「被害者の名前は藍沢多恵さん20歳。1年前までこのデパート内にある洋服店の店員をやっていたそうで、現在は無職」
「今日彼女がこのデパートであそこにいる彼と待ち合わせをしていたのは、彼の父親に彼女を会わせるためだったそうですね…」
そんな話を聞いた名前は、伊達とナタリーの話を思い出しいていた。
「(伊達君が交通事故にあったのも、ナタリーさんのご両親に会いに行く前日だったな…)」
「なんでも彼の父はこのデパートのオーナーで、今日は3人で彼がコックをやっているフランスレストランで食事をする予定だったとか…」
「つまり彼女は、その待ち合わせのレストランに行く前に、この駐車場で車から降りて来たところを、犯人に撲殺されたというわけね」
「ええ、恐らく…」
何も言わない名前に、戸崎は「苗字さん?聞いていますか?」と声をかける。
「はい。…聞いてます」
「すみません、少し外します」
「え?」
「進めておいてください」
戸崎は名前にそう言うと、駐車場から去って行った。
「おや?彼を慰めているあの女性は?」
白川の隣には別の女性の姿があり、目暮は疑問に思う。
「彼が働いているレストランのウエイトレスだそうです。名前は紺野由理さん。彼とは大学の同級生で、色々相談に乗っていたと言ってました」
「相談って、何の相談だったの?」
「なんか白川さんは、殺された藍沢さんとの交際を父親に反対されていたらしくて」
「なるほど…」
小五郎は「それより蘭!死体を見つける前、不審な人物は見かけなかったのか?」と聞く。
「そんな人いなかったよ!擦れ違ったのは警備員さんぐらいで」
「警備員?」
「うん…。デパートからこの駐車場に入る入り口のところで、40歳ぐらいのおじさんだったけど」
蘭がそう答えると「あ、それ私ですよ!」と、男性が野次馬の中から名乗り出た。
「あ…」
「丁度、トイレに行くために持ち場を離れた時で、きっと犯人はそのスキを狙って…」
警備員の男の名前は定金芳雄。
「とかなんとか言って、本当は君がやらかしたんじゃないのかね?」
「え?」
「父さん…」
このデパート、杯戸百貨店のオーナーである白川春義は「たしか君は、半年前までライバル百貨店の警備員をやっていたそうじゃないか。まさか我が百貨店の評判を下げるために奴らに頼まれて…」と言った。
「そ、そんな…」
「まあ紀之もこれに懲りて新しい女性を見つけるんだな」
春義は「今度は傷のついていないちゃんとしたお嬢さんをな!」と捨て台詞を残してその場を後にした。
「と、父さん!!くっ…」
「紀之君…」
「あのー…傷って何の事ですか?」
小五郎が疑問を問うと、紺野が「きっと、1年前にこの駐車場で彼女が起こした自動車事故の事だと思います…」と白川の代わりに答えた。
「彼女、小さな男の子をひいてしまったらしくて、そのせいでお店の店員も辞めちゃって…。紀之君も、随分その事を悩んでいました」
「その話、私も凛子ちゃんに聞いた事があったな…」
「はい、私も由美から。母親の買い物が終わるのをここで待っていた少年が、サッカーボールと一緒に車の陰から飛び出してハネられたんですよね」
「駐車場だからあまりスピードは出てなかったみたいだけど、当たり所が悪くて男の子は3日後に亡くなったんだよね…。彼女は実刑じゃなくて執行猶予付きの判決になったみたいだったけど」
名前と佐藤が説明をすると「たしか、少年の名前は桜井明でしたね」と白鳥が補足した。
「なるほど…あのオーナーは前科のある彼女を息子の嫁には迎えたくなかったというわけか」
小五郎は白川に「ところであなたのお父さんの身長はどれくらいか分かりますか?」と聞く。
「150ちょっとだと思うけど…」
「ちなみにあなた方は?」
「173だよ」
「私は144」
「私は167です」
白川、紺野、定金が順番に答える。
「となると、臭いますなあのオーナー…」
「ああ。彼なら彼女が車でここへ来る事は良そうできただろうし…」
目暮は「ちょっとお聞きしますが、あなたのお父さんは待ち合わせのレストランに来られたんですか?」と白川に聞く。
「いや、時間が過ぎても来ないから、ちゃんと来てるかどうか彼女に様子を見に駐車場に行ってもらったんだ。父の駐車スペースは決まっていたから」
「でも、私がここに来た時にはもう警察の方や野次馬でごった返していて…。殺されたのが多恵さんだと分かったのは随分たってからでした」
「まさかあんた達、父さんを疑っているんですか?」
白川にそう聞かれた目暮は「あ、いや…前に襲われた女性達が、犯人の身長は150前後だと証言していたので念のためにね」と答える。
高木は3人の写真を取り出すと「これが前に襲われた3人の女性ですが、見覚えはありませんか?」と聞く。
「こちらの3人、一度はこのアパートに来ているはずなんです」
「知りませんよ!!」
「ねぇ」
下から声が聞こえて来たので名前は下を見ると、コナンが「その3人のお姉さん、3人とも犯人は150pぐらいって言ってたの?」と聞く。
「ううん、そう言ってたのは1件目と3件目の被害者の2人だけだよ」
「2件目のこの子は、突然後ろから殴られて、通りかかった人に発見されるまで気を失っていたらしいから犯人は見てないって」
「でも、犯人が150p前後なのは確かなんだよね。後日、本庁に事情聴取に来てもらった時に、2人とも自分の背と同じぐらいだったって言ってたから」
名前がそう言うと「その2人の背はどのくらいなの?」とコナンがさらに質問をする。
「えーっと…1番目の女性が151で3番目の女性が153。本庁に来てもらった時に測り直したから間違いないよ」
「おいおい、子どもに余計な事をしゃべるな」
「あ、すみません…」
「コナン君、よくヒントをくれるんでつい」
小五郎はもう一度蘭に「おい蘭!本当に見なかったのか?」と聞く。
「死体を発見した頃、この駐車場であのオーナーか、もしくは150pぐらいの怪しい人物を」
「見なかったよ。出口を捜してしばらくこの中をウロウロしてたけど…それよりなんか、なんかおかしくない?」
「おかしいって?」
「あの女の人よ…」
そう言って蘭は藍沢の事を指さす。
「あ、蘭もそう思う?」
「でしょ?でしょ?なんか変だよね?」
「蘭ちゃんと園子ちゃん、何が変なのか具体的に分かる?」
名前が聞くと「うまく言えないんですけど…この女の人…妙な違和感があるんです…」と蘭が答える。
「妙な違和感?」
「はい…」
「おかしいっていえば、2番目に襲われたこの人のカッコも変じゃない?」
コナンは名前に「このお姉さん、夜中に公園のトイレから出た所を襲われたんだよね?」と聞く。
「うん。これは、通報を受けて美和子ちゃん達が駆けつけた時に取らせてもらった写真だよ。ホラ、バックにトイレが写ってるでしょ?」
「通りかかった人に発見されたって事は、連れはいなかったって事でしょ?でもこの人、男物のスーツのジャケットを羽織ってるよ!」
高木が「ああ、それ。現場に行った時に僕のを着せてあげたんだ。少し肌寒かったから」と答える。
「じゃあ何でこの人そんな寒そうなカッコで夜の公園にいたの?」
「た、たしかに…。上着を盗られたなんて言ってなかったし…」
名前は佐藤に「そういえば、この子って事件以来ずっと錯乱状態でまだちゃんと事情聴取してなかったって言ってたよね?」と聞く。
「バーカ!最近の若い女は薄着をするのがイキなんだよ!」
「でも、彼女ノースリーブでしたから、この季節に夜中であればさすがに寒い気がします…」
「もしかしてあったかいところからちょっと出てトイレに行って、すぐにそこに戻るつもりだったんじゃないの?」
「あったかいところだとォ?」
コナンの言葉に名前はハッとした。
「車の中…!」
名前の言葉にコナンはニッコリと笑った。
「そういえば、1件目も3件目も被害者が車から降りたところを襲われていたな…」
「そしてこの4件目は駐車場…」
「す、全て車がらみだ!!」
「よーし高木君!ただちに2件目の被害者に確認を取ってくれ!」
「はい!!」
そんな話をしていると、戸崎がもう一人の警視である松本清長と一緒に駐車場に戻って来た。
「ハッハッハッ、毎度毎度すまんなぁ名探偵!」
「ま、松本警視殿!?」
松本は「おい目暮。表でマスコミが無差別殺人の始まりじゃないかと騒ぎ出している。ここは早々に切り上げて、また明日出直せ!」と伝える。
「あ、いやしかし…」
「そうですよ、目暮警部!被害者がみんな車に乗っていたところまで分かりましたし。今度は私、ガン黒メイクをして車に乗って走り回ってみるので、次は犯人が顔を出すかもしれないですよ!」
名前がそう言うと「バカモン!!言っただろ!?もうおとりは使わんと!!」と怒鳴る。
「目暮警部…」
「管理官!もう少しここで捜査させてください!何かつかめそうなんです!」
「まぁ構わんが…」