世紀末の魔術師06

ひと段落したところで名前は乾がいない事に気づく。

「あれ?」
「苗字さん、どうかしました?」
「乾さんの姿が見えないなって思って…どこに行ったんだろう?」
「本当ですね…。また抜け駆けでもしてるんでしょうか」

小五郎は「何はともあれ、これでめでたしめでたしだ」と嬉しそうに言う。

「本当ですね!怪盗キッドも現れなかったようですし、このまま何事もなく帰れそうですね」
「だな」

そう言った小五郎を、レーザーポインターの光が狙っている事に気づいたコナン。

「あれは!」
「えっ?」
「それでは〜、ん?」

小五郎も右目に違和感を感じたが、その前にコナンが「危ない!」と叫びながら持っていた懐中電灯を小五郎に向かって投げる。

「うわっ!」

コナンが投げた懐中電灯を避けるために転んで体勢を崩したため、小五郎の右目を狙って発砲された弾は、小五郎の後ろの壁に当たった。

「弾痕!?」

名前は壁にできた弾痕を確認すると、その射線上の反対側を見る。

「(誰!?)」
「何しやがるコナン!」
「拾うな、蘭!」

コナンが投げた懐中電灯を蘭が拾おうとするが、それをコナンが止める。

「えっ?」
「蘭!」

コナンは蘭に体当たりをしながら守る。
そこに、また1発銃弾が撃ち込まれた。

「みんな伏せろ!」
「うわーっ!」

夏美は逃げようと走るが転んでしまい、その拍子にエッグを落としてしまう。

「あっ!エッグが!」

そのエッグを誰かが拾って奪って走り去っていく。

「クソ!逃がすかよ!」
「ダメ!」

コナンが駆け出していくのを蘭は止めようとするが、コナンは無視して走って行く。

「毛利さん、あとを頼みます!」
「ああ」
「し、白鳥君、待って!」

白鳥がコナンの後を追うのを見て、名前もその後を追う。
もと来た道を戻っていると、爆発音がした。

「爆発音?」
「嫌な予感がしますね」
「い、急がないとコナン君が…って、わっ!」

名前は何かに躓いて転びそうになるが、そんな名前を白鳥が支える。

「大丈夫ですか?」
「う、うん、ありがとう」

足下を照らすと、そこには右目を撃ち抜かれて倒れている乾の姿があった。

「い、乾さん…!」
「スコーピオンの仕業ですね…」
「酷い…」
「先を急ぎましょう」
「…うん」

名前と白鳥は急いで走るが、目の前の通路が瓦礫で塞がれていた。

「やっぱり、さっきの爆発のせいで…」
「…苗字さん、こっちです」
「え?」

白鳥はそう言うと名前の腕を掴み、別の道に向かう。

「し、白鳥君、こっちであってるの?」
「大丈夫です。私を信じてください」
「…分かった」

名前は白鳥の事を信じて後をついて行くと、先程コナンが見つけた隠し部屋があった場所ではない別の入り口に辿り着いた。

「さあ、ここから出られます」
「…なんで白鳥君がこの道を知ってるの?」
「そんな事より、今はスコーピオンの逮捕が先ですよ!」
「…それもそうだね」

名前はそれ以上何も言わず、コナンとスコーピオンを捜そうとした。

「って、なにこれ!煙とガソリンの臭い…!」
「本当に、酷い事をしますね」

お城の1階、特に執務室や貴婦人の間、そして皇帝の間から炎が燃え広がっていた。

「多分、そっちの方にいるよね」
「はい。急ぎましょう」

名前達は皇帝の間に向かった。

「ゲホッ、ゲホッ…」
「苗字さん、大丈夫ですか?」
「う、うん…」

煙を吸わないように、姿勢を低くしながら皇帝の間に辿り着くと、コナンと青蘭の姿を確認した名前。

「青蘭さん…」
「ここにいるという事は、やはり彼女がスコーピオンだったという事ですね」
「…青蘭さん、中国人のフリをしていたロシア人だったって事か」
「色々怪しいところはありましたよね」

名前は青蘭を確保するために2人に駆け寄るが、その前に青蘭がコナンの右目を拳銃で撃った。

「コナン君!?」

弾をリロードしている青蘭に気づき、名前は急いで拳銃を取り出そうとするが、その前に白鳥が青蘭の拳銃をトランプ銃で撃ち抜いた。

「えっ」

その隙にコナンは落ちていた兜を青蘭に向かって蹴り、見事に青蘭に命中した。
阿笠の発明であるキック力増強シューズで蹴られた兜をお腹に受けた青蘭は、そのまま気を失った。

「あいにくだったなスコーピオン。このメガネは博士に頼んで、特別製の硬質ガラスに変えてあったんだ」

名前は急いでコナンの元に駆け寄ると「コナン君!!」と名前を呼んだ。

「大丈夫!?」
「大丈夫かい?」

白鳥も同じようにコナンに聞くと「あっ…あ、うん、まあ…」と答えた。

「と、とりあえずすぐにここから出ようか!」
「そうですね」

白鳥は青蘭を横抱きにすると「さあ、行きましょう」と言う。

「コナン君!」

火の回りが早く、あたり一面が火の海になったが、なんとか無事に脱出する事ができた。

「ハァハァハァ…助かったね…」
「本当に、一時はどうなる事かと思いましたよ」

名前はコナンの事を見ると「大丈夫、コナン君?ケガしてない?」と心配そうな顔をして質問をする。

「うん!ボクは全然大丈夫だよ!」
「それなら良かった。コナン君に何かあったら、コナン君のご両親や蘭ちゃんに申し訳ない…」
「それより、青蘭さんに手錠かけなくていいの?」

コナンがそう言うと、名前は「白鳥君、手錠は?」と聞く。

「あ、すみません。忘れてました」
「もう!高木君じゃないんだから、忘れないでよね!」

名前はそう言いながら手錠を取り出すと、気を失っている青蘭の手首にかける。

「それじゃあ救急に連絡入れて、私達は先に本庁に連れて行こうか」
「そうですね」
「コナン君、一人にしちゃうけど大丈夫?」
「うん。みんなも多分別の道からすぐに脱出できると思うし、大丈夫だよ」
「分かった」

白鳥は「それじゃあ、これは君に渡しておくよ」と言って、青蘭から取り戻したエッグをコナンに渡す。

「ありがとう、白鳥警部…」

名前と白鳥は車に乗ると、本庁に向かって走り出す。
運転席には名前、後部座席に白鳥と青蘭が乗っている。

「…白鳥君」
「はい、何ですか?」

バックミラー越しに白鳥を見ながら「それとも怪盗キッドって呼んだ方がいいかな?」と名前が言う。

「ど、どうしたんですか苗字さん?」
「さすがにあのトランプ銃で分かったよ。あの銃は怪盗キッドが愛用してるって、中森警部から聞いてたから」
「…」
「それに、もしあれが普通の拳銃だったとしても、白鳥君にはあんなピンポイントで拳銃を狙う狙撃の技術はないから本人じゃないって分かったよ」

名前がそう言うと、白鳥は観念したように「フッ…」と笑った。

「それだけですか?」
「あのお城の別の道を知ってたのも、キッドとして調べたからでしょ?後は、行きの車でも言ったけどコナン君への態度。それに、私と二人なのに車を運転するって言わないところかな」
「なるほど。さすがに運転免許は持っていないので」
「だよね」

名前は赤信号で止まると後ろを振り返り「どうする?このまま一緒に本庁まで行く?」と聞く。

「さすがに遠慮したいですね」
「だよね。でも、次はないよって言ったよね」
「そうでした。それでは、本庁に着く前にここから脱出させていただきましょうか」
「走行中なのに?って、そんなの全く問題ないんだろうなぁ」
「そういう事です」

キッドの即答を聞いて、名前は苦笑する。

「この感じ、中森警部が打倒キッド!って言ってる気持ちが少し分かっちゃったよ」
「そうですか?」
「うん。なんか、こう手の上で踊らされてる感じがして、是が非でも捕まえたい!って気持ちになる」
「あなたみたいな可憐な方になら喜んで」
「思ってないでしょ」

信号が青になり、名前は前を向いてアクセルを踏む。

「とりあえず、青蘭さんを運ぶのまでは手伝ってほしいんだけど」
「ゲッ!」
「あ、それが素?」
「あ、いや…!」
「そっちの方がいいよ。君、まだ若いんでしょ?」

思わず素が出てしまい、焦った素振りを見せるキッドを見て名前は笑う。

「私一人じゃ気絶した人間を運ぶの大変なのよ。女性とはいえね」
「そんでー、その後オレを中森警部に突き出すつもりかよ」
「そんな事しないよ。今回はね」

そう言った名前に、キッドは「ハイハイ、今回は最後まで付き合いますよ」としぶしぶと言った様子でうなずいた。

「ありがとう」
「その代わり、オレも名前さんって呼んでいい?」
「えっ?何で?」
「なんだかんだ、名前さんとは長い付き合いになりそーじゃん?」

キッドはそう言うとウィンクをした。
その様子をバックミラー越しに見ていた名前は「白鳥君の顔なのに、声は違うしウィンクはするし、なんか違和感…」とつぶやいた。

「まあまあ、最後まで付き合うんだからこれくらいはいいでしょ。ご褒美って事で!」
「キッドがそれでいいならいいけど」
「んじゃあ決まり!これからもよろしく頼むぜ、名前さん!」
「わー…やっぱり頼まなきゃよかったかなー…」

名前は乾いた笑みを浮かべた。



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