中には、たくさんのワインが棚に並べられてあった。
「壮観ですな!」
「涼しい…」
「いえ、暖かすぎるくらいですよ」
沢木はそう言うと、ワインセラーについている温度計を確認する。
「温度は10度から14度ぐらいが、ワインを保存するのに理想的な条件なんですが、ここは17度と高過ぎますね」
「わあ、警部見てください!希少ワインばかりです」
そう言って白鳥はワインを見る。
「ロマネ・コンティ、ラ・ターシュ、ル・パリ、コード・ロティ、クロ・デュ・メニ。すごいですよ!」
「白鳥君が生き生きしてる」
沢木はワインセラーの中を歩き出して、棚を探す。
「M-18番の棚は…」
「あれだよ!」
そう言ったコナンは、足元に紐がある事に気づく。
「危ない!」
「ん?うわっ!」
沢木はコナンの声に反応して振り返ると、沢木の立っていた場所を目掛けてボウガンの矢が飛んで来る。
間一髪のところで避けると、矢は壁に置いてあるワインの樽に刺さる。
「ブービートラップだ!おじさん!警部さん!」
目暮と小五郎がコナン達の元に駆け付ける。
「あっ、これは私の脇腹を撃ったのと同じ矢だ」
「名前刑事!ボウガン、ここに仕掛けられてるよ」
コナンは反対側の棚に仕掛けられているボウガンを見つけて、名前に教える。
「本当だ…。それに、スペードの8…やはり仕掛けたのは村上で、あの置手紙も村上が…」
「だとしたら、なぜ村上は9を飛び越えて8の沢木さんを…?」
小五郎がそう言うと、名前や目暮が「ハッ…!」と目を見開く。
「ま、まさか…」
「警部、ひとまずこの建物から避難しましょう」
「うむ…」
全員で最初にいたレストランに戻って来くるが、なぜが扉が閉まっていた。
「あれ?閉まってるぞ。入り口はここじゃなかったかね」
「いえ、たしかここです」
来たときは開いていた扉が閉まっており、なぜか外に出る事ができない。
「帰るんなら、コート取って来ていい?」
「どうぞ」
コートを取りに戻ろうとする小山内が、目の前の水槽を見て「んっ、あ…きゃああああ!!」と悲鳴を上げる。
小山内の悲鳴を聞いた名前達は、一斉に水槽の方を見た。
「あっ!?」
水槽の中には、魚と一緒に旭の遺体が揺られていた。
その旭の胸元にはスペードの9のカードが付けられている。
「旭さん!」
「スペードの9!やっぱり村上が…!」
「目暮警部!このドア、電子ロックされていて開きません!」
「何だと!?よし、応援を…」
目暮は携帯を取り出すが「あっ、ダメだ…圏外だ!」と、携帯が使えない事に気づく。
「切られてる!クッソッ!」
小五郎は固定電話の線が切られている事を確認すると「警部!非常口を見てきます!」と言って駆け出す。
「と、とりあえず一度座りましょうか」
「うむ…」
名前がそう言うと、先程まで座っていた席に戻り、全員が席に座る。
非常口を見に行ってた小五郎が戻って来ると「警部…非常口がセメントで固められていて開きませんでした…」と目暮に伝える。
「あんたのせいだ!あんたのせいで、関係ない私達まで…!」
仁科は机を叩きながら立ち上がり、小五郎に向かって怒鳴る。
「そうよ!どうしてくれんのよ!」
それに小山内が便乗する。
「あっ…」
小五郎は申し訳なさそうな顔をする。
「村上が順番を変えてなかったって事は、次に狙われるのは奈々ちゃん、君だって事だ」
「や、やめてよ!何でそんな、名前も知らない男に狙われなきゃいけないの?」
そう言った小山内に、コナンが聞く。
「でも、気になる事あるんでしょ?」
「え?」
「たしかに…。小山内さん、先程村上が出所した日にちを気にされていましたよね」
「だから、あれは関係ないって…」
「関係ないかどうかは、我々が判断します。話してください」
目暮がそう言うと、小山内は3か月前にバイクとの接触事故を起こしそうになった時の事を話した。
「接触はなかったけど、怖くなってその場かを逃げたんです…」
「バイクの型は?オフロードじゃなかった?」
「ううん、普通のバイクだった」
「警部、奈々さんの言うように、今度の事件とは無関係ですよ。それより、脱出する事を考えないと」
「そうだな。建物中探せば、どこかに出口が見つかるかもしれん」
そう言うと「じゃあ手分けしてボクたちも探してみましょう」と、フォードが席を立つ。
「まあ、仕方ねえか」
「いいか?蘭とコナンはここにいろ。奈々さんも、ここを動かないように」
小五郎にそう言われ「は、はい…」と小山内が返事をする。
「苗字君、君もここに残って奈々さん達と一緒にいてくれ」
「分かりました」
建物中探す。
「小山内さん、私の傍にいてくださいね」
「ええ…」
蘭は「すみません、ちょっと…」と言うと、入り口の方に向かう。
「もう!ここにいなさいって言われたでしょ!」
「ああっ!だって〜!」
出口を探しに行こうとしていたコナンを捕まえた蘭を見て、名前は「コナン君ったら…」と呆れた顔をした。
次の瞬間、アクアクリスタルの建物全体が停電した。
「えっ!?」
「何で急に電気が!?」
そう言ってうろたえている小山内の爪を見た名前は、小山内の爪が光っている事に気づく。
「いやああああああ!!」
「あっ!小山内さん、どこに行くんですか!」
恐怖でパニックになった小山内が、いきなり駆け出した。
「きゃあああああああああ!!」
小山内の悲鳴がレストランに響き渡り、名前は急いで小山内の事を捜す。
「小山内さん!?どこですか!」
電気がつくと、小山内が背中を刺されて倒れているのを見つけた。
「小山内さん…!」
「いやあああ!!」
蘭が悲鳴を上げると、出口を捜しに行った男性陣がレストランに戻って来る。
「ハッ!これは…!」
「ああっ…!」
「奈々さん!」
小山内の傍にしゃがんで脈を採っている名前に目暮は「どうだ?」と聞いた。
「…ダメです…」
「クソッ…」
「目暮警部、スペードの7とジョーカーが…」
スペードの7とジョーカーのカードが、小山内の傍に置いてある。
「村上です!村上がいるんです、この建物の中に!」
「クソッ!調べてきます!」
「あっ!毛利さん!1人じゃ危険です!私も行きます!」
小五郎を追いかけて、白鳥もレストランから走り出す。
宍戸が遺体の写真を撮っているのを見て「宍戸さん」と目暮が名前を呼ぶ。
「ん?」
目暮は宍戸の肩に手を置くと「写真は慎んでください」と言った。
「どうしてです?応援がすぐに来られない以上、警部達が検視されるわけで、その前に現場の写真を撮っておく必要があるのでは?」
「た、確かに…。では、後ほど警察に提出してもらいますぞ」
「ええ!もちろんですとも」
そう返事をすると、宍戸は撮影を再開した。
「それにしても村上は、真っ暗な中で一体どうやって…」
「きっと、夜光塗料です。小山内さんの手の爪が光っていたので」
「何ィ!そうか、彼女に贈られたマニキュアには、夜光塗料が仕込まれていたのか…」
「あれ?」
中指の爪に色が塗られていない事に気づいたコナン。
「ねえ、名前刑事!奈々さんの左手の爪、変だよ」
「ん?ああ、多分つけ爪が取れたんだね」
「つけ爪?」
「自分の爪じゃなくて、プラスチックの爪なんだ。色々にデザインしたつけ爪を接着剤でつけて楽しめるんだよ」
「へー」
「何かの拍子に取れちゃったんだね。警部、そちらに落ちてませんか?」
目暮は小山内の周りを探して、取れたつけ爪を見つけるとハンカチで拾う。
「あったあった。事件とは関係なさそうだな」
名前は小山内の背中を見て、左手で掴まれた痕が残されているのを見つけた。
「痛そう…どれだけ力を入れたらこんな痕が残るんだろう…」
そこで「あれ?」と、違和感を抱く。
「(左手で掴まれたって事は、犯人は右手で包丁を突き刺したって事か…。犯人は右利き…)」
村上の利き手を思い出そうとしていると、小五郎と白鳥が戻って来た。
「警部、ダメでした。村上はどこにも…」
「もうここから逃げ出してるんじゃないでしょうか」
「そんなはずはない!出口がないんだから」
「きっと、まだどっかに潜んでんだよ」
小五郎は申し訳ない顔をしながら沢木に話しかける。
「申し訳ない沢木さん…俺のせいで旭さんが殺されて、店を任せるどころの話じゃなくなって…」
「いえ、どうせ断るつもりでしたから」
「え?」
「実は、今勤めている店も辞めて、田舎へ帰る事にしたんです。私、一人息子ですから、両親の面倒を見なければならないんですよ」
名前は「とりあえず、今は下手に動かない方が良さそうですね」と目暮に言う。
「そうだな。特に宍戸さん」
目暮に言われた宍戸は「分かってますよ。次に狙われるのは俺ってんでしょ?せいぜい殺されないように気をつけますよ」と言う。
「警部さん!ボクは絶対に死にません。必ず生きてここを出てみせます!」