名前は降谷からのメールを見て苦笑いをしていた。
「零君ったら、心配性なんだから」
爆弾事件に巻き込まれたという事で、名前の事を心配する長文のメールが届いたのだった。
心配させてしまい申し訳ないという気持ちと、嬉しい気持ちが入りまじり、名前は上がりそうになる口角を引き締める。
「いけない、いけない。零君は心配してくれてるんだから」
携帯をポケットに仕舞うと、いつものようにコルクボードに飾られた写真に向かって「行ってきます」と声をかけた。
「ええ!?目暮警部がボウガンで撃たれた!?」
名前は、登庁してすぐに白鳥からの報告を聞いて驚きの声を上げる。
「そうなんです。今朝、ランニング中に撃たれたそうで、警察病院に搬送されました」
「そんな…!」
「数日の入院が必要みたいですが、命に別状はないそうです」
「そ、そっか」
白鳥は机に上に置いてある証拠品の袋を持ち上げると「ボウガンを撃ったと思われる場所に、こんな物が置いてあったそうです」と言って名前に見せる。
「刀?何だろう…」
「紙製の、刀ですよね?」
「うーん…」
「とりあえず、目暮警部の所に行って、話を聞きに行きましょう」
「そうだね」
名前は白鳥と車に乗ると、急いで警察病院に向かう。
病院に到着し、受付で目暮の病室を聞くと部屋に向かった。
「目暮警部!」
「苗字君に白鳥君」
「大丈夫ですか?」
「ああ。脇腹をボウガンで撃たれたが、急所は外れているし、問題なさそうだ」
「そうですか…良かった」
名前はホッとすると、白鳥が「しかし、なぜ目暮警部が…」と聞く。
「職業柄、恨まれる事はあるからな」
「私達が絶対に犯人を捕まえるので、目暮警部は傷を治す事にだけ専念してくださいね!」
「ああ、ありがとう」
そんな話をしていると、病室のドアが開き、小五郎や蘭、そして子ども達が入って来た。
「警部殿!」
「おお、毛利君!わざわざ来てくれたのか。それにみんなも」
名前は小五郎にお辞儀をする。
「ちょうどみんなでハイキングに出かけるところだったんです」
「警部殿、傷の具合は?」
小五郎は名前に聞くと「幸い、急所を外れてましたので、命に別状はありませんが、数日の入院が必要だそうです」と答える。
「ねえ警部さん?」
「ん?」
「どうしていつも帽子かぶったまんまなの?」
入院着を着ているにも関わらず、いつもの帽子をかぶったままの目暮に、不思議に思った歩美が聞く。
「んっ?あ、まあ…いいじゃないか」
「きっと薄いんだぜ」
「大きなコブがあるのかもしれませんよ」
白鳥は警察手帳を取り出すと、車の移動中に部下から聞いた捜査状況を小五郎に伝える。
「使用されたのは、ハンドガンタイプのボウガンと思われます。目暮警部と知って狙ったのか、たまたま通りかかった警部を面白半分に撃っただけなのか、その両面から捜査を開始しています」
ベッドサイドにいた元太が「なあなあ、警部のおっちゃん!拳銃持ってたんだろ?」と聞く。
「それで逃げられちゃったの?」
そんな子ども達に、小五郎が「ジョギング中に拳銃を持ってるわけないだろうが」と言う。
「それに、たとえ持っていたとしても、ワシは毛利君と違ってそっちの腕はイマイチだからだな」
「えっ?お父さん拳銃うまかったんですか?」
蘭が驚いて目暮に聞く。
「警視庁内でも1〜2を争う腕前だったんだ」
「警察学校の射撃訓練の時に、毛利さんの伝説を聞いたよ〜!初めての射撃訓練で、全弾ど真ん中に当てた天才だったって!」
名前がそう言うと、蘭は「へぇ!意外です!」と驚きの声を上げる。
「ところで、ボウガンを撃ったと思われる場所から妙な物が発見されました」
「これみたいです」
名前は、袋に入った証拠品を取り出して小五郎達に見せる。
「何じゃこりゃ」
「西洋の刀みたいね」
「これが何を意味しているのか、まだ分かっていません」
「犯人からのメッセージか…」
「とりあえず、私達は捜査に戻ります。毛利さん達はどうしますか?」
「そうだな。あんまり長居しても、警部殿がゆっくり休めないからな」
名前は「それじゃあ、私達は先に失礼しますね。毛利さん、何か分かったら私に連絡を頂ければ嬉しいです」と言って、白鳥と2人で目暮の病室を出た。
目暮がボウガンで撃たれた次の日、小五郎の妻である妃英理が毒物を摂取して救急車で運ばれたと名前のもとに連絡が入った。
「母は…?」
「ご安心ください。すぐに胃の洗浄をしましたので、命に別状はありません」
「良かった」
蘭と妃弁護士事務所の栗山が安堵の表情を浮かべる。
「ハァ…」
小五郎も安心したようにため息をつく。
「やはり毒物ですか?」
「ええ…農薬系の物かと思われます」
処置室から出て来る英理に駆け寄る蘭。
「お母さん!」
「お母さん…」
「蘭…」
「英理」
小五郎が英理の事を心配そうに見つめると「あなた…来てくれたの?」と英理が嬉しそうに答える。
「大丈夫?おばさん」
「コナン君も…ありがとう、大丈夫よ」
3人は心配そうに英理の事を見つめるが、受け答えがしっかりとできている事に安心した。
「念のため、今日1日は大事を取って入院したほうがいいでしょう」
「よろしくお願いします」
蘭と栗山が看護師達と一緒に英理の病室について行った。
「それにしても、警部に続いて英理まで…これは偶然なのか?」
「偶然…なんでしょうか?」
「ところで、チョコレートを食べた途端倒れたとか?」
「はい、事務所の郵便受けに入っていたそうです」
白鳥に聞かれた刑事が、証拠品であるチョコレートの包み紙を見せる。
「ジゴバだ…そ、それにこの紙製の花」
「まさか…同じ犯人?」
「あれ?その花…」
「見覚えが?」
白鳥に聞かれた名前は「…どこかで見た気がするんだよね…」と言う。
そして同じ日の午後、今度は阿笠がボウガンで撃たれて米花中央病院に搬送されたという連絡が入った。
「毛利さんの近しい人が、立て続けに3人も…」
「何かありますね」
「目暮警部…妃さん…そして阿笠さん…剣…花…それにこの剣…。もしかして」
「何か分かりましたか?」
「…確信はないけど…。とりあえず、阿笠さんの病室に急ごう」
阿笠の病室に到着すると、小五郎と蘭、そしてコナンが待っていた。
「阿笠さん、大丈夫ですか?」
「ああ、心配はいらんよ。この体勢はちとキツイんじゃがな」
腰の下あたりをボウガンで撃たれたせいでうつ伏せで寝ている阿笠は、お腹が苦しそうだった。
「ねえねえ、名前刑事」
「ん?どうしたの?」
「名前刑事も、もしかして気づいた?」
「…もしかして、コナン君も?」
名前が聞くと、コナンは得意げな顔をしてうなずいた。
「今回の事件って、やっぱりトランプだよね!」
コナンの言葉に、小五郎は「トランプ?」と不思議そうに聞き返した。
「うん。犯人はトランプの絵札に合わせて犯行をやってるんだよ。最初に襲われた目暮警部、名前は”十三”でしょ。13って書くからスペードのキング」
コナンは持ってきていたトランプを見せる。
「この王様が持ってる剣。現場に落ちてたのと同じ形じゃない?」
小五郎はトランプと写真をコナンから受け取ると「う〜ん…」と見比べる。
「次に、蘭姉ちゃんのお母さんの”妃”は、英語でクイーンって言うでしょ。だからスペードのクイーン。この女王様が持ってる花、チョコレートの包み紙についてたのと同じ花だよ」
そう言うと、コナンはまたトランプと写真を見せて蘭に渡す。
「あっホント!同じだわ」
「しかし、阿笠博士と11というのは…」
「博士は、名前が阿笠博士で”士”っていう字は十と一の組み合わせだよ。だからスペードのジャック。ジャックは元々兵士の意味があるし、この剣みたいな物…」
#阿笠邸の庭に落ちていた証拠品を名前が見せると、トランプと見比べる小五郎。
「同じだ、間違いない」
「でも、どうしてトランプ?それもスペードなのかしら?」
「スペードには”死”の意味があるんです。同じようにハートには”愛”、ダイヤには”お金”、クラブには”幸福”の意味があります」
「じゃあ、犯人はトランプになぞらえて名前に数字の入っている13から1までの人物を、順に殺そうとしているのか」
「それも、おじさんに関係のあるね」
「んっ…」
「えっ!?」
コナンは名前の方を見ると「って、名前刑事も気づいてたって!」と言った。
「名前刑事!すごいですね!」
「え?あ、そんな事ないよ〜。私が気づいたのはトランプってだけで…」
「またまた〜」
「コナン君の説明、分かりやすくてすごいね!本当に小学生なの?」
「ほ、ホラ!ボクもトランプでよく遊んでるからさ!」
「そっかー」
そう言ったコナンに名前は感心した。