「んっ?どうしたの?」
「あそこのソファーの下って見た?」
「まだ見てないよ」
名前は、コナンが指をさしたソファーを見る。
「何かあった?」
「うん!イヤリングが落ちてたよ」
「イヤリング?」
ソファーの下をのぞき込むと、コナンの言う通りイヤリングが1つだけ落ちていた。
ハンカチを使ってイヤリングを拾うと、名前は「目暮警部!」と目暮を呼ぶ。
「なんだね?」
「あちらのソファーの下に、イヤリングが」
「イヤリング…?」
名前が目暮にイヤリングを見せると「そ、それはゆう子さんの…」とヨーコが言う。
「ゆう子さん?」
「わたしと同期デビューの池沢ゆう子さんです。よく仕事で一緒になるんで、何度も見た事があるんです」
そう言うと「でも、どうしてゆう子さんのイヤリングがわたしの部屋に?」と疑問に思うヨーコ。
「そ、そういえば、池沢ゆう子はドラマの主役をヨーコに取られて、恨んでいると聞いたことがあります…!」
「ゆ、ゆう子さんがわたしを…」
「フフフッ…今度こそ分かったぞ!犯人は池沢ゆう子だ!ヤツを捕まえろ!!」
小五郎はそう叫ぶと「ですよね、警部殿!!」と言った。
「あ、ああ…署まで参考人として…いや、直接ここに来てもらおう」
「そういう事だ!急げ!!」
「は、はい!!」
「な、なぜか毛利さんが指示を出しているのね」
名前は小五郎たちのやり取りを聞きながらも、現場の状況を整理していた。
「(一番怪しいのは部屋の住人である沖野ヨーコさんだけど、わざわざ探偵である毛利さんに依頼をしてまで第一発見者を装うのはリスクがあり過ぎる気がする…でも、池沢ゆう子さんのイヤリングが落ちていたのも気になる…)」
警察官が池沢ゆう子を事件現場である沖野ヨーコのマンションに連れてくると、すぐに事情聴取が始まった。
「たしかにそうよ。私は、ヨーコにドラマの主役を取られて恨んでいたわよ!でも、これはヨーコの部屋で起こった殺人事件でしょ?なんで私がわざわざここに呼び出されなきゃいけないわけ!?」
現場について早々、池沢は不機嫌な表情でそう言った。
「疑うんなら、家主のヨーコを疑うのが筋じゃなくて?」
「ゆ、ゆう子さん…」
「き、貴様…!」
「たしかに、おっしゃる通りです。池沢ゆう子さん…」
小五郎をなだめながら目暮は現場の状況をもう一度説明する。
「死体の背中には部屋にあった包丁が刺さっており、その凶器からは沖野ヨーコさんの指紋しか発見されてない…。しかも、この部屋は25階!鍵を持っている者以外は、外部からの侵入は不可能だ」
「フフフ、そういう事なら私は関係ないわね!だって、私、ここに来たの初めてなんだもの!」
「じゃあ何でこれがここにあるんだ!?」
そう言って小五郎は、部屋の中に落ちていた池沢のイヤリングを出す。
「あんたのだろ?このイヤリング!」
「あらそうよ!どこかでなくしたのかと思ってたけど、見つけてくれたのね」
「イヤリングだけじゃない!下の管理人も証言してるんだ!あんたに似た人を見たってな!」
「似た人は似た人よ!私じゃないわ」
池沢は「バカバカしい、ちょっとトイレ借りるわよ!」と言ってトイレに向かった。
「ま、待て!まだ話は…!」
「しつこいわね!!私のイヤリングが落ちてたぐらいで犯人にされちゃたまんないわよ!!早く帰らせてよ!私だって忙しいんだから!」
そう言うと、一度ヨーコの前に戻り「フン、今人気No.1のヨーコほどじゃないけどね」と言った。
「…」
「でも、この事がマスコミに知れたらあなたのイメージは急降下…そしたら、あなたも暇になるかもね!ホホホホッ!」
池沢は、高笑いしながらトイレに向かい、ドアを開けて中に入って行った。
「あれ?」
名前は池沢の様子を見て違和感を覚えた。
「(どうしてトイレの場所を知っているんだろう…)」
トイレから出て来た池沢は、リビングに置いてある一人掛けのソファーにドカッと座ると「で、どうするの?この事がマスコミに知られたら大変なんじゃないの?」とヨーコに言う。
「ゆう子さん…」
「まあ、私には関係ないけどね!」
「しかし、あなたもこの事件と無関係とは言えないんじゃないのかね?」
「何それ」
「そうだ!あんあたは絶対この部屋に来た事がある!」
小五郎が池沢にそう叫ぶと、池沢は小五郎を睨む。
「もう!何度言ったら分かるのよ!?私はここに来た事ないって言ってるでしょ!?そんなに言うなら証拠を見せなさいよ!」
「だから、あんたのイヤリングが…!」
「あれはなくした物よ!もしかしたらヨーコに盗まれたのかもね」
「そ、そんなゆう子さん…」
池沢はカバンからタバコを取り出すと、棚の上に飾られていた自由の女神の置物を手に取って火をつけた。
「フン、どうだかね…」
「!?」
「とにかく、帰らせてもらうわ」
「へーっ、これライターなんだ!!」
机の上に置かれた自由の女神の置物にコナンが触れると同時に、名前が「やっぱり…池沢さん。ここに来た事がないと言っていますが、それは嘘ですよね?」と言った。
「!?」
名前の言葉に池沢だけではなく、コナンや小五郎達も驚いた顔をした。
「な!?」
「この置物、コナン君が言うように一見ライターには見えないただの置物ですよ?どうしてこれがすぐにライターだと分かったんですか?」
「し、知り合いの家に、たまたまそれと同じ物が…!」
「どこの家だね?部下に行かせて調べさせよう」
「そ、それは…」
池沢に目暮が詰め寄ると「それに、トイレの場所も知っていましたよね?たしかにマンションの作りで大体の位置は分かるかもしれませんが、あんなに迷いなく行けるのはおかしくないですか?」と名前が続ける。
「たしかに、一度も来た事がないのになぜなんでしょうねー?」
「あ、あ…」
小五郎が池沢に近づき「なぜだが言ってやろうか?」と言う。
「それは池沢ゆう子!おまえが犯人だからだ!!おまえはヨーコさんにスキャンダルを起こすために、この部屋でこの男を殺したんだ!!」
「ち、違う…私は殺してない…!その男が急に襲ってきたから抵抗しただけよ!殺してなんかいない!」
池沢の供述を聞き「お、襲ってきた?」と小五郎が聞く。
「この部屋でか?」
「そうよ…」
「じゃあ、あんたやっぱりこの部屋に…」
「そうよ!入った事があるわよ!楽屋で盗んだ、この部屋の合鍵でね!!」
「ゆう子さん…」
池沢は、部屋に侵入した事を認めた。
「最初は、私の仕事を取ったヨーコへのただの嫌がらせだったのよ!無言電話をかけたり、ヨーコを隠し撮りした写真を送ったり…でもヨーコは平気な様子で仕事してたわ!だから、私頭にきてヨーコの留守中に部屋に忍び込んで探してたのよ…何か、スキャンダルのネタはないかってね…」
池沢はそう言うと「でも、今日は昼間入ったらいきなりその男も入ってきて…」と続けた。
「私、必死で抵抗して、なんとかその場から逃げたのよ…」
「なるほど、その時ですな。あなたのイヤリングが取れたのは」
「フン、勢い余って殺しちまったんじゃねーのか?」
「殺してないって言ってるでしょ!?」
名前は、池沢の話を聞いて「…同じ女性なら、そのような行為がどれほど怖い思いをさせる、本当に分からなかったんですか?」と聞いた。
「えっ?」
「無言電話や隠し撮り…何度もそんな事をされて、本当に平気だと思ったんですか?」
「…っ!」
「苗字君…」
「もう二度と、そんな事しないでください」
名前が怖い顔で池沢を見ると、池沢はバツの悪そうな顔をした。
「警部!!被害者の身元がわれました!」
「おお、そうか!」
警察官が資料を持って部屋に入ってきた。
「藤江明義22歳、港南高校卒業後、角紅商事に勤務、現在はその会社を辞めて…」
「港南高校?」
その言葉にヨーコはビクッと反応をした。
「港南高校と言えば、たしかヨーコさんが通ってた高校も…」
「ぐ、偶然ですよ。なあ、ヨーコ?」
「…」
「そうだよな?」
「わ、わたし…その人知ってます!!」
「何!?」
「ヨーコ?」
そう言うと、ヨーコは「し、知ってるどころか…その人は…高校時代付き合っていた、わたしの彼氏です!!」と答えた。