14番目の標的09

「目暮警部、ケガは大丈夫ですか?」
「問題ない!奴はどこだ?」
「階段の上です!」
「エレベーターか!」

沢木と蘭がエレベーターに乗ったの確認した名前は、走るスピードを速める。
2人が乗り込んだエレベーターの前に立っている小五郎に「毛利さん!向こうです!」と名前が叫んだ。

「早く早く!」

コナンがエレベーターの開閉ボタンを押しながら叫ぶ。
名前達が乗り込んだ事を確認したコナンは、すぐに閉まるボタンを押した。

「…苗字さん」
「…うん」

名前と白鳥は目を合わせてうなずくと、拳銃を取り出した。
そんな2人を見た小五郎が「警部殿、名前君と白鳥刑事、銃の腕前は?」と小さな声で目暮に聞く。

「白鳥君はワシと同じで、からきしダメだ。苗字君はうまい方だが蘭君を人質に取られておるからな…」
「…」

5人が乗ったエレベーターは、屋上に直通しているものではなかったため途中で止まった。

「クソ!何でこのエレベーターは屋上へ行かねえんだ!」

エレベーターを降りた5人は走り出すと、屋上へと続くエスカレーターを駆け登る。

「蘭!」

屋上のヘリポートについた小五郎は、蘭の名前を叫ぶ。

「来るなー!来るとこの子の命はないぞ!」
「やめろ!沢木さん!」

名前と白鳥は拳銃を取り出すと、沢木に向かって構える。

「沢木さん!止まってください!!」
「蘭さんを放せ!放さないと撃つぞ!」

声が裏返った白鳥の声を聞いた沢木は「面白い!撃てるものなら撃ってみろ!」と言って、蘭を自分の前に出す。

「蘭ちゃん…」

名前は蘭に当たらないように拳銃を構えるが、蘭が人質という事もあり手が小刻みに震えていた。
それは白鳥も同様だった。

「苗字君、白鳥君、よせ…ううっ…」

目暮は脇腹を押さえながらしゃがみ込む。

「目暮警部!」
「大丈夫ですか?」

目暮の脇腹は血が滲んでいた。

「ヘリコプターで逃げても無駄だぞ!蘭君を放すんだ!」
「うるさい!この子を連れて辻を殺しに行く」
「辻さんを?彼は全米オープンに出られないんだ!それでいいじゃないか!」

小五郎がそう言うと「ダメだ、ヤツを殺して俺も死ぬ。この女も道連れだ。ハハハハッ…!」と言って笑う。

「さ…沢木さん…」

爆発の衝撃で建物が次々と崩壊していき、建物全体が傾き始めていた。

「おおっ…」
「うわっ!」
「わっ!」

建物が揺れると、名前達は体勢を崩し、片膝をつく。

「拳銃をよこせ…」

沢木がそう言うと「何…!?」と白鳥が驚く。

「刺すぞ!?」

沢木は蘭の首筋に突き立てているナイフを見せながら叫ぶ。

「蘭ちゃん!!」

そんな沢木に聞こえないように、小五郎が小さな声で「おい、白鳥…」と白鳥の名前を呼ぶ。

「俺に銃をよこせ」
「えっ?」
「よこせって言ってるんだ」
「も、毛利さん?」
「冗談じゃない、あなたなんかに渡せませんよ!」

小五郎と白鳥が小声で話をしていると「何をしてる!早くしろ!」と沢木が蘭の首にナイフの先を当てる。

「わ、分かった!」

白鳥はそう返事をすると、拳銃をヘリポートの真ん中あたりに投げる。

「チッ…!おい、女!おまえの拳銃もよこせ!」
「なっ…!」
「早くしろって言ってんだ!!」
「わ、分かりました!」

名前も白鳥と同じような場所に拳銃を投げると、沢木は蘭を連れてゆっくり拳銃に近づいていく。
名前、小五郎そして白鳥がスキを狙うための戦闘態勢に入った事に気づいた沢木は、歩くの止めて「ボウズ、おまえが持って来い」とコナンに言う。

「えっ…」
「この女がここで死んでもいいのか!?」
「ダ、ダメだ!子どもにそんな危ないマネは…!」
「そうですよ!それなら私が…!」

コナンは名前と目暮の言葉を無視して拳銃の元へと歩き出す。

「お、おい!」
「コナン君!」

拳銃の傍で建物が傾き、バランスを崩したコナンは膝をついた。

「さあ!早く持って来い!」
「ダ、ダメ…コナン君…渡しちゃ…渡しちゃダメ…」

蘭が必死に訴えるが、コナンは拳銃を拾う。

「よーし、いい子だ。さあ、こっちへ持って来い!」

コナンは拳銃を拾うとゆっくり立ち上がる。

「さあ早く!早く持って来いって言ってんだ!」

叫んでいる沢木に向かって、コナンは銃を構える。

「えっ…」
「なっ…!」
「コナン君!?」

そして、引き金を引くと一発撃った。

「クソ!」

その拍子に蘭がその場に崩れ落ちる。

「蘭ちゃん!?」
「おい!立て!おい、おい!」

呼びかけても立ち上がらない蘭を見かねた沢木は、そのまま蘭を斜めに傾いた地面に解放する。

「うりゃー!」

小五郎は沢木に向かっていき「うおーっ!!」と叫びながら一本背負いをして沢木を確保する。

「あっ!蘭!」

地面を滑り落ちて行く蘭を見て、小五郎は駆け寄ろうとするがその前にコナンが蘭に追いついて腕を掴んだ。

「フゥ…」
「そ、そうか…だからあの時、毛利さんは撃ったんだ!犯人を逮捕するためじゃなく、人質を助けるために」
「ああ、足を撃たれた人質は、逃走する犯人にとってただの足手まといにしかならんからな」
「それが新一君の言ってた、事実だけど真実じゃないって事ですね」

蘭を横抱きで運んでいる小五郎を見ながら、名前達は沢木の身柄を拘束する。

「沢木公平、殺人容疑および傷害、拉致等の現行犯で逮捕する」

そう言って目暮は沢木の腕に手錠をかける。

「うおっ!?」

その瞬間、建物が大きく揺れて斜めになって滑り落ちる。

「うわーっ!」

沢木が落ちそうになる寸前で、目暮は沢木の腕と建物の柱を掴み、なんとか落ちずに耐える。

「目暮警部!」
「離せ!死なせろ!あっ…」

名前と白鳥が手を伸ばす前に小五郎が腕を伸ばして、沢木の腕を掴む。

「死なせやしねえ。てめえに、自分の犯した罪の重さを分からせてやる!」

そう言って、沢木を引き上げた後、上空で待機していたヘリコプターに乗って名前達がアクアクリスタルを脱出する。

崩れていく建物をヘリコプターの中から見ていた小五郎は「いやあ、危機一髪だったな!」と言った。

「おじさん、ヘリコプター恐怖症治ったみたいだね!」
「ん?か〜っ!うわ〜っ!降ろしてくれ〜!!」



近くの埠頭に着陸すると「はい。知らないうちに飛び出したんで、ボクびっくりしちゃった!」と言いながらコナンが白鳥に拳銃を返す。

埠頭にはパトカーと救急車が到着していた。

「…ったく、たまたま蘭さんの足をかすめたから良かったものの、一つ間違えてたら大変な事になってたんだよ」
「ごめんなさい」
「コナン君、やるね〜。すごい度胸だ」
「エへヘ」

蘭と目暮が救急車に運び込まれる。

「警部、ちょうどいい機会ですから、ゆっくり休養なさってください」
「本当に。次は病室を抜け出しちゃダメですよ。みどりさんに怒られちゃいますからね!」
「そうさせてもらうよ。ああ〜帽子は取らんでいいから」

蘭と目暮を乗せた救急車を見送った後、名前は背伸びをした。

「うう〜ん!さーてと。私達は本庁に戻って、まずは着替えないとだね」
「海水まみれですもんね」
「ねっ、ベタベタだよ。そういえば、さっき連絡があったけど、宍戸さん達も無事に救助されたって」
「それは良かったです」

白鳥は「それでは私は車を取って来るので、少しだけ待っていてください」と言った。

「ありがとう。よろしくね」

名前が白鳥を見送ったと同時に、携帯の着信が鳴る。

「もしもし?」
『名前、僕だ』
「こんな時間に珍しいね!どうしたの?」

名前がそう聞くと『少し前に、新しくできた海洋娯楽施設が爆破されただろ?巻き込まれているんじゃないかと心配になってな』と降谷が答える。

「わー、正解だよ。よく分かったね」
『…やっぱりか。この前の事件もそうだが、最近こういう大きな事件に巻き込まれる事が多いな』
「これも刑事の宿命ってやつかな?」

そう言って笑った名前に『笑い事じゃないだろ…』と、少し不機嫌そうな声で答える降谷。

「大丈夫だよ!この通り、今回もピンピンしてます」
『…安心したよ』
「心配してくれてありがとう」
『当たり前だろ』
「フフッ。お互い気をつけようね」
『ああ』

降谷が答えると、車を取りに行っていた白鳥が戻って来た。

「ごめんね、そろそろ仕事に戻らないと」
『僕もだ。もう少ししたら、落ち着くと思うから、そしたらまた会いに行く』
「分かった。待ってるね」
『ああ』

電話を切ったタイミングで白鳥に「すみません、電話中でしたか」と声をかけられる。

「大丈夫だよ!」
「そしたら、我々も戻りましょうか」
「うん」

名前と白鳥は車に乗り込むと、本庁に向かった。



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