「あら、あなた。何でこんな所にいるの?」
「英理!?」
「実は…」
そこに、園子と子ども達、そして肩を負傷した阿笠が走って来た。
「名前刑事ー!!」
「園子ちゃん?蘭ちゃんは?」
「さ、さっきパレード見てたら拳銃で博士が撃たれて…!蘭とガキンチョが逃げて…!」
園子は青い顔で状況を説明した。
「ど、どこに行ったか分かる?」
「わ、分かんない…です」
「これだけの広さがあるので、捜し出すのは厳しいんじゃ…」
名前はトロピカルランドの地図を広げると「夢とおとぎの島でパレードをやってて人がここに集まってる…。ここ以外で人が少なくて、コナン君の行きそうなところ…」と考える。
「…噴水…」
「えっ?」
名前は科学と宇宙の島を指さすと「ここ!2時間おきに噴水が出るんです!前に新一君が蘭ちゃんと行った場所で…。もしかしたらコナン君、新一君から聞いて蘭ちゃんの記憶を取り戻させるために行ってるかもしれないです!」と言った。
「だが確実ではない…。野生と太古の島、冒険と開拓の島にも向かおう!」
「3班に分かれて現場に向かえ!犯人である風戸京介も確実にいるはずだ!」
「ハッ!」
名前は近くにいた警察官に「阿笠さんの手当をお願い」と伝えた。
「分かりました!」
名前は「そしたら毛利さん達は私の車に乗ってください!」と言って、小五郎、英理、園子を乗せて噴水広場のある化学と宇宙の島に向かった。
「おばさま…!蘭、大丈夫ですよね!?」
「きっと大丈夫よ。私の娘ですもの」
噴水広場に到着し、車を飛び降りると、そこにはボロボロになった風戸が地面に倒れていた。
「あ、あれ?」
「蘭!」
「蘭!」
小五郎と英理、そして園子が蘭に駆け寄る。
「お母さん!お父さん!」
「お、おまえ…」
「記憶が戻ったのね!」
名前達が現場に着いたのは、蘭の記憶が戻り、得意の空手で風戸を返り討ちにした後だった。
「じゃじゃ…じゃあ、私の事も?」
「もちろん!鈴木園子、私の一生の友達よ!」
「蘭…蘭!」
園子は、泣きながら蘭に抱きつく。
「良かった〜…」
倒れている風戸に駆け寄った名前は風戸に手錠をかける。
「コナン君、大丈夫?というか、何でここにいるの?」
「じ、実は栗山さんからみんながトロピカルランドに行くって聞いて、ボクも来たくなったんだ!名前刑事達は、どうしてここが分かったの?」
小五郎が「小田切警視長が自ら再捜査されて、俺達に知らせてくれたんだ」と答えた。
「そうなの。友成真は風戸先生にハメられてたみたい」
「そっか」
「コナン君、ケガはない?」
「大丈夫だよ」
コナンの笑顔を見た名前は、安堵の笑みを浮かべた。
「名前刑事こそ、お腹のケガ大丈夫?」
「うん!問題ないよ。ありがとう」
「それにしても、何が”俺が命を懸けても蘭を守る”よ。命を懸けて守ってくれたのは、コナン君と阿笠博士じゃない」
英理がそう言うと、小五郎は「あっいや…」とバツの悪そうな顔をする。
「あ〜とにかく!無事でよかった!ナハハハッ!」
車の傍に立っていた白鳥が無線を取ると「本当か?それは」と大きな声を出す。
『はい!』
「みんな!佐藤さんの意識が戻ったぞ!もう心配はないそうだ!」
「おお!そうか!」
「やったあ!」
その場にいた警察官達が歓喜の声を上げる。
「美和子ちゃん!良かった〜!」
「佐藤さん!」
「やりましたね!高木さん!」
泣いて喜ぶ高木を、千葉も一緒になって喜ぶ。
「高木君、良かったね!」
「は、はい〜!!本当に良かったです!」
目暮はパトカーの傍に立っている小田切に「これで全て解決ですね」と言う。
「バカを言っちゃいかん!まだ敏也の恐喝事件が残っている」
パトカーの中にいる敏也を見ながら小田切は「被害者はすでに死亡しているが、事実関係をただして、こってり絞ってくれ」と続けた。
「分かりました!」
目暮は敬礼をする。
「目暮警部、それでは我々はこのまま風戸京介を本庁に連行します」
「分かった」
「敏也君の事は、警部にお任せしても?」
白鳥がそう言うと、目暮はうなずいた。
「ああ。こっちはワシが引き受けよう」
その日の夜、名前が家に帰ると降谷が家の中で待っていた。
「零君だ!」
「おかえり名前」
「ただいま!」
「ずっと入院していたから冷蔵庫の中も空っぽだろうと思って、ご飯を作りに来たんだ」
そう言って降谷に名前は抱きついた。
「あ、ありがとう〜!一週間家に帰って来れなかったから、埃っぽいけどごめんね」
「簡単に掃除もしておいたよ」
「れ、零君…!疲れてるのにごめんね」
名前がもう一度謝ると「もう謝るのは禁止な」と降谷は名前のオデコに軽くデコピンをしながらそう言った。
「零君から愛を感じる」
「当たり前だろう。愛しかないからな」
「零君が甘い!」
降谷は「ご飯食べるだろ?」と聞くと、名前は「うん、ありがとう」と答える。
立ち上がってキッチンに向かうと、降谷はコンロに火をつけてご飯をよそう。
そんな降谷の姿を、名前はダイニングテーブルに座って見ていた。
「なんだか幸せだな〜」
「それは良かった」
「この幸せがずっと続けばいいな」
「そう思うなら無茶はしないでくれ」
テーブルに料理を並べ終えると、降谷は名前の向かいに座る。
「いただきます」
「どうぞ」
降谷の手料理を頬張る名前。
「零君、料理上手になったよね」
「ヒロに色々教えてもらったレシピで自炊してるしな」
「昔は全然作れなかったのにね。諸伏君に感謝だ」
「だな」
美味しそうに食べる名前を見ながら降谷は「…名前、一緒に住まないか?」と聞いた。
「え?」
「…いや、ほとんど一緒にいる事はできないんだが…」
「どういう事?」
「…降谷名義で借りている家があるだろう」
名前は「ああ。あの高層マンションの?」と、降谷の住んでいるマンションを思い出す。
「そうだ。もしよければそっちに引っ越してこないか?部屋は余っているし、なかなか帰れないと言っても帰れる日もある。名前がそこにいるだけで安心できるんだ」
「…零君…」
「正直、今回おまえが撃たれたと聞いて、他人のままでいるのが怖くなった」
「零君…」
降谷は「だが、今の僕の立場では他人でいるしかない…。だから、だったらせめて、僕の家にいてくれないか」と弱弱しく名前に頼む。
「…零君、ありがとう。でも、ごめん。今は、まだダメだと思う…」
「…どうして?」
「もちろん、零君と一緒が嫌だとか、組織が怖いからとか、そういうのは全くないからね!むしろ、どんとこいって感じだよ!」
「だったらなぜ」
名前は一瞬うつむくが、真っすぐ降谷の目を見て「…怖いの…」と答えた。
「何が?」
「高層マンションが…。マンションを見上げると思い出しちゃうの…。あの日、研ちゃんが…って」
名前の答えを聞いた降谷は、すぐに「わ、悪い」と謝った。
「ううん、零君は悪くないよ。私が…弱いから…高層マンションも観覧車も…雨も公園も…怖いものがたくさんあるの…」
降谷は名前の隣に座り直すと、そのまま名前の事を抱きしめた。
「悪い…。ちゃんと考えてなかった…」
「ごめんね、零君…」
名前はそう言うと「でも、あの犯人を捕まえたら…。きっと、一つずつ克服できると思うんだ」と降谷に伝える。
「だから、その時は…その時は零君のマンションに住んでもいいかな?」
「ああ」
「でも、そうすると住所変更届を出さないとだから、上の人達には私達の関係がバレちゃうかもしれないよ?」
「僕は構わない。名前は嫌なのか?」
降谷が不満そうな顔をするので、名前は思わずふき出した。
「フフッ、嫌なワケないじゃん!早く零君の事を自慢の彼氏だー!ってみんなに言いたいよ」
「なるべく早くそうなれるよう努力する」
「うん、ありがとう」
名前が返事をすると、降谷は名前の頬に軽い口づけを落とす。
「…最近ずっとほっぺだね?」
「まだ病み上がりだろ」
「そうでした」
降谷は名前の唇にそっと触れると「こっちにしたら止まらなくなるだろ」と言いながら笑う。
「もう傷は完治したし大丈夫なのに」
名前がボソッとそんな事を言うと、降谷はあっけにとられたような顔をした。
「も、もう!何とか言ってよ!」
顔を赤くしながらそう言った名前に、降谷はフッと笑った。
名前の髪の毛に口づけをすると「それは、お誘いという事でいいんだな?」と言いながら今度は唇をふさいだ。