天国へのカウントダウン03

「つまり美緒君は、ピアノ線付きのこのフックをネックレスに引っ掛けられたんです。キャットウォークを通じたピアノ線は、絵が下がるのと逆に美緒君を引っ張り上げました」

小五郎が状況を説明する。

「なるほど。その時、舞台の上には?」
「私と、如月先生がいました」
「では、その場所に立ってください。苗字君は常盤さんの位置だ」
「はい」

目暮に指示され、名前と2人は立ち位置に戻る。

「この明かりが目印で、真ん中は美緒さんです」
「私はここだ」
「その時、沢口さんは舞台袖にいたんですね?」

白鳥に聞かれた沢口は、舞台袖にある機械の方を見た。

「はい、あそこで絵の上げ下げの操作を」
「真珠のネックレスは?」
「ある人からのプレゼントだとおっしゃっていましたが、誰からとは…」
「この絵はいつここに?」
「昨日の夜です。如月先生の立ち会いのもと、私共で運び入れました」

沢口の答えを聞いて、白鳥は「すると、ピアノ線の細工を一番容易にできるのは…」と如月の事を見る。

「残念ながら知らんな」
「そういえば如月さん。美緒君が、あなたの絵を買い占めて高く売っていた事に腹を立てていたそうですね」

小五郎がそう言うと「そんな事で人を殺めようとは思わんよ」と如月が否定する。

「それより、さっきの君らの話によると、これは連続殺人という事だが?」
「っ!」
「だとしたら、2件目の原君の時にアリバイのある私は犯人とは言えないのじゃないのかね?」

高木は目暮に「如月さんには、前2件のおちょこを見せていませんから連続殺人に見せかけて、似たおちょこを置く事はできませんね」と耳打ちする。

「あのォ…」
「ん?」

風間が「暗くなった直後に、誰かが美緒さんに駆け寄って、何かを言ってるのを気配で感じました」と言った。

「本当ですか!?」
「男でしたか?女でしたか?」
「その時、かすかに香水の香りが…」

沢口の事を見ながら風間がそう言うと「…はい!行ったのは私です。で、でも、段取りについて社長に確認しただけです」と言った。

「う〜む…」
「ああ!警部殿、分かりましたよ犯人が!」
「えっ?」

小五郎の言葉に目暮が驚く。

「犯人は、沢口ちなみさん、あなただ!」
「えっ!?」

沢口は犯人と名指しされ「ち、違います!どうして私が…!」とうろたえる。

「沢口さん、あなたのお父さんは正義感の強い新聞記者で、常に政治家などの不正を追及していたそうですね」
「あっ…」
「あなたは父親の死後、TOKIWAに就職して社長秘書になった。ところが、今回のツインタワー建設の際、不正が行われた。美緒君と原さんが相談して、市議会議員の大木さんに金を渡し、市の条例を改正させるよう頼んだんです」

小五郎は一歩前に出ると「父親の性格を受け継いだあなたには、それが許せなかった」と続ける。

「だから、3人を殺害したんです」
「そ、そんな…」
「ん?だが毛利君、犯行現場に犯人が残していったあのおちょこは、沢口さんと何の関係もないんじゃないか?」

目暮に聞かれた小五郎は「いえ、警部殿」と言った。

「おちょこは感じで”猪の口”と書きます。沢口さんは猪年で苗字に”口”がつき、2つ合わせると”猪口”になります」

そう言うと、小五郎は沢口を見る。

「つまり彼女は、自分の分身であるおちょこを叩き割り、父親から受け継いだ身を裂くような怒りをメッセージとして現場に残したんですよ」
「おお〜なるほど」
「眠ってないのにつじつまが合ってる…」

白鳥は驚きを隠せない表情で小五郎を見ていた。

「ナ〜ハハハハッ!」
「そんなの頓智が効いたただのこじつけだよ」
「どわ〜っ…!」
「コ、コナン君…!言い方!」

小五郎が大きな声で笑っていると、コナンが後ろからツッコミを入れる。

「何だと!?」
「だって、今回のおちょこは割れてなかったじゃない。身を裂くような怒りを表したいんなら…」

小五郎は立ち上がるとコナンの事を持ち上げて「うっせえんだよ、おめえはよ!」と言って、舞台袖に放り投げた。

「風間さん!私、何もしてないですよね!?」
「いやぁ…暗くて何があったかまでは…」

風間が最後まで言い終わる前に、ビル全体が揺れて会場の明かりが全て消えた。

「わっ!何?」

名前達は舞台上から降りると、窓に駆け寄って外を見る。

「一体何が起こっているんだ?」

警備室から電話をもらった風間は「爆発!?」と大きな声で叫んだ。

「何!」
「場所は?」
『地下4階の電気室と発電機室、それに40階のコンピューター室です!』
「コンピューター室だって!?」
「えっ!?風間さん、あそこにはTOKIWAのメインコンピューターがあるんですよ!重要なデータがみんな消えてしまうわ!」

保安主任の塚本は『40階はビルの裏側から火災も発生しています!一刻も早く、そこから避難してください!』と伝える。

「分かりました!」

風間は通話を切ると「警部さん、すぐに避難した方がいいようです」と言う。

「電気室と発電機室が爆発したって事は、非常電源もやられてますね」
「それじゃあエレベーターもダメですか?」
「はい…」

風間は少し考えると「いや!展望エレベーターは動くかもしれない!」と言った。

「え?」
「本当ですか?」
「VIPの避難用に、別電源にしてあるんです」

そう言うと、風間は展望エレベーターの前に移動してボタンを押す。
すると、エレベーターが開いた。

「おお!」
「動くぞ」
「良かった!」

パーティーに来ていた客達も安心したような表情になる。

「定員は?」
「大人9人です」
「全員を運ぶには時間がかかりすぎます。他に避難方法は?」

風間は「非常階段で60階まで下りれば、連絡橋を渡って隣のB塔へ行けます」と言う。

「よし!老人と女性、子どもは展望エレベーターで下りてもらおう。他は、非常階段を使って避難だ!」



外には救急車と消防車が到着し、消火活動が始まっていた。
展望エレベーターが戻って来ると、他の女性客と共に歩美、元太、光彦、そして灰原がエレベーターに乗り込んだ。

「さあ、コナン君」
「蘭姉ちゃん先に乗りなよ」
「いいから」
「あっ…」

蘭がコナンを押してエレベーターに乗せようとするが、コナンが乗った所でブザーが鳴る。

「あっ」
「重量オーバーだよ」
「コナン君…」

歩美が心配そうに見つめるが「大丈夫、次ので行くから」と言った。

「では行ってください」

エレベーターの扉が閉まる。

「それでは残った女性陣とコナン君、如月さんは次のエレベーターで下りてください」
「私は階段で下りる」

如月がそう言うと、目暮は如月の杖を見ながら「あっ、いや、しかし如月さんは…」と言った。

「私を年寄り扱いするな!」
「あーはい、分かりました」

目暮はそう言うと「では風間さん、お願いします」と続けた。

「では皆さん、私が先導します。ついて来て下さい!」

風間は懐中電灯を照らしながらそう言うと、非常階段に向かって走り出す。

「白鳥君、君達も行ってくれ。私は後から追う」
「では」
「はい!」
「苗字君、君は女性陣と一緒にエレベーターで下まで降りてくれ」
「分かりました」

名前はうなずくと、沢口の事を見た。
エレベーターが戻って来て扉が開くと「さあ、乗ってください!」と目暮が誘導する。

蘭や園子、コナン、そして残った女性陣達がエレベーターに乗る。

「ちなみさんも。詳しい話は、後で」
「分かりました…」
「苗字君、後は頼んだぞ」
「任せてください」

名前達がエレベーターに乗り込んだ後、目暮も階段で60階を目指す。



「そういえば、園子ちゃん、イメチェンしたの?」
「そうなんですよ!どうですか?ウェーブかけてみちゃった!」

園子は、今までストレートだった髪の毛にパーマをかけた新しいヘアスタイルを名前に見せつけるようにした。

「素敵だね!園子ちゃんによく似合うよ」
「ありがとうございます!」
「…」

何かを考え込んでいる様子のコナンを見て、名前は「コナン君?」と声をかける。
しかしコナンは何も答えずに、園子達の方を見た。

「でも、このエレベーターだけ別電源で良かったね。そうじゃなきゃ、階段で下りるんじゃ大変だったよ」
「本当にね」
「…」

今の園子の姿と灰原哀の本当の姿が重なったコナンは「ま、まさか…!」と青い顔をした。

「どうしたのコナン君?」

コナンは名前の言葉を無視してエレベーターの窓側に行き、遠くに建っているビルの屋上を犯人追跡メガネの望遠機能を使って見る。

「(ジンッ!)」

屋上の上には、ライフル銃のスコープを覗いているジンの姿があった。
レーザー・ポインターが園子の頭を狙う。

「!?」
「(コナン君…?って、これってレーザー・ポインター!?)」
「園子姉ちゃんパンツ丸見え!!」
「えっ!?」

コナンの言葉に園子は驚き、慌てて下を向く。
その瞬間、パリンッ!という音がしてエレベーターのガラスが割れ、銃弾がエレベーターのボタンを撃ち抜いた。

「何なに!?何で停まるのォ!?」
「今のは…」
「(レーザー・ポインターが消えた…人違いに気づいたか?)」

エレベーターは45階付近で停まってしまい、爆発音と煙が迫ってくる。



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