「蘭ちゃん?」
「何でついてきたんだ!これは遊びじゃないんだぞ!」
目暮が怒鳴ると、蘭が「すみません…でも、園子の事が心配で…絶対に邪魔はしないので!」と答える。
「2人を降ろしている時間が勿体ないので、このままいきますね」
「仕方ないですね」
名前と佐藤がそう言うと、目暮は「全く…」と大きなため息をついた。
エレベーターが屋上のレストラン街に到着すると、園子が電話をしていただろう場所を手分けして捜す。
レストラン街にいる客に話を聞くが、園子と定金を見たという証言は得られなかった。
「という事は階段か…」
非常階段に出て一段ずつ懐中電灯で階段を照らしていくと、園子の彼氏である京極真のストラップが付いた携帯が落ちていた。
「あった!!これです、園子の携帯!」
「レストラン街の客は2人を見てないから、園子ちゃんはデパート内に逃げ込んだみたいね!」
「こう暗いと見つけにくいですね」
目暮は高木に電話をかけると「おい高木!まだ明かりはつかんのか!?」と聞く。
『ま、待ってください!!もう少し!』
名前は「とにかく、園子ちゃんは下の階にいます。急いで下に行きましょう」と提案する。
「そうですね」
階段を使って下に移動していると、下の階から「キャアアアア!」という園子の悲鳴が聞こえてきた。
「そ、園子…」
そして、何かが倒れたような大きな音が聞こえる。
「園子どこー!?園子ォ…」
「シッ!黙って…!」
階段の下から、ジャラジャラジャラという何かが散らばる音と、カンカカンという音が立て続けに聞こえてきた。
「何かがいっぱい床に落ちた音だ…」
「砂…米…、いや、もっと大きな…」
「石、でしょうか?」
「水槽の底にしく小石の音じゃないでしょうか?」
佐藤がそう言うと「ペットショップなら4階に…」と蘭が教える。
「じゃあ彼女は4階ね!」
「急ぎましょう」
4階についた名前達は、ショップの中を見回すが誰もいない。
「園子!?園子ォ!?」
「ペットショップ、誰もいないわ!」
「どこも壊れてないし、何も落ちてないって事はここじゃない…」
「さっきの音って、もしかして碁石の音じゃない!?」
コナンがそう言うと「碁石!って事は碁盤を取り扱っている階だね!」と名前が言う。
「上に戻りましょう!」
名前達が碁盤ショップに向かう途中、ようやくデパートの明かりがつく。
「園子ー!」
「あ、蘭!!」
碁盤ショップでは、園子と定金がおり、園子の傍には目暮がいた。
「警部、よくここが…」
「この碁石の音が、ワシをここへ導いてくれたんだよ」
「だ、大丈夫ですか?頭から血が出ていますけど…」
名前達が心配そうに聞くと「心配するな。昔の傷口が開いただけだ…。過去に置いてきたはずの古傷がな」と答えた。
数日後、名前と佐藤、高木、白鳥の4人は警察病院に入院している目暮のお見舞いに来ていた。
「全く、こんな人数で来て…。暇なのか」
「警部の事が心配だったんですよー!傷が深くなくて良かったです」
「みどりさんも、心配でしたよね」
名前はそう言うと、目暮の妻である目暮みどりの方を見る。
「本当に。まあ、さすが刑事って感じよね」
「目暮警部が体を張って園子ちゃんを守ってくださったおかげで、無事に犯人を捕まえる事ができました」
「すごいじゃない。まるで、あの時のようね」
「あの時?」
目暮は「その話はいいじゃないか。君達は早く仕事に戻りなさい」と、恥ずかしそうに言う。
「今度詳しく聞かせてくださいね!」
「ええ」
警視庁に戻った名前は「戸崎さん、お疲れ様です!」と挨拶をしに行く。
「お疲れ様です」
「戸崎さん、今回の事件は何か思い入れでもあったんですか?」
名前が質問をすると、戸崎は「なぜですか?」と逆に質問をした。
「戸崎さんが現場に出たいって、率先して捜査に参加されているように見えたので」
「…そうですね、多分、目暮警部と同じような理由ですよ」
「え?」
戸崎が「20年以上前、連続女子高生ひき逃げ事件が起こったんです」と言うと「ああ、それって毛利さんが言っていた」と、パスタ屋での事を思い出す名前。
「最初は当て逃げだったのですが、とうとう死亡者が出たんです。その時の被害者が、私の姉です」
「え…」
「その事件は、ある女子生徒がおとり役を買ってでて、彼女と当時刑事になりたてだった目暮警部の活躍により逮捕する事ができました」
「そんな事件があったんですね…」
戸崎は「はい。その時の女子生徒というのが、目暮警部の奥様のみどりさんです」と言う。
「だから、私は目暮警部と奥様にとても感謝しています」
「…そうだったんですね」
「その時の事件と似ていると思ったので、つい力が入ってしまいましたね」
名前が悲しそうな顔をすると「そんな顔しないでください。もう20年以上前の事ですよ。犯人も逮捕されましたしね」と戸崎が言った。
「…それでも、辛い事には変わらないじゃないですか…」
「そうですね。それは、そうです…。だけど、乗り越える事はできます」
「…」
「きっと、あなたも乗り越えることができますよ」
名前は「…乗り越えているつもりなんですけどね」と苦笑いした。
「あなたは、まだ納得できていないように見えます」
「…」
「自分の手で、あの連続爆弾犯を捕まえる、という強い信念を感じますよ」
戸崎にそう言われて、名前は「最初の事件から7年…そして陣平の事件から3年…。それだけ時間が経っても、未だにもう一人の犯人の居場所が特定できません」と握った拳に力を入れた。
「私の大切な2人の命を奪った犯人を…私は許せる気がしないです」
悔しそうに言う名前に、戸崎は「許さなくてもいいですよ」と言った。
「…え?」
「許す必要はないですよ。許せるわけがありませんから」
「戸崎さん…」
「ただ、犯人検挙のために、無茶をするのだけはやめて下さいね。でないと、私が松田君に怒られてしまいます」
「え?」
戸崎の言葉の意味が分からなかった名前は、その意味を聞こうとするがその前に松本がやって来る。
「こんなところにいたのか」
「松本管理官!お疲れ様です」
「目暮の見舞いに行ってたんだってな」
「はい!」
松本は戸崎の事を見ると「取り込み中か?」と聞く。
「問題ないですよ」
「そうか。苗字、今度大阪府警本部で行われる研修があるだろう?それに参加してみたらどうだ?」
松本がそう言うと「大阪府警本部の研修って、警部候補の研修でしたっけ?」と名前が聞く。
「ああ。目暮とも話していてな、次の警部候補は苗字しかいないとな。戸崎、おまえはどう思う?」
「私も賛成です。苗字さんには事件解決に大きく貢献してもらっていますからね」
「そ、それは私だけの力じゃないですけど…」
「そういう謙虚な姿勢も大事だが、時には欲を出すことも必要だ」
松本と戸崎にそう言われた名前は「私は…正直まだまだ力不足なのではと感じる事も多いですが、お二人にそう言ってもらえるのなら頑張ろうと思います!」と答えた。
「分かった。そしたら俺から小田切警視長に伝えておこう」
「よろしくお願いします!」
「ウム」
名前の返事に満足をした松本は「引き続き、よろしく頼んだぞ」と言って去って行った。
「それでは仕事に戻りましょうか」
「戸崎さん、さっきの…陣平に怒られるって、どういう意味ですか?」
「…分からなくていいんですよ、今は」
「え?」
戸崎の答えに、ますます意味が分からないという顔をする名前。
「あなたはあなたらしく、しっかりと事件に向き合っていけばいいんです。期待してますよ、警部候補の苗字さん」
「ご期待に応えられるよう頑張ります」
そう言うと、名前達は仕事に戻った。