか烏野!?しかし尾白上げている。が、繋げるか』
「侑くん…!」

侑は落ちそうになるボールの下に入り込み、鍛え抜かれた体幹で苦しい姿勢ながらも身体を固定して綺麗なトスを上げる。

「!?」
「コワッ」
「侑くんっ!」

銀島のスパイクはまたしても西谷が拾う。

「!」
「んお」
『高校トップクラスの両校セッター、互いにハイレベルな配球を展開!』
『打つ方もすごいですね』

そして、影山の綺麗なトスを田中が際どいストレートに打ち込んだ。

『劣勢崖っぷち。ここで際どすぎるストレート1本、見事に決めて来た田中龍之介ーッ!!!』
『すんごいストレートですね。身体の向き的にまたクロスかと思ったんですけどねー!』

自分よがりともいえる影山のプレイを見て、侑は「(こいつの”オリコウサン”はドコ行った。この短期間に何があった)」と思った。



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