03

トロピカルランドでの事件以降、工藤新一が事件に顔を出す事がなくなり、名前達は心配をしていた。

「最近、工藤君見かけないですね」
「どうしたんだろう…。蘭ちゃんも、新一君から連絡がないって言ってたんですよね」
「どうせ探偵ごっこに飽きたんだろう」
「でも、高校にも来てないって言ってましたよ?何か事件にでも巻き込まれたんじゃあ…」
「だが、高校生が関係しておる事件は、ここ最近じゃあ起っておらんよ。アメリカにいる優作君のところにでも遊びに行っているんだろう」

目暮がそう言うと「そうなんでしょうか…」と名前は納得できないといったような顔をした。

「…そこまで気になるんなら、あとでワシが優作君に連絡してみるから、さっさと仕事に戻りなさい」
「分かりました」

目暮は佐藤と高木にそう言うと、名前の方を見て「苗字君、君はワシと一緒に今から出るぞ」と伝えた。

「事件ですか?」
「ああ。先程とあるマンションの住人から連絡が入ってな。なんでも、その部屋は人気アイドル沖野ヨーコの部屋らしい」
「沖野ヨーコって、あのヨーコちゃんですか?」
「あのというのがどのなのかは知らんが、とにかくそのアイドルの部屋で死体が見つかったようだ」

目暮は「とにかく詳しい話は現場で。行くぞ!」と言って、現場に向かう。



沖野ヨーコが住む部屋は、マンションの25階だった。

「…高いな…」
「どうした苗字君?」
「あ、なんでもないです」

名前は高層マンションを見上げると、一瞬足がすくんだが深呼吸をしてマンションの中に入る。
25階のフロアに到着すると、エレベーターの前で通報人である山岸が名前達を待っていた。

「あ!警察の方ですか?」
「警視庁の目暮だ。あなたが第一発見者ですか?」
「あ、はい…。と言っても、わたし以外にも何人かいまして…」
「分かりました。とりあえず、現場に案内してください」
「はい」

名前達は山岸の後について行く。
死体が発見された沖野ヨーコの部屋に到着し、中に入ると顔を青くしたヨーコと小五郎、蘭、そして小学1年生くらいの男の子が部屋の中にいた。

「警視庁の目暮です。あなたがこの部屋の住人の沖野ヨーコさんですか?」
「は、はい…。今日、家に帰って来て部屋を開けたら部屋の中に…」
「なるほど、では、あなたが部屋に帰って来た時にはもうこの男は殺されていたと」
「は、はい…」
「そして、その時一緒に居合わせた探偵が…」

目暮は振り返って小五郎の事を見る。

「この、毛利小五郎であります!目暮警部殿!」

小五郎は満面の笑みで敬礼をしながら目暮の名前を呼ぶ。

「よりによってこいつとは」
「いやー、懐かしいですなー!警部殿と追った事件の数々!!」
「ああ…おまえが部下だったおかげでほとんど迷宮入りになったがな」
「毛利さん、こんにちは!」
「おお、名前君。君も来ていたんだな」
「はい!それに蘭ちゃんも一緒なんですね」
「名前刑事、こんにちは!」

目暮は「しかし、この部屋暑いですなー」と言って、シャツをパタパタとさせる。

「いつもこんなにヒーターを強く?」
「いえ、こんなに強くは…。それに、出かける時はちゃんと電源を切ったはずなんですが…」
「そりゃあ妙ですな」

目暮が返事をすると「妙なのはそれだけじゃないですよ、目暮警部」と、どこからともなく子どもの声が聞こえてきた。
コナンが自分の虫眼鏡で床を調べていた。

「わずかですが、死体の周りに濡れた跡があります。そして死体の傍のこの椅子…こんなに荒らされた部屋の中で、なぜかこの椅子だけが立ってる…」
「…」
「…え?子ども…?」

そんなコナンを見て、唖然とする名前と目暮。

「さらに、暑すぎるこの部屋。死亡推定時刻を狂わせるためなのか…いや、待てよ。それなら死体を水につけた方が効果的に…」
「…」

コナンは驚いている名前と目暮、そして小五郎を順番に見ると「ハハハッ…!」と誤魔化すように笑う。
そんなコナンに小五郎はゲンコツを落とした。

「その子は?」
「知り合いから預かってる子ですよ」
「しょ、小学生ですか?」
「ああ。まったく、すぐに現場をウロチョロする…」

小五郎はそう言うと、コナンの首根っこを捕まえて蘭に渡す。

「仕事の邪魔するなって言ったろ!」
「最近の小学生はすごいなー…」

名前は、先程のコナンの推理を思い出しながら感心した。



「どうだ?死因は分かったかね?」

目暮が検視官に問うと「やはり、背中に刺さった包丁によるものです」と答えた。

「おそらく即死だったでしょう」
「なるほど…」

ヨーコに「あの包丁はあなたの物ですか?」と名前が聞く。

「え、ええ」
「では、あなたの指紋はついていますよね」
「は、はい」
「ま、まさか、ヨーコを疑っているんじゃ…」

エレベーターからこの部屋に案内してくれた山岸が話に入ると、目暮は「そういえば誰だね、君は?」と質問する。

「ヨ、ヨーコのマネージャーの山岸です」
「マネージャーさんでしたか」
「そうか。それで?お二人は被害者に見覚えは?」
「そ、それが」
「怖くて、まだよく見てないもので…」
「じゃあしっかり見てもらいましょうか」

2人は恐る恐る死体に近づくと、死体の顔を見る為に顔を覗き込む。

「!?」
「あ、あ…!」

2人の様子を見て「見覚えがあるんですか?」と聞いた。

「い、いえ…もっと近くで見ないと」

そう言って山岸が死体に近いていくと、血痕に足を滑らせて死体の上に覆い被さる。

「うひゃあああ!」

山岸は悲鳴を上げながら死体から離れる。

「大丈夫ですか!?」
「ダメですよ!死体に触れちゃ!」
「す、すみません!つい足が滑って…」

目暮は「で?見覚えはあるんですか?」ともう一度聞く。

「やっぱり知らない人です。なあヨーコ?」
「え、ええ…」
「まあいい。被害者の身元が分かればはっきりするさ」
「調べてもらいますね」

名前は一緒に来ていた部下の刑事に身元を調べるよう指示を出し、目暮と一緒に部屋の中の状況を確認する。

「窓には鍵がかかっていて、ここはマンションの25階です。なので、外部からの侵入する事は不可能に近い…。となると犯人が入って来たのは玄関からだと思われます」
「ああ。そして、凶器からはヨーコさん以外の指紋は発見されなかった…。つまり、犯人はこの部屋の主のあなたしか考えられない」

目暮は、椅子に座っているヨーコを見てそう言う。

「そ、そんな!わたし人殺しなんか!!」
「そうですよ、警部殿!ヨーコさんは、わざわざ私に依頼を…」

小五郎が必死になってヨーコを庇うが「フンッ、依頼主が犯人というのはよくある事だ」と目暮が否定する。

「しかしですねー…」
「普通、合鍵とかあんじゃねーの?」

コナンがポロっとそう言うと、蘭が後ろからコナンの口を塞ぐ。

「ダメ!!」
「ま、またこいつ!」
「合鍵は作られているんですか?」

名前がヨーコにそう聞くと「合鍵ならマネージャーの山岸さんが…」と答える。

「ハ、ハイ…」
「それ以外に合鍵を持っている人はいますか?」
「いえ…」

それを聞いた小五郎は「な、なんだと…そうか分かった!!」と叫んだ。

「え?」
「犯人は…マネージャーの山岸!おまえだ!!」

小五郎は勢いよく山岸を指さした。

「な!?」
「おまえはきっとヨーコさんにフラれたんだ!!その腹いせにこんな事を…!」

山岸の胸ぐらを掴んで詰め寄る。

「も、毛利さん、そんな証拠もないのに…」
「おいおい、ヨーコさんが犯人じゃない根拠は?」

目暮が聞くと「しょ、証拠はともかく、こーんなに可憐なヨーコさんが、犯人なわけないでしょ?」と小五郎が答える。

「あ、そう…」

小五郎の答えを聞いて名前と目暮は呆れた顔をした。

「た、確かにボクは合鍵を持ってましたが、無くしちゃったんですよ!」
「あ〜っ!?てめえ、ウソ言ってんじゃねーぞ!?」
「ほ、本当です!5日前にテレビ局の楽屋で…!」
「それは間違いありません!そのテレビ局の人にも、一緒に探してもらったから…」

ヨーコがそう言うと、小五郎は「チッ…ヨーコさんがそう言うなら…」と山岸の言葉を信じた。

「それに、それからなんです。わたしの留守中に、部屋に誰かが入ったような気配を感じ出したのは…」
「毛利さんに依頼したのはそれが理由ですか?」
「は、はい…。写真が送られてきたり、部屋の中の物の位置が変わっていたり…なんとなく違和感を感じるようになったので」
「ウーム、それが本当なら…ヨーコさんが人に恨みを買うような心当たりは?」
「いえ…ヨーコにかぎってそんな…」

山岸はそう言ってヨーコの事を庇った。



>> dream top <<