「こんにちは、毛利さん。それに警察の方々も」
「沢木さん、先日ぶりです」
「どうぞ。中に入ってください」
「ありがとうございます」
リビングに通された名前達はソファーに座り、沢木の淹れてくれたコーヒーを飲む。
「沢木さん、先ほどの話なのですが」
「はい。何かの事件、なんですよね?」
「そうなんです。実は…」
名前が簡単に事件の説明をすると、沢木は「じゃあ、その村上って男が毛利さんへの復讐のために、毛利さんの知り合いを次々と襲ってるんですか?」と聞く。
「はい」
「それにしては、毛利さん。ずいぶん、落ち着いてらっしゃいますね」
「いやあ、私は5ですから、襲われるにはまだ当分間があるんですよ。ハハハハッ…」
大人しくソファーに座っていたコナンがおもむろに立ち上がると、部屋の中にあるワインクーラーに近づく。
「へえ、ワインだ」
「それはワインクーラーといってね、ワインを適正温度で保管する物だよ」
「いっぱい入ってるんだね」
「沢木さんの実家は山梨で果樹園をやっていてな、そこのワイン蔵には数百本のワインが保管してあるんだよ。そうでしたよね?」
「ええ、まあ。将来、自分の店を開く時のためにと思いまして」
その話を聞いた白鳥は「私、ワインには目がないほうなんで、ちょっと拝見してもよろしいですか?」と沢木に聞く。
「どうぞ」
「白鳥君って、意外と趣味が多いよね」
立ち上がるとワインクーラーに向かって歩く白鳥の後ろ姿を見ながら、名前がボソッとつぶやいた。
白鳥と入れ替わりでコナンがソファーに戻ってくる途中「アイテッ…!」とフローリングにできた傷に引っかかる。
「フローリングが傷ついてる…」
「あっ大丈夫かい?そこはこの前瓶を落としちゃって…コナン君、スリッパ履いてないから注意してね」
「マルゴー、ラフィットにオー・ブリオン、さすがに高級ワインばかりですね」
白鳥がワインの名前を読み上げていると、小五郎が「そういえば、何て言いましたっけ?」と沢木に聞く。
「沢木さんのお宝の、ペト…」
「えっ!?シャトー・ペトリュスもあるんですか?」
興奮した様子で白鳥が沢木に聞く。
「あったんですが、この前飲んでしまいました」
「あれ?でもあれは、飲み頃になるまで数年かかるって」
「つい、我慢できなくなりましてね」
目暮はあきれた様に話に割って入る。
「沢木さん、ワインの話はこの次という事で、今日のご予定を聞かせていただけますか?」
「旭勝義さんってご存知ですか?都内で十数軒のレストランを経営する実業家なんですが」
「ああ…旭さんなら一度、仕事の依頼を受け会った事があります」
沢木に渡されたアクアクリスタルのパンフレットを受け取った目暮は中身を見る。
「今度、東京湾に海洋娯楽施設、アクアクリスタルをオープンするとか」
「はい。そこのレストランを1軒任せてもいいとおっしゃってくださって、その件で3時に約束が」
「旭勝義…」
「旭…」
「待てよ…」
「九だ!”旭”の字に”九”が入ってる!」
パンフレットに書かれた旭の字を見て、旭の名前に九が入っている事に気づく一同。
「という事は、次に狙われるのは旭さん…」
「しかし、私はペットの猫捜しの依頼を受けただけで、知り合いというほどでは…」
「村上はそう思っていないかもしれん。とにかく、沢木さんのガードも兼ねて、旭さんに会ってみよう。よろしいですか?沢木さん」
「はい。私はかまいませんが…」
名前は「それじゃあ今から向かいましょう。蘭ちゃんとコナン君は」と言って蘭達の方を見る。
「行きます」
名前が続きを言う前に、蘭がハッキリと告げる。
「えっ?」
「私とコナン君もついて行きます」
「いい加減にしろ蘭!これは遊びじゃないんだぞ!」
小五郎は立ち上がって蘭を怒鳴るが、蘭も負けじと立ち上がって言い返す。
「そうよ!お父さんのために何人もの人が襲われてるのよ!家でなんか待ってられないわ!」
「んんっ…」
「んん…」
そんな蘭を見て、名前は「蘭ちゃん…」と名前を呼ぶ。
「危険かもしれないんだよ?」
「それでも私も一緒について行きます!」
「…分かった。だけど、私の傍を離れないでね」
「分かりました!」
2台に分かれて車に乗り込むと、アクアクリスタルへ向かって走り出す。
「蘭ちゃん、なんだか元気ない?」
「えっ?」
白鳥の運転する車には名前と蘭、そしてコナンの3人が乗っていた。
「なんだか元気がなさそうに見えたから」
「…」
「毛利さんと何かあった?」
「…この前、白鳥刑事から聞いたんです。お父さんが所轄の刑事だった時に、人質にされたお母さんにかまわず村上丈を撃った事を…」
「白鳥君…」
名前は白鳥の事を睨むと「し、調べたらすぐに分かる事なので」と、白鳥が弁解する。
「私、お母さんが出て行った理由が今まで分からなかったんですけど、多分それなんだろうなって…」
「…蘭ちゃん…」
「名前刑事…。どうしてお父さんはお母さんの事を撃ったんでしょうか。新一に相談しても、よく分からなくて…」
「新一君は何て?」
名前が聞くと、蘭は「撃った事は事実でも、それが真実とは限らないって…」と答える。
「…そっか」
「名前刑事は分かりますか?意味が分からなくて…」
「多分、そのままの意味だと思うよ」
「えっ?」
名前は前を向くと「大丈夫だよ。毛利さんは、妃さんの事を大事に想ってるよ」と言った。
「名前刑事?」
蘭の呼びかけに名前が答える前に、アクアクリスタルの駐車場に到着した。
「あれがアクアクリスタル…」
「何とも…」
「派手な建物っすなあ」
「すごいですねー」
駐車場から東京湾に浮かぶように建つアクアクリスタルを見ながら口々に感想を言っていると、赤い車がかなりのスピードで突っ込んできた。
「うわっ!」
女性が降りて来ると「ちょっとズレたか…でも、まあまあだね」と言ってサングラスを外す。
「こら!危ねえだろ姉ちゃん!」
「何が?」
「あのなあ」
小五郎が文句の続きを言おうとするが、別の車の音が聞こえきて全員の視線がそちらに移動する。
小山内が乗っていた車とは違う種類の高級車が、駐車場に3台停まった。
「よう、奈々ちゃん。君もか」
「あら!宍戸先生も旭さんに呼ばれたの?」
車から降りてきた3人と小山内を見ながら目暮が質問をする。
「失礼ですが、お嬢さん、あなた方は?」
「えっ!おじさん私の事知らないの?」
「目暮警部、彼女は小山内奈々さんですよ。人気モデルの」
名前が目暮に小山内の事を説明した。
「あちらの3人は、向かって左からエッセイストの仁科さん。カメラマンの宍戸永明さん。そして…」
「ピーター・フォードです。そちらのお三方は警察の方ですな。それにたしか、名探偵の毛利小五郎さん」
それを聞いた小山内は「えっ!あ、あなたがあの有名な名探偵さん?」と驚く。
「オッホン」
「わあ!本物見るの初めて!宍戸先生、撮って撮って!」
「ピース」
小山内に腕を組まれた小五郎は、一緒にピースサインをして宍戸に写真を撮ってもらう。
「こちら、ソムリエの沢木公平さんに毛利さんのお嬢さんで蘭さん。それに江戸川コナン君です」
白鳥が3人を紹介をする。
「皆さん、旭さんに呼ばれているんですか?」
「ええ3時に」
「私も3時よ!」
「私もです」
「警部さん、何か事件でもあったんですか?」
宍戸は答える代わりに目暮に質問をする。
「ええ、実はですな…」
「ねえ、3時になっちゃう!早く行こうよ」
「うん?あ〜そうですな」
目暮は時計を見る。
「とりあえず、レストランへ行きましょう」
「アクアクリスタルに行くには、モノレールに乗るしかないのか…」
全員でモノレール乗り場に向かい、モノレールに乗ってアクアクリスタルを目指す。
「あれ?運転士いないじゃん」
「これスイッチ押すだけでいいみたい」
コナンがスタートのスイッチを押すと、扉が閉まってモノレールが動き出す。
「わあ!すごいね!楽しい〜」
「名前刑事、はしゃいでるね」
「うん!モノレールって、あんまり乗る機会がないからね」
高いところが苦手な小五郎は、席に座ると外を見ないようにしていた。
同じように、外を見ないように冷や汗を流して座っている仁科をに気づくと。「や、やあ…仁科さんも宙に浮く物は苦手なんですな?」と聞く。
「いえ、私は水がダメなんです。カナヅチでして…」
「そ、そらまあ、色々あるもんすな」
アクアクリスタルの駅に到着すると、モノレールを降りて中に入る。
通路を通ってレストランに到着した。