天国へのカウントダウン01

「名前さん、この前のニュース見ました?西多摩市に大きなビルが建ったって」
「ああ、ツインタワービルだっけ?」
「すごいですよね。いつか、あんな高層ビルに住んでみたいです」

風戸京介の起こした事件から約1ヶ月が経ち、無事に退院して現場復帰をした佐藤。
2人の会話を近くで聞き耳を立てていた高木と白鳥が、佐藤の言葉を聞いて落ち着きのない様子を見せる。

「名前さんはどうですか?高層マンションとか、憧れません?」
「うーん…そうだね。私はどっちかっていうと、平屋とか低層がいいかなぁ」
「そうなんですか?」
「うん」

名前は「それに、そういうところはお金持ちの人しか住めないイメージだから、私には手が届かないかな」と言って笑った。

「名前さんなら仕事ができて、イケメンの彼氏がすぐできますよ!」
「えー」

名前は笑いながら「(たしかに、零君は仕事もできるし料理もできるし、かっこいいよなぁ)」と、降谷の事を思い出しながらうなずいていた。

「あ、その反応!やっぱり名前さんにはラブな人がいるんですね?」
「も、もう!私の事はいいから!それよりも美和子ちゃんはどうなのさ!」
「えっ?」
「結構前だけど、白鳥君とお見合いしたんでしょ?」

名前が小声でそう聞くと「な、何でその時の相手知ってるんですか!?」と佐藤がうろたえる。

「由美ちゃんに聞いたよ」
「口止めしておくんだった…」
「白鳥君は、お気に召さないの?」
「私は」

そう言うと、佐藤はチラッと高木の方に視線を向ける。
そんな佐藤の事を見て、名前は「もしかして、美和子ちゃんは高木君にラブなのかな?」とニヤニヤしながら聞いた。

「もう!からかうのやめてくださいよ!」
「ごめんね、美和子ちゃんの反応が可愛くてつい」

佐藤は咳払いをすると「でも、正直…高木君に惹かれてるのは本当です」と小さな声で名前に伝える。

「うん、いいと思う高木君は、良い子だしね。美和子ちゃんともお似合いだと思うよ」
「ありがとうございます。今度、飲みに行きません?色々話したくて」
「そうだね!美和子ちゃんの退院祝いって事で、久しぶりに行こうか!」
「約束ですよ!」

検査のため早上がりをした佐藤を見送った後、目暮が名前に声をかける。

「苗字君、それに白鳥君と高木君。ちょっといいか」
「はい」
「何かありましたか?」

目暮と一緒にいた千葉が「実は、先程西多摩市のツインタワービルで殺人事件が起こったようで、通報が入りました」と報告する。

「ツインタワービル?ちょうとさっき美和子ちゃんと話してたよ」
「そうですよね」
「あれ?でも、そのビルってまだオープン前なのでは?」
「そうだ。現場はオープン前の2つある内のB塔、67階のスイートルームだそうだ」

千葉は「死亡推定時刻は昨日夜だそうです。詳しい話は、現場で」と言う。

「行きましょう」

名前達は、殺人事件の現場となったツインタワービルに向かった。



現場検証が終わり、関係者に聞き込みをした結果、被害者である西多摩市議の大木岩松がビルのオーナーであるTOKIWAの社長、常盤美緒に宿泊を頼んだ際に、小五郎達が一緒にいた事を知る。

「まぁたアイツか…」

目暮はあきれた様に頭を掻く。

「本当、毛利さん達はよく事件に巻き込まれますね」
「やっぱり引き寄せてますよね、毛利さん…」
「仕方ない。明日、毛利君達に本庁に来てもらおう。話はそれからだ」
「分かりました。連絡入れておきます」







次の日、高木から連絡をもらった小五郎、蘭、コナン、そして少年探偵団と阿笠、園子が本庁にやって来た。

「君達に来てもらったのは、他でもない。実は、ツインタワービルのスイートルームで刺殺体が発見された」

千葉は、大木の写真をホワイトボードに貼る。

「あっ!この人!」
「えっ!」
「西多摩市議の大木岩松氏!」

小五郎達は写真を見て驚く。

「彼が常盤美緒さんに宿泊を頼んだ時、君達が傍にいたと聞いてな」
「毛利さん、常盤さんとはどのような関係なんですか?」
「大学のゼミの後輩だよ。ビルのオープン前に特別に招待してもらったんだ」
「なるほどな。千葉君」
「はい」

千葉は資料を見ながら「大木氏の死亡推定時刻は、午後10時から午前0時の間です。凶器はナイフと思われますが、現場には残っていません」と伝える。

「ただ、大木氏の手には2つに割られたおちょこが握られていました」
「おちょこ?」
「これです」

白鳥は袋に入った割れたおちょこを見せる。

「このおちょこは割と高価な品でな。酒好きの大木氏が日本酒と共に持ち込んだ可能性が高く、犯人を示すダイイングメッセージではないかと、我々は考えている」
「つまり警察は、容疑者があの5人の中にいると考えているわけっすね」

小五郎は、ホワイトボードに貼られた5人の写真を見る。
ホワイトボードには常盤美緒、秘書の沢口ちなみ、プログラマーの原佳明、ツインタワービルを建設した建築家の風間英彦、そして日本画家の如月峰水の写真が貼られている。

「現場が、まだオープンされていないビルという事もあるので、外部からの侵入しての犯行は難しいかと思います」
「う〜ん…」

小五郎は腕を組んで少し考えると「あっ、分かった!」と手を叩いた。

「おちょこはずばり、チョコレートの事!犯人は、チョコレート好きの原佳明氏だ!」
「ええっ!ウソ!」
「違いますよ、原さんは!」
「原さんは俺達にチョコレート分けてくれた良い人だもんな!」
「うん!」

そんな小五郎の推理に、子ども達が反論する。

「こら!そこ、うるさいぞ!」
「原さんは恐らくシロだ」
「えっ?」
「5人に事情聴取をしたところ、原さんにだけアリバイがあったんだ」
「アリバイ?警部殿も人が悪い、それを先に言ってくださいよ」

小五郎は頭を掻きながらそう言った。

「おちょこって、おっちょこちょいの事じゃねえか」
「それなら、最も怪しいのは毛利さんという事に…」
「こら!白鳥!」
「冗談ですよ」
「…ったくもう」

阿笠は「動機についてはどうなんじゃ?」と聞く。

「只今、調査中ですが、大木氏は西多摩市の市議といっても、実質的には市長より力を持っていたようです」
「今度のツインタワービル建設の際も、本来は高層建築が建てられない市の条例を強引に改正させたそうですよ」
「それで美緒さんは、大木さんがオープン前のホテルに泊まりたいって言ったのを断りきれなかったんですね」

コナンは、先日の事を思い出しながら「そういえば、美緒さんが着けてたブローチって、その割れたおちょこに似てるんじゃない?」と言った。

「ちょっと待て!あの美緒君に限って…」
「いや、犯行のしやすさという点では、彼女が一番の容疑者だ」
「何しろ、大木さんが泊まったB塔67階の1階上、68階は彼女の住まいになっていますから」
「そ…そんな…」

小五郎がショックを受けていると「ねえ、そのおちょこって日本画を描く時の小皿に似てない?」と園子が言う。

「えっ?」
「私のパパ、趣味で日本画描いてるけど、胡粉を乳棒ですり潰す時に使う乳鉢みたい」
「う〜む…如月氏とおちょこが繋がったか」
「でも、おちょことの共通点が沢口さんと風間さんには見つかりませんね」

コナンは、隣に座っている白鳥に「白鳥警部、風間さんが森谷帝二の弟子って本当?」と聞いた。

「本当だよ。ただし彼は、芸術家タイプの森谷と違って技術家タイプで、こだわりはほとんどないみたいだね」
「沢口ちなみさんについては、父親が新聞記者で彼女が大学4年の時に過労死している。だが、大木氏との関連は今のところ見つかっていない」
「警部殿、私が思うにこの事件はオープン前を狙ったビル荒しの犯行ではないでしょうか?おちょこは侵入した犯人と大木氏が争い、偶然割れたものでダイイングメッセージとは違うような気がします」

おちょこは真ん中で綺麗に半分に割られており、誰かが意図的に割ったように見えていた名前は「(その可能性もなくはないけど…偶然であんな風に割れるかな?)」と思った。

「とにかく、何か気づいた事があれば都度報告してほしい」
「分かりました!この名探偵の毛利小五郎が事件の真相を解明してみませすよ!」

小五郎達が帰った後、名前達は今後の捜査方針を決める事にした。

「このおちょこが何かのメッセージなら、まだ犯行が続く可能性が高い」
「そうですよね…」

名前は事件現場の写真を見ながら「…この血痕…。どうして下の方だけ血が飛んでいて、上は綺麗なんでしょうか」と言った。

「変な形ですよね」
「何か…ここに飾ってあったのかな…?」

名前はしばらくの間、写真を見続けていた。



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