「ん?何やってんだおまえは」
「みんな喉乾いたろうと思って」
「バカ野郎!勝手に動き回るんじゃねえ!村上はどこに隠れてるか分かんねえんだぞ!」
そんなコナンを叱る小五郎に「でもボクの名前に数字は入ってないから」と言ってのけるコナン。
「たく…!」
「はい!」
コナンは小五郎にコップを差し出した後、沢木にも渡す。
「はい、沢木さん!」
「ありがとう」
「おい、小僧!俺にもくれ」
「はい!」
全員に配り終わると、コナンはみんなが水を飲む様子を観察していた。
「フゥ〜日本の水は本当においしいです!」
「ああ〜うめえ!」
コナンがウロウロしているのを見ながら、名前は「何かに気づいたのかな?」と小さな声でつぶやく。
名前がコナンの後を追い「コナン君」と名前を呼ぼうとした瞬間、大きな爆発が起きてアクアクリスタルの建物が大きく揺れて全員が地面にしりもちをつく。
「うわっ!」
「なっ!」
爆発と同時に建物内が停電した。
「何だ今のは?」
「どこかで爆発があったようです」
「白鳥君!宍戸さんだ!宍戸さんを守れ!」
「はい!」
返事をした白鳥は、立ち上がって「宍戸さん!どこです?宍戸さん!」と名前を呼ぶ。
「ここだよ」
宍戸はライターをつけて白鳥に居場所を教えるが、すぐに白鳥はライターを消す。
「消して!死にたいんですか!」
小五郎は沢木に「沢木さん、ケガは?」と声をかける。
「い、いえ…私はまた、狙われるんでしょうか?」
「そ、それは…」
小五郎が何かを答える前に、停電していたが明かりがつく。
「ん?ありがたい、非常灯だ」
「良かった…。コナン君、大丈夫?」
「うん、ボクは大丈夫だよ」
次の瞬間、再び爆発が起こり、今度はレストランの壁一面の水槽のガラスが吹き飛んだ。
「うわっ!」
「こ、これは…!」
「うわ!」
水槽のガラスが壊された事によって、海水がレストランの中に勢いよく流れ込んでくる。
「コナン君!」
名前は咄嗟にコナンを抱きしめると、海水に流されてそのまま壁に背中を強打する。
「う、うわ!た、助けて…!私は泳げ…うぐっ!」
仁科は車の上に乗るが、そのまま水に飲みこまれる。
「うわーっ!」
レストランの中が海水でいっぱいになると水の流れが止まり、名前はコナンを片手に抱きかかえたまま浮上していく。
小五郎は泳げない仁科を助けて浮上する。
「ブハッ!」
「コナン君、大丈夫?」
「うん…」
名前とコナンが顔を出すと、宍戸が「よう、小僧!よく生きてたな」とコナンに声をかける。
「仁科さんも大丈夫そうですね」
続々と浮上してくる中に、蘭の姿がない。
「これで全員かな?」
「…っ!」
コナンは空のペットボトルに空気を入れると、もう一度水の中に潜る。
「コナン君!?」
「こらコナン!どこへ行く!」
流れてきた車に脚を挟まれて出られなくなっていた蘭を、伸縮サスペンダーを使って助け出したコナン。
蘭がいない事に気づいた小五郎がコナンと同じようにもう一度水の中に潜ると、意識を失いそのまま浮かんでいく蘭を見つけて一緒に浮上する。
「ブハッ!おい、蘭!蘭!しっかりしろ!」
「ッハ!ゲホッ!ゲホッ!」
水を吐き出すと、蘭は目を開ける。
「お…お父さん…」
「コナンに感謝するんだな」
「うん、ありがとう…コナン君」
「え?あ、いや、あの…」
そう言って、コナンは赤くなった顔を隠すように水に半分潜る。
「蘭ちゃん、良かった…」
「ううっ…!」
「どうしたんです?」
目暮が脇腹を押さえて唸る。
「どうやら、傷口が開いてしまったようだ…」
「何ですって?」
「目暮警部、大丈夫ですか?」
「あ、あれを見てください!」
沢木が水の中に浮かぶトランプのカードを見つける。
「ん?」
「スペードの6から2だ」
「クソッ!ここで一気に殺そうってのか!ふざけんな!」
「でも、このままだといずれそうなります。出口がないのですから!」
「出口ならあるよ!」
コナンがそう言うと「何!」と小五郎が聞く。
「ほら!爆破された窓ガラス」
「そうか!あそこから逆に海に出ればいいんだ」
「む、無理です…私はもう…」
仁科が力なく言うと、宍戸が「弱音を吐くんじゃねえ!俺が連れてってやるよ」と言う。
「じゃあ坊やはボクが」
「ボク1人で大丈夫だよ」
「おまえは俺が連れてってやる。もうひと頑張りできるな?」
小五郎が蘭にそう聞くと、蘭は力なくうなずく。
「警部は私が」
「すまん…」
「では、私が先導します。行きましょう!」
沢木がそう言うと、水に潜る。
「行くぞ!息を大きく吸い込め!」
目暮と白鳥が潜った後、小五郎と蘭が一緒に潜る。
「しっかり握って、離すんじゃねえぞ!」
宍戸は仁科の手を握ると、息を吸って潜る。
「コナン君、行こう」
「あっ、ちょっと待って!」
コナンは散らばったトランプのカードを集めるとポケットに入れて「お待たせ」と名前に言う。
「うん」
名前はコナンが潜ったのを確認してから同じように潜ると、みんなの後を追いかける。
海の中を泳ぎ、無事に外に出る事ができた。
「プハッ!」
先に地上に着いたコナンに「コナン君、大丈夫?」と名前が声をかける。
「うん、大丈夫だよ!」
名前が地上に上がると「仁科!仁科!おい、しっかりしろ!」という声が聞こえてきた。
宍戸に連れられて海の中を泳いでいた仁科を地上に引き上げるが、仁科は目をつぶったまま動かない。
宍戸が呼びかけているが、彼は反応しない。
「私が人工呼吸をしましょう。私は、ライフセーバーの資格を持っています」
そう言って沢木が仁科に人工呼吸をしようとするが「待ってください」と小五郎の声でストップがかかる。
「人工呼吸は白鳥刑事、あなたがやりなさい」
「えっ?」
「は?いやあ、俺は何も…」
小五郎は自分ではない自分の声が聞こえてきて驚いた顔をする。
「早くしろ!白鳥!」
「いっ!」
「分かりました」
白鳥は小五郎の事をひと睨みした後に仁科の元に向かい、人工呼吸を始める。
「はて…」
小五郎が考えていると「はり〜!」と奇声を上げてフラフラしながら後退していき、ベンチにぶつかるとそのまま座った。
「うん?毛利君?」
「毛利さん?まさか、犯人が分かったんですか!」
コナンは小五郎を時計型麻酔銃で眠らせると、小五郎の声で今回の事件の真相を説明し始めた。
「警部殿、今度の一連の事件、犯人は村上丈じゃありません」
「何だって!?」
「なぜなら、阿笠博士を撃った犯人も奈々さんを殺した犯人も、右利きだったからです」
「や、やっぱり…!」
「右利き!?」
白鳥が驚いて人工呼吸を止めると、仁科が水を吐き出して息を吹き返した。
「ゲホッ、ゲホッ!」
「た、助かりましたよ!」
仁科がゆっくり起き上がると、小五郎は続きを話す。
「犯人は恐らく、仮出所した村上とどこかで会い、10年前私に肩を撃たれた事や彼が元トランプ賭博のディーラーで、”ジョーカー”のあだ名があった事などを聞き、利用しようと考えたのです」
「利用…」
「はい。犯人は自分が殺したいと思っている相手と自分自身の名前に数字が入っている事に気づきました。そこで、この名前の数字とトランプを組み合わせ、自分の犯行を村上の犯行に置き換えられると考えたのです」
「じゃあワシと英理さん、阿笠博士を狙ったのは、村上の君への復讐と思わせるカムフラージュだったのか!」
「そうです」
小五郎の言葉を聞き、名前は「酷い…!関係のない人を襲うなんて…」と悔しそうな顔をする。
「では、犯人が本当に殺したかった相手は」
「旭さんと奈々さんの2人です。それに辻さん。彼の場合、目薬をすり替えるという死ぬ確率の高いやり方を選んだ点から見て、まず間違いないでしょう」
名前は「たしかに、そうですね」と同意した。
「毛利君!犯人は一体…!」
「犯人はこの中にいます」
「何!」
「え?」
宍戸は「そういやあんた、奈々ちゃんに恥をかかされたっけ?」と仁科に言う。
「ち、違う!私は殺してない!」
「そう。あなたは殺される側だ」
「え?」
「犯人は海中レストランを爆破する事で、泳げないあなたを溺れ死にさせようとしたのです」
そう言うと、小五郎は白鳥に「ところで白鳥刑事、仁科さんに人工呼吸する際、まず何をやりましたか?」と質問する。
「はあ?何をって、頭を後ろに反らせ首を持ち上げ、軌道を確保する事ですよ」
「では、軌道を確保せず、人工呼吸をするフリをして鼻と口を塞げば、どうなりますか?」
「し、死ぬに決まってるでしょう!そんな事をしたら!…あっ…ま、まさか!」
「そうです。旭さんと奈々さんを殺害し、辻さんと仁科さんを殺そうとした犯人…それは沢木公平さん、あなただ!」
「えっ!」