名前は、警察手帳を取り出すと「唯一の手掛かりのバイクのナンバーは盗難車でした」と言った。
すると、阿笠の病室のドアが開き、目暮が病室の中に入って来る。
「目暮警部!」
「大丈夫ですか!?」
「どうしてここへ?」
入院していたはずの目暮が顔を出し、名前達は驚いた顔をする。
「いや、英理さんに続いて阿笠博士まで狙われたと聞いてな」
「しかし、傷口はまだ…」
「ちゃんと縫ってあるから大丈夫だ」
心配そうに傷のあたりを見る小五郎に、目暮がそう言う。
「話は聞いたよ。犯人は恐らく、村上丈だ」
「村上丈…」
「村上丈…?」
「何者ですか?」
「一匹狼のカード賭博のディーラーでな、10年前殺人事件を起こして1週間前に仮出所したばかりなんだ」
「カード賭博のディーラーって?」
蘭が聞くと、阿笠が答える。
「トランプの賭博で、客に札を配る人の事じゃよ」
「これが10年前の村上丈だ」
そう言って、目暮はディーラー時代の村上の写真を見せる。
そこには左手でカードを配る村上と、その村上の事を見ている客達が写っていた。
「村上か…たしかにあいつなら俺に恨みを抱いても無理はない」
「どうして?」
「俺がヤツを逮捕してからだ」
「そんな!刑事が犯人を逮捕するのは当たり前じゃない!」
「そりゃそうなんだが…」
白鳥が「その事件なら私も聞いた事があります。たしか、その男は所轄署に連行された後で…」と話そうとするが、目暮に止められる。
「白鳥君!その話はもういい」
「え?」
そんな目暮を不思議そうな顔で見る蘭とコナン。
「しかし、村上丈はなぜ真っ先にこの俺を襲わないんだ?俺に恨みがあるなら直接…」
「それは、君を苦しめるためだろう。真綿でジワジワと首を絞めるようにな」
「ねえ、おじさんの知り合いで名前に十のついた人はいないの?」
「ん?」
名前は「た、たしかにそうですね!」と小五郎の方を見る。
「次に狙われるのは、その人かもしれないですよ」
「十か…十…とお…あっ!十和子さん!」
小五郎は銀座にあるクラブのママである十和子の事を思い出し、その場にいた全員で銀座のクラブに向かった。
「いらっしゃいませ」
「あら、毛利先生」
「あっ十和子さん!」
十和子を見つけた小五郎は、彼女の傍に駆け寄ると「無事だったんですね!」と言って両手を握る。
「無事って、何かあったんですか?」
クラブに残った名前と小五郎と目暮。
小五郎はタバコを吸いながらため息をつく。
「ハァ…」
「毛利君」
「あっ」
「どうしたんだね?ボーッとして」
「ああ、いや、何でもありませんよ」
そう答えた小五郎は、後ろを振り返ると接客をしている十和子を見る。
「毛利さん…。きっと、大丈夫ですよ」
「…ああ」
蘭とコナンを送り届けた白鳥がクラブに戻って来ると、そのまま4人で十和子の警備を続けた。
お店の営業時間が終わり、十和子が帰宅するのを見届ける。
マンションの中に入った事を確認すると、小五郎は「警部、私は非常口を張ります」と言って車を降りる。
「あっ!待ちたまえ、毛利君!」
目暮が止めるのを無視して、マンションの非常口に向かう。
「毛利さん…」
「相手が美人だと、すごい張りきりようですね」
「んん…」
張り込みを続けていると、名前の携帯に蘭から電話がかかってきた。
「蘭ちゃん?もしもし?」
『あ、名前刑事!おはようございます!』
「おはよう。どうしたの?」
『あの…名前刑事は辻弘樹って知ってますか?』
焦った様子の蘭に、名前は疑問を持ちながらも質問に答える。
「辻弘樹?って、あのプロゴルファーの?」
『はい。コナン君が気づいたんですけど、”辻”の字にも十が入っているんです』
「辻…」
会話を聞いていた白鳥は、辻の字を空中に書くと「ホントだ!入ってます!」と言う。
『今、辻さんの家へ電話したら30分くらい前にヘリポートへ向かったそうです』
「分かった!蘭ちゃん、ありがとう!」
名前は電話を切ると「目暮警部!」と名前を呼ぶ。
「所轄署に連絡して、すぐに張り込みの交代をよこしてもらってくれ」
「はい!」
目暮は車を降りると、小五郎を呼び戻しに行く。
小五郎を呼び戻した後、4人は急いで辻のいるヘリポートに向かった。
「辻さん!」
「ああ、毛利さん?どうしたんです?この前誘った時はヘリコプターは苦手だって」
「いやあ〜私も来たかったわけではなかったのですか…」
「辻弘樹さんですね。今日のフライトは中止にしてください」
「えっ?」
名前がそう言うと、辻は驚いた顔をする。
「実はですね、今ある連続傷害事件を追っていまして。その事件の被害者が毛利君に関係する名前に数字の入った人物なんです」
「はあ?」
「ですから」
目暮が続きを話そうとするが「お父さん!」という声が聞こえてきて話が中断した。
声のする方を見ると、そこには蘭とコナンがおり、名前達の方に走って来る。
「ん?こら、おまえ達!何しに来た!?」
「”何しに来た”はないでしょ!私達だって事件の当事者よ。お父さんの娘なんだから!」
蘭にそう言われた小五郎は反論できずに黙る。
「ううっ…」
「ら、蘭ちゃん、落ち着いて」
名前は興奮している蘭を落ち着かせる。
「それで、何でしたっけ?毛利さんに関わる人間が次々と襲われているんですか」
「そうなんです。それも、13から順に。だから次は10のあなたが危ないんですよ」
「とにかく、今日の飛行はやめられたほうが…」
「大丈夫ですよ。そんなに心配なら警部さんと毛利さん、それに君も、一緒に乗られたらどうです?」
辻は目暮、小五郎、そして名前の事を順番に指をさして提案する。
「あ〜いやあ、空を飛ぶ物は…」
小五郎は冷や汗をかきながら後ずさる。
「私もですか?」
「ええ。俺はね、可愛い女の子を隣に乗せて飛ぶのが好きなんだよ」
そう言ってウィンクをした辻に、名前は「ア、アハハッ…」とひきつった笑みを見せる。
「ところで、今日のフライトはどちらへ?」
「東都空港です。途中、色々と回りますけど」
「フライトプランはいつ提出を?」
「え〜っと…たしか一昨日空港事務所に」
それを聞いた白鳥は「警部、もしかしたら村上は東都空港で待ち伏せしてる可能性も…」と言う。
「よし、君は車で東都空港へ向かってくれ」
「はい!」
「毛利君!苗字君!念のためだ、君達とワシはヘリに同乗するぞ!」
「ええ〜っ!!」
「わ、私もですか!?」
「蘭君、気持ちは分かるが君達はここまでだ」
「えっ?でも…」
蘭は食い下がろうとするが、思い直して「分かりました…」と返事をする。
「警部殿、私も白鳥刑事と車で…」
「自分だけ逃げるつもりか!」
目暮は小五郎の肩を掴んでヘリコプターに向かう。
「いや、その私、トイレへ!」
名前が操縦席の隣に乗り込もうとすると、コナンが足下に隠れている事に気づく。
「!?コッ、コナン「しっー!!」
名前がコナンの名前を叫びそうになると、コナンは人差し指を口元に当てた。
「ダ、ダメじゃないの!?」
名前がなるべく小声でコナンに聞くと「だ、だって、ボクもヘリコプター乗ってみたかったんだもん」と答える。
「まったくもう…」
「お願い!今回だけ特別に!」
「危ないかもしれないんだよ?」
「大丈夫だよ!」
目暮は小五郎をなんとかヘリコプターに同乗させようと必死で、名前とコナンが話している事に気づいていない。
「…仕方ないなぁ。多分大丈夫だと思うけど、本当にいいのね?」
「うん!」
「…ハァ。分かった」
そう言うと、名前はコナンを自分の膝の上に乗せた。
「え!?」
「ここじゃないと目暮警部達にバレちゃうよ?そしたら降ろされちゃうけどいいの?」
「うっ…!」
「小学生なんだし、遠慮しないの!」
名前は顔を赤くしているコナンを見て「可愛いね〜コナン君」と言いながら頭を撫でた。
「子ども扱いしないでよー」
「小学1年生はまだまだ子どもです」
「う〜!!」
コナンは赤くなった顔を隠すように前を向いた。
辻が操縦席に乗り込むと「おっ、一緒に乗るかい?」とコナンに声をかける。
「うん!だけど、ヘリコプターが飛ぶまでおじさん達には内緒にしておいてくれる?」
コナンが辻に頼むと「もちろん」と言って操縦席に座る。
目暮が小五郎を引っ張って後ろの席に乗り込もうとする姿を確認すると、辻は胸ポケットから目薬を出してさす。
「け、警部!私まだ死にたくは…!」
「ええい!死ぬときは一緒だ!」
目暮は扉のそばで悪あがきをしている小五郎を押し込むと、自分も中に入る。
「ひえ〜っ!やっぱり死ぬんだ!」
「も、毛利さんったら…」
頭を抱えて震えている毛利の姿を見て、名前は苦笑した。