「ん?」
「まだ時間かかりそうだし、荷物を車に載せてトイレに行って来ようと思ってさ!」
「んじゃ急いだ方がいいぞ。そろそろ閉店時間だし」
名前は「園子ちゃん、一緒に行こうか?まだ近くに犯人がいる可能性が高いから」と聞く。
「大丈夫だって!私、運転免許証持ってないし!」
そう言って園子は小五郎の車に荷物を置きに行った。
「高木!まだ確認は取れんのか!?」
「す、すみません!」
高木は何度か2件目の被害者の女性に電話をかけると、ようやく繋がり確認が取れた。
「警部!確認取れました!やはりあの女性は車から降りて公園のトイレに行ったそうです!」
「おお、そうか!!」
その言葉を聞いた名前は「(でも、どうして車に乗った若い女性を狙うんだろう…。何か、他にも共通点があるはず…)」と考え込む。
「遺体、運びます」
「ああ」
警察官が藍沢の遺体を運ぶため「はい、どいてどいて」と言いながら人混みを通り抜けようとする。
その際、担架から藍沢の片脚がはみ出ると履いていた靴が脱げて地面に落ちた。
「えっ…」
「おい、足がはみ出てるじゃないか!」
「あ、悪い悪い…」
警察官が靴を拾い、藍沢に履かせようとするが「あれ?変だな…この靴ブカブカだぞ…」と、靴が脱げてしまう。
その様子を見ていた名前は「!!」とひらめいた顔をした。
「何か、分かりましたか?」
「戸崎さん、この事件の犯人…多分定金さんです」
「なぜですか?」
名前は藍沢が運ばれていく姿を見て「彼女、ガン黒ギャルのカッコをしているのに靴はローヒールのパンプスでした。あのカッコにあの靴はおかしいです」と言う。
「普通、ああいうカッコには厚底ブーツを合わせると思うんですよね」
「なるほど」
「私は、おとり捜査中だったので靴はヒールのないぺたんこのブーツを合わせましたが、彼女達はお洒落のためにやっているカッコなので、厚底ブーツを履かないのはおかしいと思います」
名前はそう言うと「あの時言ってた蘭ちゃん達の違和感って、この事だったんだ」とつぶやいた。
「犯人は、厚底ブーツを履いて車を運転している女性を狙っていたんです」
「なるほど。車の外から見ているだけでは、彼女達が厚底ブーツを履いているかどうかは分からない。それが分かるのは、このデパートを利用する際に客の乗り降りを見る事ができる、あの警備員って事ですね」
「はい!」
「目暮警部達に伝えましょう」
名前は目暮を呼ぼうとするが、その前にコナンの方に向かった。
「コナン君!」
「名前刑事!」
「コナン君も気づいた?」
「うん」
そう言って笑うコナンに、名前も同じように笑って返す。
「目暮警部!」
「ん?何か分かったのかね」
「はい!藍沢さん、本当は厚底ブーツを履いていたんだと思います」
「厚底ブーツ!?」
名前がそう言うと、コナンも「うん!今時ガン黒で派手なカッコしてたら、ローヒールのパンプスは普通履かないって。ねえ、蘭姉ちゃん!」と蘭の方を見る。
「う、うん…」
「でも、何で犯人はわざわざ靴を履き替えさせたりしたんだ?」
「きっと気づかれたくなかったんだよ、厚底ブーツを履いて車を運転している人ばかりを狙ってるってね!」
「な、なんだと!?」
名前も「多分、他の被害者3人も厚底ブーツを履いて車を運転していたんだと思います。1年前、藍沢さんが交通事故を起こした原因の一つになった、厚底ブーツを」と続けた。
「そういえば、由美も言ってました。厚底ブーツを着用していたためのブレーキングの遅れが事故の原因の一つに上がってたって」
「私も、凛子ちゃんから聞いてたのを思い出したんだ」
「そ、それは本当かね?」
「はい!事故で亡くなった少年の母親と、別れた父親が強硬にそれを主張したけど認められなかったと…」
目暮は「別れた父親?」と聞く。
「そうなんです。男の子には酒乱が原因で離婚した父親がいたんです。その父親の名前は」
「定金って人じゃないの?」
コナンがそう聞くと、名前は「うん」とうなずいた。
「ちょ、ちょっと待ってください!確か、さっきいた警備員の名前も定金って…」
「おい、じゃあまさか犯人は…」
「はい、あの警備員の定金さんです」
目暮は周りを見渡すと「いなくなってるぞ!捜せ!!」と警察官達に指示を出す。
「でも、よく分かりましたね」
「ここのデパートのお客さんが襲われているのが分かってたしね」
名前がそう言うと、小五郎が「しかし、犯人の身長は150pぐらいだと被害者が証言しているんだぞ?あの警備員は167pだって言ってたじゃねーか」と聞く。
「またまたとぼけちゃって!」
コナンは「襲われたお姉さん達は犯人の背は自分と同じぐらいだったって言ってただけだよ?その時10p以上の厚底ブーツを履いてたんなら、犯人の背も10p以上プラスされる事ぐらい分かってるくせに!」と答えながら笑う。
「そっか、あの子達の身長を測ったのは本庁に来てもらった時。警察の事情聴取だから、派手な厚底ブーツは避けたってわけね」
「しかし藍沢さんに復讐したいのなら、こんな所で待ち伏せせずに直接彼女の家に行けば…」
「忘れたか毛利…」
そこに松本が話に入る。
「現在20歳の彼女が事故を起こしたのが1年前ならまだ未成年…。未成年の被疑者の住所は公表できん。だから、息子がひかれたこの駐車場で待ち伏せたんだろう…。いつか、彼女が再びこのデパートへ訪れるのを見越してな」
「彼女の前に、無関係な女性を3人襲ったのは、なかなか現れない彼女に業を煮やした事による腹いせですね」
「…」
目暮は苛立ちながら近くの車のボンネットを叩く。
「管理官!裏が取れました!やはりあの警備員は、1年前に事故死した少年の父親です!」
「それで奴さんは今どこに?」
「そ、それがこの駐車場に彼の車はあるんですが、姿がどこにも…」
「捜しに行くぞ!」
名前は定金の姿を捜しに行こうとするが、蘭がキョロキョロとあたりを見回している姿を見て足を止める。
「どうしたの蘭姉ちゃん?」
「園子が戻って来ないのよ…。車に荷物を置いてトイレに行くって言ってたんだけど…」
「蘭ちゃん、園子ちゃんまだ戻って来てないの?」
「はい…」
コナンは「名前刑事…確か…園子姉ちゃんが履いてた靴…厚底ブーツだった気がする」と伝える。
「えっ?本当に?」
「ま、まさか…」
「私、園子に電話してみる!」
蘭は携帯を取り出すと園子に電話をかけた。
『あ、蘭?』
「園子!?今どこにいるの?」
『え?今?まだデパートの中よー。ちょっと聞いてよ、ひどいんだよ?そりゃあのんびりトイレに入っていたけどさー、何も明かり消す事ないと』
そこで一瞬園子の声が聞こえなくなるが、すぐに『え?』というつぶやきが聞こえてくる。
「何?どうしたの園子?…園子?」
『あ、ううん何でもない…。ちょっと変な気配がしただけ…キッ、キャアアアア!!』
電話口から園子の悲鳴が聞こえてくると、名前達は青い顔をした。
「ちょ、ちょっと園子!?園子!?」
「間違えてんだ…。車の鍵を持って車に荷物を載せてた園子を犯人が見て、厚底ブーツを履いた運転手と間違えたんだよ!!」
「な!?何だとォ!?」
小五郎は「今、どこにいるって言ってた!?」と蘭に聞く。
「デパートの中って…」
「電池、切れちゃったの?」
「まだ繋がっているけど、遠くの方で何か機械の声がしてるだけで…」
コナンは蘭から携帯を受け取ると耳に当てる。
名前はコナンの横にしゃがむと、コナンと同じように携帯に耳を近づける。
『”好きなフレームを選んでね!”』
「こ、これって…」
『”ポーズをとったらボタンを押してね!”』
「プリクラ!!」
「このデパートにプリクラってある?」
蘭は「あるよ!10階のレストラン街の階段のところに二つ」と答える。
「そうか…。下の階が閉店してもレストランは遅くまでやっている!きっと、園子君はそこのエレベーターで降りるつもりで…」
「よーし、高木はデパートの明かりを!!目暮と苗字と佐藤はエレベーターで上から回り、他の者は下から上がって少女を保護し、被疑者を確保しろ!!」
松本が指示を出すと、目暮が「コラ邪魔だ!!どけぇ!!」と叫びながらエレベーターに向かう。
「気合入ってますなー、警部殿…」
「似とるんだよ…。今回のヤマが、奴が最初に手掛けたあのヤマとな…」
松本はそう言うと「それより、おまえの娘とあのメガネのボウズはどうした?」と聞く。
「え、あれ?」
小五郎は辺りを見回すが、そこには蘭とコナンの姿はなかった。